15 / 365
1章 DT、父親になる
14話 人差し指が唸る時です
しおりを挟む
2日前に5の冒険者になった雄一は、借金を抱えて帰ってきた、と説明した。
するとシホーヌにはマヌケ扱いされた事に怒りを覚え、レイアのサイテェー、と言われた言葉に打ちのめされ、アリアの頭ナデナデに癒され、気合いを新たに立ち上がった。
名誉挽回、とばかりに勇んで冒険者としての初仕事をする為に、冒険者ギルドにやってきた雄一は生温かい視線で出迎えられ、その理由を知った雄一が暴走する事件が発生するが割愛する。
依頼書を眺める雄一は燃えていた。
可愛い娘2人の尊敬と、パパとしての呼んで貰える未来を勝ち取る為に……
前回行った森とは違う場所にゴブリンの巣があるというので、駆除して欲しいという依頼を見つけた雄一は、叩きつけるようにカウンターに置く。
これは複数パーティでやる依頼だという説明するミラーの話を適当に聞き流してホーラと2人で雄一は鼻息荒くして出発した。
結果を言うと、武器を持たぬ雄一がゴブリンの武器を奪いながら戦う無双により、ゴブリンの巣にいたゴブリン達は壊滅する事になる。
しかも、その中にはゴブリンキング、ゴブリンクィーンも存在していたようだが、今のあの双子に「凄い!」と言われる事を夢想する雄一にとって、雑魚ゴブリンとなんら変わる事はなく、あっさりと狩られていた。
現地で、近くの村の男の村人が隠れて着いてきてるのに気付いていた雄一は「もう壊滅させたから心配するな」といる方向に向かって叫ぶ。
すると物影から出てきた村人は、深く雄一に礼をすると踵を返して走って行くのを雄一とホーラは見送った。
そして、壊滅させたゴブリンの討伐部位を剥ぎ取って、帰る時に何パーティかとすれ違う。
だが、雄一は気にせず街に戻り、冒険者ギルドへと報告にやってきた。
帰って来た雄一が討伐部位をミラーに提出して検分が済んだ後、ミラーの言葉に雄一は「何故だ!」と叫ぶ。
その叫ばした言葉に対する返事はこうである。
「張り切り過ぎです。後追いで行ったパーティが完全な無駄足ではありませんか。明日は依頼を受けさせませんので」
反省してください、と言われて、報酬が入った袋をカウンターに置く。
「金貨2枚と銀貨50枚になります。天引きする予定だった全額を既に引いてありますので、もう借金はないのですから、少しは考えてやってください」
放心する雄一を眺めていたホーラが溜息を吐いて、代わりに報酬を受け取り、雄一を励ます。
「大丈夫さ、ゴブリンの巣を壊滅させたって言えば、レイアもきっと、凄い! て言ってくれるさ」
本当にか? と言う雄一の腰を後ろから押して、ホーラが「大丈夫さ」と何度も言いながら冒険者ギルドを出ていく姿をミラーの溜息が見送った。
▼
そして……次の日
「で、今日は何をされに? 今日は依頼を受理しませんよ?」
呆れた顔をしたミラーにカウンターに被り付くようにして、雄一が睨んでくるがまったく効果はないようであった。
「カッコイイ武器が売ってる店を紹介してくれ!」
鬼気迫る顔をした雄一が放った言葉に、ミラーは、はぁ? と疑問の声を上げる。
「強い武器じゃなくて、カッコイイ武器ですか?」
「そう、女の子が溜息を零すような、カッコイイ武器を作る鍛冶師でも可!」
何を言っているんだ? と言う顔をしたミラーが、雄一の隣で頭を抱えるホーラに説明を求める。
「昨日のゴブリンの巣の壊滅させた話を家の双子ちゃんに、ユウがいかに戦ったかを説明したら、ゴブリンの武器を奪って、戦った件で、『カッコ悪い』と言われた言葉がショックで、カッコイイ武器を求めてるって訳さ」
「馬鹿ですね」
ばっさりと切り返してくるミラーに「何も言い返せないさ……」と溜息を吐くホーラ。
雄一は「馬鹿とはなんだ!」と憤り、「これは切実な問題だ!」とカウンターを叩く。
更に、にじり寄ってこようとする雄一に、頭を冷やせ、と言おうと口を開こうとしたミラーだったが、口を閉ざすと顎に手を当てて考え始める。
焦れてきてる雄一をジッと見つめるミラーが口を開く。
「1つ……心当たりが、1つだけなくはありません」
「どこだっ! 紹介してくれ」
焦る雄一に、焦るな、とばかりに掌を向けて、黙らせると手を降ろし話し始める。
「ダンガに有名な鍛冶師が、街の北東に住んでいます。その者に武器を打たせる事ができれば、素晴らしい武器を造ってくれるでしょう。勿論、見栄えも保障します」
おお! と感嘆する雄一の隣で、眉間に皺を寄せるホーラがミラーに問う。
「あの客を選ぶ事で有名で、ある時をキッカケに趣味以外では打たなくなったアイツを紹介してるの?」
「ええ、あの者なら、ユウイチ様の要望に応える事もできるでしょう」
雄一を見つめながら言うミラーに
「アタイも噂だけでしか知らないけど、それってかなり無茶ぶりだと思うさ」
「そうでしょうか、私はユウイチ様ならばと思います」
そう、貴方の問題を解決した時のように、なんでもない顔をしてやってくれるのでは、と……言葉にせず胸の内にしまう。
「ユウイチ様、そこには若い女性がおり、スタイルが良く、特にあの谷間が素晴らしい……ウチの受付嬢と並べても遜色がない美少女がいまして……」
「よし、細かい事は向こうで悩むから、場所を教えてくれ、すぐに向かうからぁ!!!」
雄一の魂のシャウトであった。
もう、分かり易いぐらいの誘導だったが、カッコイイ武器と美少女のコンボを食らっている雄一には、罠だろうがなんだろうが、前に進むのみである。というより、止まれない。
「ユウ……サイテェーさ……」
レイアに続き、ホーラにもサイテェーを貰う事になったが、目先の欲に塗れている雄一の耳には届いてなかったのは、幸運だったのかどうかは不明である。
ミラーに紹介された街の北東にある店に向かう為に、冒険者ギルドを出た雄一は、呆れて歩くのが遅くなっているホーラを急かし、スキップをしかねないほど浮かれていた。
「なぁ、ホーラ。どんな武器を頼もうか? 俺って基本的にどんな武器でも使えるから、やっぱり、その鍛冶師の得意分野を聞いて頼むのがいいかな?」
「好きにするがいいさ、自分の好みでいいんじゃないの?」
投げやりな言い方をするホーラにも気付かないほど、浮かれている雄一は、やっぱり王道は片手剣かなと素振りをしながら歩く。
それを見ているホーラが少し距離を空けた事も気付かずに、
「やっぱり二刀流か? こう、心を揺さぶるモノがあるよな」
普通に持つほうか? 逆手持ちか? と嬉しそうにする雄一から更に離れるホーラ。
未だに、ホーラとの色んな意味での距離に気付かない雄一を眺めていたホーラは思う。
普段はこんな間抜けで、双子の事で一喜一憂する残念さを滲ませる男なのに、いざ、戦闘となるとスイッチが切り替わったのが分かるほど、精悍な顔を見せる。
普段の抜けた雄一も暖かくていいが、戦闘中のかっこいい雄一を知ると残念さとの格差を感じてしまい、とても勿体なく感じてしまう自分に気付いていた。
戦う時に精悍な雄一ではあるが、決して戦闘狂という訳ではないのは事はホーラは、ちゃんと理解していた。
雄一は、いつでも何かの為に戦い、誰かを守る為の戦いをする。
確かに、今回は、双子に誇られる男になりたいという欲望もあったが、ゴブリン退治は、少々、緊急性がある依頼であった。
近くにある村が、そのゴブリン達のエサ場として、襲われていたのである。
本当なら、双子にカッコ良いとこを見せるなら、ドラゴンぐらいの依頼がないのかと、来る途中ずっとブツブツ言う雄一にウンザリしていたぐらい、見栄えのする依頼を受ける気満々であった。
しかし、受けたのは依頼料も普通に考えても少なく、割に合わない仕事であったゴブリンの巣の駆除。
依頼書には、達成者には冒険者ギルドの評価ポイントが多く付きますと書かれているが、正直、雄一はそんな優遇を受けなくても、あっという間に駆け上がるのは、ホーラじゃなくても、受付のミラー、2日前の雄一を見ている者なら誰でも分かった。
それを分かっているミラーも、最初は止めた。
これは、評価ポイントが危ない者達が受けるから、雄一が受ける必要はないと。
そう言ってくるミラーに、依頼書の張り付けた日が書かれた所を指差した雄一は、
「昨日の日付だが、何パーティが動くと言ってきてるんだ?」
「……まだ、参加を表明したパーティはありません」
苦々しく言うミラーに、依頼書を更に差し出した雄一は口の端を上げて言う。
「なら、俺達が1パーティ目だ」
そう言って、ホーラの手を取る雄一が冒険者ギルドを出ようとするのを待つように言うミラー。
「冒険者が来てくれると信じ、願いながら、震える夜を既に1晩過ごしている。もしかしたら、家族が隣人が食い殺されるところを見てるかもしれない奴らに、渋々、受けてくれる者が集まるのを待ってくれ……とでも言うつもりか?」
そう言われたミラーが、言葉に詰まるのを見て、苦笑いをした雄一がミラーに軽く頭を下げる。
「悪い、嫌な言い方をした。依頼の受理、よろしくな」
そう言うと、今度こそ、冒険者ギルドを出ていった。
出た所でホーラは、何故、ミラーが言うように止めていい依頼を受けたんだ? と聞くと、照れた顔をした雄一は、
「もしかしたら、その村の子供達の中に、レイアとアリアの友達になる奴がいるかもしれないだろ?」
鼻の頭を掻きながら言う雄一を見つめたホーラは思う。この男に家族と認められた幸運を。
未だ、距離を空けられている事を気付かずに、あれこれと変な構えをしながら歩く男を見つめる。
そういうカッコイイ所を双子達に話せば、褒め称えられるだろうに、雄一は一言も話そうとはしない。
何度かホーラが言おうかと思ったが、途中で気付いた。
雄一は本当にそれが特別でカッコイイ事とは思っていない事に。
だから、ホーラは自分の胸に秘める事にした。いつか、双子が自分達で気付くその日まで。
そう思うと、このボケた事を先程からやっている雄一が、とても愛しく見えてきたホーラは、仕方がないとばかりに、雄一に距離の事を気付かれる前に隣に戻る。
「分かった、分かったから、さっさと紹介された店に向かうさ」
ホーラは雄一の背中を押しながら、笑みを浮かべて、目的地へと急いだ。
▼
目的地に着いた雄一は、遠い目をしながら店の前で突っ立っていた。
「ここで間違いないのか?」
「ああ、入った事はないけど、結構有名だからアタイも知ってるところだから、間違いないさ」
アタイの事がそんなに信用できないの? と睨むホーラに、本来なら即答で、そんな訳ない! と切り返すところだと分かってはいるが、雄一は、ホーラから店へと視線を向けて、むむむ……と唸る。
「明らかに、店の名前が鍛冶臭がまったくしなくて、まったく嗅ぎたくない匂い、ワセリンの匂いがしそうなんだが?」
「ワセリン? まあ、確かに、珍しい名前さ。だからこそ、ここで合ってると自信あるさ」
そこの店の入り口の上に掲げられた看板には、
『マッチョの社交場』
と書かれており、鍛冶臭どころか、するのは汗と筋肉の予感がヒシヒシすると雄一は呟く。
「まあ、入ってみれば分かるさ」
ホーラに背中を押されて、確かに入らない事には分からないと、渋々、中に入って行った。
中に入ると、女性の声で「いらっしゃいませ」と言われ、そちらを2人が向くと雄一が飛び出す。
飛び出した雄一は、カウンターにいる女性の手をそっと手に取ると、男前の顔をして噛まずに言い放つ。
「ずっと前から愛してましたっ!!」
「ええっと、今日、初めてお会いしたはずですが?」
突然の雄一の愛の告白をされた女性は、泣きホクロのある頬に一滴の汗を流しながら、空いた手で頬に添えて困ったように、スリングに石を入れるホーラを見つめる。
頷いたホーラがスリングを振って、鈍器代わりにして雄一の頭にぶつける。
「イタ、痛くないっ!!」
邪魔されてたまるか! と気合いで乗り越える雄一は、目の前の女性を見つめる。
作業着と兼用なのか、タンクトップにオーバーオールではちきれそうな胸が見えそうで見えない。ノーブラのようで、雄一の顔が更に男前度があがる。
雄一のように無造作に長い髪を後ろで縛っているが、雄一と違って、それが色香を漂わせている。
それをブーストさせるように大きな目の垂れ目な感じが後押ししていた。
痛みを凌駕する雄一に戦慄を感じずにはいられないホーラだったが、目を覚まさせる為にもっと景気のいいモノを探し始める。
「お嬢さん、お名前は?」
「はぁ、サリナと申します」
良いお名前ですね! と笑顔で見つめながら、雄一は心の中で、チートぉぉ、仕事しろ!! と叫んでいると、見つめるサリナから雄一へとデータが流れ込むのを感じると、思わず、「キタァ!」と小声ではあるが洩らしてしまう。
○サリナ 17歳 スリーサイズ:必要ならタップしてください
槌:B
アビリティ:目利き LV3 鍛冶 LV2
血走った目をした雄一は、震える人差し指をある場所へと進ませる。
「ポチっとなっ!」
○サリナ 17歳 スリーサイズ:えっちぃのは駄目なのですぅ!
槌:B
アビリティ:目利き LV3 鍛冶 LV2
「あのアホ毛がぁ―――――!!」
雄一は、項垂れて膝を着き、地面に拳を叩きつける。
悔し涙を流す雄一を眺める2人はお互い目を合わせて溜息を零す。
雄一に声をかけても無駄と思ったらしいサリナはホーラに事情を聞く事にした。
「何をお求めになられに?」
ちなみに、「私は売り物じゃありませんよ?」と苦笑するサリナに呆れるホーラが「分かってるさ」と返す。
「冒険者ギルドの受付のミラーに紹介されてきたさ」
「となると、用がおありになるのは、ミチルダさんのほうのようですね」
ミチルダ、と聞いた雄一は涙を拭い、希望に目を輝かす。
「美少女は1人じゃなかったのかぁ!」
さて、どうでしょ? と笑みを浮かべるサリナは、店の奥に向かって「ミチルダさん」と大きな声を上げて呼ぶ。
店の奥から出てきたモノを見た雄一は、腹の底から叫ぶ。
「チェ―――ンジでお願いします!!!」
するとシホーヌにはマヌケ扱いされた事に怒りを覚え、レイアのサイテェー、と言われた言葉に打ちのめされ、アリアの頭ナデナデに癒され、気合いを新たに立ち上がった。
名誉挽回、とばかりに勇んで冒険者としての初仕事をする為に、冒険者ギルドにやってきた雄一は生温かい視線で出迎えられ、その理由を知った雄一が暴走する事件が発生するが割愛する。
依頼書を眺める雄一は燃えていた。
可愛い娘2人の尊敬と、パパとしての呼んで貰える未来を勝ち取る為に……
前回行った森とは違う場所にゴブリンの巣があるというので、駆除して欲しいという依頼を見つけた雄一は、叩きつけるようにカウンターに置く。
これは複数パーティでやる依頼だという説明するミラーの話を適当に聞き流してホーラと2人で雄一は鼻息荒くして出発した。
結果を言うと、武器を持たぬ雄一がゴブリンの武器を奪いながら戦う無双により、ゴブリンの巣にいたゴブリン達は壊滅する事になる。
しかも、その中にはゴブリンキング、ゴブリンクィーンも存在していたようだが、今のあの双子に「凄い!」と言われる事を夢想する雄一にとって、雑魚ゴブリンとなんら変わる事はなく、あっさりと狩られていた。
現地で、近くの村の男の村人が隠れて着いてきてるのに気付いていた雄一は「もう壊滅させたから心配するな」といる方向に向かって叫ぶ。
すると物影から出てきた村人は、深く雄一に礼をすると踵を返して走って行くのを雄一とホーラは見送った。
そして、壊滅させたゴブリンの討伐部位を剥ぎ取って、帰る時に何パーティかとすれ違う。
だが、雄一は気にせず街に戻り、冒険者ギルドへと報告にやってきた。
帰って来た雄一が討伐部位をミラーに提出して検分が済んだ後、ミラーの言葉に雄一は「何故だ!」と叫ぶ。
その叫ばした言葉に対する返事はこうである。
「張り切り過ぎです。後追いで行ったパーティが完全な無駄足ではありませんか。明日は依頼を受けさせませんので」
反省してください、と言われて、報酬が入った袋をカウンターに置く。
「金貨2枚と銀貨50枚になります。天引きする予定だった全額を既に引いてありますので、もう借金はないのですから、少しは考えてやってください」
放心する雄一を眺めていたホーラが溜息を吐いて、代わりに報酬を受け取り、雄一を励ます。
「大丈夫さ、ゴブリンの巣を壊滅させたって言えば、レイアもきっと、凄い! て言ってくれるさ」
本当にか? と言う雄一の腰を後ろから押して、ホーラが「大丈夫さ」と何度も言いながら冒険者ギルドを出ていく姿をミラーの溜息が見送った。
▼
そして……次の日
「で、今日は何をされに? 今日は依頼を受理しませんよ?」
呆れた顔をしたミラーにカウンターに被り付くようにして、雄一が睨んでくるがまったく効果はないようであった。
「カッコイイ武器が売ってる店を紹介してくれ!」
鬼気迫る顔をした雄一が放った言葉に、ミラーは、はぁ? と疑問の声を上げる。
「強い武器じゃなくて、カッコイイ武器ですか?」
「そう、女の子が溜息を零すような、カッコイイ武器を作る鍛冶師でも可!」
何を言っているんだ? と言う顔をしたミラーが、雄一の隣で頭を抱えるホーラに説明を求める。
「昨日のゴブリンの巣の壊滅させた話を家の双子ちゃんに、ユウがいかに戦ったかを説明したら、ゴブリンの武器を奪って、戦った件で、『カッコ悪い』と言われた言葉がショックで、カッコイイ武器を求めてるって訳さ」
「馬鹿ですね」
ばっさりと切り返してくるミラーに「何も言い返せないさ……」と溜息を吐くホーラ。
雄一は「馬鹿とはなんだ!」と憤り、「これは切実な問題だ!」とカウンターを叩く。
更に、にじり寄ってこようとする雄一に、頭を冷やせ、と言おうと口を開こうとしたミラーだったが、口を閉ざすと顎に手を当てて考え始める。
焦れてきてる雄一をジッと見つめるミラーが口を開く。
「1つ……心当たりが、1つだけなくはありません」
「どこだっ! 紹介してくれ」
焦る雄一に、焦るな、とばかりに掌を向けて、黙らせると手を降ろし話し始める。
「ダンガに有名な鍛冶師が、街の北東に住んでいます。その者に武器を打たせる事ができれば、素晴らしい武器を造ってくれるでしょう。勿論、見栄えも保障します」
おお! と感嘆する雄一の隣で、眉間に皺を寄せるホーラがミラーに問う。
「あの客を選ぶ事で有名で、ある時をキッカケに趣味以外では打たなくなったアイツを紹介してるの?」
「ええ、あの者なら、ユウイチ様の要望に応える事もできるでしょう」
雄一を見つめながら言うミラーに
「アタイも噂だけでしか知らないけど、それってかなり無茶ぶりだと思うさ」
「そうでしょうか、私はユウイチ様ならばと思います」
そう、貴方の問題を解決した時のように、なんでもない顔をしてやってくれるのでは、と……言葉にせず胸の内にしまう。
「ユウイチ様、そこには若い女性がおり、スタイルが良く、特にあの谷間が素晴らしい……ウチの受付嬢と並べても遜色がない美少女がいまして……」
「よし、細かい事は向こうで悩むから、場所を教えてくれ、すぐに向かうからぁ!!!」
雄一の魂のシャウトであった。
もう、分かり易いぐらいの誘導だったが、カッコイイ武器と美少女のコンボを食らっている雄一には、罠だろうがなんだろうが、前に進むのみである。というより、止まれない。
「ユウ……サイテェーさ……」
レイアに続き、ホーラにもサイテェーを貰う事になったが、目先の欲に塗れている雄一の耳には届いてなかったのは、幸運だったのかどうかは不明である。
ミラーに紹介された街の北東にある店に向かう為に、冒険者ギルドを出た雄一は、呆れて歩くのが遅くなっているホーラを急かし、スキップをしかねないほど浮かれていた。
「なぁ、ホーラ。どんな武器を頼もうか? 俺って基本的にどんな武器でも使えるから、やっぱり、その鍛冶師の得意分野を聞いて頼むのがいいかな?」
「好きにするがいいさ、自分の好みでいいんじゃないの?」
投げやりな言い方をするホーラにも気付かないほど、浮かれている雄一は、やっぱり王道は片手剣かなと素振りをしながら歩く。
それを見ているホーラが少し距離を空けた事も気付かずに、
「やっぱり二刀流か? こう、心を揺さぶるモノがあるよな」
普通に持つほうか? 逆手持ちか? と嬉しそうにする雄一から更に離れるホーラ。
未だに、ホーラとの色んな意味での距離に気付かない雄一を眺めていたホーラは思う。
普段はこんな間抜けで、双子の事で一喜一憂する残念さを滲ませる男なのに、いざ、戦闘となるとスイッチが切り替わったのが分かるほど、精悍な顔を見せる。
普段の抜けた雄一も暖かくていいが、戦闘中のかっこいい雄一を知ると残念さとの格差を感じてしまい、とても勿体なく感じてしまう自分に気付いていた。
戦う時に精悍な雄一ではあるが、決して戦闘狂という訳ではないのは事はホーラは、ちゃんと理解していた。
雄一は、いつでも何かの為に戦い、誰かを守る為の戦いをする。
確かに、今回は、双子に誇られる男になりたいという欲望もあったが、ゴブリン退治は、少々、緊急性がある依頼であった。
近くにある村が、そのゴブリン達のエサ場として、襲われていたのである。
本当なら、双子にカッコ良いとこを見せるなら、ドラゴンぐらいの依頼がないのかと、来る途中ずっとブツブツ言う雄一にウンザリしていたぐらい、見栄えのする依頼を受ける気満々であった。
しかし、受けたのは依頼料も普通に考えても少なく、割に合わない仕事であったゴブリンの巣の駆除。
依頼書には、達成者には冒険者ギルドの評価ポイントが多く付きますと書かれているが、正直、雄一はそんな優遇を受けなくても、あっという間に駆け上がるのは、ホーラじゃなくても、受付のミラー、2日前の雄一を見ている者なら誰でも分かった。
それを分かっているミラーも、最初は止めた。
これは、評価ポイントが危ない者達が受けるから、雄一が受ける必要はないと。
そう言ってくるミラーに、依頼書の張り付けた日が書かれた所を指差した雄一は、
「昨日の日付だが、何パーティが動くと言ってきてるんだ?」
「……まだ、参加を表明したパーティはありません」
苦々しく言うミラーに、依頼書を更に差し出した雄一は口の端を上げて言う。
「なら、俺達が1パーティ目だ」
そう言って、ホーラの手を取る雄一が冒険者ギルドを出ようとするのを待つように言うミラー。
「冒険者が来てくれると信じ、願いながら、震える夜を既に1晩過ごしている。もしかしたら、家族が隣人が食い殺されるところを見てるかもしれない奴らに、渋々、受けてくれる者が集まるのを待ってくれ……とでも言うつもりか?」
そう言われたミラーが、言葉に詰まるのを見て、苦笑いをした雄一がミラーに軽く頭を下げる。
「悪い、嫌な言い方をした。依頼の受理、よろしくな」
そう言うと、今度こそ、冒険者ギルドを出ていった。
出た所でホーラは、何故、ミラーが言うように止めていい依頼を受けたんだ? と聞くと、照れた顔をした雄一は、
「もしかしたら、その村の子供達の中に、レイアとアリアの友達になる奴がいるかもしれないだろ?」
鼻の頭を掻きながら言う雄一を見つめたホーラは思う。この男に家族と認められた幸運を。
未だ、距離を空けられている事を気付かずに、あれこれと変な構えをしながら歩く男を見つめる。
そういうカッコイイ所を双子達に話せば、褒め称えられるだろうに、雄一は一言も話そうとはしない。
何度かホーラが言おうかと思ったが、途中で気付いた。
雄一は本当にそれが特別でカッコイイ事とは思っていない事に。
だから、ホーラは自分の胸に秘める事にした。いつか、双子が自分達で気付くその日まで。
そう思うと、このボケた事を先程からやっている雄一が、とても愛しく見えてきたホーラは、仕方がないとばかりに、雄一に距離の事を気付かれる前に隣に戻る。
「分かった、分かったから、さっさと紹介された店に向かうさ」
ホーラは雄一の背中を押しながら、笑みを浮かべて、目的地へと急いだ。
▼
目的地に着いた雄一は、遠い目をしながら店の前で突っ立っていた。
「ここで間違いないのか?」
「ああ、入った事はないけど、結構有名だからアタイも知ってるところだから、間違いないさ」
アタイの事がそんなに信用できないの? と睨むホーラに、本来なら即答で、そんな訳ない! と切り返すところだと分かってはいるが、雄一は、ホーラから店へと視線を向けて、むむむ……と唸る。
「明らかに、店の名前が鍛冶臭がまったくしなくて、まったく嗅ぎたくない匂い、ワセリンの匂いがしそうなんだが?」
「ワセリン? まあ、確かに、珍しい名前さ。だからこそ、ここで合ってると自信あるさ」
そこの店の入り口の上に掲げられた看板には、
『マッチョの社交場』
と書かれており、鍛冶臭どころか、するのは汗と筋肉の予感がヒシヒシすると雄一は呟く。
「まあ、入ってみれば分かるさ」
ホーラに背中を押されて、確かに入らない事には分からないと、渋々、中に入って行った。
中に入ると、女性の声で「いらっしゃいませ」と言われ、そちらを2人が向くと雄一が飛び出す。
飛び出した雄一は、カウンターにいる女性の手をそっと手に取ると、男前の顔をして噛まずに言い放つ。
「ずっと前から愛してましたっ!!」
「ええっと、今日、初めてお会いしたはずですが?」
突然の雄一の愛の告白をされた女性は、泣きホクロのある頬に一滴の汗を流しながら、空いた手で頬に添えて困ったように、スリングに石を入れるホーラを見つめる。
頷いたホーラがスリングを振って、鈍器代わりにして雄一の頭にぶつける。
「イタ、痛くないっ!!」
邪魔されてたまるか! と気合いで乗り越える雄一は、目の前の女性を見つめる。
作業着と兼用なのか、タンクトップにオーバーオールではちきれそうな胸が見えそうで見えない。ノーブラのようで、雄一の顔が更に男前度があがる。
雄一のように無造作に長い髪を後ろで縛っているが、雄一と違って、それが色香を漂わせている。
それをブーストさせるように大きな目の垂れ目な感じが後押ししていた。
痛みを凌駕する雄一に戦慄を感じずにはいられないホーラだったが、目を覚まさせる為にもっと景気のいいモノを探し始める。
「お嬢さん、お名前は?」
「はぁ、サリナと申します」
良いお名前ですね! と笑顔で見つめながら、雄一は心の中で、チートぉぉ、仕事しろ!! と叫んでいると、見つめるサリナから雄一へとデータが流れ込むのを感じると、思わず、「キタァ!」と小声ではあるが洩らしてしまう。
○サリナ 17歳 スリーサイズ:必要ならタップしてください
槌:B
アビリティ:目利き LV3 鍛冶 LV2
血走った目をした雄一は、震える人差し指をある場所へと進ませる。
「ポチっとなっ!」
○サリナ 17歳 スリーサイズ:えっちぃのは駄目なのですぅ!
槌:B
アビリティ:目利き LV3 鍛冶 LV2
「あのアホ毛がぁ―――――!!」
雄一は、項垂れて膝を着き、地面に拳を叩きつける。
悔し涙を流す雄一を眺める2人はお互い目を合わせて溜息を零す。
雄一に声をかけても無駄と思ったらしいサリナはホーラに事情を聞く事にした。
「何をお求めになられに?」
ちなみに、「私は売り物じゃありませんよ?」と苦笑するサリナに呆れるホーラが「分かってるさ」と返す。
「冒険者ギルドの受付のミラーに紹介されてきたさ」
「となると、用がおありになるのは、ミチルダさんのほうのようですね」
ミチルダ、と聞いた雄一は涙を拭い、希望に目を輝かす。
「美少女は1人じゃなかったのかぁ!」
さて、どうでしょ? と笑みを浮かべるサリナは、店の奥に向かって「ミチルダさん」と大きな声を上げて呼ぶ。
店の奥から出てきたモノを見た雄一は、腹の底から叫ぶ。
「チェ―――ンジでお願いします!!!」
2
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜
月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。
※この作品は、カクヨムでも掲載しています。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る
伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。
それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。
兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。
何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる