魔王がやって来たので

君の世界へ僕が来て

デートの誘い

　僕たちは思っていたより長く、狐の里に居た。

　魔王とよしのさんは言い方は、微妙か、不謹慎かもしれないが、白煙が亡くなったため、時治君に故郷について、今一度学ばせようとしているらしい。

　最近は、そんな魔王の名代として、フィーナが狐の里の会合へ出る日々を送っている。

　ルイスは、ミッシェルとともに人間界での痕跡を探ろうとしているが、さすが湊に直接頼んでの探索は、彼の印象を悪くする恐れもあるため、情報の行き交う酒場巡りをしているらしい。

「勉強になります」ってミッシェル言っていたが、何やっているのか……。

　そして残った僕らは、有り余った土地で戦いの訓練である。オリエラはこのまま戦士コースへと、突き進んでいいのだろうか？

　僕はほかにも未来という面については、魔王との決戦を備えているが、日時指定の予定を決められなければ、セーフの心構えでいた。

　しかし敵を知るために、まず味方をしらなければいけない。

　なのでフィーナを誘って、食事へ行く事にした。

　朝、女性陣はみんなで、温泉入っている情報をキャッチしていた僕は、卓球台でひたすら、空気の壁へ卓球のたまを打ち付けて彼女を待っていた。


　そして時は来たり、廊下を歩く彼女もこちらを向いてくれた。恋のパワーかもしれない？　

　彼女は、僕に駆け寄って来た。魔王の介入を感じざるおえない旅館の浴衣もフィーナが着ると可愛いし、最高かもしれない。

「ハヤト、おはようございます。こんなところで朝から卓球ですか？」

　そう言うと、彼女は使っていなかった相手の陣地側に置いてある。ラケットとボールを手に持って、えいっ！　ボールを打った。

「おはよ……」

　ボールの飛ぶところを、微笑ましく見ていた僕は、言葉を途中で失った。凄いカーブを描いてコートのすみに落ちるのである。

　――落ちて、凄いスピンが……かかってなかった？　今？

「うーん、久しぶりだから風の魔法を乗せるのが、下手になってますねー」

「いや、凄いスピンだったよ……、でも、魔法をかけるのは反則だと思うよ」

「えー！？」

　ラケットで、口もとを隠すフィーナは可愛い。

「じゃあ、どうやってスピンを……？」
　
　彼女は目を丸くしながら、そう聞いた。

「打ち方じゃあないかな？　僕も習ったわけではないからよく知らないけど」

「では、よしのさんが正解だったわけですね」

「正解？」

「よしのさんは今でこそ、あまり卓球がすきではないのですが、この技術を最初に編み出したのは、よしのさんなんですよ。でも、うちの卓球文化に魔法技術が導入されてからは、婆たちもそちらにち力を入れ始め、魔法の使えないよしのさんは失意のうちに、卓球会を引退してしまったのです」

　この世界的に卓球の技術革新をもたらしたよしのさんの引退は、大変なニュースだろう……だが、正直魔王たち何をやっているの？　健康的過ぎる。

「卓球に魔法の技術を入れると、たぶん明確に卓球として使う肉体の部所が違うから駄目かもしれないけど、新をつけたり、魔界流って事ににしたり、基礎として卓球があると認めて、全然違う名前でやるのもいいかもね。僕の世界の卓球会に、許可を貰いに言っても迷惑だろうし」

　正直、卓球に夢中になり、魔界の卓球会の歴史的偉業だっただろう技、開発を一人で成し遂げてしまった侍に何やっとんじゃー！　と、思う部分もあるが、僕もわけわからない新しい魔界での卓球の在り方について語ったので、どっこいどっこいだろう。

　なにより、食事の誘いを未だにスムーズにこなせない僕に、人の事は言えない。

「フィーナ、卓球も楽しいけど、いや、楽しいからこそランチに行って楽しく、美味しくならない？」

　……あっ、なんかやってしまった。

　そう……久しぶりの二人きりだったからしろどもどろではある！　温泉旅館での彼女の浴衣姿に、僕の会話力は破壊されていたが、そんな僕の言葉に頬を染めてくれる君が好きだ。

「わかった！」

　――えっ？

　一瞬、心の中に花が舞い踊ったが、フィーナの浴衣の肩の辺りからウンディーネあらわれた。にょきっと。そしてウンディーネちゃんは顔は動かさず、目だけ動かし僕を見つめた。こう言う時、彼女は全て理解して知らない振りをする事が多い。

「じゃーあ、みんなに伝えてくるねー」
　そう言って彼女はかけて行った。ビュ――である。

「やられちゃいましたね」

　彼女は笑顔で言う。全て受け入れてくれて、そう言ってくれるからありがたい。

「二人きりで食べるのは、３日後にしましょう。ウンディーネには私から伝えます」

「では、今のうちに場所だけだいたい、決めちゃいますか！」

　彼女のおかげでどんどん決まる。適材適所にしては彼女は有能過ぎて、僕は頭が上がらない。

　　　　　　　　続く