異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

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8章 DT、海を渡る

220話 下らなくて上等のようです

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 キセルを咥えながら眉を寄せる巴は溜息と共に紫煙を吐く。

 倒れて動けないヒースに近寄り、前回のようにキセルを引っ繰り返して火種を落とす。
 すると、みるみるうちに傷が塞がっていく。

 傷が塞がると立ち上がろうとするヒースに巴は言う。

「無理に動こうとせんでいいのじゃ、傷は塞がるが体力までは戻らんからのぉ」

 そういいつつ、ヒースを通り過ぎてレイアと射線上に立つとおざなりに拍手をする。

「まずは、おめでとうかのぉ? 気を扱う実践慣れができてないとはいえ、よくぞ、ヒースから勝ちをもぎ取った。じゃが、お前がご主人の言う事をしっかり聞いておれば、そんなギリギリの勝負をしなくて済んだじゃろうがな?」

 巴はキセルに火種を入れ咥える。

 犬歯を見せながら、小馬鹿にした風に紫煙を吐き出しながら立ってるのがやっとのレイアに話しかける。

「もしや、忘れておらんか? ヒースとの戦いは敗者復活戦。本戦じゃないのじゃ。続けるかえ?」
「……たっりめえだろ。その為にここに来たんだ」

 息絶え絶えのレイアは眼光だけは衰えさせずに巴を睨みつける。

 だが、後方で見ているホーラ達はレイアの気持ちは買うが、もう勝負という次元でないと冷静な判断を下していた。

 おそらく、巴が歩いて近寄ってキセルを振って勝負は終了だろう。

「レイア、退くさ」
「嫌だっ!」

 叫ぶだけでも肩で息をするレイアはホーラの忠告を弾く。

「ここで退いたら、コイツは今度はきっと相手にしない。3度目のチャンスはくれるような甘いヤツじゃない」

 そう言うレイアの言葉に巴はニヤニヤと笑い、肯定も否定もしてこない。

 ホーラ達も、苦々しくも巴ならありそうな事だと奥歯を噛み締める。

「それにもう嫌なんだ……あの馬鹿が自分の教え方が悪くて、アタシ達が心折れた事に悔やむ姿を見るのは……」

 俯き、肩を震わせるレイアの懺悔のような言葉が続く。

「悪いのはアタシ達だ。たいした考えもなく、なんとかなる、自分達は強い。死ぬなんて事は自分達以外の者だけについて回るモノ。何かあっても……誰か、きっとアイツが助けてくれると思ってた……」

 レイアの独白を聞いていたアリア達の顔が強張る。

 4人とも多かれ少なかれ、レイアが言うような事を考えていた事を自覚した為であった。

 レイアは正面にいる巴を睨みつける。

「アンタがどんな思惑があって、こんなことしてるのか分からないし、もう今更知りたいとも思わない。でも、アタシがやる事は一つなんだ!」

 拳を握り締めて、巴に構えるレイア。

「ぱ、パーティメンバーが1人はぐれて、モンスターに遭遇。それを辛くも撃退したのも束の間、今度はドラゴンと相対した所でパーティメンバーが合流。おかしな話の流れじゃないですよね? 巴さん」

 若干、足を震わせたダンテがレイアの横にやってきながら、巴を見つめて話しかける。

「そうじゃのぉ、至って自然な流れじゃ」

 どこか楽しげな巴の反応にダンテは、「どうも」とぎごちなく笑みを浮かべる。

「ダンテ、アンタ……」
「ごめんね、レイア。男のクセに意気地がなくて見守る事しかできなかった。僕もね、ユウイチさんがそんな顔してると知ったらね……僕はユウイチさんのように……ゲハッ」
「ミュウは、最強の女になる。ユーイと番になって、最強のパパとママになる」

 へっぴり腰だったダンテのケツをミュウが蹴飛ばし、ミュウが登場する。

 ダンテは不意打ちだったので顔から地面に落ちる。

 口に入った土を吐き出すダンテにミュウは指差す。

「ダンテ、格好いい事言う時、足震わせる、ダメ。ユーイはそういう時、きっと笑う」
「ははっ、有難う、ミュウ。気合いが入ったよ」

 しっかりと大地を踏みしめるようにダンテは立ち上がる。



 そんな3人を見つめるホーラ達は苦々しく呟く。

「あの中身が劣化テツと本能で突っ走る馬鹿が……」
「正直、真正面から挑んで勝てる相手ではありません。レイア達が勝利条件に気付けるかどうかが鍵です」

 アリア達に口を開かせるキッカケにするつもりで聞いた事の顛末を考えるに、巴の行動には疑問が残る行動が目に余った。

 何故、巴が自分の力に枷を付けているか、どうして、最初の段階でレイア達に認識できる速度がどの程度か調べるように挑発していたのかをレイア達が気付ける事ができれば……

「見守ってあげましょう。僕達の可愛い弟と妹達です」

 テツはヒースとの戦いを見守る時のように落ち着いた瞳でレイア達を見つめる。

 落ち着いたテツの様子を見て、まるで自分達がレイア達を信じてないような流れになっている事に不満に感じたホーラとポプリは、お互いの顔を見合わせて頷き合う。

 それを横で見ていたシャーロットはテツの冥福を神に祈った。



「私は、口だけの王女になりたくなかったの。綺麗事だけ並べても守れないモノがある。自分の身が傷つく事を恐れず守れる王女、いえ、人になりたかったの。でも、このままじゃ、口だけの人より駄目な人になるの」

 スゥが一歩前を歩き、その後ろをアリアがついてくるようにやってくる。

「細かい御託は言わない。私はユウさんのお嫁さんになる。こんな事で震えてたらユウさんのお嫁さんしてられない。筆頭嫁アリアの名にかけて!」

 アリアに振りかえるスゥが半眼で見つめる。

「1番は私だと思ってたの」
「誰だって間違いはある。後でしっかりと説き伏せてあげる」

 火花を散らす2人を見つめるレイアが弱った声を洩らす。

「アリア、時と場所を選んだ事を言ってくれよ。後、アイツとの結婚はアタシは反対だからな?」

 父親と認めた相手が双子の姉の旦那というのは複雑な気分以外の何物でもないレイアの全力の本音であった。



「あの馬鹿たれ共が、何が筆頭だ、1番さ」
「本当に……後でしっかりとお話し合いの時間を作ってあげませんと……ほっほほ」
「み、見守ってあげましょう、ねっ? 可愛い妹達じゃありませんか?」

 今日一番の暗い目をするホーラとポプリにテツが必死に説得するのを横目で見守るシャーロットは、自分の祈りでテツの生命の危機は去ったようだ。ただ、別の危機が生まれたようだが、自分には関係ないと頷く。

「私は主の一番傍でお仕えする。結婚は二の次でいい」

 ねえぇ? と隣にいるメリーに笑いかけるとメリーは訳も分かってないだろうが、ニパーと笑みを返してくる。

 だが、シャーロットは失念していた。

 そっち方面では、ダンテの姉、ディータという大きな壁が存在していた事を……




 レイアの周りに4人が集い、巴を睨みつけるようにするのを全身で受け止める巴は、カッカカ、と楽しげに笑い飛ばす。

「何やら、格好良い高みの話から、下らん話、下らん過ぎて撫でてやりたい理由まで出揃ったのじゃ」

 キセルをビュッと空気を切る音をさせてレイア達に突き付ける巴は犬歯を見せて笑う。

 どうやら、撫でるというのはそう言う意味らしい。

「下らなくて上等! アタシ達は、その想いがあれば戦える」

 そういうレイアは拳を握り締める。

 レイアに呼応するようにアリア達も得物を手にする。

「散開!」

 ダンテの言葉と共にレイア達は巴を中心に円を描くように構える。

 レイア達を睥睨する巴は鼻で笑う。

「さて、どれくらい本気か見てやるのじゃ」

 その言葉と同時に巴から紫色のオーラが立ち登ったと同時にレイア達に凄まじいプレッシャーが襲う。

「うらぁ! 今更、そんなコケ脅しにビビるかよ!!」

 気合い一閃、レイアは丹田から生み出した気で弾き飛ばす。

 アリア達も魔法だったり、気合いで乗り越える。

 生きた目をするレイア達を見つめて嬉しげに獰猛な笑みを浮かべる巴は静かに告げる。

「かかってこい」

 巴との2度目のレイア達にとって譲れない戦いの火蓋が切られた。
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