魔王がやって来たので

もち雪

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魔界の新たな闇

告白 1

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 この家は見た事がある。

 両親が生きていた頃の、街の集会場として使われていた場所だ。

 大人たちが集まるこの場所には、決して子どもは入れなかった。

 けれど父を迎えに行って、玄関から覗ける景色、ここだけは鮮明に思い出せた。

 玄関からすぐの囲炉裏の前に座っている私の前に、今や明確に両親の敵となった白煙が現れた。彼は一人で、さっきの邪魔な男はいない。

 なら、する事は決まっていた。今の私なら、この人が逃げる前に、この人を殺せる。

 そう思った時、蕀は彼をもてあそぶ様に動いている最中で、なのに彼は人形のように手応えがない。

「両親をいえ、何故、先代当主を殺したのですか? これは現状当主不在のため、一時的に私が当主を代行し貴方に問います。答えてください」

「はぁ……フィーナ様……、こんな状態では……話す事は出来ませんよ」

 そう白煙は、唇から赤黒い血を流しながら言う。何かが、おかしいのかもしれない。

 ハヤトが居てくれたらわかるのに、今の私にはわからない。

 彼をおろす。ゲフォゴホォ「これは、失礼」

 そう言って目の前の人は、着物の袖から手拭いを出して、口を拭く。

 手拭いのそのどす黒染まった血に、思わず目を背けた。この人は、たぶんもう……。

「厚かましくもすみませんが、座らせて貰いますね」

 そう言って囲炉裏の座布団へと、白煙は座った。そして右手で顔を隠し、顔を左右へとふった。

「また、貴方ですか幸子、貴方は私に何の恨みが……。おっとこれは失礼、愚問でしたね。私は当主殺しです。いいでしょう、その罰を受けましょう。湊、こっちへおいで一緒に話しをしましょう」

 白煙の言うの通り、幸子と湊は姿を表し、湊のみ黙ってやって来て私の横に座る。幸子は、それを見届け姿を消してしまった。

 形だけ、父、母が生きていた頃の様に私と湊の座り位置になってい
 た。しかし私は彼の祖父の命を狙っている。

 湊はその事をどう考えているのか、怖くて彼の顔が見られない。

「お察しの通り、私が先代当主である、フィーナ様の御両親を殺しました」

「何故ですか!? 何故、そんな事を」

 思わず、怒りでツタがでてしまうと、2つの力に潰された。

 ーー1つは、目の前の老人。もう1人は……。

「何故ですか? 湊、貴方の祖父でも罪は裁かなくてはいけません。なのに、何故!?」

「フィーナ落ち着いて、祖父の話を聞かなくては、君も僕も先に進めないとは言わないけれど、進む時間はおそらく聞いた時よりかかるだろう。僕らは聞かなくては、ハヤトと……たぶん向日葵のためにも」

 彼はゆっくり、私に座る様にいざなう。

「まだ、そんな事を言ってる。私たちは間違えません。それは絶対です!」

 何故か、私の癇癪はそちらの方へ行ってしまった。

「けれど、それはある程度操れるんですよ、フィーナ様。それを操って来たのは本家であり、貴方の祖先の皆々様です」

 白煙の顔を見ると、彼はとても悲しげだった。そんな時、必ず私の手をとってくれるハヤトはいない。

 魔王様の部下としてあろうとした私は、なんて弱々しかったんだろう。

  つづく





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