異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

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9章 DTの後継者候補!

253話 『運命の導き手』らしいです

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 黒髪を短く刈りツンツンな感じに立たせた若干垂れ目な少年、徹が二刀を仕舞い、鼻の下を擦る。

「決まったな!」
「決まったなの!」

 少年の横で寝起きの猫のようにどことなくボケたような目をする青い髪の少女、ルナが、えっへん、と胸を張る。

 徹はテツ達に指差していき、念押しするように言う。

「そういう訳で俺達は逃亡中だから、追手に掴まった時のフォローは頼むぞ!」
「はぁ……」

 呆けた返事を返すテツは隙だらけだが、啓太が突然現れた2人、徹とルナに注目してテツに意識を向けていなかった。

 不意打ちだったとはいえ、いとも簡単にブラックドラゴンを吹き飛ばす2人に注意を向けるのは当然といえば当然であった。

 啓太の攻撃を数多く食らい、体力を奪われ過ぎて息が荒れ、汗だくになってるテツを眺めて苦笑いを浮かべる。

「想像以上にズタボロだな? まだ動けるか?」

 テツに言葉を投げかけた徹がホーラとポプリに視線を向けると突然、男前の顔になる。

 音速を超えたかのような動きをして距離を詰めた徹が手近にいたポプリの両手をそっと掴む。

「お嬢さん、大丈夫ですか? すぐに俺が回復魔法で癒して差し上げます!」

 言葉は丁寧だが鼻息を荒く、鼻の下を伸ばしながら視線を走らせまくる。

 ギュンギュン、と音が鳴るのではという程の動きをさせながらホーラとポプリの体を舐めるように見つめる徹。

 ホーラとポプリはブラックドラゴンの攻撃で服がはだけたり、破れから下着がチラッと見えたりしていた。

 ホーラとポプリにしても、ここまで露骨にジロジロ見られた事もなく悪意ゼロの良く言えば小さな少年のような徹に全力で呆れて前を隠す気すら起きずにいた。

 あちこちに視線を飛ばしていた徹がついにポプリのはだけた胸元に視線をロックオンしたと思ったら凄く幸せそうな顔をして叫ぶ。

「おっと、顔が滑ったぁ~!」
「顔が滑るわけないのぉ!」

 当たりどころがマズイとヤバい後頭部を遠慮を感じさせない拳を入れられて地面に顔から着地させられる徹。

 目の前で見てたホーラとポプリは、間違いなく死んだ! と思わされたが、殴られた本人は後頭部を両手で押さえながら飛び起きる。

「何するんだ、ルナ! 死んだらどうする!」
「徹がそれぐらいで死んだら苦労ないの! 100回ぐらい死なないとそのスケベは治らないの!」

 そう言い返されて、言い返せずに「ぐぬぬぅ」と唸る徹を犬を追い払うようにするルナは仕事を押し付ける。

「この子達の回復は私がやっとくの。徹はそのトカゲさんを倒しちゃってなの」

 ホーラとポプリが善戦どころか傷も碌に与えられなかったブラックドラゴンをトカゲさん呼ばわりするルナに目を白黒させる。

 やれやれ、と首をコキコキさせる徹は流し目をポプリに送りながら指を突き付ける。

「報酬のオッパイは終わった後でな?」
「えっと、助けてくれるつもりのようですけど、そんなお約束した覚えが……」
「大丈夫なの。責任を持って私が叩きのめすの」

 助けてくれる手前、断り辛いと感じてるポプリにニッコリと笑いかけるルナがポプリの手を包むように掴み上げる。

 すると、包まれた手から温かい光が生まれ、体中にあった痛みが和らいだと思ったら目に映る場所にあった切り傷や、痣になってた場所が元通りになっていく。

「傷を治してるだけじゃない!? 体力、魔力も戻ってきてる……まるで……」

 目の前でニッコリと笑うルナを見つめて、ポプリは「シホーヌみたい」と呟き、それを聞いたホーラは目の前の人物は少なくとも回復魔法だけみれば雄一を超える存在である事に気付く。

 ポプリを癒し終えるとホーラを癒し始める。

「2人共聞いて欲しいの。今から徹が貴方達の伸び代、成長の可能性を見せるの。それを見て、どう調理するかは貴方達次第……」
「えっ? どういう事さ! ここにいきなり現れた事もおかしいのに、いきなり現れてアタイ達の伸び代? なんで、そんな事をするさ!」
「貴方達は何者なのですか!」

 ルナは2人の質問に答えずに信頼した視線をブラックドラゴンと対峙する徹に向ける。

「良く見とくの。大抵の場合、一番必要な事は理由ではなく、機会なの。それを捨てるのも拾うのも決めるのは本人次第なの」

 ルナの言葉に諭す雄一に感じる通じたモノを肌で感じた2人は黙ると徹の背中を見つめた。



「さぁ~て、カッコ良いとこみせないと報酬のオッパイは手に入らない。かかってこい黒いトカゲ」

 軽い威圧を徹が放つと『ホウライ』によってリミッターを外されて理性などないブラックドラゴンが一瞬恐れるように仰け反るがすぐに吼えると徹に目掛けてブレスを吐きかける。

 それを笑みを浮かべ、両手をズボンのポケットに手を入れたままの徹が足下を踏み抜くように右足裏を叩きつける。

 踏み抜いた動作で目の前に土の壁が生まれる。

「硬化」

 たった一言を気楽に言葉にしたのを見てホーラが目を剥く。

 そんなホーラを余所にブラックドラゴンのブレスは徹が作った土の壁に当たるがビクともさせない。

「な、あの一瞬で魔法を発動させて、あれほどの硬度を出せるさ!」
「ホーラは分かってないようだけど、魔力もほとんど使ってない……」

 ポプリの言葉に更に驚き、絶句するホーラに追い討ちのように徹は次の行動を始める。

 背中から炎が出たと思ったら、それが翼に形作られ始める。

 そのできた翼が急に伸びてブラックドラゴンに向かったと思ったら絡め取るように縛り上げる。

 拘束される事を嫌ったブラックドラゴンが暴れようとするが動く事も満足にできずに悔しそうに咆哮を上げる。

「嘘! どうしてあれだけの魔力でブラックドラゴンを押さえられるのですか! 私達が焚き火の火を点ける為に使う程度の魔力で!」
「しかもどちらも魔法を詠唱してたようには見えないさ」

 驚く2人は隣にいたルナが何かを払うようにするのが見え、そちらを見るとユルそうな目をしてた目が引き絞られたようになってテツの方向を見つめていた。

「貴方はおとなしくしておくの。後で相手してあげる」

 そう言うのを聞いた2人が慌ててそちらに目を向けると啓太が地べたでもがいている姿が見える。

 どうやら、見えない攻撃を放ったようだが、ルナに看破されて抑えつけられたようだ。

 ルナがホーラ達に視線を戻すと笑みを浮かべながら先程の質問に答えてくれた。

「詠唱は想いを昇華させるのをサポートするもの。赤ちゃんがハイハイするように。魔法にとって魔力は火種となる力だけで後は強い想い、言葉の先にあるもので発動させるの」
「ごめん、言ってる事がさっぱりさ?」

 ホーラには何が何だか分からないと混乱しているようだが、ポプリは徹を見つめてブツブツと言いながら頭を抱えている。

 見つめられている徹が炎の翼を解除すると両手を広げてる。

「右手に火を! 左手にも火を! 合わせて、炎魔法『不死鳥』!!」

 両掌を叩きつけると全身に炎を纏う。

 それを絶句して見つめる2人の横でルナが悲しそうに言ってくる。

「本来なら貴方達のお師匠様が教えてくれる予定だったものなの。でも、貴方達のお師匠様は優し過ぎるの。今、徹が2人に見せている魔法は制御を少しでもミスすると命の保証どころか最悪、魂すら残らないの」

 ルナの言葉を聞いて、一瞬否定しそうになるが、落ち着いて思い出すと雄一が躊躇するような態度を取り、「まだお前達には早い」と口癖のように言う姿を思い出す。

「彼はきっと全てを自分が背負う事で済ませる気なの。貴方達にそれを終わるまで気付かせないようにして……それでは駄目なの。だって、貴方達は『運命の導き手』だから」

 悲しそうにするルナが下唇を噛み締めながら言ってくる。

 何故、ルナがそんな顔をするのか分からないホーラ達は戸惑いながらも聞き返す。

「『運命の導き手』って何さ?」
「今から未来に貴方達が選択するかもしれない未来の選択肢、今はそれ以上知っても意味ないの」

 ホーラはそれでも聞こうとするがルナの瞳がこれ以上話す気がないと伝えてくるので黙る、いや、黙らされた。

 再び、徹に視線を向けるルナは祈るように呟く。

「今日、見て聞いた事を決して忘れないで欲しいの……」



 炎を纏った徹が飛び上がるとブラックドラゴンの横っ面を殴りつけて、再び、壁に叩きつけると着地と同時に纏ってた炎を掻き消す。

 そして、茫然と徹を見ていたテツに声をかける。

「おい、坊主! お前が足りないと頭を捻ってる答えに繋がるヒントだ。目をかっぽじって見やがれ!」

 そう言う徹がブラックドラゴンに向き合う形で片膝立ちの格好になり、片手を長めの片刃刀のカラスに手を添えると目を瞑る。

 一瞬の静寂が生まれ、徹が囁くように言葉を洩らす。

「瞬、沙耶さん、力を貸してくれ」

 その言葉を洩らすと徹は10cm程、地面から宙に浮いた。

 浮いたと同時に閉じてた目を開いた徹が短く息を吐いた瞬間、空中を滑るように高速で飛び出した。

「あ、危ない!」

 徹は直線的に飛び出した為、ブラックドラゴンにブレスの的にされそうになっていた。

 それに気付いてないはずがない徹の表情には揺るぎない。

 ただ、力強く言葉を叫んだ。

「跳躍!」

 ブレスが直撃しそうになった瞬間、徹がそう叫ぶと姿が掻き消え、ブラックドラゴンの背後に現れ、カラスを抜刀すると背中に大きな傷を作る。

 傷の痛みから咆哮を上げるブラックドラゴンに意にも介さない徹は、再び、姿を掻き消す事を繰り返して、青い刀身のアオツキも抜き二刀流でナマス切りにしていく。

 そして、全身から血を噴き出すブラックドラゴンが動かなくなったと思ったら、背中から倒れていった。

 倒れ行くブラックドラゴンを見つめるテツが目を見開いてうわ言のように呟く。

「そ、そうか、足りなかったモノが分かった気がする!」

 動きを封じられている啓太を見つめ、テツは意識せずにツーハンデッドソードを握り締め、雄一の言葉を思い出していた。


「テツ、お前は水であり、風だ。水のように流れに乗って動け。風と共に動くのではなく、お前が通った道を後から付いてくるんだ」


「はい、ようやく僕にも分かった気がします。ユウイチさん! 答えは全部、僕の中にありました」

 テツは雄一に許しを請うように頭を垂れた。
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