195 / 365
6章 DT、出番を奪われる?
173話 暴走らしいです
しおりを挟む
「嘘や冗談じゃない……そんな事言う理由もないか……」
「正確に言うなら、この場で取り押さえられるなら、拘束でも構わないのですぅ。野に放つと次、出会う時は子供達は勿論、ホーラも人格を破壊されて人形にされるのですぅ」
後顧の憂いを取り除くなら一思いに仕留めるのがいいのはホーラも理解できた。中途半端に生かして逃げられたら、目も当てられない。
ホーラもただでは済ませないとは思っていたが問答無用に命を刈り取って良いのか僅かなりの躊躇を見せた。
それを見たアクアが悲しそうな顔をしながら言葉を紡ぐ。
「それに、あのドラゴンを呼び出せて、尚且つ、地竜があれだけ呼び出せたという事は100人近い人の命を捧げたはずです。もう人として真っ当に生きるのは無理でしょう」
戦争や戦いでの命のやり取りであれば、良くはないが致し方がないところがある。
命を奪い、自分の命を明日に繋げる為、家族の為と自分を偽る事で心を守れる。
だが、ジャスミンは人の命をエネルギーのようにしか見ていない。誰かの為にという訳でもなく明日を生きる為でもない。
鬱積した感情を吐き出す為にやっている。
たまたまであるがテツとのやり取りや、レイアの声かけを受けても、躊躇する様子すらない。
つまり、人として人の和に混じれない所まで行ってしまった事を示していた。
「辛い役を押し付けてごめんですぅ」
「いいさ、ちっちゃい奴らは勿論、テツもなんだかんだ言って女には甘いさ。この場でそれを実行に移せるのはアタイだけさ」
肩を竦めるホーラはジャスミンがいる方向に体を向ける。
そんなホーラにアクアは声をかける。
「だからと言って、ホーラが傷つかないという話じゃない、という事をシホーヌは謝ってるのですよ?」
そう声をかけてくるアクアとシホーヌを交互に見て背を向ける。
「有難う」
そう呟くとホーラはジャスミン目掛けて飛び出す。
投げナイフを取り出すと躊躇も見せずにジャスミンに放つ。
ジャスミンは気付かなかったが、ドラゴンがホーラの投げナイフに気付き、尻尾で薙ぎ払い、ナイフを弾く。
それでやっとホーラに狙われたと気付くジャスミン。
恐怖に顔を歪めながら、甘ったれた事を口にする。
「ヒィィ! 操ってる奴から攻撃するなんて、邪道よ!」
「はぁ? 殺し合いで急所を避け合って戦うなんて有り得ないさ? テツ、ドラゴンはアンタがしっかり抑えておきな!」
「分かりました。ドラゴンはお任せください。そちらはお願いします」
そう言うとテツは更に加速させてドラゴンを翻弄しながら、鱗をどんどん傷つけていく。
更に加速したテツを見て、ジャスミンは叫ぶ。
「コイツ、何者よ! どんなチート持ってるのよ?」
自分が持ってない能力をテツが持ってると思って、羨望を通り越して激しい嫉妬に身を焦がす。
そんなジャスミンの二の腕にナイフが刺さる。
「ぎゃぁぁ!! 痛い、痛い、痛い!!! 始めるって言ってないのに横を向いてる状態の私に攻撃するとか、頭がおかしいでしょ!!」
涙だけではなく、鼻水も垂らし、見るに耐えない顔を晒すジャスミンを相手にしているように見えないホーラは投げナイフの調子を調べるようにしながら答える。
「何度も同じ事を言わせるんじゃないさ。試合じゃない。アンタが不意打ちするのは良くて、されるのは駄目とか……アンタが背後から刺し殺した村長達に謝ってくるさ」
「私はいいの! だって主人公だから! だいたい死んだ奴にどう謝れと言うの?」
痛みから脂汗を流しながらも、まったく自分の言ってる事に間違いはないとばかりに悪態を吐いてくるジャスミン。
力みのない顔をしたホーラが、簡単だとばかりに両手に投げナイフを持ちながら答える。
「分からない? じゃ、アタイが謝らせに行かせてやるさ」
2本同時にナイフをジャスミン目掛けて投げる。
ジャスミンは情けない声を上げながら逃げ惑い、掠らせた痛みに声を上げる。
動きが明らかに素人なジャスミンをいたぶるように攻撃しているように見えるが、実の所は違った。
ホーラは今の攻撃で仕留めるつもりで投げ放っていた。
先程の腕に刺さったナイフも本当なら胸を一突きさせている予定であった。
ホーラは、雄一と出会い、投擲の才能を見出されてから一日も欠かさず腕を磨き続けてきている。
たかが、10m程しか離れてない距離で遅く、素人な動きをするようなジャスミンに狙いを外されるようなホーラではない。
武器も時間が空き次第、1日何度となくチェックをしていて不具合などはないと思いつつも、最初にナイフの調子を疑った。
投げる前にチェックした投げナイフには、なんら問題がないのは分かった上で投げたら、掠らせるだけで避けられる。
だが、チェックした投げナイフを投げる時に見つめたジャスミンを見た時、違和感があった事にホーラは気付いた。
この感覚には覚えがあった。
雄一やテツが使う歩行をされた時の距離誤認に似ていた。
おそらく、ジャスミンの心理操作が無意識に発動してるのだろうとアタリを付ける。
かなり厄介な能力である。
意識せずに発動してるようで、ホーラのような遠距離型の天敵かもしれない。使いこなしてない今ですら、この厄介さを考えると時間をかける訳にはいかないとホーラは判断する。
未だ、歩行の完全に打ち破る術はホーラにはない。
だが、1つだけ打開策だけは持っていた。
ホーラは投げナイフを掴めるだけ掴むとジャスミンがいる方向に適当に投げるように放つ。
それを何度も繰り返すホーラを見て、嘲笑うジャスミンは少し余裕を取り戻したようだ。
「何、貴方? まともに狙いもつけられないのに投げナイフなんて使ってたの? カッコイイとかが理由? 中二、乙ぅ!」
痛みから脂汗を流しながらも、ゲラゲラと笑うジャスミンであったが、不意に笑いを止める。
何故なら、ホーラが投げるナイフが前方の空中で止まり出した為である。
慌てたジャスミンが辺りを見渡すと後方も左右も刃をジャスミンに向けた状態で空中待機しているのに気付き、声を震わせる。
「アンタ、何をやってるの……」
ホーラはその言葉に反応せずに、まだ隙間がある場所にナイフを放り続ける。
「どこから、そんなにナイフを出せるのよ! もしかして、アイテムボックス持ち!?」
「はぁ? これは女の嗜みさ。教わった相手がシホーヌというところは色々、思う所はあるさ。でも、ようは使いこなすかどうかさ」
実のところ、教わったものの理屈はホーラ自身も分かってはいない。
だいたい教えたのがシホーヌで、
「ここがこうして、ズバッとですぅ! 違うのですぅ、それだとスパッとですぅ!」
といった感じで教わってる本人がさっぱり理解できなかった。
だが、数々のシホーヌ語を聞かされて、いい感じに脳がとろけ出して、ハッと我に返った時、できるようになっていたらしい。
そのおかげで無制限とは言わないがカバンを背負ってるぐらいの容量を持ち歩く事に成功していた。
閑話休題
最後の1本を投げたホーラは震えるジャスミンを見つめる。
「アンタ、何しようとしてる! この笑えない状況は何っ!!」
ジャスミンを覆うように全方向に浮いたナイフがジャスミンに狙いをつけていた。
そう、間隔がおかしくなってるなら、逃げ場がなくなる全方位からの一斉攻撃をすればいいという暴力的な、とてもホーラらしい考えである。
「もう避けようと思わないさ? 潔く終わりさ」
「このクソアマがぁぁ!!!」
そう感情を爆発させて叫ぶジャスミンを中心に力の奔流が起こり、暴れ始める。
それを見たシホーヌがアクアに頼む。
「アクア、子供達を守る結界をお願いするのですぅ!」
「はいっ!」
そうすぐに返事すると頭を抱えてしゃがむ子供達を覆う結界を生み出す。
結界に覆われて頭を抱えてた子供達は周りを見渡しながら立ち上がる。
「何が起こったの? 急に頭に手を突っ込まれたような感覚に襲われたの!」
そう呟くスゥに他の子供達も同じように思ったようで頷いて見せる。
「間に合って良かったです。もう少しで貴方達はあの女の操り人形にされるところでした」
「えっ? そうなるとホーラ姉さんとテツ兄さんも危ない?」
アクアの言葉にアリアが答えるとその可能性に気付いた子供達が2人を見つめる。
見つめる先には頭を抱えた2人が蹲っていた。
ホーラは苦痛に歪んだ顔をしつつも待機させてたナイフをジャスミンに放つが隣にいるドラゴンが発するエネルギーに弾かれる。
それを見たレイアが飛び出そうとするのをアクアが止める。
「待ちなさい。貴方がこの結界から出たら操り人形にされますよ!」
「で、でも、ホーラ姉とテツ兄がぁ!!」
涙を浮かべてアクアの手を振りほどこうとするが、アクアは頑として離さない。
「大丈夫です。シホーヌが向かってますから、2人が受けているモノに対処するはずです」
そう言いながらアクアが見つめる先ではシホーヌが走りながらホーラ達に駆け寄る姿があった。
駆け寄ったシホーヌは2人に触れ、神気を送り、正気に戻すと結界を張り、その中へと2人を引きずりこむ。
「2人共、大丈夫ですぅ?」
「あっ、はい、なんとか、ちょっと記憶が飛んでるところがありますが……」
「脳を掻きまわされたような感じで吐きそうだけど、一応、無事さ。あれがシホーヌが言ってた心理操作?」
言葉からのイメージから、かけ離れた威力を放ってるように思ったホーラが質問すると頬に汗を滴らせたシホーヌが告げる。
「違うのですぅ。暴走して、上位版に切り替わったのですぅ。心理操作は勿論、心、体のリミッターを解除させることまでできるようになってしまったのですぅ」
本当に猶予が無くなったと悔しそうにシホーヌは呟く。
それを見たホーラはテツを見つめる。
見つめられたテツは苦笑しつつ、
「勿論、お付き合いしますよ」
と告げるとホーラは、
「有難う、アンタのフォローにはいつも助かってるさ」
いつもなら決して言わないような愁傷な言葉が漏れる。
そんな2人のやり取りがおかしいと思ったシホーヌが2人を交互に見つめる。
「シホーヌさん、子供達を連れてここから避難してください」
「どうすると……まさか! それは駄目なのですぅ! ここまで進行したらユウイチが来るまで逃げるしかないですぅ!」
命をかけて、ジャスミンを止めようと腹を括った2人の気持ちを理解したシホーヌが必死に説得しようとする。
「心配してくれて有難いさ。でもね、アタイ達がやらないといくらアンタ達がいても子供達が無事逃げれるかアヤシイさ、それに……」
「そう、僕達を僕達にしてくれたユウイチさんは言いました。「取り返しがつく無茶はいくらでもやれ、取り返しがつかない無茶は覚悟を決めてから」と、これは覚悟を決める必要があると僕達は思います。もう、僕達は覚悟を決めたんです。みんなをお願いします」
そう言うと2人はシホーヌの結界から飛び出していく。
2人を止める為に動こうかと一瞬、悩むが2人の想いを無駄にはできないと判断したシホーヌは目尻に涙を浮かべながら、必死に結界を張るアクアの下へと走る。
「ユウイチのバカっ! もうちょっと融通が効いて、命惜しさに尻込みするような教育をしとくのですぅ!!」
この場にいないユウイチに文句を告げると袖で涙をシホーヌは拭った。
「正確に言うなら、この場で取り押さえられるなら、拘束でも構わないのですぅ。野に放つと次、出会う時は子供達は勿論、ホーラも人格を破壊されて人形にされるのですぅ」
後顧の憂いを取り除くなら一思いに仕留めるのがいいのはホーラも理解できた。中途半端に生かして逃げられたら、目も当てられない。
ホーラもただでは済ませないとは思っていたが問答無用に命を刈り取って良いのか僅かなりの躊躇を見せた。
それを見たアクアが悲しそうな顔をしながら言葉を紡ぐ。
「それに、あのドラゴンを呼び出せて、尚且つ、地竜があれだけ呼び出せたという事は100人近い人の命を捧げたはずです。もう人として真っ当に生きるのは無理でしょう」
戦争や戦いでの命のやり取りであれば、良くはないが致し方がないところがある。
命を奪い、自分の命を明日に繋げる為、家族の為と自分を偽る事で心を守れる。
だが、ジャスミンは人の命をエネルギーのようにしか見ていない。誰かの為にという訳でもなく明日を生きる為でもない。
鬱積した感情を吐き出す為にやっている。
たまたまであるがテツとのやり取りや、レイアの声かけを受けても、躊躇する様子すらない。
つまり、人として人の和に混じれない所まで行ってしまった事を示していた。
「辛い役を押し付けてごめんですぅ」
「いいさ、ちっちゃい奴らは勿論、テツもなんだかんだ言って女には甘いさ。この場でそれを実行に移せるのはアタイだけさ」
肩を竦めるホーラはジャスミンがいる方向に体を向ける。
そんなホーラにアクアは声をかける。
「だからと言って、ホーラが傷つかないという話じゃない、という事をシホーヌは謝ってるのですよ?」
そう声をかけてくるアクアとシホーヌを交互に見て背を向ける。
「有難う」
そう呟くとホーラはジャスミン目掛けて飛び出す。
投げナイフを取り出すと躊躇も見せずにジャスミンに放つ。
ジャスミンは気付かなかったが、ドラゴンがホーラの投げナイフに気付き、尻尾で薙ぎ払い、ナイフを弾く。
それでやっとホーラに狙われたと気付くジャスミン。
恐怖に顔を歪めながら、甘ったれた事を口にする。
「ヒィィ! 操ってる奴から攻撃するなんて、邪道よ!」
「はぁ? 殺し合いで急所を避け合って戦うなんて有り得ないさ? テツ、ドラゴンはアンタがしっかり抑えておきな!」
「分かりました。ドラゴンはお任せください。そちらはお願いします」
そう言うとテツは更に加速させてドラゴンを翻弄しながら、鱗をどんどん傷つけていく。
更に加速したテツを見て、ジャスミンは叫ぶ。
「コイツ、何者よ! どんなチート持ってるのよ?」
自分が持ってない能力をテツが持ってると思って、羨望を通り越して激しい嫉妬に身を焦がす。
そんなジャスミンの二の腕にナイフが刺さる。
「ぎゃぁぁ!! 痛い、痛い、痛い!!! 始めるって言ってないのに横を向いてる状態の私に攻撃するとか、頭がおかしいでしょ!!」
涙だけではなく、鼻水も垂らし、見るに耐えない顔を晒すジャスミンを相手にしているように見えないホーラは投げナイフの調子を調べるようにしながら答える。
「何度も同じ事を言わせるんじゃないさ。試合じゃない。アンタが不意打ちするのは良くて、されるのは駄目とか……アンタが背後から刺し殺した村長達に謝ってくるさ」
「私はいいの! だって主人公だから! だいたい死んだ奴にどう謝れと言うの?」
痛みから脂汗を流しながらも、まったく自分の言ってる事に間違いはないとばかりに悪態を吐いてくるジャスミン。
力みのない顔をしたホーラが、簡単だとばかりに両手に投げナイフを持ちながら答える。
「分からない? じゃ、アタイが謝らせに行かせてやるさ」
2本同時にナイフをジャスミン目掛けて投げる。
ジャスミンは情けない声を上げながら逃げ惑い、掠らせた痛みに声を上げる。
動きが明らかに素人なジャスミンをいたぶるように攻撃しているように見えるが、実の所は違った。
ホーラは今の攻撃で仕留めるつもりで投げ放っていた。
先程の腕に刺さったナイフも本当なら胸を一突きさせている予定であった。
ホーラは、雄一と出会い、投擲の才能を見出されてから一日も欠かさず腕を磨き続けてきている。
たかが、10m程しか離れてない距離で遅く、素人な動きをするようなジャスミンに狙いを外されるようなホーラではない。
武器も時間が空き次第、1日何度となくチェックをしていて不具合などはないと思いつつも、最初にナイフの調子を疑った。
投げる前にチェックした投げナイフには、なんら問題がないのは分かった上で投げたら、掠らせるだけで避けられる。
だが、チェックした投げナイフを投げる時に見つめたジャスミンを見た時、違和感があった事にホーラは気付いた。
この感覚には覚えがあった。
雄一やテツが使う歩行をされた時の距離誤認に似ていた。
おそらく、ジャスミンの心理操作が無意識に発動してるのだろうとアタリを付ける。
かなり厄介な能力である。
意識せずに発動してるようで、ホーラのような遠距離型の天敵かもしれない。使いこなしてない今ですら、この厄介さを考えると時間をかける訳にはいかないとホーラは判断する。
未だ、歩行の完全に打ち破る術はホーラにはない。
だが、1つだけ打開策だけは持っていた。
ホーラは投げナイフを掴めるだけ掴むとジャスミンがいる方向に適当に投げるように放つ。
それを何度も繰り返すホーラを見て、嘲笑うジャスミンは少し余裕を取り戻したようだ。
「何、貴方? まともに狙いもつけられないのに投げナイフなんて使ってたの? カッコイイとかが理由? 中二、乙ぅ!」
痛みから脂汗を流しながらも、ゲラゲラと笑うジャスミンであったが、不意に笑いを止める。
何故なら、ホーラが投げるナイフが前方の空中で止まり出した為である。
慌てたジャスミンが辺りを見渡すと後方も左右も刃をジャスミンに向けた状態で空中待機しているのに気付き、声を震わせる。
「アンタ、何をやってるの……」
ホーラはその言葉に反応せずに、まだ隙間がある場所にナイフを放り続ける。
「どこから、そんなにナイフを出せるのよ! もしかして、アイテムボックス持ち!?」
「はぁ? これは女の嗜みさ。教わった相手がシホーヌというところは色々、思う所はあるさ。でも、ようは使いこなすかどうかさ」
実のところ、教わったものの理屈はホーラ自身も分かってはいない。
だいたい教えたのがシホーヌで、
「ここがこうして、ズバッとですぅ! 違うのですぅ、それだとスパッとですぅ!」
といった感じで教わってる本人がさっぱり理解できなかった。
だが、数々のシホーヌ語を聞かされて、いい感じに脳がとろけ出して、ハッと我に返った時、できるようになっていたらしい。
そのおかげで無制限とは言わないがカバンを背負ってるぐらいの容量を持ち歩く事に成功していた。
閑話休題
最後の1本を投げたホーラは震えるジャスミンを見つめる。
「アンタ、何しようとしてる! この笑えない状況は何っ!!」
ジャスミンを覆うように全方向に浮いたナイフがジャスミンに狙いをつけていた。
そう、間隔がおかしくなってるなら、逃げ場がなくなる全方位からの一斉攻撃をすればいいという暴力的な、とてもホーラらしい考えである。
「もう避けようと思わないさ? 潔く終わりさ」
「このクソアマがぁぁ!!!」
そう感情を爆発させて叫ぶジャスミンを中心に力の奔流が起こり、暴れ始める。
それを見たシホーヌがアクアに頼む。
「アクア、子供達を守る結界をお願いするのですぅ!」
「はいっ!」
そうすぐに返事すると頭を抱えてしゃがむ子供達を覆う結界を生み出す。
結界に覆われて頭を抱えてた子供達は周りを見渡しながら立ち上がる。
「何が起こったの? 急に頭に手を突っ込まれたような感覚に襲われたの!」
そう呟くスゥに他の子供達も同じように思ったようで頷いて見せる。
「間に合って良かったです。もう少しで貴方達はあの女の操り人形にされるところでした」
「えっ? そうなるとホーラ姉さんとテツ兄さんも危ない?」
アクアの言葉にアリアが答えるとその可能性に気付いた子供達が2人を見つめる。
見つめる先には頭を抱えた2人が蹲っていた。
ホーラは苦痛に歪んだ顔をしつつも待機させてたナイフをジャスミンに放つが隣にいるドラゴンが発するエネルギーに弾かれる。
それを見たレイアが飛び出そうとするのをアクアが止める。
「待ちなさい。貴方がこの結界から出たら操り人形にされますよ!」
「で、でも、ホーラ姉とテツ兄がぁ!!」
涙を浮かべてアクアの手を振りほどこうとするが、アクアは頑として離さない。
「大丈夫です。シホーヌが向かってますから、2人が受けているモノに対処するはずです」
そう言いながらアクアが見つめる先ではシホーヌが走りながらホーラ達に駆け寄る姿があった。
駆け寄ったシホーヌは2人に触れ、神気を送り、正気に戻すと結界を張り、その中へと2人を引きずりこむ。
「2人共、大丈夫ですぅ?」
「あっ、はい、なんとか、ちょっと記憶が飛んでるところがありますが……」
「脳を掻きまわされたような感じで吐きそうだけど、一応、無事さ。あれがシホーヌが言ってた心理操作?」
言葉からのイメージから、かけ離れた威力を放ってるように思ったホーラが質問すると頬に汗を滴らせたシホーヌが告げる。
「違うのですぅ。暴走して、上位版に切り替わったのですぅ。心理操作は勿論、心、体のリミッターを解除させることまでできるようになってしまったのですぅ」
本当に猶予が無くなったと悔しそうにシホーヌは呟く。
それを見たホーラはテツを見つめる。
見つめられたテツは苦笑しつつ、
「勿論、お付き合いしますよ」
と告げるとホーラは、
「有難う、アンタのフォローにはいつも助かってるさ」
いつもなら決して言わないような愁傷な言葉が漏れる。
そんな2人のやり取りがおかしいと思ったシホーヌが2人を交互に見つめる。
「シホーヌさん、子供達を連れてここから避難してください」
「どうすると……まさか! それは駄目なのですぅ! ここまで進行したらユウイチが来るまで逃げるしかないですぅ!」
命をかけて、ジャスミンを止めようと腹を括った2人の気持ちを理解したシホーヌが必死に説得しようとする。
「心配してくれて有難いさ。でもね、アタイ達がやらないといくらアンタ達がいても子供達が無事逃げれるかアヤシイさ、それに……」
「そう、僕達を僕達にしてくれたユウイチさんは言いました。「取り返しがつく無茶はいくらでもやれ、取り返しがつかない無茶は覚悟を決めてから」と、これは覚悟を決める必要があると僕達は思います。もう、僕達は覚悟を決めたんです。みんなをお願いします」
そう言うと2人はシホーヌの結界から飛び出していく。
2人を止める為に動こうかと一瞬、悩むが2人の想いを無駄にはできないと判断したシホーヌは目尻に涙を浮かべながら、必死に結界を張るアクアの下へと走る。
「ユウイチのバカっ! もうちょっと融通が効いて、命惜しさに尻込みするような教育をしとくのですぅ!!」
この場にいないユウイチに文句を告げると袖で涙をシホーヌは拭った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜
月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。
※この作品は、カクヨムでも掲載しています。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る
伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。
それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。
兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。
何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる