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4章 DT、表舞台に立つ
幕間 女豹とキツネと賢くなる少年
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雄一が隣国、パラメキ国と事を構える為の対応に追われている頃、王宮もまた対応に追われていた。
害虫のようなゴードン一派ではあったが、頭数が一気に減り、各自の担当が増えて目が廻るような忙しさである。
そのうえ、国民も生活をしてるから通常業務も停滞させる訳にはいかず、酷い人手不足に頭を悩ましていた。
何も人だけでなく、ゴードン一派に握られていた国の国庫を調べて、更に頭が痛い思いをしていた。
ある程度は私物化してるとは思っていたが、堂々と帳簿に自分達の屋敷の購入、改築などの費用も書かれてるのを見て、こんな奴らに下だと見下されていた事をミレーヌは腹立たしく思い、帳簿の調査報告書を思わず机に叩きつけた。
「国庫がほぼほぼ空ですか。なけなしの資金もゴードン一派が逃げるどさくさに紛れて持ち逃げされてます。戦争になるのは避けて通れないとはいえ、この状況で国民に臨時徴収をかければ内側に爆弾を抱えるようなもの……」
本当に頭が痛そうに長い赤い髪を後ろに掻き上げ、そのまま掻き毟りたい衝動に駆られるが女王として、いや、女のとしての矜持が必要以上に身嗜みを崩す事を嫌い堪える。
代わりに拗ねるように「あの方も少し考えて欲しかったものです」と呟くが近くにいたゼクスがその言葉を拾う。
「どうされましたか? お母様」
ゼクスは微力ながら、と宣言して母親であるミレーヌの補佐をするように書類を仕分けを手伝っていた。
聞かれるとは思ってなかったミレーヌは少し頬を朱に染めながら隠す程の事じゃないかと判断して話す事にする。
「ユウイチ様が城に入ってくる方法をもっと穏便にしてくれてたら、と思ったのですよ。城門の修理費を考えると頭が痛いのです」
「はっはは、でも、お母様、あれでもユウイチ父さんは遠慮したそうですよ? 本当は目の前に見える城壁も破壊するつもりだったのを城門だけにしたそうですから」
その情報を聞いたミレーヌは凄く驚いた顔を見せる。
ゼクスの下に駆け寄ると両肩を掴んで揺さぶってくる。
「ユウイチ父さんって何っ?」
「えっ? 驚いたのはそっちですか!」
ミレーヌは、「ドラゴンを倒すような人ならそれぐらいできるでしょ?」という。
そんな母親を見つめて苦笑するゼクスは急かされるがまま答える。
「僕が賊に襲われてユウイチ父さんに助けられた後、2人になった時に事情を説明しました。その時に僕は愚かにもお母様を助けて欲しい、そして、何より国を救って欲しい、その為になら自分の命も惜しくありませんと言いました。勿論、嘘を言ったつもりはありませんが」
嬉し恥ずかしそうにする我が子を見て、目を細めるミレーヌは先を促す。
「そして、ユウイチ父さんに平手打ちにされて、こう言ってくれたのです」
『命が惜しくないだと? 国を救って欲しいだと? そんなモノの為に親より先に逝くのが惜しくなんて10年も生きてないガキがほざくなっ!』
雄一に叩かれた頬を嬉しげに撫でる。
「それでも口答えをしようとする僕の胸倉を掴んでこう言ってくれました」
『でも、しかし、なんて関係ねぇ! お前は母親の勧めであれ、家に来た。そして俺はお前達を受け入れた。つまり、ゼクス、お前は俺の息子だ。だったら言う言葉は1つだろうが?』
「そう言うと力強く抱き締めて下さりました。その時、僕は初めて、父親ってきっとこういうのをいうのだろうな、と思いました」
ゼクスは嬉しそうに顔を消沈させると悲しそうにするのを見て、何を感じとったか理解したミレーヌは申し訳なさそうに謝る。
「ごめんなさいね、貴方のお父さんは……」
「いえ、比べて悲しくなったのは事実ですが、僕を生まれるキッカケをくれた事にだけは感謝してます。じゃないとユウイチ父さんに会う事すらなかったのですから」
ゼクスの物心がついた頃の記憶にある父親は、ゴードンに媚びへつらい、外で女を囲んでいた自分の親でありながらクズだと思える存在であった。
子供ながら、何故、母親はあの男と結婚したかと思って調べたから分かっているが、嫌がる母親に強制して結婚に至ったと知っている。
国民の穏やかな日常を守るために自分を犠牲にしたと。
そんなクズな父親は、スゥが生まれて直ぐに自分が撒いた女とのトラブルで亡くなったそうである。
「だから、僕はユウイチ父さんに会えたこの幸せを噛み締めてます」
そのゼクスの言葉を聞いたミレーヌは思い付いたとばかりに嬉しげに頬を赤く染めながら顎下に人差し指を当ててゼクスに何かを言いたそうに見つめる。
その仕草を見て、良い予感を感じるゼクスは、我が母親ながら若々しさを感じる美貌を見つめる。
ゼクスは失礼と思いつつ、自分の母親より雄一のほうが年上に見えると思い、笑みが浮かぶのを隠せなかった。
「ねぇ、ゼクス、ユウイチ様が本当にお父様になったら素敵だと思わない?」
「それは最高ですね。スゥもユウイチ父さんを『ユウパパ』と呼んでますから、スゥも大喜び間違いなしですね」
ミレーヌは、ウフフッと笑い、楽しそうに夢想するように体をくねらせる。
幸せそうにする母親を嬉しそうに見つめていたゼクスは、そろそろ仕事を再開させる為に冷や水をかける。
「今回の事もそうですが、パラメキ国との戦争を乗り越えたら正直、僕達がユウイチ父さんに支払えるモノなんてありませんので、なんとか、この国とお母様で手を打って貰えるように頑張ってください」
澄まして言うゼクスに拗ねる母親は、「ゼクスのイケズぅ」と言うと肩を竦めて仕事に戻る為に自分の席に着くと同時にノックされる。
ミレーヌは、また追加の仕事かとウンザリとした表情が出てるのを自覚して引っ込めると「入りなさい」と女王としての威厳を込めて入室を許可する。
入ってきた兵士が敬礼すると報告してくる。
「女王陛下に面会を求める商人が居ります」
そう言われたミレーヌは忙しいから、違う機会に来てくれ、と伝えて貰おうと口を開きかけたところに新しい情報を加えられる。
「名をエイビスという大商人で、ユウイチ様の依頼でこちら伺ったと申しております」
ギリギリのところで言葉を飲み込む事に成功したミレーヌは、雄一絡みであるなら聞かないで追い返す訳にはいかないと判断する。
「通してください」
兵士は、返事をすると退出して行く。
それを眺めていたゼクスが伝えてくる。
「エイビスと言えば、今回の1件にユウイチ父さんに協力していた商人です。ユウイチ父さんは何を言ったのでしょうか?」
ミレーヌはまだ調査報告書を全て見た訳ではなかったので、協力者の存在まで確認していなかったのでゼクスが言ってくれて助かったと溜息を零す。
しばらくすると再び、ノックされて返事を返すと先程の兵士が痩身痩躯の糸目の男を連れて入ってくる。
ミレーヌは、「兵士に下がっていい」、と言うが渋る様子を見せたので、「ユウイチ様の名前を騙る意味を知らない王都の商人などおりません」と伝えると渋々、退出していった。
目の前に立つ男、エイビスに視線を戻すと静かに頭を下げてくる。
「初めまして、女王陛下。私は王都で居を構える商人のエイビスと申します。ゴードンとは仲が良くなかったので今まで城に来る事がなかった者です」
「今回の事にも色々、手を尽くしてくれたようで感謝します」
油断ならない相手だと直感したミレーヌは警戒レベルを最大にする。
勿論、ミレーヌが自分を警戒してる事に気付くエイビスであるが、気にせずに話を始める。
「いえいえ、私は王家の為に動いた訳ではありませんので感謝は要りません」
「では、これをキッカケに商売で儲ける為ですか?」
視線に冷たいモノを混ぜて語るミレーヌを動かない笑みで受け止める。
「ええ、商売の為でもありますね。ですが、3割程度の為ですよ」
「では、7割は?」
そう問いかけるミレーヌの言葉にエイビスは、今まで浮かべてた笑みが作り笑いだと分かる生きた笑みを見せてくる。
「ユウイチ様と切るに切れない太い縁を持つ為です。あの方は面白い。金の匂いもすこぶる最高なモノを感じますが、それ以上に私に悪態を吐いてくるあの方の全てが愛おしい」
それを見ていたゼクスは、どう判断したらいいか悩んでいるようだが、ミレーヌは変態だ、と思い、ゼクスを退出させるべきか真剣に悩みだす。
そこで我に返ったエイビスは、咳払いをすると最初の張り付いた笑みを浮かべると話を強引に戻してくる。
「そのユウイチ様が、ある事を予見して私に依頼されてきました。こちらでも調べは付いてますが一応、確認させて頂きます。ゴードン達に国庫を根こそぎやられてますね?」
確認と言っているが確信を持っていると判断したミレーヌは素直に肯定する。
その言葉に頷いたミレーヌを見て、エイビスは口を開く。
「ユウイチ様はその可能性をずっと前から予見されていたようです。私も上手過ぎる話だと思ってはいたのですよ。フリーガンを潰す時に廃薬と人身販売以外の利権は好きにして良いと言われてたのは」
そうエイビスが言ったのを聞いて、ゼクスにすらその先の流れを理解できた。勿論、ミレーヌも理解に至り、思わず腰を浮かせてしまう。
その様子に気付いているエイビスは頷く。
「そうです、ユウイチ様の依頼は、国に金を貸し出してやれ、と言われてこちらに伺いました。だいたいの懐事情は把握してるつもりですが、一応、見させてくれませんか?」
そう言うと知っているかのように予算の書類が固まってる辺りを指差すエイビスに苦笑するミレーヌはゼクスに頷いてみせる。
ゼクスは予算の纏めをエイビスに手渡す。
それを一読したエイビスは頷くと再びミレーヌに目を向ける。
「少し、こちらが調べたより状況は悪いようですが許容範囲です。この資金は私が融通しましょう。無担保、無利子でお貸しします」
「貴方は商人でしょう? そんな儲けのない話で終わるとは思えないのですが、何が狙いですか?」
真意を探るように見てくるミレーヌを失礼と分かりつつもクスクスと笑うエイビス。
「いえね、戦争が終わった後に行われる予定の盛大な結婚式の全権を私に頂きたいのですよ。勿論、その資金も全部、私持ちでさせて頂きますので」
ミレーヌとゼクスは顔を見合わせる。
まさかとは思うが、先程、ゼクスとの会話を聞いてたのかというぐらいタイミングの良い流れに汗が流れる。
おそらく、同じ内容だろうと分かるミレーヌは素知らぬ顔で、「どういう事ですか?」と聞き返す。
「どうもこうもありません。この国が今の時点ですら、ユウイチ様に支払える対価などありません。ならば、こういう時の定番は、姫を嫁にやるですが……この国の姫は幼すぎて、ユウイチ様の逆鱗に触れかねません。ならば、未亡人ではあるが若い女王の出番ではありませんか?」
ニヤニヤする笑みを浮かべるエイビスに澄ました顔をしたミレーヌは何でもないような顔をしてエイビスに問いかける。
「それで、協力してくれるのは、結婚式だけですか?」
「いえいえ、そこに至るまでを全力でバックアップさせて頂きます」
そういって見つめ合う2人は沈黙する。
沈黙して少し経つとどちらからとなく笑い始める。
「うふふふっ」
「フッフフッ」
笑い合う駄目な大人の見本みたいな2人を見つめるゼクスは、自分にとっても歓迎する事であるから見逃すが、立場上、自分も裏でこういう目に遭うかもしれないと学習し、心に刻む。
「「輝かしいナイファ国の為に」」
楽しそうに国の未来を夢見る2人を見て、こうやって外堀を埋められていく雄一を思い、きっとこういう事には気付いてないんだろうな、と苦笑する。
「ユウイチ父さん、勉強させて頂きました」
この場にいない雄一に感謝を告げて、少年はまた1つ賢くなった。
害虫のようなゴードン一派ではあったが、頭数が一気に減り、各自の担当が増えて目が廻るような忙しさである。
そのうえ、国民も生活をしてるから通常業務も停滞させる訳にはいかず、酷い人手不足に頭を悩ましていた。
何も人だけでなく、ゴードン一派に握られていた国の国庫を調べて、更に頭が痛い思いをしていた。
ある程度は私物化してるとは思っていたが、堂々と帳簿に自分達の屋敷の購入、改築などの費用も書かれてるのを見て、こんな奴らに下だと見下されていた事をミレーヌは腹立たしく思い、帳簿の調査報告書を思わず机に叩きつけた。
「国庫がほぼほぼ空ですか。なけなしの資金もゴードン一派が逃げるどさくさに紛れて持ち逃げされてます。戦争になるのは避けて通れないとはいえ、この状況で国民に臨時徴収をかければ内側に爆弾を抱えるようなもの……」
本当に頭が痛そうに長い赤い髪を後ろに掻き上げ、そのまま掻き毟りたい衝動に駆られるが女王として、いや、女のとしての矜持が必要以上に身嗜みを崩す事を嫌い堪える。
代わりに拗ねるように「あの方も少し考えて欲しかったものです」と呟くが近くにいたゼクスがその言葉を拾う。
「どうされましたか? お母様」
ゼクスは微力ながら、と宣言して母親であるミレーヌの補佐をするように書類を仕分けを手伝っていた。
聞かれるとは思ってなかったミレーヌは少し頬を朱に染めながら隠す程の事じゃないかと判断して話す事にする。
「ユウイチ様が城に入ってくる方法をもっと穏便にしてくれてたら、と思ったのですよ。城門の修理費を考えると頭が痛いのです」
「はっはは、でも、お母様、あれでもユウイチ父さんは遠慮したそうですよ? 本当は目の前に見える城壁も破壊するつもりだったのを城門だけにしたそうですから」
その情報を聞いたミレーヌは凄く驚いた顔を見せる。
ゼクスの下に駆け寄ると両肩を掴んで揺さぶってくる。
「ユウイチ父さんって何っ?」
「えっ? 驚いたのはそっちですか!」
ミレーヌは、「ドラゴンを倒すような人ならそれぐらいできるでしょ?」という。
そんな母親を見つめて苦笑するゼクスは急かされるがまま答える。
「僕が賊に襲われてユウイチ父さんに助けられた後、2人になった時に事情を説明しました。その時に僕は愚かにもお母様を助けて欲しい、そして、何より国を救って欲しい、その為になら自分の命も惜しくありませんと言いました。勿論、嘘を言ったつもりはありませんが」
嬉し恥ずかしそうにする我が子を見て、目を細めるミレーヌは先を促す。
「そして、ユウイチ父さんに平手打ちにされて、こう言ってくれたのです」
『命が惜しくないだと? 国を救って欲しいだと? そんなモノの為に親より先に逝くのが惜しくなんて10年も生きてないガキがほざくなっ!』
雄一に叩かれた頬を嬉しげに撫でる。
「それでも口答えをしようとする僕の胸倉を掴んでこう言ってくれました」
『でも、しかし、なんて関係ねぇ! お前は母親の勧めであれ、家に来た。そして俺はお前達を受け入れた。つまり、ゼクス、お前は俺の息子だ。だったら言う言葉は1つだろうが?』
「そう言うと力強く抱き締めて下さりました。その時、僕は初めて、父親ってきっとこういうのをいうのだろうな、と思いました」
ゼクスは嬉しそうに顔を消沈させると悲しそうにするのを見て、何を感じとったか理解したミレーヌは申し訳なさそうに謝る。
「ごめんなさいね、貴方のお父さんは……」
「いえ、比べて悲しくなったのは事実ですが、僕を生まれるキッカケをくれた事にだけは感謝してます。じゃないとユウイチ父さんに会う事すらなかったのですから」
ゼクスの物心がついた頃の記憶にある父親は、ゴードンに媚びへつらい、外で女を囲んでいた自分の親でありながらクズだと思える存在であった。
子供ながら、何故、母親はあの男と結婚したかと思って調べたから分かっているが、嫌がる母親に強制して結婚に至ったと知っている。
国民の穏やかな日常を守るために自分を犠牲にしたと。
そんなクズな父親は、スゥが生まれて直ぐに自分が撒いた女とのトラブルで亡くなったそうである。
「だから、僕はユウイチ父さんに会えたこの幸せを噛み締めてます」
そのゼクスの言葉を聞いたミレーヌは思い付いたとばかりに嬉しげに頬を赤く染めながら顎下に人差し指を当ててゼクスに何かを言いたそうに見つめる。
その仕草を見て、良い予感を感じるゼクスは、我が母親ながら若々しさを感じる美貌を見つめる。
ゼクスは失礼と思いつつ、自分の母親より雄一のほうが年上に見えると思い、笑みが浮かぶのを隠せなかった。
「ねぇ、ゼクス、ユウイチ様が本当にお父様になったら素敵だと思わない?」
「それは最高ですね。スゥもユウイチ父さんを『ユウパパ』と呼んでますから、スゥも大喜び間違いなしですね」
ミレーヌは、ウフフッと笑い、楽しそうに夢想するように体をくねらせる。
幸せそうにする母親を嬉しそうに見つめていたゼクスは、そろそろ仕事を再開させる為に冷や水をかける。
「今回の事もそうですが、パラメキ国との戦争を乗り越えたら正直、僕達がユウイチ父さんに支払えるモノなんてありませんので、なんとか、この国とお母様で手を打って貰えるように頑張ってください」
澄まして言うゼクスに拗ねる母親は、「ゼクスのイケズぅ」と言うと肩を竦めて仕事に戻る為に自分の席に着くと同時にノックされる。
ミレーヌは、また追加の仕事かとウンザリとした表情が出てるのを自覚して引っ込めると「入りなさい」と女王としての威厳を込めて入室を許可する。
入ってきた兵士が敬礼すると報告してくる。
「女王陛下に面会を求める商人が居ります」
そう言われたミレーヌは忙しいから、違う機会に来てくれ、と伝えて貰おうと口を開きかけたところに新しい情報を加えられる。
「名をエイビスという大商人で、ユウイチ様の依頼でこちら伺ったと申しております」
ギリギリのところで言葉を飲み込む事に成功したミレーヌは、雄一絡みであるなら聞かないで追い返す訳にはいかないと判断する。
「通してください」
兵士は、返事をすると退出して行く。
それを眺めていたゼクスが伝えてくる。
「エイビスと言えば、今回の1件にユウイチ父さんに協力していた商人です。ユウイチ父さんは何を言ったのでしょうか?」
ミレーヌはまだ調査報告書を全て見た訳ではなかったので、協力者の存在まで確認していなかったのでゼクスが言ってくれて助かったと溜息を零す。
しばらくすると再び、ノックされて返事を返すと先程の兵士が痩身痩躯の糸目の男を連れて入ってくる。
ミレーヌは、「兵士に下がっていい」、と言うが渋る様子を見せたので、「ユウイチ様の名前を騙る意味を知らない王都の商人などおりません」と伝えると渋々、退出していった。
目の前に立つ男、エイビスに視線を戻すと静かに頭を下げてくる。
「初めまして、女王陛下。私は王都で居を構える商人のエイビスと申します。ゴードンとは仲が良くなかったので今まで城に来る事がなかった者です」
「今回の事にも色々、手を尽くしてくれたようで感謝します」
油断ならない相手だと直感したミレーヌは警戒レベルを最大にする。
勿論、ミレーヌが自分を警戒してる事に気付くエイビスであるが、気にせずに話を始める。
「いえいえ、私は王家の為に動いた訳ではありませんので感謝は要りません」
「では、これをキッカケに商売で儲ける為ですか?」
視線に冷たいモノを混ぜて語るミレーヌを動かない笑みで受け止める。
「ええ、商売の為でもありますね。ですが、3割程度の為ですよ」
「では、7割は?」
そう問いかけるミレーヌの言葉にエイビスは、今まで浮かべてた笑みが作り笑いだと分かる生きた笑みを見せてくる。
「ユウイチ様と切るに切れない太い縁を持つ為です。あの方は面白い。金の匂いもすこぶる最高なモノを感じますが、それ以上に私に悪態を吐いてくるあの方の全てが愛おしい」
それを見ていたゼクスは、どう判断したらいいか悩んでいるようだが、ミレーヌは変態だ、と思い、ゼクスを退出させるべきか真剣に悩みだす。
そこで我に返ったエイビスは、咳払いをすると最初の張り付いた笑みを浮かべると話を強引に戻してくる。
「そのユウイチ様が、ある事を予見して私に依頼されてきました。こちらでも調べは付いてますが一応、確認させて頂きます。ゴードン達に国庫を根こそぎやられてますね?」
確認と言っているが確信を持っていると判断したミレーヌは素直に肯定する。
その言葉に頷いたミレーヌを見て、エイビスは口を開く。
「ユウイチ様はその可能性をずっと前から予見されていたようです。私も上手過ぎる話だと思ってはいたのですよ。フリーガンを潰す時に廃薬と人身販売以外の利権は好きにして良いと言われてたのは」
そうエイビスが言ったのを聞いて、ゼクスにすらその先の流れを理解できた。勿論、ミレーヌも理解に至り、思わず腰を浮かせてしまう。
その様子に気付いているエイビスは頷く。
「そうです、ユウイチ様の依頼は、国に金を貸し出してやれ、と言われてこちらに伺いました。だいたいの懐事情は把握してるつもりですが、一応、見させてくれませんか?」
そう言うと知っているかのように予算の書類が固まってる辺りを指差すエイビスに苦笑するミレーヌはゼクスに頷いてみせる。
ゼクスは予算の纏めをエイビスに手渡す。
それを一読したエイビスは頷くと再びミレーヌに目を向ける。
「少し、こちらが調べたより状況は悪いようですが許容範囲です。この資金は私が融通しましょう。無担保、無利子でお貸しします」
「貴方は商人でしょう? そんな儲けのない話で終わるとは思えないのですが、何が狙いですか?」
真意を探るように見てくるミレーヌを失礼と分かりつつもクスクスと笑うエイビス。
「いえね、戦争が終わった後に行われる予定の盛大な結婚式の全権を私に頂きたいのですよ。勿論、その資金も全部、私持ちでさせて頂きますので」
ミレーヌとゼクスは顔を見合わせる。
まさかとは思うが、先程、ゼクスとの会話を聞いてたのかというぐらいタイミングの良い流れに汗が流れる。
おそらく、同じ内容だろうと分かるミレーヌは素知らぬ顔で、「どういう事ですか?」と聞き返す。
「どうもこうもありません。この国が今の時点ですら、ユウイチ様に支払える対価などありません。ならば、こういう時の定番は、姫を嫁にやるですが……この国の姫は幼すぎて、ユウイチ様の逆鱗に触れかねません。ならば、未亡人ではあるが若い女王の出番ではありませんか?」
ニヤニヤする笑みを浮かべるエイビスに澄ました顔をしたミレーヌは何でもないような顔をしてエイビスに問いかける。
「それで、協力してくれるのは、結婚式だけですか?」
「いえいえ、そこに至るまでを全力でバックアップさせて頂きます」
そういって見つめ合う2人は沈黙する。
沈黙して少し経つとどちらからとなく笑い始める。
「うふふふっ」
「フッフフッ」
笑い合う駄目な大人の見本みたいな2人を見つめるゼクスは、自分にとっても歓迎する事であるから見逃すが、立場上、自分も裏でこういう目に遭うかもしれないと学習し、心に刻む。
「「輝かしいナイファ国の為に」」
楽しそうに国の未来を夢見る2人を見て、こうやって外堀を埋められていく雄一を思い、きっとこういう事には気付いてないんだろうな、と苦笑する。
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