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10章 DT、マリッジブルーを味わう
275話 再会のようです
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いつもの早朝訓練をしていたアリア達は、街の外周をマラソンをしていた。
ダンガとザガンを繋ぐ窓口になっている港と繋がる西門に差しかかるとレイアの足が自然に遅くなり、港町の方を見つめて溜息を吐く。
そんなレイアを待つように駆け足の状態で見つめる子供達は顔を見合わせて苦笑する。
「ねぇ、レイア。ミラーさんの話だとザガンの船が着くのは早くても昼過ぎって話だからダンガにくるのは夕方になると思うよ?」
「ちげぇーてっ! ヒースなんて待ってねぇーからっ! バーカ、バーカ、ダンテのアホォ!」
鼻を鳴らすとダンテから視線を切り、待っていたアリア達を置いて加速して走って行く。
その後ろ姿を見つめるアリアが嘆息する。
「無駄に肩肘に力が入ってる。無駄に疲れるから意識するように言われてるのに」
「まあ、仕方がないかもしれないの。どうも今日、ヒースが来ると思って興奮して眠れなかったみたいなの」
アリアとスゥは顔を見合わせるとクスクスと笑い合う。
ダンテもレイアと違う意味で数少ない男友達のヒースと出会うのを楽しみにしていた。
レイアが見つめていた港町がある方向を見つめるがすぐに我に返る。
「待ってた僕達が遅れてるよ!」
そう言葉にするとアリアとスゥも思い出したようで急いで走り出す。
ダンテもレイアを追いかけて走ろうとしたが1人、城壁の方を見つめるミュウに声をかける。
「ミュウ、早くマラソンを終わらせないとご飯が食べられないよ?」
「……がぅ」
少し間があったが、頷くと城壁から視線を外し、ダンテを追い抜いて走り抜ける。
置いて行かれたダンテが、「えっ? ちょっと待ってよ!」と追い縋るようにしてミュウを追いかけて走って行った。
そんなアリア達を見守る者が4人、ミュウが見つめていた城壁の上から見下ろしていた。
「これは由々しき問題だ、そうは思わないか、テツ?」
「はぁ、ユウイチさん、僕としては余計な事はしないほうがいいように思うのですが?」
雄一はテツに同意を求めたがテツの返事など何の参考にもする気がなかったようで、「そうか、お前も俺と同じ気持ちか」と力強く頷く。
無駄なのに、確認を取ろうとするテツと雄一を見つめるホーラとポプリは嘆息する。
「ユウイチさんも昨日は一睡もしてないんですよね?」
「どうせ、くだらない事を考えてたさ」
呆れる視線を向ける先にいる雄一を良く見ると目の下に薄らとクマが出来ているのが見て取れる。
それを見て、もう1度溜息を吐こうとしたホーラであったがある事に気付く。
「ところでポプリ。どうしてユウが寝てないって知ってるさ?」
「あらあら、レイアがそろそろゴールに着く頃ね。急がないと?」
忙しい、忙しい、と口癖のように言うと城壁を降りる階段を早足で降りていく。
そんなポプリの様子に眉尻を上げたホーラが怒鳴る。
「アンタ、ミレーヌが来たから先を越される前に、と思って夜這いをかけようとした!?」
ホーラに言われたポプリは早足をピタっと止めると振り返ってくる。
口許に手を当てて、オーホッホホホ、と笑うと踵を返し、全力疾走を始める。
「あん馬鹿! 待てぇ、ポプリ!!」
胸元からナイフを両手で持てるだけ持つと逃げるポプリを追って走り去るホーラ。
そんな残念な姉を沈痛そうに見送ったテツの耳に雄一の呟きが届く。
「やはり、やるしかないか。全ては可愛い娘達の為!」
キリリッと表情を引き締める雄一であったが、傍で見上げるテツは語る。
遠くを見つめ、含み笑いする雄一からは駄目なお父さんの匂いしかしなかったと、目を伏せて嗚咽混じりに伝えた。
▼
「よし、今日はお前達の力を見せて貰おう」
柔軟体操からマラソンという流れの準備体操が済んだアリア達に腕を組んだ雄一が見下ろすようにして真剣な瞳で見つめる。
いつもの穏やかな笑みをアリア達に向けるのが普通の雄一がそんな目で見つめてくるのでアリア達の背筋が伸びる。
「お前達の一撃を俺に入れてみろ」
「無茶言うなよ! 前なら頑張ったらって思ってたけど、さすがに今は無理な事ぐらいは分かる!」
うがぁ、と吼えるようにいきり立つレイアが叫ぶ。
アリア達もレイアのように叫ばないが、レイアが言うように以前なら勘違いで、もしかしたら……という希望的観測も持てたが今はさすがに自分を騙す事すら難しいと顔を顰める。
「昔なら騙されてくれたのにな、これが成長か……まあ確かにそうだな、普通にやったら、お前達が俺に一撃を入れるのは不可能だな」
そう言って、感慨に耽る雄一を見つめるホーラがテツに言う。
「アリア達の年頃の時のアンタは一切疑わなかったよね?」
「くっ……ホーラ姉さんもムキになったら騙されてたじゃないですか?」
生意気だとホーラはテツの鼻を抓んで下に引っ張る。アリア達の頃の2人であれば下ではなく上に引っ張れた事を思い出したホーラの抓む指に力が籠る。
痛がり、許しを請うテツと怒れるホーラを意地の悪い笑みで見つめるポプリは言ってくる。
「私はちゃんと気付いてたわよ?」
そう、ポプリはちゃんとその辺りは実戦経験と本来持ち合わせていた計算高い所を発揮して騙されてなかった。
だが、騙されたフリをしていた腹黒さんでもあった。
雄一の課題に困惑顔のアリア達を無視して小競り合いを繰り返す姉達、兄を余所に雄一達の方では話が進んでいた。
雄一は自分の足下を雄一が立ってられるだけの円を描き、中に入って立つと先程と同じように腕を組んでみせる。
「勿論、普通にはしない。俺はこの円から出ないし、攻撃もしない」
そう言う雄一にまだ渋い顔をするアリア達に苦笑する雄一は続ける。
「決して避けない。どんな手を使おうが俺に一撃を入れるか、この円から出したらアリア達の勝ちだ。まだ足りないか?」
挑発的に言う雄一を見たダンテが「あ、やばい」と呟き、レイアに手を伸ばす。それと同時に負けん気が発動したレイアが吼える。
「やってやんよ! 絶対、吠え面掻かせてやるぅ!」
レイアに駆け寄ろうとした体勢で手を伸ばしてたダンテが項垂れる。
「お、遅かった……」
「聞いたぞ? できるようになるまで家から出さないからな?」
かかったとばかりにニヤつく雄一を見て、レイアが引っ掛けられた事に気付いて呻き声を上げる。
近くまで来てたダンテに助けを求める。
「ど、どうしたらいい?」
「だからね? 昨日も言ったけど、物事を決めて口走る前に相談してね?」
泣きそうになってるダンテを離れてた所でじゃれ合ってたホーラ達は見つめる。
「どうやらユウはマジさ。本気で大人げなくもヒースという坊やとアリア達との再会を阻止するつもりみたい」
「大きい事と小さい事しかしない間のないドヤ顔のユウイチさんに震える。さすが私が選んだ人」
「うっうう、ユウイチさん、貴方は世界一のお父さんですよね? よね?」
戦慄を感じるように見つめるホーラとポプリの2人と腕で目を覆うようにして静かに泣くテツを視野外にする雄一はドヤ顔をしてアリア達を見つめる。
レイアから雄一に視線を移したダンテが溜息を吐く。
「もう言っちゃった以上やるしかないよ。とりあえず打てる手は全部打つしかない」
「それ……しかないようなの」
ダンテの言葉を聞いたスゥが諦めが籠る溜息を吐き出す。
口の端を上げる雄一を覆うイエローライトグリーンのオーラが可視化する。
それを見たアリアが口をへの字にする。
「やっぱりそうなる。ユウさん本気。大人げない」
「もうやるしかない」
前に出るミュウが両手に短剣を握ると太めの眉尻を上げる。
ミュウが言うようにやるしかないと腹を括ったレイアもミュウの横に並ぶ。
「無駄だとは思うけど、まずは各自、持てる全力でユウイチさんを攻撃だっ!」
そう叫ぶダンテの言葉にアリア達は頷くと構える。
アリア達を見つめる雄一は口の端を上げて楽しそうにする。
「かかってきなさい!」
道場破りに来た相手に言う道場主のように偉そうに言う雄一の言葉をキッカケにアリア達は雄一に攻撃を放ち始めた。
雄一に攻撃を始めて6時間が経過しようとしていた。
しかし、アリア達は雄一のイエローライトグリーンのオーラに阻まれて一撃すら入れられていなかった。
息絶え絶えのアリア達であるが、雄一から攻められる事はないので休憩やホーラが持って来てくれた食事を取ったりはできた。
ペース配分ができるはずのアリア達が何故、息絶え絶えなのかというと、レイアの焦りが酷くて引きずられるようにして戦い続けた結果であった。
額に浮かぶ汗を拭うレイアは太陽の位置を確認する。
だいぶ西に傾き始め、夕方が近い事を知ると、クソッ、と悪態を吐く。
そろそろ、ヒースがダンガ入りする頃合いである。
焦りに焦っているが雄一に決定打が打つビジョンが浮かばない事だけは痛い程、理解できていた。
八方ふさがりになっているレイアに近寄ってきたダンテが呼吸を整えながら言ってくる。
「1つ……1つだけ通用する手があるかもしれない」
そう言ってくるダンテにレイアは目を剥きだして口を開こうとするがダンテに止められる。
「この方法はレイアが苦手とする事で、レイアしかできない。1度しかチャンスはないけど、やるかい?」
「やる! もう時間がないからな!」
意を決したレイアが覚悟を漲らせる。
だが、ダンテに作戦を説明を受けた時、レイアは後悔したが背に腹は代えられないと腹を括った。
アリア達からの攻撃が来なくなったので目を瞑っていた雄一だったが、近寄ってくる存在に気付くと目を開く。
雄一の前にやってきたのは、レイアであり、普段からは想像できない恥ずかしそうに身を捩るレイアがあちらこちらに視線を逃がしながらチラチラと雄一を見つめてくる。
「そ、そのぉ、パパもお腹が減ったんじゃない?」
「ぱ、パパ!?」
レイアからパパと呼ばれた雄一は変わらぬ表情のまま目幅と同じだけの涙が滝のように流れる。
そんな雄一に気付いた様子もない余裕のないレイアは顔を赤らめてモジモジしながら懐からビーフジャーキーを取り出す。
雄一に差し出すようにしたレイアが、雄一がレイアに言われてみたいランキング不動のベスト3のセリフを言われる。
「パパ、あーん」
「あーん」
疑う素振りも見せずにイエローライトグリーンのオーラを解除すると幸せ一杯の顔をした雄一がビーフジャーキーに齧りつく。
モジモジしていたレイアがいつもの表情、顔色だけは真っ赤のままだが戻ると叫ぶ。
「今だ、隙あり!!」
幸せそうにビーフジャーキーを咥える雄一の頭を掴むと遠慮ゼロの膝蹴りを額に叩きつける。
叩きつけられた雄一は何事もなかったかのようにビーフジャーキーを咀嚼しながら仰向けに地面に倒れていく。
「よし、勝ったぞぉ!!!」
アリア達と勝利を祝うレイアであったが、ヒースが来る時間帯である事を思い出すとアリア達を連れて西門を目指して走り出した。
走って行くアリア達を見送るホーラは地面に寝っ転がったまま、ビーフジャーキーを咀嚼続ける雄一を見つめて嘆息する。
「本当にユウはレイアには隙だらけさ」
「ユウイチさんは子煩悩ですからね」
笑い合うホーラとポプリ。
DTへの最終兵器ことレイアであった。
「レイアの愛が籠ったビーフジャーキーが美味しい」
そう呟く雄一の言葉を拾ったホーラ達はもう笑うしかないと苦笑を浮かべ合った。
▼
レイアが西門に到着すると同時にアリア達も追い付いてきた。
キョロキョロと辺りを見渡すレイアにアリアも周りを見渡しながら言う。
「まだヒースは来てない?」
「ちょっと待ってなの。街道に見える馬車は港町から来たんじゃないの?」
スゥが街道を走る馬車を発見して指を差してくる。
「行ってみよう」
そう言うダンテの言葉にアリア達は頷くと馬車に近寄るが、どうやら荷物が載ってるだけで御者以外には人は乗ってないようであった。
ヒースがいないと分かったアリア達は港町の方向を見つめる。
「もしかしたら、今日の船じゃなかったのかも?」
「それか、既に街に入ってるの」
そう言うアリアとスゥは手分けして探す事を提案してきた。
アリア達の提案に頷いた皆は、ダンテは冒険者ギルドへ、スゥは市場を、アリアは家にミュウは城壁の上から捜すと言って解散する。
レイアは、みんなと被らない場所はどこだと首を捻ってるとレイアを覆うような人影に気付いて振り返る。
振り返った先は西日で相手の顔が分からず、西日から目を守るように目を細める。
「あっ、やっぱり! レイアさんですよね?」
「わりぃ、西日で顔が見えないから誰か分からない」
そう言うレイアに申し訳なさそうに頭を掻く人影はレイアに近づいてくる。
すると徐々に輪郭、目鼻の区別が出来てきて、レイアは目を大きく見開く。
肩ぐらいまである栗色の髪を縛って子犬の尻尾のようにして、頬には刀傷でできたような深めの傷。
程良く引き締まった体には筋肉がしっかり付いてあり、身長はレイアより頭一個分大きい。
「ひ、ヒースなのか?」
「はい、お久しぶりです、レイアさん!」
女の子に見えたヒースの名残はほとんどなく、父親のノースランドの男らしさが滲み出した少年、ヒースが再会した喜びを全面に出してレイアを見つめ続けた。
ダンガとザガンを繋ぐ窓口になっている港と繋がる西門に差しかかるとレイアの足が自然に遅くなり、港町の方を見つめて溜息を吐く。
そんなレイアを待つように駆け足の状態で見つめる子供達は顔を見合わせて苦笑する。
「ねぇ、レイア。ミラーさんの話だとザガンの船が着くのは早くても昼過ぎって話だからダンガにくるのは夕方になると思うよ?」
「ちげぇーてっ! ヒースなんて待ってねぇーからっ! バーカ、バーカ、ダンテのアホォ!」
鼻を鳴らすとダンテから視線を切り、待っていたアリア達を置いて加速して走って行く。
その後ろ姿を見つめるアリアが嘆息する。
「無駄に肩肘に力が入ってる。無駄に疲れるから意識するように言われてるのに」
「まあ、仕方がないかもしれないの。どうも今日、ヒースが来ると思って興奮して眠れなかったみたいなの」
アリアとスゥは顔を見合わせるとクスクスと笑い合う。
ダンテもレイアと違う意味で数少ない男友達のヒースと出会うのを楽しみにしていた。
レイアが見つめていた港町がある方向を見つめるがすぐに我に返る。
「待ってた僕達が遅れてるよ!」
そう言葉にするとアリアとスゥも思い出したようで急いで走り出す。
ダンテもレイアを追いかけて走ろうとしたが1人、城壁の方を見つめるミュウに声をかける。
「ミュウ、早くマラソンを終わらせないとご飯が食べられないよ?」
「……がぅ」
少し間があったが、頷くと城壁から視線を外し、ダンテを追い抜いて走り抜ける。
置いて行かれたダンテが、「えっ? ちょっと待ってよ!」と追い縋るようにしてミュウを追いかけて走って行った。
そんなアリア達を見守る者が4人、ミュウが見つめていた城壁の上から見下ろしていた。
「これは由々しき問題だ、そうは思わないか、テツ?」
「はぁ、ユウイチさん、僕としては余計な事はしないほうがいいように思うのですが?」
雄一はテツに同意を求めたがテツの返事など何の参考にもする気がなかったようで、「そうか、お前も俺と同じ気持ちか」と力強く頷く。
無駄なのに、確認を取ろうとするテツと雄一を見つめるホーラとポプリは嘆息する。
「ユウイチさんも昨日は一睡もしてないんですよね?」
「どうせ、くだらない事を考えてたさ」
呆れる視線を向ける先にいる雄一を良く見ると目の下に薄らとクマが出来ているのが見て取れる。
それを見て、もう1度溜息を吐こうとしたホーラであったがある事に気付く。
「ところでポプリ。どうしてユウが寝てないって知ってるさ?」
「あらあら、レイアがそろそろゴールに着く頃ね。急がないと?」
忙しい、忙しい、と口癖のように言うと城壁を降りる階段を早足で降りていく。
そんなポプリの様子に眉尻を上げたホーラが怒鳴る。
「アンタ、ミレーヌが来たから先を越される前に、と思って夜這いをかけようとした!?」
ホーラに言われたポプリは早足をピタっと止めると振り返ってくる。
口許に手を当てて、オーホッホホホ、と笑うと踵を返し、全力疾走を始める。
「あん馬鹿! 待てぇ、ポプリ!!」
胸元からナイフを両手で持てるだけ持つと逃げるポプリを追って走り去るホーラ。
そんな残念な姉を沈痛そうに見送ったテツの耳に雄一の呟きが届く。
「やはり、やるしかないか。全ては可愛い娘達の為!」
キリリッと表情を引き締める雄一であったが、傍で見上げるテツは語る。
遠くを見つめ、含み笑いする雄一からは駄目なお父さんの匂いしかしなかったと、目を伏せて嗚咽混じりに伝えた。
▼
「よし、今日はお前達の力を見せて貰おう」
柔軟体操からマラソンという流れの準備体操が済んだアリア達に腕を組んだ雄一が見下ろすようにして真剣な瞳で見つめる。
いつもの穏やかな笑みをアリア達に向けるのが普通の雄一がそんな目で見つめてくるのでアリア達の背筋が伸びる。
「お前達の一撃を俺に入れてみろ」
「無茶言うなよ! 前なら頑張ったらって思ってたけど、さすがに今は無理な事ぐらいは分かる!」
うがぁ、と吼えるようにいきり立つレイアが叫ぶ。
アリア達もレイアのように叫ばないが、レイアが言うように以前なら勘違いで、もしかしたら……という希望的観測も持てたが今はさすがに自分を騙す事すら難しいと顔を顰める。
「昔なら騙されてくれたのにな、これが成長か……まあ確かにそうだな、普通にやったら、お前達が俺に一撃を入れるのは不可能だな」
そう言って、感慨に耽る雄一を見つめるホーラがテツに言う。
「アリア達の年頃の時のアンタは一切疑わなかったよね?」
「くっ……ホーラ姉さんもムキになったら騙されてたじゃないですか?」
生意気だとホーラはテツの鼻を抓んで下に引っ張る。アリア達の頃の2人であれば下ではなく上に引っ張れた事を思い出したホーラの抓む指に力が籠る。
痛がり、許しを請うテツと怒れるホーラを意地の悪い笑みで見つめるポプリは言ってくる。
「私はちゃんと気付いてたわよ?」
そう、ポプリはちゃんとその辺りは実戦経験と本来持ち合わせていた計算高い所を発揮して騙されてなかった。
だが、騙されたフリをしていた腹黒さんでもあった。
雄一の課題に困惑顔のアリア達を無視して小競り合いを繰り返す姉達、兄を余所に雄一達の方では話が進んでいた。
雄一は自分の足下を雄一が立ってられるだけの円を描き、中に入って立つと先程と同じように腕を組んでみせる。
「勿論、普通にはしない。俺はこの円から出ないし、攻撃もしない」
そう言う雄一にまだ渋い顔をするアリア達に苦笑する雄一は続ける。
「決して避けない。どんな手を使おうが俺に一撃を入れるか、この円から出したらアリア達の勝ちだ。まだ足りないか?」
挑発的に言う雄一を見たダンテが「あ、やばい」と呟き、レイアに手を伸ばす。それと同時に負けん気が発動したレイアが吼える。
「やってやんよ! 絶対、吠え面掻かせてやるぅ!」
レイアに駆け寄ろうとした体勢で手を伸ばしてたダンテが項垂れる。
「お、遅かった……」
「聞いたぞ? できるようになるまで家から出さないからな?」
かかったとばかりにニヤつく雄一を見て、レイアが引っ掛けられた事に気付いて呻き声を上げる。
近くまで来てたダンテに助けを求める。
「ど、どうしたらいい?」
「だからね? 昨日も言ったけど、物事を決めて口走る前に相談してね?」
泣きそうになってるダンテを離れてた所でじゃれ合ってたホーラ達は見つめる。
「どうやらユウはマジさ。本気で大人げなくもヒースという坊やとアリア達との再会を阻止するつもりみたい」
「大きい事と小さい事しかしない間のないドヤ顔のユウイチさんに震える。さすが私が選んだ人」
「うっうう、ユウイチさん、貴方は世界一のお父さんですよね? よね?」
戦慄を感じるように見つめるホーラとポプリの2人と腕で目を覆うようにして静かに泣くテツを視野外にする雄一はドヤ顔をしてアリア達を見つめる。
レイアから雄一に視線を移したダンテが溜息を吐く。
「もう言っちゃった以上やるしかないよ。とりあえず打てる手は全部打つしかない」
「それ……しかないようなの」
ダンテの言葉を聞いたスゥが諦めが籠る溜息を吐き出す。
口の端を上げる雄一を覆うイエローライトグリーンのオーラが可視化する。
それを見たアリアが口をへの字にする。
「やっぱりそうなる。ユウさん本気。大人げない」
「もうやるしかない」
前に出るミュウが両手に短剣を握ると太めの眉尻を上げる。
ミュウが言うようにやるしかないと腹を括ったレイアもミュウの横に並ぶ。
「無駄だとは思うけど、まずは各自、持てる全力でユウイチさんを攻撃だっ!」
そう叫ぶダンテの言葉にアリア達は頷くと構える。
アリア達を見つめる雄一は口の端を上げて楽しそうにする。
「かかってきなさい!」
道場破りに来た相手に言う道場主のように偉そうに言う雄一の言葉をキッカケにアリア達は雄一に攻撃を放ち始めた。
雄一に攻撃を始めて6時間が経過しようとしていた。
しかし、アリア達は雄一のイエローライトグリーンのオーラに阻まれて一撃すら入れられていなかった。
息絶え絶えのアリア達であるが、雄一から攻められる事はないので休憩やホーラが持って来てくれた食事を取ったりはできた。
ペース配分ができるはずのアリア達が何故、息絶え絶えなのかというと、レイアの焦りが酷くて引きずられるようにして戦い続けた結果であった。
額に浮かぶ汗を拭うレイアは太陽の位置を確認する。
だいぶ西に傾き始め、夕方が近い事を知ると、クソッ、と悪態を吐く。
そろそろ、ヒースがダンガ入りする頃合いである。
焦りに焦っているが雄一に決定打が打つビジョンが浮かばない事だけは痛い程、理解できていた。
八方ふさがりになっているレイアに近寄ってきたダンテが呼吸を整えながら言ってくる。
「1つ……1つだけ通用する手があるかもしれない」
そう言ってくるダンテにレイアは目を剥きだして口を開こうとするがダンテに止められる。
「この方法はレイアが苦手とする事で、レイアしかできない。1度しかチャンスはないけど、やるかい?」
「やる! もう時間がないからな!」
意を決したレイアが覚悟を漲らせる。
だが、ダンテに作戦を説明を受けた時、レイアは後悔したが背に腹は代えられないと腹を括った。
アリア達からの攻撃が来なくなったので目を瞑っていた雄一だったが、近寄ってくる存在に気付くと目を開く。
雄一の前にやってきたのは、レイアであり、普段からは想像できない恥ずかしそうに身を捩るレイアがあちらこちらに視線を逃がしながらチラチラと雄一を見つめてくる。
「そ、そのぉ、パパもお腹が減ったんじゃない?」
「ぱ、パパ!?」
レイアからパパと呼ばれた雄一は変わらぬ表情のまま目幅と同じだけの涙が滝のように流れる。
そんな雄一に気付いた様子もない余裕のないレイアは顔を赤らめてモジモジしながら懐からビーフジャーキーを取り出す。
雄一に差し出すようにしたレイアが、雄一がレイアに言われてみたいランキング不動のベスト3のセリフを言われる。
「パパ、あーん」
「あーん」
疑う素振りも見せずにイエローライトグリーンのオーラを解除すると幸せ一杯の顔をした雄一がビーフジャーキーに齧りつく。
モジモジしていたレイアがいつもの表情、顔色だけは真っ赤のままだが戻ると叫ぶ。
「今だ、隙あり!!」
幸せそうにビーフジャーキーを咥える雄一の頭を掴むと遠慮ゼロの膝蹴りを額に叩きつける。
叩きつけられた雄一は何事もなかったかのようにビーフジャーキーを咀嚼しながら仰向けに地面に倒れていく。
「よし、勝ったぞぉ!!!」
アリア達と勝利を祝うレイアであったが、ヒースが来る時間帯である事を思い出すとアリア達を連れて西門を目指して走り出した。
走って行くアリア達を見送るホーラは地面に寝っ転がったまま、ビーフジャーキーを咀嚼続ける雄一を見つめて嘆息する。
「本当にユウはレイアには隙だらけさ」
「ユウイチさんは子煩悩ですからね」
笑い合うホーラとポプリ。
DTへの最終兵器ことレイアであった。
「レイアの愛が籠ったビーフジャーキーが美味しい」
そう呟く雄一の言葉を拾ったホーラ達はもう笑うしかないと苦笑を浮かべ合った。
▼
レイアが西門に到着すると同時にアリア達も追い付いてきた。
キョロキョロと辺りを見渡すレイアにアリアも周りを見渡しながら言う。
「まだヒースは来てない?」
「ちょっと待ってなの。街道に見える馬車は港町から来たんじゃないの?」
スゥが街道を走る馬車を発見して指を差してくる。
「行ってみよう」
そう言うダンテの言葉にアリア達は頷くと馬車に近寄るが、どうやら荷物が載ってるだけで御者以外には人は乗ってないようであった。
ヒースがいないと分かったアリア達は港町の方向を見つめる。
「もしかしたら、今日の船じゃなかったのかも?」
「それか、既に街に入ってるの」
そう言うアリアとスゥは手分けして探す事を提案してきた。
アリア達の提案に頷いた皆は、ダンテは冒険者ギルドへ、スゥは市場を、アリアは家にミュウは城壁の上から捜すと言って解散する。
レイアは、みんなと被らない場所はどこだと首を捻ってるとレイアを覆うような人影に気付いて振り返る。
振り返った先は西日で相手の顔が分からず、西日から目を守るように目を細める。
「あっ、やっぱり! レイアさんですよね?」
「わりぃ、西日で顔が見えないから誰か分からない」
そう言うレイアに申し訳なさそうに頭を掻く人影はレイアに近づいてくる。
すると徐々に輪郭、目鼻の区別が出来てきて、レイアは目を大きく見開く。
肩ぐらいまである栗色の髪を縛って子犬の尻尾のようにして、頬には刀傷でできたような深めの傷。
程良く引き締まった体には筋肉がしっかり付いてあり、身長はレイアより頭一個分大きい。
「ひ、ヒースなのか?」
「はい、お久しぶりです、レイアさん!」
女の子に見えたヒースの名残はほとんどなく、父親のノースランドの男らしさが滲み出した少年、ヒースが再会した喜びを全面に出してレイアを見つめ続けた。
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ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
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