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君の世界へ僕が来て
僕の中の桜
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走りさったウンディーネは、最高のパフォーマンスを見せ、僕のパーティーのメンバーばかりか、魔王たちまで連れてきた。
空は快晴で、お出かけ日和ってやつだった。
「広めの座敷を予約した甲斐がありました」
彼女は手を腰の辺りで広げ、単純に、見通しが当たった事が嬉しいようだ。
「いい店が取れたのか?」
若くなってに、金色の瞳のお忍びの王子のような魔王の肩に肘を乗せる、用心棒のようなよしのさんがそう言った。
「それが丁度、キャンセルが出て『若草庵』の予約が取れたんです。旅館の番頭さんも、珍しい事だと驚いていました」
そう言って彼女は、旅館サービスとして行っている、料理屋の予約代行の番頭さんから貰った、予約券をよしのさんに見せた。
「へー綺麗なもんだ」
そういって彼は、それを日に透かしたりしている。
僕はその姿を見て、少し固まっていた。
「その予約券は、季節折々の花をモチーフに描かれ、なんとこの桜の絵柄はこの里の観光スポットの、野桜の開花時期にしか発行されないす凄く貴重な……ハヤト?」
僕はいきなり彼女の指を一本、一本絡めて彼女の手を握っていた。僕が仲間の前でそこまで積極的た事は、そうないから彼女も驚き固まっている。
「その桜をみたい、今すぐに」
「えぇ……あぁ……あっちです」
彼女は、つないでいない方の片手を胸もとにやり僕の真意を探るように僕を見つめる。
僕は少し彼女を、警戒させてしまったかもしれない。
「みんな、ごめん用が出来た、ごめん埋め合わせは今度する!」
そういい終わらない内に、彼女に目で合図をして、僕らはー走りだした。
「すみませーん、この埋め合わせは必ず」
★
そう言って二人は走って行っちまった。
「どういう事だ?」
「行きましょう、相手を待たせると悪いですから」
なんて事を若く化けた魔王は、いいやがる。
「ウンディーネ大丈夫だよ」
そうオリエラと言う娘の声に、横を見るとハヤトの小判鮫目の精霊が、涙を流していた。
「……連れて行ってやろうか?」
そう言っても、首を横に振るだけ。
ううっ……えっぐ……ううっ……。
精霊はみんなに手を引かれて、ただ涙するだけで、料理屋の座敷に上がっても、料理が来ても、泣き続け味などわからないだろに……。
一生懸命普通に、振る舞う。
見てるうちに、あいつはそれが必要なんだろと思った。小判鮫という認識は改めるべき事のようだ。
★
僕は桜の花に、よって突き動かされ走っている。
街を行き交う人々の間を、縫うように走る。僕の見知らぬ土地、知らなかった世界。
そして里の賑わいを抜けると、堤防の上の方に桜が並んで、何本も植わっているのが見える。
そこから僕は余計な事を言わない様に黙って歩く。彼女はそんな僕に黙って手を引かれついて来てくれる。
まだ何も植わっていない畑と畑の間の細い道を抜けて、天然の緑の雑草の絨毯のひかれた堤防の枝の丸太で作られた階段を登って行く。
うーんやはり緊張し、心臓は大きく音たてているようだ。
登りきると桜並木は、土手の道を彩りながら連なっている。
僕らが登って来た反対側には、同じくだいぶ下の方に畑がいくつもあり、その向こうに結構大きな川がキラキラと光っている。
「わぁ見ない間に、桜並木の本数もだいぶ増えてしいました。両親と毎年見に来ていたんですが、全然知らないとこみたいです」
緊張に戸惑ったフィーナが、そんな話をした。そして振り向き僕に笑いかける。
「フィーナ、良かったらこれからずっと僕と桜を見ませんか? 来年も再来年もずっと死ぬまで、つまり……あぁ、俺と結婚してください」「はい」
「決断が早い……」
「決まっている事であると同時に、私はハヤト、貴方が好きなので……」
そうして彼女は僕の首に手をまわしキスをする。頬に、口もとに……。
「決して逃がしませんよ」
深いキスは、頭のどこか痺れるように……。終わりがないようで、甘い。
「それは知ってるし、君も俺……いいなれない、心がこもりにくいから、僕で、君も僕を知っているでしょう? 君には命を差し出すよ」
彼女抱きしめて僕は言う。彼女の細い首筋や、とても良い香り。
「フィーナ、僕らは結婚する事に決まりましたが、ちょっと土手で座ろうか」
「あぁ……そうしましょうか」
そして僕ら仲良く土手に座った。川の流れは淀みなく。
「早く、結婚したい……」
「そうですね」
そうって彼女は赤い顔を、膝にうずめた。
ーー勝った。と、まぁ、そう思ったが、僕の結納(魔王とのエキシビションマッチ)を思いだし、僕も顔をうずめた。
「えっ、貴方たちプロポーズ失敗したの?」
妖艶な美女、ヴァンパイアのシルエットが空から登場した。
「「シルエットさん!?」」
「大成功ですが、シルエットさんは若草庵の料理はいいんですか?」
僕は驚きと戸惑いで、そんな事を聞いてしまう。
「この私は蝙蝠の2~3匹分に過ぎないの、だから本物の私は美味しいすき焼きを食べているわよ。皆どれも美味しいわ」
「そうですか。こちらは大丈夫なんで、美味しく食べててください。……フィーナお待たせ、じゃ若草庵は今からでは無理だけれども、昼ご飯を食べに行こうか」
そう言って僕らは桜並木を、後にしたのだった。
つづく
空は快晴で、お出かけ日和ってやつだった。
「広めの座敷を予約した甲斐がありました」
彼女は手を腰の辺りで広げ、単純に、見通しが当たった事が嬉しいようだ。
「いい店が取れたのか?」
若くなってに、金色の瞳のお忍びの王子のような魔王の肩に肘を乗せる、用心棒のようなよしのさんがそう言った。
「それが丁度、キャンセルが出て『若草庵』の予約が取れたんです。旅館の番頭さんも、珍しい事だと驚いていました」
そう言って彼女は、旅館サービスとして行っている、料理屋の予約代行の番頭さんから貰った、予約券をよしのさんに見せた。
「へー綺麗なもんだ」
そういって彼は、それを日に透かしたりしている。
僕はその姿を見て、少し固まっていた。
「その予約券は、季節折々の花をモチーフに描かれ、なんとこの桜の絵柄はこの里の観光スポットの、野桜の開花時期にしか発行されないす凄く貴重な……ハヤト?」
僕はいきなり彼女の指を一本、一本絡めて彼女の手を握っていた。僕が仲間の前でそこまで積極的た事は、そうないから彼女も驚き固まっている。
「その桜をみたい、今すぐに」
「えぇ……あぁ……あっちです」
彼女は、つないでいない方の片手を胸もとにやり僕の真意を探るように僕を見つめる。
僕は少し彼女を、警戒させてしまったかもしれない。
「みんな、ごめん用が出来た、ごめん埋め合わせは今度する!」
そういい終わらない内に、彼女に目で合図をして、僕らはー走りだした。
「すみませーん、この埋め合わせは必ず」
★
そう言って二人は走って行っちまった。
「どういう事だ?」
「行きましょう、相手を待たせると悪いですから」
なんて事を若く化けた魔王は、いいやがる。
「ウンディーネ大丈夫だよ」
そうオリエラと言う娘の声に、横を見るとハヤトの小判鮫目の精霊が、涙を流していた。
「……連れて行ってやろうか?」
そう言っても、首を横に振るだけ。
ううっ……えっぐ……ううっ……。
精霊はみんなに手を引かれて、ただ涙するだけで、料理屋の座敷に上がっても、料理が来ても、泣き続け味などわからないだろに……。
一生懸命普通に、振る舞う。
見てるうちに、あいつはそれが必要なんだろと思った。小判鮫という認識は改めるべき事のようだ。
★
僕は桜の花に、よって突き動かされ走っている。
街を行き交う人々の間を、縫うように走る。僕の見知らぬ土地、知らなかった世界。
そして里の賑わいを抜けると、堤防の上の方に桜が並んで、何本も植わっているのが見える。
そこから僕は余計な事を言わない様に黙って歩く。彼女はそんな僕に黙って手を引かれついて来てくれる。
まだ何も植わっていない畑と畑の間の細い道を抜けて、天然の緑の雑草の絨毯のひかれた堤防の枝の丸太で作られた階段を登って行く。
うーんやはり緊張し、心臓は大きく音たてているようだ。
登りきると桜並木は、土手の道を彩りながら連なっている。
僕らが登って来た反対側には、同じくだいぶ下の方に畑がいくつもあり、その向こうに結構大きな川がキラキラと光っている。
「わぁ見ない間に、桜並木の本数もだいぶ増えてしいました。両親と毎年見に来ていたんですが、全然知らないとこみたいです」
緊張に戸惑ったフィーナが、そんな話をした。そして振り向き僕に笑いかける。
「フィーナ、良かったらこれからずっと僕と桜を見ませんか? 来年も再来年もずっと死ぬまで、つまり……あぁ、俺と結婚してください」「はい」
「決断が早い……」
「決まっている事であると同時に、私はハヤト、貴方が好きなので……」
そうして彼女は僕の首に手をまわしキスをする。頬に、口もとに……。
「決して逃がしませんよ」
深いキスは、頭のどこか痺れるように……。終わりがないようで、甘い。
「それは知ってるし、君も俺……いいなれない、心がこもりにくいから、僕で、君も僕を知っているでしょう? 君には命を差し出すよ」
彼女抱きしめて僕は言う。彼女の細い首筋や、とても良い香り。
「フィーナ、僕らは結婚する事に決まりましたが、ちょっと土手で座ろうか」
「あぁ……そうしましょうか」
そして僕ら仲良く土手に座った。川の流れは淀みなく。
「早く、結婚したい……」
「そうですね」
そうって彼女は赤い顔を、膝にうずめた。
ーー勝った。と、まぁ、そう思ったが、僕の結納(魔王とのエキシビションマッチ)を思いだし、僕も顔をうずめた。
「えっ、貴方たちプロポーズ失敗したの?」
妖艶な美女、ヴァンパイアのシルエットが空から登場した。
「「シルエットさん!?」」
「大成功ですが、シルエットさんは若草庵の料理はいいんですか?」
僕は驚きと戸惑いで、そんな事を聞いてしまう。
「この私は蝙蝠の2~3匹分に過ぎないの、だから本物の私は美味しいすき焼きを食べているわよ。皆どれも美味しいわ」
「そうですか。こちらは大丈夫なんで、美味しく食べててください。……フィーナお待たせ、じゃ若草庵は今からでは無理だけれども、昼ご飯を食べに行こうか」
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