異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

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2章 DT、先生になる

38話 出発進行!伝令、前方に森があり!

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 早朝、気持ち、いつもより早い時間に起床した北川家では朝食も早めに開始されていた。

 雄一は、朝食の片付けを済ませると戸締りを分担で確認して廻り、ホーラとレイアと合流する。

「戸締りは大丈夫か?」
「問題ないさ」

 雄一と反対側の戸締りを確認してきたホーラがそう答える。

 リュックのベルトをしっかり握り、ソワソワしているレイアに目を向ける。

「旅行、楽しみだな?」
「楽しみにはしてないっ!! 遠いのなら早く出たほうがいいな? て思ってるだけ!」

 いつも通りのレイアの反応のように見えるが普段なら呆れ顔で言ってるセリフだが頬が紅潮させているので台無しであった。

 思わず、いじりたくなった雄一であったが、グッと堪えると「先に馬車に乗っていてくれ」と言うとまだ見てない場所へと歩いていった。

 全ての戸締りを確認し、表に出ると馬車が用意されており、テツが馬にブラッシングをしているのを見て近づく。

「どうだ? 馬は元気そうか?」
「はい、元気すぎるようで早く出発したそうにしてますよ」

 馬に擦り寄られて困っているテツが、雄一に助けて欲しそうに見つめるが雄一はテツを生温かい目で見つめ、「そろそろ出発するからブラッシングも目途を付ける」ように伝えると荷台の後ろのほうへと歩いていく。

 後ろに行くとシホーヌのアクアが荷台の上で荷物のチェックをしていたので漏れがないか確認する。

「食糧も水も抱き枕も完備ですわ、主様」
「そうか……抱き枕は家に置いてこいよ? 邪魔だから」

 雄一にそう言われたアクアが慌てて、「それがないと寝れない」と縋るが雄一はそれが嘘である事を知っているので聞き入れてやらない。

 アクアに限らず、シホーヌも寝るのは得意技である。

 子供達と、かくれんぼをしてる最中に隠れてジッとしてる間に寝てるという報告も1度や2度ではない。

 縋るアクアを無視する雄一は、シホーヌに目を向け、昨日買ってきた物はちゃんとあるかを確認を取る。

「替えの服もお菓子も大丈夫なのですぅ。そして、おニューのお食事用エプロンも完璧なのですぅ!」

 雄一はげんなりとした顔をするがシホーヌの面の皮は貫けない。

 お食事用エプロン。雄一から見るとどう見ても、よだれ掛けにしか見えないが本人はお食事用エプロンと言ってきかない。

 実はシホーヌは食事をする時にはいつも着けていたが誰も突っ込む者はいなかった。

 何故なら違和感皆無だった為である。

 少なくとも雄一は触れていいのかどうかと悩んだが、最終的に放置する事を選択した結果である。

 今回も放置する事を選んだ雄一は、「そうか」とだけ言って辺りを見渡すと手ぶらなアリアとミュウが連れだって来るのに気付き、屈んで目線を合わせると聞く。

「お荷物はどこにある?」

 雄一にそう言われた2人は迷わずシホーヌとアクアを指差し、アリアは頷き、ミュウはガゥと唸る。

 雄一は良くできたとばかりに2人を撫で、ミュウに肩に乗るように言い、アリアを抱き抱える。

 今のやり取りに気付いたシホーヌとアクアが後ろで騒ぐが撤回する必要を感じないので相手にせず、御者台に座る。

「そろそろ、出発するぞ? さっさと馬車に乗り込めよ」

 まだ馬車に乗り込んでない面子に声をかけ、乗り込むのを確認した雄一は手綱を握り、馬車を出発させた。





 ダンガを出発して空を見上げると天気が良く、太陽が頑張ってくれているようで、ぽかぽか陽気と膝と首に天然のカイロにより、ぬくぬくで幸せ気分で馬車を走らせていた雄一であるが、進行方向にちょっとした森を発見する。

 森を抜けるルートに街道がある事に気付き、ある危惧を認識した雄一が何かを口にしようとする。

 しかし、可愛い娘のアリアが差し出してくるリンゴを見て、優先順位があっさりと覆し、大きく口を開けてリンゴに齧り付く。

 パキッという音をさせ、齧り咀嚼すると後ろに振り返る。

「テツ、ちょっと掃除してきてくれるか?」

 雄一が前方を顎でしゃくり、雄一の隣に顔を出してくるテツが雄一が見つめる先を確認する。

「ああ、いかにも、て感じですね……分かりました、行ってきます!」

 テツは、ツーハンデッドソードを担ぐと馬車から飛び出して、走っていく背に雄一は言う。

「こっちは、ゆっくり向かうからな?」

 雄一の言葉に、テツは、ハーイ! と元気良く返事をして手を振って更に加速して森へと走っていく。

 馬車の速度を落とすと後ろから溜息を吐きながらホーラが顔を出す。

「テツだけじゃ、ちょっと心配さ……アタイも行ってくるさ。あの子、結構抜けてるから危ないさ」
「それじゃ、頼むな? お姉ちゃん」

 そう言う雄一の言葉に、「まったく、困ったもんさ?」と口許を綻ばせながら肩を竦める。

 ベストに仕込んでいる物を確認し、ホーラも馬車を飛び出してテツを追いかけて走っていった。

 2人を見送っていると背中をガンと叩かれ、振り返ると予想通りのレイアが顰めっ面をしながら雄一を見つめていた。

 雄一が、「どうした?」と問うとレイアが口を開く。

「テツ兄とホーラ姉は何をしにいったんだ?」
「ああ、目の前のような所には、悪い人が旅をする者がやってくるのを待ってたりするんだ。だから、テツにそいつらを懲らしめてこい、と言ったんだ」

 分かったか? と呑気そうに言う雄一にミュウがバナナを差し出してくるので頬を緩ませながらパクリと咥える。

 呑気な雄一にレイアは眉尻を上げて怒鳴ってくる。

「なにを呑気にバナナなんて食べてる場合かよっ! アンタも出て、手伝わなくていいのかよっ!」
「そりゃ、これはテツ達の訓練だからな、手伝う気はないなぁ……それにな? レイアの兄ちゃんと姉ちゃんは、こんな所で賊してるような相手に身の心配をされるような弱い人じゃない」

 力みもない穏やかな表情をした雄一に見つめられて、思わず、仰け反るレイア。

「でも! 相手が凄く強かったり、勝てないようなモンスターが現れたらどうするんだよっ!」
「それもないな、これぐらいの距離でなら、そんなモンスターがいれば俺も気付けるが……後ろの2人も気付く。モンスターは問題でないとしても、強い相手がいれば退くように教育もしてるが……テツは時々、突っ走るからな……それを心配したお節介なお姉ちゃんが付いていったから心配いらねぇーよ」

 振り返ったレイアの視線の先で、やっと脚光を浴びたとばかりに胸を張る馬鹿2人を見て逆に心配になるレイア。

 雄一は、そんな馬鹿達が2人を心配して監視する為に何かをやってると気付いていた。

 お節介が過ぎると思うが、男と女の違いでその辺りは容認する必要があるかと見逃している。

 どう判断したら良いか困っているレイアの頭をそっと撫でながら雄一に視線を向けたレイアを覗き込むようにして笑いかける。

「レイア? 家では、いつもは世話好きなお姉ちゃんとボケた事をよくするお兄ちゃんだが外での2人は、これ以上のコンビを捜すのは大変という程の腕利きだという事を良く見ておくといい」

 心配いらない、とレイアに笑みを見せ、更に馬車の速度を落とし、歩くような速度にする。

 そして、雄一はテツとホーラの問題など些事だと言い切れる程の難題と向き合う。

 それはアリアとミュウが同時に差し出すリンゴとバナナをどうするべきかと……


 解答!

 『両方同時に齧りつく』


 可愛い娘の要望に応える為、雄一の無謀なチャレンジが開始された……





 森の入り口が近づいてくると後ろから呼ばれる声に振り返ったテツは、走り寄るホーラに気付き、走る速度を落とす。

「アンタだけじゃ、心配だから一緒に行ってやるさ」

 悔しいけどアンタ、足が速いから追い付くの大変さ、と愚痴りながら並走してくる。

 全力疾走してきたらしいホーラは少し息を弾ませていた。

「ホーラ姉さん、これはユウイチさんに指名された事なんですから僕だけでやり遂げますっ! 例え、どんな敵が現れようと倒してみせま……」
「そんな馬鹿な事を考えてそうだと思ったから来たんだけど……正解だったさっ! ユウに何度も口が酸っぱくなるほど言われたさ? 勝つのが困難な時は退いて問題ない時は引き下がって命を繋げって!」

 ホーラは、走りながら器用にテツの耳を引っ張る、ここは命を天秤にかける時じゃないと皺がないと疑われるテツの脳に刻むように怒鳴る。

 耳を引っ張られるテツは涙目にさせられ、「痛いです、ホーラ姉さん、僕が間違ってました!」と半泣きにさせられ許しを請わされる。

 呆れるように嘆息するホーラは、弟を叱る姉の顔から冒険者としてのホーラの顔に切り替える。

「今更かもしれないけど……森が近づいてきたさ? 静かに行くさ。不意が打てるならそれに越した事ないさ」
「ホーラ姉さんもいないという考えはないんですね?」

 頭をガシガシと掻きながらホーラは溜息を吐く。

「ユウが、そうしろ、て言うからには、いるという確信があって言ってるはずさ。どうして、あの距離でそういうのが分かるカラクリがさっぱりさ?」
「ユウイチさんですからね……」

 苦笑するテツが追従する。

 そして、森の入り口に到着した2人は森の中を見つめる。

「じゃ、そろそろ行くさ」

 ホーラが先に歩き出す。

 立ち位置が変わってしまっているが、その違和感を一切感じず、テツは、「ハイッ!」と返事をして声が大きいと頭を叩かれて「ごめんなさい」と尻尾を股に挟んで怯える犬のような顔をする。

 テツの将来が心配に思い、溜息を洩らすホーラに付き従う忠犬テツはホーラを追うように森の奥へと目指して歩き出した。
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