異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

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5章 DT、本気みせます!

146話 摩耗する心らしいです

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 ホーラに叩きつけられた雄一は、ムクりと起き上がり、服に付いた土埃を払う。

 安全が確認された事でアリアとミュウが戻ってくる。ミュウはよじ登り始め、アリアが抱っこをせがむように手を伸ばしてくるのを見て、雄一はアリアに問う。

「いいのか? レイアの寝てる馬車で後から来てもいいんだぞ?」

 雄一が到着した時、アリア達に連れられて向かった天幕にはレイアが寝ており、ゼクスに聞いた話では、まるで別人というより、急に大人になったようなレイアが乗り移ったかのような出来事があったらしい。しかも、そのレイアの忠告により、魔道砲の初弾を避ける事ができたらしい。

 それを聞いた雄一は心配をしてレイアの容体を見たが、寝てるだけという結果が弾き出される。若干、眠りが深いというぐらいしか特記する事がない。

 だが、それを隣で見ていたリューリカが腕を組んでレイアを覗きこんだ後、雄一に伝えてきた。

「どうやら、一度、心が離れたようじゃが、戻ってきて定着し直そうとしておるようじゃ」
「それは問題はないのか?」

 心配する雄一がリューリカに問うが、リューリカは深刻さの欠片もなくあっけらかんと答える。

「まったくない。とはいえ、1,2日は間違いなく寝ぱなしじゃろうな。それ以上寝ても起きない事態があれば、心配するのはそこからでいいのじゃ」

 本当に起きないかのかと雄一がレイアの頬を触っているとリューリカが、「無理矢理に起こして、心が壊れても知らんのじゃ」と言われて慌てて手を離す。

 そんな事があったから、アリアはずっとレイアの傍から離れないかと思っていた。だが、終始、雄一の傍におり、腕に抱かれてる時の体勢もいつもより身を寄せているように思え、尚且つ、どことなく不安そうにするアリアの様子が気になっていた。

 レイアの傍にいなくてもいいのか? と聞いた雄一の言葉にアリアは上げていた手と共に視線を下げる。

「少し、レイアがいない所で考えたい事があるから……」

 そう言うアリアを心配して、何があったかと問うが頑として答えず、首を横に振るだけであった。

 アリアが何に悩んでいるかは心配だが、話したがらない事を無理矢理聞くより、傍にいてやり安心させてやるのが今、雄一がすべき事と考えた。

 などと考えているとホーラが着替えを済ませて帰ってきたようで、雄一のカンフー服を返しにやってくる。

「助かったさ」

 投げつけて返すホーラの行動に苦笑を浮かべながらキャッチする。まだ少し怒っているようである。
 そんなホーラが復活したテツに文句を言われて、鬱陶しそうにする。

 だが、そんなホーラとテツを見て、雄一は胸を撫で下ろす。

 正直、少し心配していた事があった。

 ホーラやテツに戦争に参加させないほうが良かったか、と……


 雄一のひいき目があると判断してもホーラとテツは強い。雄一が良く2人に何かをさせていた事がチームワークの向上を進め、2人揃うとそこいらの者で相手になるものなどいない。

 2人が合わさった力は1000人を相手にしてもなんとかしそうだと判断していたが、まさか3000人を相手に立ち回ったと聞いた。その時は、2人の成長を喜ぶ気持ちと、それだけの相手をして、沢山、殺してきただろうと思い、外から見える成長は問題なくとも、心の問題を心配していた。

 まだ、心は思春期の多感なお年頃。そんな戦いを繰り広げた2人は人を殺す事が自然になってはいないかと、心配していたのである。

 冒険者とて人を殺す事がある。例えば、山賊などだ。

 だが、殺すと覚悟を決めてから行える。

 だが、戦争となると覚悟を決めようともあれだけの数がいて、人を殺すのが作業化してしまう恐れがあった。

 自分の心を守る為に作業化した事が同時に自分の常識を書き変えてしまう事がある。

 そうなると日常に戻ると周りとのズレを感じてその違和感から居場所を失くしてしまう。

 聞いた事がないだろうか? 戦争が終わった後の兵士が山賊、海賊に堕ちてしまうという話を。

 あれも大抵は平和な世界での生活の仕方を忘れた者達である。俗に言う、『俺達の戦争は終わってない』というヤツである。


 その心配を2人にした雄一は、丁度良いところでホーラがポプリをどうやって助けるつもりだったかと質問してきたので、ホーラを怒らせるような返答をしたのである。

 若干、怒らせ過ぎたが、いつものような反応を見せた2人にホッとする。

 それを踏まえて、ホーラ達を子供扱いばかりせずにそろそろ大人として認めていく必要があるかと前方で言い合いするホーラとテツを眺める。

 見つめる先のホーラは怒りが再燃したようで、「うっさい、テツ!」と叫ぶとテツのスネを蹴り飛ばして、屈んだところを踵落としを決める。

 それを見ていた雄一は眉を寄せる。

 今の角度は拙くないか? と。

 近くにいたポプリがテツを覗き込むと雄一に焦った様子のポプリが叫ぶ。

「ユウイチさんっ! テツ君、白目剥いてます!」

 それを聞いた雄一は盛大に溜息を吐く。

 テツに向かって歩き出すとホーラが申し訳なさそうにこちらを見てくる。どうやら、さすがにやり過ぎたと思ったようである。

 そんなホーラを呆れた顔で見つめる雄一は、テツの容体を見ながら2人の大人扱いはもうしばらくお預けだな、と頭をガリガリと掻いた。







 赤い髪をした男が激しい水音に反応して目を覚ます。

「おや? 目を覚ましてしまいましたか。そのまま寝てたほうが幸せでしたでしょうに」

 緊張感がない声がする方を見ると見つめた先には金髪をオールバックにする男がいた。

 それを睨みつつも拘束されて身動きが取れない事に驚いた様子を見せる。

「ああ、先に言っておいきますが、お約束の縄を解け、とか言わないでくださいね? 解くのは貴方が亡くなってからしか外す事はありませんから」

 ニコニコした笑みを見せながら言ってくる男に恐怖を覚えた男、パラメキ王は震える。

 そして、思い出すブロッソ将軍との約束を……

「わ、分かった。私が悪かった。公の場で謝罪をすると約束する」
「そんな話もありましたねぇ、そうアニキとお約束されてました」

 変わらず笑みを見せる男に言い知れない恐怖を通り越して、同じ生き物として見る事が出来なくなり始める。

 固まるパラメキ王に男はあっさりと言い放つ。

「それはアニキ相手にであって私とされた約束ではありませんので」

 パラメキ王は、はっきりと理解する。

 今の目の前にいる男と話す事は猛獣と話をするか、大蛇に体を縛られているところに話しかけると同義である事に気付かされる。

 震え出した体は止められず、生きる為の足掻きをする気力も奪われる。だが、残る欲求はこの男が何者かという事だけが残る。

 自分でも死んでしまうのに何故知りたいと思えるか分からないパラメキ王であるが自嘲しつつも問いかける。

「はっはは……お前みたいなのが真っ当なヤツな訳がない……」

 そう言った瞬間、どこかで良く似た人物を見たような感覚に襲われる。そして、思い出すと叫ぶ。

「お前、ジンス児童施設の出身か……人を辞めたクズがぁ!」

 罵るパラメキ王に一切表情を変えない男の後ろから黒装束の男が現れるとパラメキ王の口を押さえる。

 声を発する事もできずにもがくパラメキ王を物のように見つめる黒装束は腰から抜いた短剣をパラメキ王の喉元に添える。

 それを見ていた金髪の男が張り付いた笑みのまま、パラメキ王にお別れを告げる。

「名残惜しいですが……お別れです。アニキをこれ以上お待たせするのは心苦しいので」

 黒装束に頷いてみせて「やってください」と言うと黒装束は躊躇すら見せずにパラメキ王の喉元を切り裂く。

 声も上げる事もできずに陸に上げられた魚のようにのたうち回るパラメキ王を2人は冷めた目で見つめる。

 徐々に動きが緩慢になり、動かなくなるのを見つめた金髪の男は腰から剣を抜くと首を切断する。

 パラメキ王の頭を布に包むのを見つめていた黒装束が問いかける。

「リホウ、俺のような者達にできるのだろうか」

 そう静かに問われた金髪の男、リホウは初めて、素の表情を見せて悲しそうな笑みを見せる。

「ええ、勿論です。俺達のような者しかできない事があります。やってる事は同じでも、以前と違い、これにはその先に続く場所の温かい世界を守る事ができます」

 その温かい場所に本当の意味で居場所がないと悲しみを覚えるリホウは何かを堪えるように空を見つめる。

 黒装束の男は、リホウの様子を見て、淡々と「そうか……」と呟くと背を見せる。

 去ろうとする背にリホウは声をかける。

「俺達が夢見た場所を守り、そして、俺達のような者が二度と生まれない優しい世界に……」

 それが如何に夢物語であるかと2人は良く知っている。

 だが、それが夢想と言われようとも叶えたいと思う気持ちは誰にも負けてはいない。

 振り返った黒装束の男の目が子供の頃に見せたお互いの夢を語った時のように優しげになるのをリホウは気付く。

「ああ」

 その短い返事を返す黒装束の男であったが、リホウはそれで満足するように笑みを浮かべる。

「では、俺は、お前に頼まれている仕事をしてくる。何かあったらいつでも連絡をくれ」

 そう言うと黒装束の男はその場から姿を消す。

 それを見送ったリホウはパラメキ王の残る体を川に放り込む。

「俺達の新しい夢物語の為に頑張っていこう、なぁ、シャオロン」

 去った古い友達にそう語りかけるように言葉を洩らすリホウは雄一達がいると思われる場所へと歩き始めた。
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