異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

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11章 DT、見守る愛を貫く

293話 海の馬鹿野郎らしいです

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「それじゃ、またね?」
「はい、ダンテ先生、またお願いします!」

 教会での依頼が終わり、教え子である子供達に見送られるダンテはこそばゆそうにしながら手を振る。

 振り返されるのにも照れ臭さが出てしまい隣を見つめるとポロネが小さい子達の手を取って涙目になってる。

「また遊んでね? きっとだよ?」
「うん、分かった! また遊ぼうね、ポロネちゃん!」

 見た目から考えれば明らかにおかしい構図であるが、そこに誰も違和感が感じない事がビックリなポロネクォリティである。

 そんなポロネに帰る事を伝えると小さい子供達に力一杯手を振りながら声を張り上げる。

「またねぇ――!!」

 同じように「またね――!」と返事を返されて満足したらしいポロネはダンテの横に並んで教会を後にした。





 ダンテとポロネは教会からの帰り道に市場で夕食の材料の買い出しをしていた。

 美味しそうな物を見つけると指を咥えて見つめるポロネを引っ張ったり、珍しいモノを見るとフラリと消えそうになるのをすぐさま止める。
 その結果、拗ねるポロネをあやす、という3コンボを流れでこなすダンテをアリアとスゥが見れば尊敬の眼差しで見たであろう。

 ダンテは少しも嬉しくはないだろうが……

 この辺りを管理しきれないという事でポロネをダンテに任せたという背景がある。

 普通に考えたら、腹を立てて怒鳴ったり、放置したりしそうなものだが、アリア達ですら本気で怒るとこまではいかないし、ダンテはもっと怒る事も見放す気にもなれない。

 こういうのも人徳というのだろうか? とダンテは、いつもジッと見つめられて商売の邪魔だと眉を寄せる屋台の主人から「仕方ねぇーな?」と商品の小さなリンゴ飴を渡されてダンテに自慢してくるポロネを見つめる。

 リンゴ飴を手にしただけなのに世界で一番の幸せ者だと胸を張りそうなポロネを見つめて笑みが浮かぶ。

「ユウイチさんもシホーヌさんやアクアさんをこういう風に見てるのかな?」

 この場にいない憧れる存在の雄一の気持ちと同じくしているのだろうかと嬉恥ずかしく笑みが漏れるダンテであった。


 買い物を終えたダンテが家に戻ろうと港を横切っていると傍にポロネがいない事に気付いて探すと、すぐ近くの波止場にいるのを発見して近寄る。

 近くに来てダンテが声をかけようとする。

「どこに行ったかと思ったじゃ……」

 言いかけた言葉が止まったのは海、水平線に沈む太陽を見つめるポロネの瞳から涙が零れていたからであった。

 先程の子供達と別れの感情的なモノでもなく、怪我した時の痛みからくる涙でもない。

 涙が流れる、という現象、高い所から水が落ちて滝、というぐらいの普通な出来事のように黙ってるだけのポロネという表情のまま泣いていた。

 夕日に照らされて輝く涙は初めて月明かりに照らされたポロネを見た時のように儚く壊れそうな美しさがそこにはあった。

 生唾を飲み込んだダンテが今度は自分から話しかける。

「ポロネ? 何か悲しい事でもあったの?」

 ダンテの声に反応してビクッとした拍子に涙が弾ける。

 零れる涙が夕日を照り返し、その美しさに一瞬目を奪われたダンテだがポロネに視線を戻す。

「ごめんなさい! ボゥとしてました」
「そんな事はいいんだ。どうして泣いてるの?」

 ダンテがそう聞くと、えっ? という表情をして頬に触れると本当に泣いてた事を今、知ったようで戸惑う様子をみせる。

 そんなポロネにダンテは聞く。

「太陽を見つめて何を考えてた?」

 いきなり話を振られて困った様子であったが、泣いてた理由は分からなくても、そちらは答えられたようで若干戸惑いながらも答えてくる。

「綺麗だな……と思ってました」

 ポロネが見てた夕日を再び見つめると更に沈んでいく太陽を見ながらダンテは答える。

「確かに綺麗ですけど、天気が良ければいつでも見れるものじゃないですか?」
「あはは、そうですよね? そうなんですけど、良く分からないんですが、私はずっとこれを見たいと思ってた気がするんです」

 再び、夕日を見つめるポロネは切なくて辛いという想いが滲む瞳をする。

 そんなポロネを見つめるダンテは自分の中で暴れる想いを理解しようとするが掴み切れずにもどかしい思いのまま言葉にしようと口を開こうとする。

「残念です。お日様が海の向こうに帰ってしまいました。また明日ですね?」

 そう言うとポロネは家に帰る方向に足を向ける。

 気付けば、ダンテの思いに蓋をするように水平線にあった太陽は姿を消していた。

 歩くポロネの後ろ姿を見たダンテは思う。

 守ってあげたい、と。

 だが、それが為せるのか? と、もう一人のダンテが言ってくる。お前はユウイチさんのように出来はしない。記憶もなく不安に震え、窮地に追い詰められた時、ポロネを身も心も守れるのか? とダンテを苛ませる。

 悔しさから唇を噛み締めて俯くダンテを呼ぶ声がする。

「どうしたのですか、ダンテ?」

 振り返り、付いてきてないダンテに首を傾げるポロネにダンテは頑張って笑って首を横に振る。

「なんでもありません。早く帰りましょうか、レイアとミュウがお腹減ったと煩くしている頃でしょうし?」
「私もお腹が減りました!」

 ニッコリ笑うポロネに必死に笑い返しながらダンテとポロネは家路についた。





 その日の夜、みんなが寝た後、ダンテは海辺で膝を抱えて座り込んでいた。

 しばらく海を眺めていると誰かが近寄ってきた事に気付いて振り返るとそこにいたのはヒースであった。

「眠れないの、ダンテ?」
「……うん、そんな感じかな?」

 ヒースは、そっか、と言うとダンテの隣に座ると同じように海を眺める。

 ダンテはヒースが何をしに来たのだろうと思っていると不意を突くようにヒースが独白を始める。

「僕はアリアが好きだ。多分、初恋だと思う」
「えっ?」

 いきなりの告白に戸惑うダンテだが、多分そうだろうとはダンテでなくても他の面子も気付いていた事なので割と早く立ち直る。

 ダンテの様子も気にしないでヒースが続ける。

「でも、この恋は前途多難だとザガンに居る頃から気付いてた。アリアはずっとユウイチさんしか見てない。僕にチャンスは巡らない、分かってる」

 ずっと言うべきかと悩んでいた事はヒースは正しく理解してた事に驚く。それと同時にそこまで分かってるのに諦めた様子が見えないのはどういう事だろうとダンテは首を傾げる。

「それでもだ、僕はアリアには幸せになって欲しい。それが僕が隣にいなくても……ごめん、やっぱりそこまで割り切れてない僕でありたいと思ってる」
「僕も言うべきかとずっと悩んでた。アリアはずっとユウイチさんを見てる。考えを変えるような子じゃないのは一緒に育ったから知ってる。例え、ユウイチさんがいなくなっても心変わりするとは思えない」

 ヒースは弱ったような顔で項垂れながら、「やっぱりそうだよね?」と呟く。

 ダンテは1度口にした以上、心を鬼にして言う事を決める。

「だから、ヒースは違う人を好きに……」
「ダンテはポロネさんを諦められるの?」

 ヒースが優しく見つめながらダンテの言葉に切り返してきた。

 予想外の切り返しを受けたダンテが口をパクパクさせているとヒースが苦笑して詫びてくる。

「ごめんね? でも、それが答えなんだと思う」
「き、気付いてた? もしかしてアリア達も?」

 慌てるダンテがヒースに問いかけるが、空を見つめるヒースは「どうだろう?」と答える。

「そんな事はいいんだ、ダンテ、僕は君がポロネさんの何に惹かれたかは分からない。でも、守ってあげたいと思ったんじゃないかな? そして、自分に何が出来ると悩んでる」
「あはは……反論の余地もないよ。そうだよ、僕も何故惹かれたなんて分からない。気付いたらやられてた。いつも底抜けに明るいポロネだけど、やっぱり記憶がない事が不安なはずなんだ。そんなポロネに僕は何ができる? 何をしてあげられる?」

 行き場を求めていた感情が噴き出し、ヒースに詰め寄るようにするダンテ。

 そんなダンテに二コリと笑うヒースが言う。

「できる、してあげられるじゃない。何をする、何をしたい、だけなんだよ。結局の所、相手の気持ち、希望なんて分からない。聞いて教えて貰ってもそれが正しいなんて誰も保障できないんだ。だったら、自分の気持ちを信じるしかないじゃないか?」

 絶句してヒースを見つめるダンテだったが弱った笑みを浮かべると肩を落とす。

「ヒースは強いね、僕はそんな考えに至らなかったよ?」
「2年も悩んだんだ。ダンテが思い付かない事を思い付いてもおかしくないよ」

 そう、ヒースはザガンで別れる時から分かっていた。だから、胸に宿るアリアへの気持ちをどうするかを2年費やしてずっと考えた。

 時間をかければ良い答えが出るとは限らない。でも、真剣な思いを2年費やしたヒースが今のダンテの胸を打つには充分な答えに行き着いていた。

 ヒースの言葉は嬉しく、進むべき方向が見えた気がしたダンテは感謝の気持ちと同時に悔しい気持ちにさせられる。

 なので小さい人間の行動だと分かってても言う事にする。

「でも、やっぱり、アリアを振り向かせるのはヒースには無理だと思う」
「ああっ! ここは嘘でも『もしかするかも』と言ってくれるとこだろ? ダンテだってポロネの頭はともかく、多分5歳は年上だぞ? 男としてきっと見て貰えないって!!」

 みっともない男の言い争いは、お互いの胸倉を掴み合い睨み合いに発展するが、お互い悔し泣きをしてるのに気付くと、どちらかとなく争うのをやめる。

「不毛だから止めよ……」
「だよね?」

 海を見つめながら泣く馬鹿2人は憤りを海にぶつける。

「「海の馬鹿野郎!」」

 少しはスッキリすると思ったが、更に虚しくなった2人は膝を抱えて声を殺し啜り泣いた。
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