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28話 風邪に早めの葛○湯じゃなくて……
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太助がカリーナ達に休みを指示した日から更に一週間の時間が流れた。
その指示をした太助は今、とある店からボロい革袋の中身を覗く姿があった。
どうやら太助の財布のようで中に入ってるお金を数えているようで数え終えると疲れたように溜息を洩らす。
「なんとか貯まった……これで王都への往復の予算の捻出出来る」
ふぅ、と16歳と思えない世帯じみた疲れた主夫、あながち間違ってはないが年相応と言えない悩みを抱える太助。
今まで寝る間も惜しんで作り続けたポーションなどを店に買い取って貰っていた。
「はぁ、やっぱり儲けは少ないな……」
いつものように冒険者ギルドで露店をして売ってる方が利益は大きいので本当はそうしたかった太助であるが旅の資金捻出の為、買い叩かれる事は分かっていたがポーション取扱店に引き取って貰っていた。
低いレベルで連携が出来始めているカリーナ達が焦れるから急ぎたかったという事が一番の理由だが、引き取って貰った量を太助が露店で捌くには1カ月はかかっただろうと見ている。
つくづく接客業に向いてない自分の適性のなさに項垂れたくなる太助。なにしろ、ティカとリンのどちらにも負けている事実がヒシヒシと感じられ泣きたくなる今日この頃のようだ。
「さて、今から行けば、まだカリーナ達の依頼中に間に合うかな?」
今日はカリーナ達は北門を抜けた先の森でウサギ狩りと木こりがイノシシに襲われる事件が頻発してるので討伐を一緒に受けて出ていた。
駆け出しには少し辛いイノシシであるが巣穴も分かっている事もあり、カリーナ達でも問題はないだろうとミラーが許可を出したらしい。
本当にカリーナ達は最低限な事が出来てるのかの最後の抜き打ちテストをする為に太助は屋根に飛び乗り、最短距離で北門を目指して走り出した。
▼
「いたいた、丁度良い所に来たみたいだ」
覚えのある気配を追って森の中を走って向かった先で太助はカリーナ達が洞穴から少し離れた草むらから顔を覗かせているのを発見した。
4人に気付かれない距離を維持して見つめているとカリーナとエンティが主で身ぶり手ぶりで何かを指示を出している。
2人の視線が集中させる先はテルルで緊張した顔をして頷いているのが見える。
「さて、お手並み拝見しようかな?」
そう言って眺める太助は巣穴だと思われる洞窟の出口付近の地面の土の色がおかしい事に気付き、テルルがカバンから薬瓶を取り出すのを見て4人が考えている事を理解して笑みを浮かべる。
2人に行くように言われたテルルが恐る恐る洞穴に近づき、色の変わった地面を避けるようにして洞穴の前にやってくると可愛らしい掛け声と共に中に薬瓶を放る。投げたと同時に逃げ出すのを見たエンティが洞穴と土の色が変わった場所の対抗線上で刀を構え、その後ろに張り付くようにしてカリーナが精神集中を始める。
その更に背後では日の丸が描かれた扇子を両手に持って踊るミンティア。
「定石で悪くないけどカリーナはもっと後ろでもいいね。多分、コントロールの不安から少しでも近くという心理なんだろうけど……それは慣れかな。それはそうとあの扇子、シホーヌさんも持ってるのを見た事あるけど、あの扇子は天界で人気なのかな? 踊ってる意味も分からないし」
逃げ帰って来たテルルがカリーナ達の背後、踊るミンティアの所まで行くと洞穴から白い煙が噴き出す。テルルが投げたのは空気と触れ合うと煙を発する物だ。だが、魔女であるテルルのお手製のはずなので煙が出るだけではないだろう。
すると、飛び出してくるイノシシ、それもかなり大きな全長3mはあろうかとイノシシを見て4人が面喰った顔をしたのを見て、どうやら想定してたのはもっと小さいイノシシだったようだ。
「くっ、やる事は一緒だ! 予定通りにやるぞ!」
そう叫ぶエンティが威圧を前方にいるイノシシに発する。
エンティの威圧に反応したイノシシが真っ直ぐにエンティ目掛けて突進をする。
イノシシの動きを見て太助が一瞬、眉を寄せるがすぐに納得した顔を見せる。
「なるほど、煙の中にマヒを促すモノでも混ぜ込んでたみたいだね」
それでもあれだけの巨体が走ると凄く威圧感があるようでカリーナが魔法の発動を急ごうとするのを後ろで見てたテルルが止める。
「待ってください! 落とし穴に落ちた所にエンティさんが一撃入れた後でも大丈夫ですぅ。間違いなく、一瞬、動きを止められるはず……ですぅ?」
「最後まで自信を持って言ってよねっ!!」
咄嗟に撃ちそうになっていたアイスブレットを留まらせる。
言い合う2人の前にいるエンティが気を吐く。
「必ず、私が動きを止める! タイミングはちゃんと合わせろ!」
「分かってるわよ、それと私が年上なんだから少しぐらい言葉使いを……ああ、もう!」
エンティに言葉使いで文句を言おうとするがイノシシが目前、土の色が変わった場所の前、落とし穴の場所に来たので黙って集中する。
そして、見事に落ちたイノシシであったが想定より大きかったせいか、体半分見えてる状態でぶつかって止まる。
止まったイノシシに飛びかかり、上段から刀の峰で脳天に叩きつける。
イノシシが悲鳴を上げるが無視してエンティが後方に飛びながらイノシシの悲鳴に負けずに叫ぶ。
「今だ、カリーナ!」
「カリーナさんでしょ! 『アイスブレット』」
飛び退いたエンティの先にいたイノシシの眉間に当たったアイスブレットは貫通されたイノシシの巨体は落とし穴の淵に凭れかかるように倒れる。
しばらくイノシシを見つめていたカリーナ達が仕留めたと確信した瞬間、歓声を上げて喜び合うのを太助は目を細めて見つめる。
見つめる先で3人に詰め寄られるようにするミンティアを見て首を傾げる。
「仕留められたのはいいんだけど、貴方は何をしてたの?」
「そうだ、本来なら私達にシールドを張る準備をしてたはずだが?」
「えと、えと、あの踊りに意味があるんですよねっ? ねっ?」
ミンティアはテルルの言葉に頷いてみせる。
「私が無駄にシールドを張る意味はないと判断して後ろで挑発の舞をしてました。そして、今がおめでとうの舞!」
それを聞かされた3人が膝から力が抜けたようにコケそうになる。遠くで盗み聞きしていた太助も転びそうになるが耐える。
意味が分からないと顔を見合わせる3人が諦めたようでイノシシを穴から引きずり出す。
エンティの肉体強化は気から魔力に変えているがテツの指導の下で基礎がしっかりしてあり、たいした苦もなく引きずり上げる。そして近くにある木にロープを使って吊るし上げて手慣れた動きで血抜きを始める。
ちなみにエンティは故郷から出てダンガに来てからテツの道場の近くでテント暮らしをしてたらしく、意外にたくましい生活をしていたようだ。
その後ろでは『頑張れの舞』と言って踊るのに苛立った手伝っていたカリーナが叫ぼうとした時、手にしていたナイフで浅く指先を切る。
切った指を思わず口に咥えようとしたカリーナが思い出したように切った指を踊るミンティアに突き出す。
「癒しをかけてよ?」
「ん~、これぐらいなら舐めておけば治ります」
と言うと踊りを再開するミンティアに地団太を踏むカリーナが怒鳴る。
「じゃ、貴方のこのパーティでの仕事は何なのよ!」
「必要に応じて、回復、防御魔法を行使する事です。神の奇跡は乱用するものではありません……後、踊る事と食べる事です」
顔を真っ赤にして怒るカリーナとその背後でヤレヤレと溜息を洩らして首を横に振るエンティ、その3人を眺めてオロオロするテルルを見て太助は頭をコリコリと掻く。
「これはまだ王都に行かせる訳には行かなさそうだな……問題は早めに発覚する事は良い事だけど、さて、どうしたものやら」
そう呟く太助は自分が出来る事を考えながら4人に気付かれないようにその場を後にした。
その指示をした太助は今、とある店からボロい革袋の中身を覗く姿があった。
どうやら太助の財布のようで中に入ってるお金を数えているようで数え終えると疲れたように溜息を洩らす。
「なんとか貯まった……これで王都への往復の予算の捻出出来る」
ふぅ、と16歳と思えない世帯じみた疲れた主夫、あながち間違ってはないが年相応と言えない悩みを抱える太助。
今まで寝る間も惜しんで作り続けたポーションなどを店に買い取って貰っていた。
「はぁ、やっぱり儲けは少ないな……」
いつものように冒険者ギルドで露店をして売ってる方が利益は大きいので本当はそうしたかった太助であるが旅の資金捻出の為、買い叩かれる事は分かっていたがポーション取扱店に引き取って貰っていた。
低いレベルで連携が出来始めているカリーナ達が焦れるから急ぎたかったという事が一番の理由だが、引き取って貰った量を太助が露店で捌くには1カ月はかかっただろうと見ている。
つくづく接客業に向いてない自分の適性のなさに項垂れたくなる太助。なにしろ、ティカとリンのどちらにも負けている事実がヒシヒシと感じられ泣きたくなる今日この頃のようだ。
「さて、今から行けば、まだカリーナ達の依頼中に間に合うかな?」
今日はカリーナ達は北門を抜けた先の森でウサギ狩りと木こりがイノシシに襲われる事件が頻発してるので討伐を一緒に受けて出ていた。
駆け出しには少し辛いイノシシであるが巣穴も分かっている事もあり、カリーナ達でも問題はないだろうとミラーが許可を出したらしい。
本当にカリーナ達は最低限な事が出来てるのかの最後の抜き打ちテストをする為に太助は屋根に飛び乗り、最短距離で北門を目指して走り出した。
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「いたいた、丁度良い所に来たみたいだ」
覚えのある気配を追って森の中を走って向かった先で太助はカリーナ達が洞穴から少し離れた草むらから顔を覗かせているのを発見した。
4人に気付かれない距離を維持して見つめているとカリーナとエンティが主で身ぶり手ぶりで何かを指示を出している。
2人の視線が集中させる先はテルルで緊張した顔をして頷いているのが見える。
「さて、お手並み拝見しようかな?」
そう言って眺める太助は巣穴だと思われる洞窟の出口付近の地面の土の色がおかしい事に気付き、テルルがカバンから薬瓶を取り出すのを見て4人が考えている事を理解して笑みを浮かべる。
2人に行くように言われたテルルが恐る恐る洞穴に近づき、色の変わった地面を避けるようにして洞穴の前にやってくると可愛らしい掛け声と共に中に薬瓶を放る。投げたと同時に逃げ出すのを見たエンティが洞穴と土の色が変わった場所の対抗線上で刀を構え、その後ろに張り付くようにしてカリーナが精神集中を始める。
その更に背後では日の丸が描かれた扇子を両手に持って踊るミンティア。
「定石で悪くないけどカリーナはもっと後ろでもいいね。多分、コントロールの不安から少しでも近くという心理なんだろうけど……それは慣れかな。それはそうとあの扇子、シホーヌさんも持ってるのを見た事あるけど、あの扇子は天界で人気なのかな? 踊ってる意味も分からないし」
逃げ帰って来たテルルがカリーナ達の背後、踊るミンティアの所まで行くと洞穴から白い煙が噴き出す。テルルが投げたのは空気と触れ合うと煙を発する物だ。だが、魔女であるテルルのお手製のはずなので煙が出るだけではないだろう。
すると、飛び出してくるイノシシ、それもかなり大きな全長3mはあろうかとイノシシを見て4人が面喰った顔をしたのを見て、どうやら想定してたのはもっと小さいイノシシだったようだ。
「くっ、やる事は一緒だ! 予定通りにやるぞ!」
そう叫ぶエンティが威圧を前方にいるイノシシに発する。
エンティの威圧に反応したイノシシが真っ直ぐにエンティ目掛けて突進をする。
イノシシの動きを見て太助が一瞬、眉を寄せるがすぐに納得した顔を見せる。
「なるほど、煙の中にマヒを促すモノでも混ぜ込んでたみたいだね」
それでもあれだけの巨体が走ると凄く威圧感があるようでカリーナが魔法の発動を急ごうとするのを後ろで見てたテルルが止める。
「待ってください! 落とし穴に落ちた所にエンティさんが一撃入れた後でも大丈夫ですぅ。間違いなく、一瞬、動きを止められるはず……ですぅ?」
「最後まで自信を持って言ってよねっ!!」
咄嗟に撃ちそうになっていたアイスブレットを留まらせる。
言い合う2人の前にいるエンティが気を吐く。
「必ず、私が動きを止める! タイミングはちゃんと合わせろ!」
「分かってるわよ、それと私が年上なんだから少しぐらい言葉使いを……ああ、もう!」
エンティに言葉使いで文句を言おうとするがイノシシが目前、土の色が変わった場所の前、落とし穴の場所に来たので黙って集中する。
そして、見事に落ちたイノシシであったが想定より大きかったせいか、体半分見えてる状態でぶつかって止まる。
止まったイノシシに飛びかかり、上段から刀の峰で脳天に叩きつける。
イノシシが悲鳴を上げるが無視してエンティが後方に飛びながらイノシシの悲鳴に負けずに叫ぶ。
「今だ、カリーナ!」
「カリーナさんでしょ! 『アイスブレット』」
飛び退いたエンティの先にいたイノシシの眉間に当たったアイスブレットは貫通されたイノシシの巨体は落とし穴の淵に凭れかかるように倒れる。
しばらくイノシシを見つめていたカリーナ達が仕留めたと確信した瞬間、歓声を上げて喜び合うのを太助は目を細めて見つめる。
見つめる先で3人に詰め寄られるようにするミンティアを見て首を傾げる。
「仕留められたのはいいんだけど、貴方は何をしてたの?」
「そうだ、本来なら私達にシールドを張る準備をしてたはずだが?」
「えと、えと、あの踊りに意味があるんですよねっ? ねっ?」
ミンティアはテルルの言葉に頷いてみせる。
「私が無駄にシールドを張る意味はないと判断して後ろで挑発の舞をしてました。そして、今がおめでとうの舞!」
それを聞かされた3人が膝から力が抜けたようにコケそうになる。遠くで盗み聞きしていた太助も転びそうになるが耐える。
意味が分からないと顔を見合わせる3人が諦めたようでイノシシを穴から引きずり出す。
エンティの肉体強化は気から魔力に変えているがテツの指導の下で基礎がしっかりしてあり、たいした苦もなく引きずり上げる。そして近くにある木にロープを使って吊るし上げて手慣れた動きで血抜きを始める。
ちなみにエンティは故郷から出てダンガに来てからテツの道場の近くでテント暮らしをしてたらしく、意外にたくましい生活をしていたようだ。
その後ろでは『頑張れの舞』と言って踊るのに苛立った手伝っていたカリーナが叫ぼうとした時、手にしていたナイフで浅く指先を切る。
切った指を思わず口に咥えようとしたカリーナが思い出したように切った指を踊るミンティアに突き出す。
「癒しをかけてよ?」
「ん~、これぐらいなら舐めておけば治ります」
と言うと踊りを再開するミンティアに地団太を踏むカリーナが怒鳴る。
「じゃ、貴方のこのパーティでの仕事は何なのよ!」
「必要に応じて、回復、防御魔法を行使する事です。神の奇跡は乱用するものではありません……後、踊る事と食べる事です」
顔を真っ赤にして怒るカリーナとその背後でヤレヤレと溜息を洩らして首を横に振るエンティ、その3人を眺めてオロオロするテルルを見て太助は頭をコリコリと掻く。
「これはまだ王都に行かせる訳には行かなさそうだな……問題は早めに発覚する事は良い事だけど、さて、どうしたものやら」
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