異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

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5章 DT、本気みせます!

幕間 気付いた時は手遅れ

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 飛び去る雄一に向かって、憤慨した様子のポプリを後ろから眺めていたミレーヌは微笑ましげに見つめる。

 そして、周りを見渡すと雄一にやり込められた文官達も素直な笑みを浮かべている。普通なら笑みが浮かぶ事はないし、あって嘲笑であろう。

 ここが雄一の不思議な魅力である。

 敵対する立ち位置にいると恐怖の対象だが、敵に廻るのを嫌い、内側に入ると気付けば、その姿を目で追ってしまう、稀有な存在である。

 そんな事を考えているとナイファ城でエイビスに会った時の事を思い出していた。







「そうそう、ユウイチ様の事は色眼鏡で見られない事をお勧めしますよ?」

 王の間を退出しようとしてたエイビスがいきなり振り向いたと思ったら、そう言い放たれたミレーヌとゼクスは虚を突かれる。

 おそらく驚きが顔に出てしまったようで、エイビスの口元に小さな笑みが浮かぶ。

 それに気付いたミレーヌは、小さく咳払いをして問い返す。

「それはどういう意味ですか? 警告か脅しですか?」
「いえいえ、脅しなどしません。ですが、警告ですか……的外れではありませんね……」

 そう言ってくるエイビスに少し苛立ちを感じる。

 何故なら損得勘定から勿体ぶるように距離感を取ろうとしているのではなく、純粋にミレーヌの反応を楽しんでいるように見えた為である。

 そんなミレーヌの感情の動きを捉えたエイビスは、失敗したと苦笑するように困った顔をする。
 その様子からミレーヌが感じたモノが合っている事と少なからず、エイビスも悪い事をしたと反省をしているようである。

 エイビスほどの商人が自分の感情を読まれるような下手は打たない。

 だが、それを詳しく観察しなくても分かるように見せたのは、エイビスの誠意の表れと判断して先程の感情を飲み込む。

「申し訳ありませんが、腹芸せずに教えて頂けますか? 色々、バックアップして頂けるのでしょ?」
「本当に言葉通りなんですが、ユウイチ様を高く評価して見ようが、低く見ようが、そのギャップにやられるとお伝えして、常に自然体でおられるようにと思ったまでです」

 ミレーヌは、エイビスが何を言いたいのか、さっぱり分からず眉を寄せる。そのままの意味と言われても現時点で雄一がした事というのは偉業と言わずにはいられない。

 当然、高い評価をしているに決まっている。伊達に自分を切り売りするように嫁になろうと考えた訳ではない。

 だが、隣にいるゼクスが笑みを浮かべて頷いているのを見て、ミレーヌは見つめ、エイビスは同士を見つけたような顔をして話しかける。

「王子も既に?」
「ええ、本当に貴方は良く見ておられます。私も言われるまで気付いてませんでしたが、確かに私もそれにやられてしまった者です」

 2人が楽しそうに笑みを交わすのを見せられ、疎外感を味わうミレーヌは、自信を失ったかのように、おずおずと伺うように聞く。

「どういう事なの、ゼクス?」
「え―と、どうお伝えしたらいいか……素のユウイチ父さんに触れると理由とか条件とかどうでも良くなって、その温かいユウイチ父さんと繋がりを持っていたいと思えるんです」
「彼は、損得勘定の向こう側にいるのです」

 エイビスがそう言った瞬間、弾けるようにゼクスはそちらに見つめ、同意するように笑みを浮かべて頷く。

「さすが商人様です。どうか、僕がこの国を導く立場になったとしても良い関係をお願いします」
「有難きお言葉。こちらこそ、御贔屓にお願いしますよ」

 エイビスとゼクスが仲の良い親戚の伯父と甥のよう笑みを浮かべ合うのを見てミレーヌの混乱具合が加速する。

 理解に至れてないミレーヌをエイビスとゼクスは苦笑するように見つめる。

「そうですね、お母様は分からないままでも問題ないかもしれません。いずれ、身を持って知るでしょうし」
「王子も酷いですね。まあ、確かに、政治的配慮から1人の女としてに変わるだけといえば、その通りなので問題はありませんね」

 笑みを浮かべる2人に言われて、素晴らしい人物であるとは既に分かってると心で思いつつ、「そうですか」と気のない振りをする。

 それでもまだ、笑みを浮かべ続ける2人に見透かされているようで気分が悪かった。







 そんな事を思い出しながら雄一が飛び立った方向を見つめるミレーヌは自分の胸に手をあてると弾むように鼓動を打つ自分の心臓に、落ち着きなさいと心で苦笑する。

 先程、雄一が王の間から出ていく時、リューリカから4大精霊獣の残りの3体が見初めてこちらにやってきたと言われてからの行動と雄一の顔を思い出す。

 思い出すだけで、心が弾む。

 そして、頬が紅潮しそうになるのを意思の力で必死に抑え込む。

 だが、体を包む甘い痺れは抑える事ができずに我知らず、ミレーヌは自分を抱き締める。

 もしかしたら、初めてかもしれない。誰かにときめきを感じたのは……

 あれほど強者としての顔を持つ雄一が、戦いを挑みに来た訳ではなく好意を寄せてやってくるのが同時に3体いると知るだけで困った笑みを浮かべて、焦って逃げを打つのである。

 これは反則である。これは警戒していようとやられてしまう。

 あの時はいきなりの事だったので呆けてしまったが落ち着いてくるとあの時の雄一は、可愛かったのである。あんな大男が成す術もなく逃げる様子はギャップが激し過ぎる。

 ゼクスの言う通り、身を持って知ったし、あの時、理解してなくても何ら問題はなかった。

 こちらを楽しげに見つめるゼクスの視線に気付いたミレーヌは、少し拗ねた顔をして「イジワル」とゼクスに聞こえるように伝えると笑みを爆発させる。


 すると、後ろにやってくる人の気配に気付いて振り返ると文官達で、ミレーヌの前に来ると片膝を着いて頭を垂れる。

「まずは今までの怠慢、非礼をお詫びします」

 文官の代表が謝罪をするのをミレーヌは寛容に頷いてみせる。

「ユウイチ様も仰っていたようにこれからが大事なのです。貴方達の働きを期待してますよ?」

 文官達は更に深く頭を垂れて、「ナイファ国の為に粉骨砕身、力が及ぶ限り尽くします」と改めて、ナイファ、ミレーヌに忠誠を誓う。

 文官達に頭を上げるように言うと上げた面子の文官代表が楽しげにしてミレーヌに話しかける。

「しかし、彼は面白いですね?」
「彼とは?」

 誰の事を差しているのかは分かっていたが、正直、文官代表が雄一の事を好意的な感想を言うと思っていなかったからである。

「勿論、ユウイチ様の事です。正直な所、なんとか出し抜いて痛い目に合わせてやろうと思っておりました」

 ミレーヌが見つめていたように雄一が飛んで行った方向を目を細めて見つめる文官代表は、こちらに視線を戻して苦笑いを浮かべる。

「たった1人でナイファ軍、エルフ軍を怯ませる相手で、しかも我らより機転を見せ、尚且つ、彼の周りには優秀な者が集っている。こんな完璧な存在を認められるかっ! と思っておりました。ですが……」

 苦笑いから照れ笑いに変わる文官代表にミレーヌは微笑みを浮かべる。

「ですが?」
「それが求婚されそうだと分かると尻尾を撒いて逃げる……唖然としましたよ。同時に楽しいと思わされました。敵になるより近くで彼を見ていたい。ああ、ノーヒットDTとはこういう意味だったのかと、スッと心に収まり納得してしまいました」

 その言葉を聞いて、ミレーヌはクスクスと笑う。

 ミレーヌの後ろでは先程まで雄一に怨嗟の声を上げていたポプリも同じような顔をして笑みを浮かべていた。

 またここにも雄一にやられた被害者が生まれる。男女問わず見境なしである。

 その和やかな空気の今が例の話をするのに適していると判断する。その重要人物が不在であるが逆に考えれば好材料かもしれない。

 振り返るとポプリに例の話を今しましょうと伝えると嬉しげに頷かれる。

 2人は玉座のほうへと移動すると注目をこちらに向けさせる。

「皆の者、傾注せよ。これから色々、打ち合わせなどを予定していましたが先に大事な話をしようと思います。我らナイファ国とパラメキ国は兄弟国となります」

 ミレーヌの言葉にどよめきが起こる。

 そんなミレーヌに文官代表が眉を寄せて質問する。

「仰いたい事は分かりますが、それは支配するより難しいかもしれません。国民達からすれば、今までの事があり兄弟国と言われてもピンとこないでしょう。それを納得させるモノは何か考えが御有りなのでしょうか?」

 我に秘策あり、とばかりに笑みを浮かべるミレーヌに、一同から感嘆の声が漏れる。

「勿論です。ナイファ国の女王、パラメキ国の女王。私と現王女ポプリ様が同じ人の子を宿せば良いのです」
「確かに、10年ほどの時間はかかるでしょうが、自然な形で纏まるかもしれませんが、問題はその男性は?」

 そう問いかけてきたのは団長であったが、文官代表には誰か分かったようである。

 ミレーヌとポプリは顔を見合わせて笑みを浮かべる。

「それは、あの人ですよ」

 そう言うポプリが先程まで怨嗟の声を上げていた窓を見つめる。

 同じように見つめた団長も声を上げて理解に至ると興奮したように「それは素晴らしい!」と拳を握り、喜びを前面に出す。

「そう、彼は君臨はしても統治せず、といった方。そして、両国で彼を軽んじる人などいません。これ以上の人材はありませんよ」

 してやったりと笑みを浮かべるミレーヌを臣下達が万歳しながら褒め称える。

 その中で気付いたようにゼクスに近寄る文官代表が耳打ちする。

「こんな事をお伝えするのはどうかと思うのですが、王位継承権の問題が出てくると思われますが良いのですか?」
「ええ、生まれた子が王に成りたくないと言わない限りは譲るつもりです。私は、ユウイチ父さんの所でお世話になった時に夢ができたんですよ」

 本当に何でもないとばかり言うだけでなく、夢を語るゼクスの様子に驚きを隠せない文官代表は「夢とは?」と聞き返す。

「ご飯を作る人、料理人になりたいと思っています。だから、できたら王位を継ぐ気になる子が生まれる事を祈るばかりですよ」

 嬉しげに語るゼクスを眩しく思う文官代表はその優しい夢が叶うといいなと思う。と思うと同時に昨日までなら、不甲斐ないと断じていただろうと思うと苦笑する。

「話が上手く纏まって嬉しいわ」

 ゼクスの後ろにやってきたミレーヌがホッとした様子で立っているのを見て、文官代表は慌てて頭を下げるがミレーヌに気にしてないと言われる。

「我が子の理解もあって、臣下達も受け入れてくれて協力してくれる地盤ができて胸を撫で下ろす思いよ」
「商人様、エイビス殿も力を貸してくれると言ってたではありませんか?」

 ゼクスにそう言われたミレーヌは眉を寄せて嫌そうな顔をする。

「アテになりませんよ。あの人は私をダシにユウイチ様で遊ぼうとしてただけでしょうし?」

 拗ねたように明後日の方を見る母親を見る横顔の愛らしさを見たゼクスは大丈夫と思いつつも言う。

「僕達も協力はしますが、お母様が一番頑張らないとどうにもなりませんよ?」
「ゼクスはイジワルになったわ。ユウイチ様の所から帰ってからかしら?」

 そう言い合う親子は楽しげに笑みを浮かべる。

 仲慎ましい親子を見つめる文官代表は頷く。

「我らも全力でバックアップします。なんとしても成功させましょう。今度は私達が主役の楽しい戦争を始めましょう!」
「頼りにしてます」

 笑顔を振り撒くミレーヌに再び頭を垂れる文官代表は皆の下へと歩くミレーヌの後ろを着いていく。

 そして、今回の戦争の後片付けが済んだ頃、文官代表は宰相と呼ばれる事になる。


 こうして、雄一包囲網は作成されていくが、当の本人は勿論まだ知らない。
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