異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

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1章 DT、父親になる

31話 運命?それは破壊したいものです

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 やっと日が昇り始めた頃、雄一達の朝食が済んだ。

 後片付けが済んで、テツと一緒に食堂に戻ってくるとホーラに呼び止められる。

「昨日、冒険者ギルドに行ってきて説明したら、一応、その子、テツだっけ? にも事情を聞きたいって言ってたさ」

 思い出したかのようにホーラは言葉を続ける。

「そうそう、ミラーがユウに話があるから、できれば一緒に来て欲しいって言ってたさ」

 そう付け加えられた雄一は、テツの顔を見合わせて、

「じゃ、一緒に行くか?」
「はい、ユウイチさん」

 嬉しそうに頷くテツと一緒にエプロンを外す。

 外しながら、ホーラに一緒に来るか? と問うと、

「いや、止めとくさ。今日は、言葉の勉強と生活魔法の練習、空き時間があれば、投げナイフの練習がしたいから家に残るさ」

 雄一は、ホーラの言葉の生活魔法の辺りで反応を示す。

「魔法ねぇ~」
「ユウ、どうかしたさ?」

 雄一は、首を横に振り、冒険者ギルドの後に行くつもりだった、マッチョの社交場での用事が増えたな、と思う。

「ユウイチさん、申し訳ないのですが、他の用事が済んだ後、一度、村に行きたいのですが……」
「何か持ってきたい私物でもあるのか?」

 視線を地面に落としたテツが、呟くような声で言ってくる。

「あるか分かりませんが、お父さんの遺体をお母さんの傍に埋めてあげたい」

 雄一は、黙ってテツの頭を乱暴に撫でる。

 ホーラに向き直った雄一が、

「今日は、帰りが遅いから、後は頼めるか?」
「分かったさ、家の事はみんなで頑張るさ」

 頷くホーラに、雄一も頷くとテツに向き直り告げる。

「時間が惜しい、すぐに動けるように準備をしよう」

 テツは身一つで来てるから準備する物はなく、雄一は巴と風呂敷と財布を懐に仕舞うと準備完了である。

 部屋を出ようとした所で、シホーヌと出会い、簡単に事情を説明をすると快諾されるが、思い出したように雄一に言ってくる。

「あの子の服、汚れはともかく、ボロボロで肌が見えるほどなのは可愛そうなのですぅ。冒険者ギルドに行く前に通りにある古着屋に寄ってあげるといいのですぅ」

 おそらく、出会った時の一件で破れたと思われる跡がチラホラしていた。

 確かに、可愛そうだなと思うが、そういう事に気付くあたり、シホーヌは女の子だな、と笑みを浮かべる。

 まったく気にしていなかった雄一とは大違いである。

 雄一は、シホーヌに礼を伝え、思い出したかのように言う。

「そうそう、もう変なモノを入れるのは止めろよ? ミュウが、騒いでたぞ?」

 雄一の言葉に、顔を赤くしたシホーヌが言葉に詰まらせた後、「ユウイチのアホー」と叫んで逃げる姿を見つめて、

「アイツの捨て台詞は、アホ一択かよ……」

 呆れるように肩を竦めてテツと合流して、雄一は冒険者ギルドに向かう為に家を後にした。





 雄一は、シホーヌに言われた古着屋さんを発見すると、店内に入る。

 中に入ると、山のように積まれた古着の塊が至る所にあり、どうやって服を選んだらいいのかとテツと2人して途方に暮れていると声をかけられる。

「服をお探しに困ってらしゃいますか?」
「はい、貴方のような美しい方を捜してました!」

 雄一は、声をかけてきた女性を見つめ、目を瞑っているのか、糸目なのか分からないがポワポワとした雰囲気が漂う花をイメージさせる女性の手を取り、男前バージョンを披露する。

 スタイルは、サリナには遠く及ばないが女性を感じさせるファクターはしっかり揃ってると、雄一アイが教えていた。

 テツが雄一の豹変に着いていけずに目を点にする。

 手を取られて、嬉しそうにする女性に雄一は遂に俺の時代が来たと喜ぶ。

「そう言って貰えると、ウチの亭主も喜んで貰えます」
「ご結婚されていたのですか……」

 雄一は、地面に手を付き、ナイアガラの滝を彷彿させるような涙を流す。

 オロオロするテツが雄一に、「大丈夫です、次はきっと!」と根拠のない慰めをされ、立ち直る雄一。

「そのカンフー服は、ウチのですね? という事は、シホーヌちゃんのお知り合い?」
「ええ、シホーヌの紹介で、こいつ、テツの替えの服を買いに来ました」

 なるほどねぇ、とテツの姿を上から下へと眺めてテツに話しかけてくる。

「着てみたい服とかある?」

 そう言われてたテツは、雄一を指差し、ワクワクした顔で答える。

「僕もユウイチさんみたいな服が着たいです!」

 困った顔をした店員さんは、頬に手をあててながら言ってくる。

「ごめんね、あれは、彼が着てるサイズが少しあっただけで、他のサイズはないのよ。時間があれば作れなくはないけど……」

 迷うような視線を雄一に向けるテツに、溜息を吐いて店員さんに答える。

「制服じゃないから、同じにする必要はないんで、コイツに似合いそうな服でお願いします」

 そう言われて、ちょっと残念そうにするテツに呆れつつ、頭を撫でてやる。

「そうね、色のチョイスは悪くないと思うわよ? 白髪に映えるから、同じ黒で、シャツとズボンを揃えちゃいましょう」
「はい、それでお願いします!」

 テツは、尻尾があったらブンブン振ってそうな程に嬉しそうにする姿を雄一は見つめて苦笑する。

 店員さんは、テツの手を引いて山となっている衣服の前に連れていき、色々、服を当てながら聞く。

「どんな柄がいいとかある?」
「えーと、できれば、シンプルなものを……」

 テツは、チラチラと雄一を見ながら答える姿を見る雄一は、アイツは本気で俺を目標にしてやがると呆れる。

「可愛い顔してるんだから、お洒落にしてもいいんじゃない?」
「いえ、僕は、冒険者になるので、実用性を選びたい」

 どっかの誰かと同じ事言ってるな、と遠い目をするようにテツを眺める。

 少し、不満そうではあるが、黒で統一した長袖のシャツとジーパンのようなズボンをテツに渡す。

 振り返るテツに、「一回、着てみろ」と伝えると嬉しそうに着替える。

 着替え終えたテツを見て、店員さんが言うように、白髪に黒が映えて似合ってるな、と思った雄一が褒めると本当に嬉しそうに言ってくる。

「これを買って貰っていいですか?」
「ああ、替え用の上の服を2,3着をついでに買っておけ」

 店員さんに視線を向けると頷かれて、見繕って貰って代金を払う。

 有難うございました、と見送られて2人は、冒険者ギルドへと歩き出した。


 テツは、店で着替えたまま出てきたので、通りを歩いていると、黒い2人がやたらと目立つが、嬉しそうに歩くテツが羨ましいと思えるほど、ちょっと恥ずかしい雄一であった。

 そのうち慣れるだろうと、気にしない方向で歩き続け、気付けば、冒険者ギルドの前にやってきていた。

 中に入ると、受付には、出待ちしてないか? と聞きたくなるヤツがカウンターにいるのを見て、溜息を吐きつつ向かう。

「おはようございます。ユウイチ様、その子が、ソラ村で連れて帰って来られた子ですか?」

 雄一は、ミラーがテツの事を唯一の生き残りの子ですか、と聞かない気配りができる辺りは、良い奴だとは思う。

 だが、しかしだ、自分には受付嬢との出会いを阻止する最低野郎だと思い、見つめながら答える。

「ああ、何やら話が聞きたいと言ってると聞いたが、ここで話したらいいのか?」
「いえ、別室で少し話を聞かせて貰いたいと担当が言っています。勿論、色々、釘は刺しておりますので……」

 そう言ってくるミラーに、雄一は、お前のそういう所は信用してると頷く。

 振り返って、テツを見つめる。

「サクッと済ませてこい」
「はい、行ってきますね」

 そう言うテツにミラーは担当がいる方向を指を指す。

 行き先を指を指されたテツは、ミラーに頭を下げて小走りで向かうのを眺めていた雄一は、口をパクパクさせる。

 テツが向かう先には、モデルか? と聞きたくなるような色香が香る、お姉さんの姿があった為である。

「なぁ、あれが、ここの受付嬢か?」
「ええ、そうですが、何か?」

 雄一は、肺、いや、体全体にある息を吐き出しているのか? と問いたくなるような溜息を吐くと空虚な瞳でミラーを見つめて口を開く。

「なんで俺には、お前なんだ?」
「さぁ? 運命なんじゃないですか?」

 雄一は、どうしてシホーヌは自分に運命を打ち砕くチートをくれなかったのかと、涙を流し、ミラーに言う。

「雨が降ってきたな?」
「何を言ってるのですか? 雨漏りはしてませんし、今日はいい天気です」

 まったく空気を読まない受付に、更に雄一は涙を増量した。


 泣くのに飽きた雄一が、ミラーが雄一を呼び出した理由を問う。

「ええ、テツという少年をユウイチ様はどうされるおつもりなのかと、伺いたくて来て頂きました」
「テツは、家に引き取るつもりだ。ホーラのようにな」

 雄一の答えを聞いて、「そうですか」と頷き、口許を綻ばして目を瞑る。

「何か問題があるのか?」
「いえ、ユウイチ様に引き取って貰えるのは、彼にとって幸せだろうと思いますので、一族には私から話を通しておきましょう」

 雄一は、ミラーの言葉に剣呑な響きを感じた。

「どういう事だ?」
「先日、ビーンズドック族の話をした時に少し触れましたが、エルフには横の繋がりがあります。今回のような事があった場合、みんなで助け合おうという話になります」

 それだと、雄一がやろうとしてる事は、でしゃばりなのでは? と思うと同時にあんまり良くない事なのかもしれないと考える。

「前の感じだと、人間に良い感情を持たないヤツから、クレームがきたりしないか?」
「ええ、仰る通りで、そういう者も少なからずいますが……私が黙らせますので、ご安心ください」

 もしかして、ミラーは、エルフの中で有力者なのか? とコメカミに汗が流れる。

「しっかりと、引き取ったヤツはDTだが、男には興味がないから安心だと、伝えるので任せてください」
「任せられるかぁ―――!!」

 ミラーの胸倉を掴んで、揺すっていると受付嬢に手を振って見送られて、こちらにやってくるテツに気付き、ミラーを解放する。

「後は、頼む」
「はい、任せて安心のミラーの手腕を信じてください」

 イマイチ信用できない雄一であるが、なるようになる、と気持ちを切り替えて、テツを連れて冒険者ギルドを後にした。
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