魔王がやって来たので

もち雪

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魔界の新たな闇

告白 3

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 座敷牢の中で動きやすい夜まで、眠るつもりだった。

 腕を枕にして目をつぶったところで、僕はガバァと起き上がる。

 ――僕に呪術をかけた子狐たちが、異変を訴えたらさっきの男が、乗り込んで来るのでは? もしく再度術をかけられる可能性もあった。

 次もシャーマンが、出てくるとは限らない。

 ここは今すぐ彼女のもとへ、行くべきだろう。そうと決めた僕はお香を破壊したのち、息を整えていくと、魔力が体にふたたび行き渡るのが確かに分かった。後は、祈りながら、魔法で土を掘り起こす事を考える。

 ――どうか下水管などに、当たりません様に。

 そんな危険な賭けの連続の中、しばらくするとやっと地上に出られた。暗い土の中で、恐怖耐えつつ進むのは最悪だった。服も泥だらけになったしね。でも、最悪な想像よりは何十倍もましだ! 良かった。

 座敷牢については、僕への対応が緊急だったためなのか、冬なのに薄い布団一枚しか用意されていなかった。そのため僕が居なくなった事は、案外早くばれるだろう。

 雑木林を見回しても、木々や雑草とヤブカのほかは何もない。
 これでは、どっちへ行けばいいのか……。

 そこへルイスが、凛とした美しい白銀の髪の女性とともに、やって来た。

 ――絶望はそこにあり、いつでも僕を陥れる。
 
「ハヤト、お待たせしました」

 彼にしては呼吸が荒い、急いで僕の事を探しあててくれたんだろう。だから、余計に駄目だ。

「ルイス、駄目だ……。オリエラの事は諦めて、そこまで君が手が早いと、僕は君の事は応援出来ない……」

 僕は頭を抱えて、左右にふる。

「ハヤト、安心してください。彼女は幸子様と言ってフィーナたちのご先祖にあたる幽霊です」

「手が早い事については?」

「もちろん、執事として雑務をこなせるよう、常々努力しております」

 ――現状として、安心出来るのはわかる。しかし常識的に幽霊という在り方に、安心出来ない。しかしそれを言ってはやぶ蛇だろう。雑木林だけに!

 後、言語の翻訳のズレの様に、手が早い事に対して流されると突っ込みきれない、自分が不甲斐なかった。クッ……。

 僕は巫女姿の幽霊の彼女に改めて、向き直る。

「フィーナさんとは、結婚を前提にお付き合いさせて頂いております。草薙ハヤトです。どうぞ、よろしくお願いいたします。この度は、ルイスを助けていただきありがとうございます」

 前回はちゃんと言えなかったが、これだけ助けてもらったのだから、僕も彼女の墓へ入るかもしれない。尽くせるだけの礼を尽くす事にした。

「フィーナの運命の貴方、この世界に貴方の世界の正しさを持ち込まないで、貴方の正しさは狐の里の老人たちを刺激するわ。だからこんな事になったのよ」

 そう彼女は言った。僕はどう答えればいいか考えあぐねていた。正直に人間界にも迷惑かけている、狐の里の倫理観はどうかしてます。
 言っていいだろか? これでも結構マイルドにしている。

「では、幸子様の指導をもって、狐の里の現状を変えて下さい。そして人間界起こった事件の賠償を提出し、先導者は罰してください。それをいついつまでに行うか確約してくだされば、一度帰り報告して参ります」

 ルイスは僕に代わり、表だって幸子との話をしているが、「そういう話ではないのよ……」と、幸子は顔を背けた。

 正直、彼女の言葉は不快だった。しかし彼女に対して意見出来るのは、フィーナか湊だけだろう。

「今後、次の当主が決まれば、その人物の決めた事に従い、約束はできませんが考えを改めねばならないかもしれません。けれども僕も仮ですが勇者として人間界のために、武力を行使しなければいけない未来をご理解ください。今、それを言わなければいけない現状なのです。しーかしそれも大事ですが、フィーナのもとへ連れて行ってください。彼女が居なくてはすべてに意味はありません」

 僕は彼女の両手を掴み言った。良かった掴めた。こんだけやってスカスカやっていたら恥ずかしかっただろう。

 僕は世界のために動くけれど、彼女の移動するエリアの背景となる世界にしか興味がない。

「時間をとらせてごめんなさい。こっちよ、今、あの子たちは白煙と話している。私には変化はとても怖い事だけれど、貴方たちにあたるべきではなかったわ。変化はもうすぐ。良くも悪くも私は立ち会う事しか出来ないでしょうね」

 そうして僕らは、雑木林の中を進みだす。彼女とその背景を守るために。      

    つづく








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