魔王がやって来たので

もち雪

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魔界の新たな闇

決め時

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 竹林の笹が、サワサワと音をたてて揺れている。しっかりとした小屋は今や、修羅場と化している。

 それならその打開策を打つをべく行動を開始する。

 スタートはルイスによる隠密魔法の解除をきっかけに、盛大に風の魔法を壁の魔法をぶっぱなす。

 注目を浴びるように派手に!、しかし魔法の目標箇所身近に定め、撃ち込んだ魔法はクラッカーの様に「バシュツッ!!」と音をたてて壁の資材は弾けて飛び散った。

 飛散した壁に白煙の視線が行っている間、「フィーナ、湊、こちらへ」玄関へ素早く回ったルイスが、二人に声をかけ誘導する。

 同時進行で、僕は槍を発現化させ、フィーナの前へ出るべく壁をバリバリとこじ開けていた。

「いいえ、退きません!」

 フィーナの返事に耳を疑ったが、里の命運を背負ったフィーナと湊は手を固く繋ぎ、老人を見据えている。
 
 彼女はまだまだ狐の里の未来を諦めないらしい。そういう姿勢は大好きだが、握っている手が僕ではないのは大変良くない。良くないよー!
 
 そんなフィーナの横へ僕が、ルイスはそんな僕の横へと立った。
 
 明らかにこのメンバーの中で、白煙の中で一番敵対心の高い位置にいるのは僕だろう。
 
 「お祖父様、どうしたらフィーナ達に向ける刃を、納めてくれますか? 私がお祖父様を殺し、私の汚名を晴らすまでですか?」

 湊が前へ歩み出る。一歩一歩、彼の祖父を興奮させないように。

「湊さん、貴方は大手馬鹿ですよ。何故、わかっていながらそうしないのです。貴方の父、玄夜げんや君に貴方はよく似ている。優しくて、そんな貴方たちは癒される存在ですが……、里の長として、それだけでは駄目なのです。だから、私はフィーナ様を殺そうと思っています。そうすれば、里の者も貴方に縋るしか道はなくなります。貴方は運命向日葵とともに歩みさえすれば道が開かれるはずです」

「おじちゃん、それはないんじゃない? 家族が大切なのはおじいちゃんだけじゃないんだよ」

 いきなり飛び込んで来た声に慌てて、僕はフィーナと湊の二人を避難させようとすると「うぅっ」と言う声と共に白煙が腰を落とす。彼の胸の上に苦無が深く刺さっている。

 辺りに漂う血の香り、そして矢の様に男の前に飛んで出たルイス。

 彼が謎の男へと壁ごと、魔法を重ねた刀を打ち付ける。またもやバシャバシバギッと弾け飛ぶ壁。
 
 しかし! そのルイスの刃を男は自ら腕を出し受け止める。腕に何かが入っているようで、折れも切れもしていないが、やはり無傷ではいかなかったようで、血は腕の服の継ぎ目から滴り落ち地面に赤い花を咲かせる。

「あれ!? なんで俺が、攻撃されてるの? やっかいなおじいちゃんを一時的に無力化してあげたのに!?」

「それは貴方に頼んでいないからですよ! 押し売りは執事として許せませんからね」

 隙をみたのか、男が蹴りあげようとする足の動きを紙一重に避けるという、相手に最高にイラつかれる避けかたをしたルイスはすぐさま斜めに切りつけた。

 ふたたび刀と今度は男の出した小刀が合わさる。二人の腕は微かに震える様に動き。刃を重ねた2つの刀が、ギギィィ――ィと、耳障りの悪い音を立てたと思うと、男は体を捻るようにしてルイスの刀をかわす。
 
「「ハヤト、危ない!」」

 フィーナ達の声に後ろを向くと、白煙は狐に変わり図体はどんどん大きなる。尾は4つ、まだまだだな! って言っている間はもうない。

「ルイス、家から離れて、たぶんこの家崩壊する!!」

 そう言うとルイス達、二人は飛びのくのが早い! 早い! 僕の方は世話の関わるじっ様が大きくなって、崩れた家の重さでおっちんじゃわないように、首根っこ捕まえて僕が壊した壁から放り投げた。
 
 そして自分も急ぎ、壁の破壊し過ぎで、埃のまっている家から飛び出る。

「お祖父様!?」湊の声、「マジか、おじいちゃん!?」もー大きくなるおじいちゃんに、それしか言えない!

 竹を押し倒しバキバキ! と折れた竹が体に刺さり、毛皮が赤く染まる。それでも狐がどんどん大きくなりながら、ブルブルしている。
 
 狐を不安そうに見守る白銀の毛皮を身につけた二人、その二人の前に僕は躍りて彼女らに問う。

「フィーナ、湊の狐の里の当主候補の二人、この先どうする!? 早く決めて! 僕はフィーナの結婚相手ではあるけれど、今は、まだ狐の里については関わり知らぬ事ではある! 君たちだけが正解を出せる。たぶん! 正解は何て知らない!でも、決めて早く!!」

 この際なので、僕の身分は結婚相手に昇格はした。

 「私は貴方と共に生きます。だから一緒に連れて行ってどこにでも。だから、ごめんなさい湊、友として貴方がここに居るべき、貴方ならこの里を変えられると思い、貴方にこの里の未来を押し付けます! でも、嫌ならいつでも言ってくださいね」

 うちの結婚相手は根はやさしいから、こんな時には押しが弱いな。少し、口元が緩む。
 
 湊は下を向いている。こんな時は、謎の男は湊を見守る様だ。彼は刀を持ちながら、里の生末いくすえを彼なりに案じてはいるようだ。

 ルイスは、殺気を漂わせて刀を握ったまま、男の後ろかから微動だにしない。
 
「僕は……、いえ、私は新しい当主として白煙、貴方に投降を命じます! そこの貴方にもです!」

 湊は、そう言う甘いちゃあ、甘いけれど、それを望むなら付き合ってもいい。誰でも最初はそんなものだ。そして僕は今も甘い。

「湊様、当主ご就任おめでとうございます。しかしそれでは里の者が納得しないでしょう……。貴方は私を討ち取るべきなのです。そうでなければフィーナ様と忌々しい馬の骨は死ぬ事になります」

 そう、狐が行った時にまわりの竹の多くは倒れてしまい、最悪の状況の前触れのようだった。

 でも、どんな時でも光明はあり、僕の場合おもしろい事に、それは魔王らしい。

 彼が姿を現すと、共に向日葵ちゃんや、僕のパーティーのみんな、そしてよしのさんが現れた。

 しかし謎の男はそれを見るや否や、地面を深く蹴り上げ、ルイスに砂を浴びせると「ハハハハ、いい恰好だな色男」と言って逃げて言った。

 ルイスは、「ハハハ、これはお恥ずかしい」と言って素敵な笑顔で笑っていたが、めちゃめちゃぶちぎれている様で、一瞬で空気が死んだ。

           つづく
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