異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

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2章 DT、先生になる

67話 幾千幾万らしいです

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 飛び出したテツは、相棒のツーハンデッドソードでベルグノートを殴り倒そうという気合いを込めて乱打する。
 だが、ベルグノートの持つ腕輪の力により、弾かれ続ける。

「クッハハッ、お前、馬鹿だろう? 何度やっても同じだって、いい加減気付けよ、ウゼェーんだよ」

 テツの剣戟の衝撃で後ろに押されている事に気付いて、踏ん張り効かせて舌打ちをしながらテツの心を折ろうとする。

 ベルグノートの言葉など聞いてないかのように反応らしい反応を返さず、一定の、いや、徐々に回転速度を上げるテツの攻撃が鋭さまで加わりだす。

 テツの攻撃の攻撃は防げるが自分の攻撃は阻害しないことを今頃、思いだしたベルグノートは魔剣を抜いて斬りかかる。

 しかし、テツにあっさりと避けられ、背後から首を刈り取るような軌跡を描いた斬撃を放たれ、吹っ飛ばされる。

 テツからの直接的なダメージはないが、衝撃と地面を転がされたダメージは体より心に響く。

「足掻くなよ! お前は俺に直接的なダメージを入れる事はできねぇーんだから、諦めて楽になれやぁ!」

 魔剣を振り抜いてテツに向かって火球を飛ばすが、余裕をもって避けられる。

 そして、懐に入られたベルグノートは薙ぎ払われ、再び、吹っ飛ばされて地面に無様に転がされる。

 薙ぎ払った格好のままのテツがベルグノートを静かに見つめる。

「直接的なダメージが入らなくても、そうやって転がり続けていれば、いずれは動けなくなってくる。それに何より……」

 テツは、正眼に剣を構える。

「お前に恐怖を染み込ませるのに、これほど都合のいいモノもない。二度と剣を握れない体になって貰う」

 目を細めるテツから威圧が放たれ、その視線の先のベルグノートは、恐怖を覚える。

 テツの目を見て、何かを思いだしそうになるのを必死に拒否するように首を横に振るが思い出してしまう。

 ベルグノートは、観客席の見晴らしのいい席を陣取っている者達の中の長身の偉丈夫を見つけて目を見開く。

 冒険者ギルドで雄一に睨まれて気絶した自分を思い出す。

 あの底知れない恐怖を叩きつけられ、自分という存在をとことん砕かれ、自信を失った。
 だから、打てる手なら何でも打つ事によって、あの恐怖に打ち勝つ為に強い自分という証が欲しかった。

 自分が、綱渡りをするような危険な事をしてる自覚はある。

 だが、あの化け物を克服する為に払う対価として充分な見返りがあるとベルグノートは、父親にごり押しで頼みこみ、この状況を作りだした。

 なのに、あの目を克服する前に本人ではなく、目の前のテツを通して、雄一がベルグノートを見つめているように感じ、委縮する自分に嫌悪を激しく感じる。

 静かな目をしたテツが、ベルグノートを見つめて剣で口許を隠すように真横に構える。

「お前の心を折る為なら僕は千回、斬りかかろう。その見えない壁を割らないと折れないと言うなら幾万回、斬り裂こう。1度や2度の敗北で僕の心を折れると思っている、お前に馬鹿野郎と幾億回、叫ぼう」

 目を細めて睨むテツは、剣をベルグノートに突き付ける。ベルグノートはそれだけで思わず、怯み仰け反る。

「なのに、お前は既に恐怖を感じ、手を震わせる。そんな、お前がティファーニアさんを貰うと言う」

 テツは、一度、言葉を止めると目を瞑ると息を大きく吸い込む。

 ベルグノートも自分が震えているのに、今、気付き、震える自分の手を噛んで震え抑えようとするが徒労に終わる結果になる。

 テツが、目を開いて口を開いた瞬間、ベルグノートは手だけでなく、体全体を震わせる事になった。

「この馬鹿野郎がぁ! お前程度の存在がティファーニアさんを貰うだと? あの人はそんな安い人じゃないっ! せめて、自分の価値を高めて、いや……」

 テツは自分を親指で指し示す。

「僕の心を折ってから、ほざけっ! だが、絶対に折られてやらない!」

 そう言うとテツは、再び、ベルグノートの懐に飛び込む。

 そして、掬い上げるようにして叩きつける。その衝撃でベルグノートは、空中に体を浮かせる。

「衝撃は体を伝って地面に逃げると言います。空中で受ける衝撃はどこにいくのでしょうか?」

 空中にいるベルグノートを見つめるテツの瞳が赤く輝く。

 もう見栄を張る気力もないらしいベルグノートは、涙だけでなく、鼻水も垂れ流す。

「たっ、たす、助けてくれぇ」
「お前は、ティファーニアさんが、家を、家族を攻撃されるのを止めて、と叫んだ時、お前は止めたのか? それが、僕の答えだぁ!」

 テツは、そう言うと空中にいるベルグノートを睨みつけると今日一番の切れのある動きでツーハンデッドソードで乱撃を入れる。

 ベルグノートは見えない拳で殴られるようにテツにツーハンドレットソードで叩きつけられ、糸の切れた人形がいい様にされるように嬲られる。

 衝撃が芯まで届いたようで胃の中のモノを吐き出す。

 それをテツは避けるように旋回する。

 旋回する動きに全身のバネを効かせる下段からの掬い上げを入れる。

「これで、トドメだぁ!」

 テツは剣を打ちつけるとベルグノートは喀血すると共にガラスが割れるような音を響かせる。

 ベルグノートは、地面に叩きつけられると同時に左腕に着けていた腕輪が渇いた音をさせて真っ二つに割れる。

 テツは、剣を掲げて勝利の雄叫びを上げた。



 そんなテツを眺めていた雄一は、おめでとう、テツ、と声にせず、口の中だけで言うと笑みを浮かべる。

 隣にいるティファーニアは、顔を真っ赤にして下に視線をうろつかせて、モジモジとしていた。

 どうやら、テツの思いの丈をぶつけられた事に照れているようだ。

 まあ、雄一が思っていた事とは違う事に気付いてしまったようであるが、本命は、追々、知っていけばいいかと思う。

 この2人は、きっとこれから一緒に時間を過ごしていく予感を感じていた為である。

「勝敗は着いたみたいだね。ただいま、ユウ」
「えっと、えっと、ただいまです、ユウイチさん」
「お疲れ、ホーラ。それと、ポプリ、家の問題なのに手伝ってくれて有難うな?」

 ホーラとポプリは、左右に散ってテツに鏡で妨害していた観客席にいるものを潰す為に動いてくれていたのである。

 ポプリは頬を染めて、イヤン、イヤンと言ってきそうな体の振り方をしながら、

「未来の旦那様の為ならこれぐらい容易い事ですよぉ~」

 甘ったるい空気を発するポプリに雄一は、タジタジにさせられる。

 もしかして、安易に約束をしてしまったか? と一瞬、思うが、思い過ごしだと言い聞かせる。

 ホーラが、ポプリを睨みつける。

 睨まれている事に気付いたポプリは、据わった目をすると同じようにホーラを睨みつけた。

 お互いが、はっきりと認識した近しい思いを抱く者同士であると……

 2人は静かに両手を上げると掌をお互い合わせると、ガシッと握り合うと力比べを始める。

 テツは、勝利したようであるがホーラとポプリは今から試合が開催され、商品の雄一は、現実逃避するようにテツとベルグノートを眺める。

 眺めていて、雄一は気付く。

「テツ、まだ油断するには早いぞ」

 雄一の言葉を聞いた一同は、えっ? と慌ててテツ達を見つめる。ホーラとポプリも一時休戦して見つめた。


「審判さん。まだ続けますか? これ以上すると死なせる恐れがありますが?」

 喀血して倒れるベルグノートを見て、普通ならテツに問いかけられる前に勝敗を伝えて、すぐに回復魔法が使える者を呼ぶ行動をするところである。
 しかし、ベルグノートを勝たせる為に買収されている審判は、ベルグノートを勝たせる為に時間稼ぎをして、回復を待つか、あの喀血から大ダメージを受けていると判断して負けを宣告して治療させるのがいいのかを迷っていた。

「パトロンを死なせたら、元の子もありませんよ?」

 そのテツの言葉で踏ん切り付けた審判は、テツの勝利を宣言する。

 その勝利宣言に観客は、テツの名前を連呼して称賛を送る。

 観客の声で目を覚ますようにして、ふらつきながらベルグノートは剣を杖替わりにして立ち上がる。

 ベルグノートは、口許を汚す血を拭う事もせずに虚空を見つめて笑いだす。

 それを見たテツは眉を寄せる。

「もういい、全部いらねぇ。ああ、あの化け物にも勝てない。そのうえ、お前にも勝てない。あれだけ、色々、手を打ったのに……このざまだ」

 足を震わせて剣を掲げる。

「勝てないお前らに勝負を挑んだのが俺の最大の失敗だった。でも、いや、だからこそ、失敗だけで終わらせられない! 一矢ぐらい報わせて貰う!」

 掲げた剣の先にポプリが放った火球よりもずっと大きな火球を生み出す。

 剣の耐久値の限界値を超えようとしているようで魔剣にひびが入る。

「ティファーニアが黒コゲになったら……お前はどんな顔を俺に見せてくれる?」

 アヒャヒャア、と壊れた笑い方をするベルグノートにテツは跳躍して一回転して剣を振り下ろす。

 それを見ていたアクアが悲痛の叫びを上げる。

「テツ! それだけは駄目です!!」

 振り下ろした剣は、ひび割れを起こしている魔剣に直撃する。

 直撃した直後に発生した眩しい光にテツは飲み込まれた。
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