異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

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1章 DT、父親になる

26話 銅貨10枚の価値はプライスレス

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 雄一達は、冒険者ギルドへ向かう為、メインストリートに出ている市場を通って向かっていた。

 市場をミュウを肩車して歩いていると、色んな人の視線を集めるが当人はまったく気にした風ではなく、屋台で売られている食べモノを見るのに必死である。

「ユーイ、あの黄色い粒々の棒みたいなの焼いてるの何?」
「ん? ああ、あれは多分、焼きトウモロコシじゃないか?」

 醤油が焦げる匂いが香ばしくて、4人は目を奪われる。

「ユーイ、今日のお昼にアレ作って!」
「そうだな……考えておく」

 ミュウは、「やったー」と嬉しそうに騒ぐが横を歩くホーラは、雄一に言ってくる。

「ユウ、今のところ、作る気ないでしょ?」
「そんな事ないぞ? 安くていいのがあったらするつもりはある」

 完全に主夫目線な雄一のセリフに、ホーラとアクアが苦笑いをする。

 雄一の肩の上で、お昼は焼きトウモロコシと信じて喜ぶミュウを残念そうに見つめる。

 ホーラとアクアが安くて良いトウモロコシがある事を祈りながら、冒険者ギルドへと向かって歩いた事は言うまでもなかった。





 冒険者ギルドに入ると、受付にミラーがいるのに気付いた雄一が、舌打ちしたぐらいしか問題もなく、依頼の張られている場所へとやってくる。

 雄一達は、依頼書を眺めながら、何かないかな、と見ていると、ある依頼が目に止まり読んでみる。


『村の近くにモンスターの群れが住み付いたようで対応に困っています。調査の後、必要なら討伐して頂きたい。調査費用、銀貨2枚。討伐の場合は、モンスターの種類と規模で要相談。ソラの村長、テテロ』


「なるほど、これなんか、いいかもな」

 依頼書が張られている横に張り付けられた周辺地図に書かれた、ソラ村を見て、ここから往復1日ぐらいで行けそうだから、何かあれば帰りやすいという所がいいと雄一は思う。

 何より、困ってそうだから、これにしようと思い、ホーラに問いかける。

「依頼、俺が決めちゃっていいか?」
「ああ、アタイは、ユウに着いていくさ」

 ありがとうな、とホーラの頭を撫でながら、今の依頼書を取るとホーラに手渡し、どこまで読めると問いかけながら受付へと歩き出す。

 ホーラが読めないというところを、そこはな、と指を指しながら言葉にして教えながら向かった。


 受付に行くと、雄一はミラーに依頼書を差し出す。

「ユウイチ様、おはようご……いえ、少し遅い時間ですね。こんにちは、次はこの依頼を受けになられるのですか?」

 依頼書を手にしたミラーは、依頼書を読むと、一瞬険しい顔をするが今度は逆に、ホッとした表情をすると雄一を見てくる。

「この依頼をユウイチ様が受けて頂けるのは、大変助かります」
「ん? なんでだ? そこまで難しい依頼じゃないだろ? モンスターの規模と種類次第で大変かもしれないが、そこは無理なら無理と伝えれば、調査費用は出るんだから悪くないだろ?」

 何より、近いから、調査だけなら日帰りも可能じゃないのか? とミラーに問う。

「お恥ずかしい話ですが、調査をした結果で討伐できるようなモンスターなら問題はないのですが、できなかった場合、そんなモンスターの調査したのに、これでは割に合わないと騒ぐ者も少なくないのです」

 酷い者だと、恐喝して調査費用を刎ね上げようとすらする者もいるらしい。

 雄一は、「なるほどな」と頷く。

「そのせいで、村側でも、こういった依頼を出すのに慎重になりますので、ギリギリになりがちです。そこで今朝、張り出した依頼書を、そういった問題を起こさなそうなユウイチ様が受けてくれるのは助かります」

 鉄仮面のように、ふざけてる時以外、滅多に表情の動かないミラーの口許に綻びがあるのを見て、結構切実なんだな、と思いつつ、質問する。

「じゃ、すぐにでも出発したほうがいいのか?」
「いえ、さすがに村の者でも、そこまでギリギリに出してはいないでしょう。とはいえ、明日の朝一ぐらいに出て貰えると、助かります」

 了解、と答えるとミラーが雄一の武器に目をやった後に、再び、雄一を見つめる。

「もしや、それはミチルダ作の武器ですか?」
「おう、いいだろ? かなり気にいった。紹介してくれて、有難うな」

 ミラーは、一度、ホーラに目をやると頷かれると、ハァーと大袈裟に溜息を吐くと口の端を上げて言ってくる。

「ユウイチ様であれば、もしや、とは思ってましたが、まさか、この短期間で譲られるとは思ってませんでしたよ……貴方が何者……それはどうでもいいですね、何を成す方か興味が尽きませんよ」
「そんな大層な人間じゃねぇーよ」

 雄一は、ミラーの言葉に肩を竦める。

「まったく、生意気な事を言うDTもいたものです」
「マジで、俺の柔らかくて傷つきやすいところを遠慮なしに突っつくヤツだなっ!!」

 涙目でミラーの胸倉を掴み睨む雄一を、恐れもせずに、ハッと鼻で笑うミラー。

 雄一とミラーがじゃれるのを見ていた、ホーラとアクアが顔を見合わせて首を傾げると、じゃれてる2人に声をかける。

「ねぇ、ユウ。前にも少し騒ぎになったけど、DTって何なのさ?」
「主様、私も聞いた事がない言葉なのですが?」

 雄一は、追い詰められた表情をするが、踏ん張る。

 それを見ているミラーが死んだ魚のような目を向けながら、ヘラヘラしてるのが横目に入り、ミラーに、「いつか殺す」と殺人予告をするが、まったく堪えた様子はない。

「頼む、そんな無くていい言葉を知らない2人のままでいて……」

 縋る目をしてくる雄一の迫力に圧された2人はコクコクと頷く。

「大丈夫、ミュウは知らない」

 雄一の肩車されながら胸を張るミュウに、雄一は「有難う」と言いつつ、今日のお昼は、トウモロコシにしてやろうと心に決める。

 雄一の肩の上で踊る姿をミラーが眺めながら、首を傾げる。

「ユウイチ様。その子は、ビーンズドック族ではありませんか?」
「はぁ? ビーンズドック族ってなんだ?」

 雄一と話をしても拉致があかないと思ったのか、カウンターに乗り出すようにして、ミュウの背後を覗き込む。

 目を細めたミラーが、腕を組みながら考え込むのを見た雄一は、

「ビーンズドック族って何か問題があるのか?」

 雄一の顔をジッと見つめ、言葉を吟味しているような雰囲気を漂わせたミラーが口を開く。

「いえ、ビーンズドック族には問題はありませんが、それを取り巻く者達に問題があるのです」
「詳しく聞かせてくれ」

 雄一が身を乗り出すようにミラーに詰め寄る。

 ミラーは一度、目を瞑ると話し始める。

 要約すると、こんな感じである。

 ビーンズドック族は、美男美女に生まれてくる確率がとても高い種族である。しかし、これだけの特徴なら他の種族にも結構いるらしい。
 だが、ビーンズドック族には他にない特徴があった。

 成人すると老いずに、死ぬまで同じ若さを維持するのである。この世界のエルフは長命で知られるが、僅かづつではあるが老いる。
 ビーンズドック族は、寿命が70年ほどではあるが、12歳で成長のピークがきて、そこから一切老いずに過ごす。

 過去の権力者達が、この謎を解明したら永遠の若さが得れるのでは? とビーンズドック族を乱獲し、人体実験が繰り返されたらしい。

 だが、どれほどの犠牲が出たか分からないが、何百年の月日を費やして、不可能であるという解を得る事しかできなかったという徒労のお話。

「それで救われたかのように見えた、ビーンズドック族でしたが、愚か者は他にも沢山おり、違う事に着目するのです」

 雄一は、ミラーに先を促す。

「若く、老いない美形であるビーンズドック族を、愛玩動物……いえ、はっきり言いましょう性奴隷として捕まえて売る者がいるのです。そういう意味では、私達、エルフもなくはない話ですが、とても小規模で掴まったのか、自分から行方を晦ましたか分からない数に紛れるほどです」
「何故、ビーンズドック族はエルフと比べて堂々と掴まえる者が後を絶たない?」

 雄一は、拳に力が入り、歯軋りをしそうになるのをギリギリで耐えながら聞き返す。

「エルフをはっきりと掴まえていると分かれば、エルフ全体が纏まって動きます。それこそ、国を1つ滅ぼしかねない勢力として……さすがにそれを恐れない者はいません。しかし、ビーンズドック族は、少数、いえ、稀少部族と言っていいでしょう。お互いを守り合うような力はありません」
「だから、やりたい放題って事かよっ!」

 拳をカウンターに叩きつける。

 ドカァンと激しい音をさせ、カウンターにヒビが入る。

 それを見ていた、近くにいた冒険者達が、雄一を恐れて距離を置く。

 ミラーは、表情を一切変えずに、一呼吸吐くと再び、雄一を見つめて口を開く。

「ユウイチ様、もし、もしもの話です。その集団に心当たりがあって、調べられるかもしれなく、その結果次第で冒険者ギルドに依頼がくるかもしれません。そうしたら、どうされますか?」
「迷わず、受ける」

 ミラーの言葉に迷いも見せない雄一は、間髪をいれずに答える。

「依頼料が銅貨10枚でもですか?」
「そんなに出るのか? 誰かに取られるか心配なほどだ」

 雄一の物言いに、ミラーは笑みを浮かべて言ってくる。

「そうですね、実は私、最近、1度だけエコ贔屓というものをやってみたくてしょうがないのです。分かりました。その依頼が出ましたら、ユウイチ様の為に取り置きをさせて頂きましょう」
「いいねぇ~人生、1度や2度ヤンチャしとかないとな~?」

 雄一とミラーは、顔を突き合わせて、アハハッ、フッフフと笑い合い、傍にいるホーラとアクアは引き攣った笑みを浮かべて、お互い目を合わせて溜息を吐く。

「じゃ、ソラ村の依頼の受理と、その誰かが出してくる依頼の件、頼むな?」

 獰猛な笑みを見せる雄一は、ミラーに背を向けて、手を振って去ろうとした時、呼び止められる。

「少し、お待ちください」
「ん? なんだ?」

 振り返った雄一にミラーは、いつもの死んだ魚の目に戻って、カウンターを指差す。

「木を取りかえるだけで済みますが、タダではありません。銀貨1枚の請求させて頂きます」

 その言葉に項垂れた雄一は、恥ずかしげにミラーに銀貨1枚を払い、肩を落としながら冒険者ギルドを後にする。

 締まらない雄一をクスクスと笑いながら、ホーラとアクアがその後を追って歩き出した。
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