異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

文字の大きさ
363 / 365
最終章 DTには『さようなら』は似合わない

320話 守護者がいなくなった世界のようです

しおりを挟む
 ダンガに到着したアリア達は街の空気が余りにもおかしいので愕然と見渡していた。

 アリア達に気付く住人から怨念が籠ったような視線が向けられる事に思わず怯える。

 ダンガに住んでた時は笑みを浮かべられたり、優しく声をかけられる事が多かったアリア達はこの落差に驚いていた。

 いくら1年、街を離れていたからといって豹変し過ぎである。

 いつも変な自信に溢れるミュウですら可愛らしい耳がヘタっと倒れている。

「な、なんなの? どうして親の仇を見るような目で私達は見られるの?」
「……いや、多分、睨まれてるのはスゥ達じゃない……」
「……ん、憎しみを向けているのは私とレイア。凄く強い想い、暴走しそうなほどに」

 青褪めているアリアとレイアの双子を見つめるダンテとヒースが顔を見合わせると頷く。

「とりあえず、家に向かおう。確かにここは普通じゃなさそうだし、おかしい理由を家でなら誰かが教えてくれるからね」

 そうダンテは言うと周りの人々を刺激しない程度に馬を急がせて北川家を目指して馬車を走らせた。





 家に戻ると息を顰めているような静けさに包まれており、到着したアリア達は息を飲む。

 いつもならグランドを子供達が走り回っている時間帯なのに誰もおらず閑散としていた。

 誰もいないのかと思えば、気配を探ると室内には沢山の気配がある。

 室内から出てはいけないと言われて中にいるとしても普段なら大騒ぎしてる子供達がいるはずである。

「ちっちゃい子、泣いてる……」

 子供達がいるはずの寮を見つめるミュウが悲しそうに呟く。

 アリア達には聞こえないがミュウは啜り泣くような声を拾っていた。

「家に入ろう。ここに居ても何も分からないよ」

 ダンテが足を止めているアリア達の背を押すようにして食堂がある方の建屋に向かって歩き出した。


 食堂に入ると1人、組んだ手に額を載せて俯いて据わるティファーニアの姿があった。

「テファ姉!」

 レイアは家に帰るまで抑えてた気持ちを止められずに大きめな声を上げ、ティファーニアに駆け寄る。

 それに驚いて顔を上げ、見渡し、アリア達が帰った事を知って悲しげに笑みを浮かべる。

「お帰りなさい……みんな」
「テファさん、何があったの!? 明らかに街の様子も家の様子もおかしいの!」
「そうです。こんな変な状況なのに、姉さんはどこに? ホーラさん達もですが、何よりユウイチさんは?」

 レイアだけに限らず、ダンテ達も我慢していたようで矢継ぎ早に質問を被せる。

 一瞬、込み上げるモノに耐える姿を見せたティファーニアであったが肩で息をすると首を横に振って話し始める。

「ホーラは自室に引き籠って出てこないわ。ポプリはミレーヌさんを見送った後、パラメキ国へ伝令を出す為に家を出てる。テツ君は傷の手当ても適当に済ませて、フラリと姿を消したわ……」
「ちょ、ホーラ姉が引き籠った!? えっ? テツ兄が怪我!? 訳が分からない!?」

 想定外の事がどんどん出てきてパニックになりかけのレイアの肩に手を置くアリアが前に出てティファーニアに問う。

「テファ姉さん、悪いけど、最初から説明して?」
「そうね、断片的に聞かされても困るよね……」

 そうして、ティファーニアは思い出すのも辛い話を話し始めた。

 今日の早朝にモンスターの集団がダンガに侵攻してきたのをホーラ達を中心に街の冒険者で街を守る為に戦った。

 ホーラ達の善戦もあり、侵攻を抑えられたが、テツは以前に戦った相手に不覚を取り、ホーラ達にも敵の幹部らしき者達に襲われて絶体絶命のところに雄一が現れた。

 雄一がそのタイミングで間に合った事にアリア達の表情は明るくなるがティファーニアの表情は一向に明るくならない事に眉を寄せるが今の状況から考えて楽しい話な訳がないと唇を噛み締める。

 雄一の活躍でホーラ達は無事に助かり、そんな雄一に立ち塞がった者がいた。

「先生に立ち塞がったのは……アリア、レイア、貴方達の本当のお父さんよ?」

 ダンテ達の視線がアリアとレイアに集中する。

「お父さんが……どうして今頃……」
「くっ、まだ生きてた……あの何もない世界で死んでると思ってたのに……」

 双子なのにまったく違う反応を返す。

 レイアは訳が分からない、といった感じに対し、アリアは嫌悪感を隠さずに悪態を吐く。

「その時の様子を命知らずの冒険者の数名が聞いてたらしいわ。どうやら先生はアリア達のお父さんがやってきた理由を知ってる口ぶりをしてたらしいけど……」

 しかし、その理由を知る者はいない、と被り振るティファーニア。

「がぅ、ユーイは? ユーイが負けたとは思えない」
「ええ、先生はアリアとレイアのお父さんを圧倒したわ……でも……」

 眉を寄せて続きを促すアリア達から目を逸らしてティファーニアは続ける。

「トドメの1発を入れようとした時に何故だか分からないけどシホーヌさんとアクアさんがそれを阻止する為に現れた。先生に何かしたらしいくて、込めてた力が溢れ出た余波でアリアとレイアのお父さんは西の空に飛ばされていったわ」
「西の空ですか?」

 ヒースは自分の生まれ故郷がある方向と知り、部外者と思い、黙っていたが思わず口を挟んでしまった。

「ええ、飛んだ軌跡を見る限り、少なくとも、この大陸の外には飛ばされたと思うわ」
「そうですか……」

 さすがに大陸を渡る事はないだろうとは思うが胸騒ぎが止まらないヒース。

 話が逸れた事をティファーニアに詰め寄るレイアに苦笑いを浮かべ、本線に戻す。

「先生を止めた2人に空間が割れた先から鎖が飛び出して縛ると引き込み始めたらしいわ。それに抗おうと先生がしたらしいのだけど……ホーラ達が見守る目の前で引きずり込まれた……」

 絶句するアリア達で一番最初に立ち直ったダンテが言う。

「ゆ、ユウイチさんなら異空間から帰還するのは簡単でしょう? どこにいるんですか?」

 ダンテの言葉にティファーニアは首を横に振ってみせる。

「どうも、その異空間は特殊で神や精霊などの監獄のような場所らしいの。超越者達を裁く場所とシホーヌさんとアクアさんにホーラ達3人は聞かされた事があるらしいの」

 そう、ホーラ達が雄一抜きでベへモス狩りに行った時に制約があって色々できないと言っている2人から移動の時間で世間話のつもりで聞いた内容ではあったが2人に余り口外するな、と口止めされて聞かされたらしい。

「先生が2人を見捨てるとは思えない……だから……」

 超越者を裁く場所で雄一が無事だとは思えなく、帰ってくる気配もないし、行き来ができるなら一度出て無事を知らせに来ると思われる雄一が帰らない。

「そ、そんな……」

 スゥはペタリと女の子座りをして床を見つめる。

 顔を真っ青にする双子のアリアとレイアを見つめるダンテは背後から大きな音がして振り返ると扉を乱暴に開け放って飛び出すミュウの後ろ姿を捉える。

「どこに行こうと言うんだ、ミュウ!」
「ユーイ、探す!」

 手を伸ばした格好で止まるダンテは沈痛そうに目を瞑ると同時に自分の姉、ディータが何をしてるか理解してしまった。

 あの直情的なディータはミュウと同じ事をしている、と確信してしまった。

「ユウイチさんを失った事で街の空気が悪くなってるのですか……」
「それもあるのだけど、少し言い難い事なのだけど……」

 言い淀むティファーニアから何かを感じ取ったアリアが悲壮な覚悟を込めて聞く。

「言って」
「……先程言った命知らずの冒険者達が先生との会話から最後に戦った相手がアリアとレイアの父親だと知って……しまったの」
「その話が拡散して……」

 ダンテの言葉に頷くティファーニアは知ってる事は言い切ったとばかりに大きく肩で溜息を吐く。

 それを魂が抜けたように見つめるアリアとレイアの顔色は青を通り過ぎて真っ白になったように血の気がしていなかった。







 上半身剥き出しで手荒な包帯の巻き方をしているアルビノのエルフ、テツが吐く息も白くなる森の中を片手で自分を抱くようにして歩く。

 獣道すらない道を迷いもなく歩くテツは拓けた場所、暖かい時期になると花が咲き乱れる場所の中央に小山になってる上に枝のような木が生えている場所の前に立つ。

「父さん、母さん、1年ぶりです。本当ならもうちょっと後に来る予定だったんですけど、早く来ちゃいました……」

 一緒にお嫁さんにするティファーニアさんを連れてくるつもりだったんです、と空虚な笑いを浮かべながら、父と母が眠る場所の前で両膝を着く。

「僕は昔からどうでもいい時は無茶な事をする癖に肝心な所では尻込みするんです。そのせいで父さんと母さんが死んじゃったんだから知ってましたよね……?」

 自嘲する笑みを浮かべるテツは瞳から涙が溢れだす。

 嗚咽混じりに父と母に縋るように2人が眠る場所に両手を着く。

「今回、僕は強い力を得れるチャンスを尻込みをして、ふいにして負けました。その力を得ていたら僕はユウイチさんの隣に居れたかもしれない……」

 着いてた地面を握るようにして土を掴むテツは体を震わせて叫ぶ。

「そのせいで、僕は2度も父さんを失うハメになりました。そう、僕が覚悟を決めれず心が弱かった為に!!! 僕は無力だ! ただ、母さんに抱かれて守られてたあの時から何も変わってない……」

 ポツリ、ポツリと冷たい雨がテツを打つ。


 ウオオオオオオォォォォォ!!!!!!!!!!!!!


 空を見上げるテツが暗雲を見つめると傷が開くのも恐れずに腹の底から全力で叫び、優しくない雨がテツを包むように激しさを増してテツを打ちつける。

 肌に当たる冷たい雨、開いた傷口からの痛みが感じさせる。

「僕はまだ生きている……終わりじゃない!」

 覚悟を決めたテツは立ち上がると父と母に背を向け、今、成すべきと決めた事を達成するまで、ここには来ないと父と母に心で決意を伝えて振り返らずに森を静かにしっかりとした足取りで父と母が眠る森を後にした。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

処理中です...