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ここからが玩具箱の本番
ドラゴンがダンガに飛来した日
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雄一と小さい3人は一緒にお昼前にお風呂に入っていた。
何故、こんな時間から入っているかと言うと、西のほうにある小さな山の麓の森で家族全員で出かけて遊んでいたら3人が泥だらけになってしまったからである。
ちなみにテツとホーラは、その山で時折、見つかるという変わった金属があるという話をミチルダから聞いていたようで、うろうろと捜してたら、それらしい金属を発見して、ミチルダに見せに行っている。転がるように落ちてたそうであるが不思議な事もあるな、と雄一は思う。
シホーヌとアクアは、テツが呼びに行った時に、もう少し、ここにいるから先に帰ってくれと言われたそうである。
見た目通りの2人じゃないから、放って帰っても危険など何もないだろうと思い、本当に放って帰ってきた。
そういう訳で、風呂に入れてやれるのが雄一だけだったので、時折、アリアとミュウとは入っていたがレイアとは初めて、一緒に風呂に入っていた。
雄一は、冒険者ギルドの仕事の時に襲いかかってきたラミアのようにでかく、巨大なコブラといったら分かり易いモンスターを狩って、その皮をサリナさんに渡し、雄一があれこれと注文を付けて作って貰ったシャンプーハットを装着してアリアの頭を洗っていた。
お湯を流して濯いでやって完了したアリアのシャンプーハットを取ってやる。
「よし、アリア、出来上がりだ。湯船に浸かって100数えたら上がっていいぞ」
アリアは首を横に振って、布に石鹸を付けると泡立てると雄一の背中を磨きだす。どうやら、背中を流してくれるようである。
「アリア、ありがとうな? 次はミュウ! 風呂の周りを走り回るな、頭を洗うからこっちにこい」
風呂椅子を叩いて、ミュウを呼ぶと、キーンと叫んで走る人のようなポーズを取ってミュウがやってきて乱暴に風呂椅子に座る。
そして、洗い出すが、ミュウは頭を洗われる事は嫌いじゃないそうであるが、どうしてもこそばいようで、身を捻りだすので洗うのが少し時間がかかる。
しっかり濯いでやるとミュウにも同じように伝えるが、アリアと同じように雄一の背中を磨き始める。
ガゥガゥと嬉しそうに、アリアと遊んでいるつもりなのであろう。
「よし、最後はレイア。こっちにこい」
「いい、アタシは自分でやれる」
そう言うレイアのセリフが雄一の耳には「一人でもできるもんっ!」に変換されて萌えてしまう残念ぶりを発揮していた。
だが、必死に自分でシャンプーハットを着けるレイアであるが、上手く着けてなくて、あのまま洗えば、シャンプーハットを着けている意味がなく目に泡が入ってしまう。
「レイア、さすがにそのままだと意味ないからシャンプーハットを着けてやるから、こっちにこい」
レイアもさすがに駄目だと気付いているようで渋々やってくると雄一の前にある風呂椅子に座る。
そして、雄一に装着して貰ったシャンプーハットの具合を確認したレイアは頷くとシャンプーを頭に着けようとするが手が届かなくてシャンプーが載った手がシャンプーハットにペタと手を当てて無駄に流れていく。
痛い沈黙が流れるなか、雄一の背中を擦る2人の布の音だけが響き渡る。
「レイア? 俺に頭を洗わせてくれないか?」
「……しょうがないから、洗わせてやるよ」
そして、雄一は3人の頭を洗い終わると、手早く自分の頭を洗い、4人で湯船に浸かり、仲良く100数えて風呂から出た。
簡単にお昼を用意して、4人で食べると3人は食べたら、すぐにウトウトし出したので、雄一は3人をベッドに連れていき、寝かしつける。
3人の天使のような寝顔に頬を緩めていると、外が騒がしいな、と思っていると家の中で雄一を呼ぶテツの声が響き渡る。
そのまま放置していたら3人がテツの声で目を覚ますと思った雄一は、神速を発揮してテツに駆け寄ると問答無用に殴りつけて地面に叩きつけて沈黙させる。
「五月蠅い、今、3人が寝たところだ!」
「ユウイチさん、それどころじゃないんですぅ!」
テツは、ガバッと立ち上がると何もなかったかのように雄一に詰め寄ってくる。
そんなテツを見て、どんどん、無駄に丈夫になっていくな、と呆れるように見つめる。
「聞いてやるから、声のトーンを落とせ」
「あっ、すいません。突然、西から巨大なドラゴンが飛来してきました。飛んでる向きからするとダンガにやってきます。今、ダンガはハチの巣を突いた状態になってパニックになってるんです」
顎に手をやり、考える雄一に、「どうしましょう?」とテツが聞いてくる。
「どれくらいでダンガにやってきそうなんだ?」
「えっと、巨体のせいか、空を飛んでますが物凄く遅いらしいです。馬車より遅いぐらいかと」
「なら、見て、判断してからでも答えを出すのは遅くないな」
そう言うとテツに案内するように言い、雄一とテツは家を後にした。
雄一はテツに連れられて、城壁の上にやってくる。
そこには意識の高い冒険者達が決死の表情でこちらに近寄ってくるドラゴンを直視していたが、最近、冒険者ギルドで色々と有名になり、ダンガ最強の冒険者という認識が広がる雄一の姿を見て、少し、明るい表情をする者が増える。
「やっときた。こんなに騒がしいのに何をしてたさ」
「ん? 3人が眠そうにしてたから寝かしつけてた。そして、3人の天使の寝顔を見つめる楽しみを堪能してた」
呑気な事を言う雄一の言葉に緊張し過ぎてた冒険者から失笑する声と、「ガキの寝顔なんてどうでもいいだろうがぁ!」と叫ぶ者がいた。
勿論、叫んだ奴らにはきっちりと威圧を叩きつけて、「顔を覚えておくからな?」と脅すのも忘れない。
「でも、ユウが呑気なのは間違いないさ」
とホーラに駄目だしされ、グゥの音も出ない雄一。
「そうは言うが、そんなに厄介なドラゴンなのか?」
「それは私がご説明しましょう」
明らかに冒険者ではないというより、戦うどころか走り出したら50mで倒れそうなガリガリでヨレヨレの服を着る男が近寄ってくる。
「アンタは誰だ?」
「私はダンガの歴史を紐解く研究をしている者です。早速ですが、あのドラゴンは史実にも残ってる封印されたドラゴンかと思われます」
かけてる眼鏡を押し上げながら、嬉しそうに説明し始める。
「土を食し、排泄したモノが金属になるという不思議なドラゴンで、そのせいか、鱗の硬さは数いるドラゴンでもトップクラス、重量も凄まじいと伝えられてますが、過去にダンガの西で眠りに就いた時に封印されて、眠りと半覚醒を繰り返していると文献に残ってます」
かなり攻撃的なドラゴンで封印されていた事を怒り、近くにあるダンガにやってこようとしてると学者風の男は語った。
雄一は、遠目に見る分には、そこまでたいしたドラゴンには見えないな、と悩むようにするが、だいぶ近づいてきて、ドラゴンの顔が識別できるようになる。
その凶悪な顔を見て、寝起きの3人が見て怯える姿を想像した瞬間、可愛い3人のトラウマになってしまうと雄一の怒りに火がつく。
「アリアとレイアとミュウが、怖がったら……どう、落とし前付けるんだぁ!!!」
雄一は手を一閃すると巨大なウォータカッターを発動させると一直線にドラゴン目掛けて放つ。
「なんだ、あのクソデカイ魔法はっ!」
「あ、あれ、初級魔法だ……」
「ウソだろっ!」
冒険者達がハチの巣を突いたかのように騒ぎ出すが、雄一は反応を示さず、前を見つめ続ける。
飛んで行ったウォータカッターは狙い違わず、ドラゴンの首に直撃する。すると抵抗もなかったかのように通過し、首と胴がお別れするのを冒険者達は口を開けて見つめる。
「で、伝説のドラゴンが……」
腰を抜かして、震えて雄一を見つめる学者風の男がいたが無視する。
「ホーラ、テツ。少し気になる事があるから見てくる。3人が目を覚まして心細くしてるかもしれないから、家に帰ってくれ」
雄一の言葉に頷くと2人は家に向かって走っていく。
雄一は何も気にしてない顔をして出て行こうとするので、慌てた冒険者達の代表ぽい者が雄一に声をかける。
「おい、アンタ、ドラゴンはどうするんだ?」
「ああ、そうだな。もし暇なら解体してくれないか? 多少のネコババなら目を瞑るぞ?」
「アンタ相手にそんな怖い事できるかよ。ちゃんと冒険者ギルドで適正の報酬を算定して貰った金額でいいよ」
別の冒険者が呆れるように言ってくるので、「じゃ、それで頼む」と言うと今度は本当に雄一は西へ向かって出かけた。
雄一は、朝方、みんなで遊んでいた場所にくると精神を集中して、覚えのある魔力の流れを捜す。
隠す気がある2人じゃないので、すぐに見つけるとそちらのほうに歩いていく。
魔力を辿るようにしていくと、祭壇のような場所の上で何やら振り付けをしながら、童謡のような歌を歌うアホ馬鹿コンビがそこにいた。
「お前ら、何をしてる?」
「あっ、ユウイチなのですぅ」
「主様、わざわざ迎えに来てくれたのですか?」
呼ばれた2人は嬉しそうに駆け寄ってくる。
「あのお立ち台のような場所を見てたら、作曲魂に火がついたのですぅ」
「前からちょっとづつ、シホーヌと考えてた私達の歌を歌ってました」
ふむ、頷く雄一は2人に問いかける。
「ここに結界みたいなのが張られてなかったか?」
「あったのですぅ。さっき壊れたみたいなのですぅ?」
「そうですね、歌い出して少ししたら壊れました。その後、でっかいトカゲが飛び出していきましたね」
だんだんカラクリが分かってきた雄一は眉間を揉みながら2人に聞く。
「その結界だが、お前らが歌を歌って撒き散らした魔力で壊れたんじゃないのか? ちなみにでっかいトカゲじゃなくてドラゴンな? ダンガでは大騒ぎになってたぞ」
雄一が言う言葉に反論する言葉がないようで固まる2人。お互いの顔を見つめて頷きあう。
「アクアが、歌が下手だから結界が壊れたのですぅ!」
「あっ! 裏切るのですか? 違うのですよ、シホーヌがへんてこな踊りをするから呪いが発動して壊れました」
醜い裏切り合いをする2人はお互いの頬を抓り、涙目になる。
溜息を吐いた雄一は、二人の小さな顔をでっかい手で鷲掴みにすると持ち上げる。
「イタタッ、私は悪くないのですぅ。全部、アクアが悪いのですぅ!」
「主様、女の子の顔は攻撃しないでくださいっ! それと悪いのはシホーヌですから間違えないでぇ!」
「お前ら2人とも同罪だぁ!」
2人の頭を叩きつけると、手を離すが正座をさせる。
そこから1時間、雄一に説教され、シホーヌとアクアは正座をして、痺れる足との戦いの幕が切って下ろされた。
何故、こんな時間から入っているかと言うと、西のほうにある小さな山の麓の森で家族全員で出かけて遊んでいたら3人が泥だらけになってしまったからである。
ちなみにテツとホーラは、その山で時折、見つかるという変わった金属があるという話をミチルダから聞いていたようで、うろうろと捜してたら、それらしい金属を発見して、ミチルダに見せに行っている。転がるように落ちてたそうであるが不思議な事もあるな、と雄一は思う。
シホーヌとアクアは、テツが呼びに行った時に、もう少し、ここにいるから先に帰ってくれと言われたそうである。
見た目通りの2人じゃないから、放って帰っても危険など何もないだろうと思い、本当に放って帰ってきた。
そういう訳で、風呂に入れてやれるのが雄一だけだったので、時折、アリアとミュウとは入っていたがレイアとは初めて、一緒に風呂に入っていた。
雄一は、冒険者ギルドの仕事の時に襲いかかってきたラミアのようにでかく、巨大なコブラといったら分かり易いモンスターを狩って、その皮をサリナさんに渡し、雄一があれこれと注文を付けて作って貰ったシャンプーハットを装着してアリアの頭を洗っていた。
お湯を流して濯いでやって完了したアリアのシャンプーハットを取ってやる。
「よし、アリア、出来上がりだ。湯船に浸かって100数えたら上がっていいぞ」
アリアは首を横に振って、布に石鹸を付けると泡立てると雄一の背中を磨きだす。どうやら、背中を流してくれるようである。
「アリア、ありがとうな? 次はミュウ! 風呂の周りを走り回るな、頭を洗うからこっちにこい」
風呂椅子を叩いて、ミュウを呼ぶと、キーンと叫んで走る人のようなポーズを取ってミュウがやってきて乱暴に風呂椅子に座る。
そして、洗い出すが、ミュウは頭を洗われる事は嫌いじゃないそうであるが、どうしてもこそばいようで、身を捻りだすので洗うのが少し時間がかかる。
しっかり濯いでやるとミュウにも同じように伝えるが、アリアと同じように雄一の背中を磨き始める。
ガゥガゥと嬉しそうに、アリアと遊んでいるつもりなのであろう。
「よし、最後はレイア。こっちにこい」
「いい、アタシは自分でやれる」
そう言うレイアのセリフが雄一の耳には「一人でもできるもんっ!」に変換されて萌えてしまう残念ぶりを発揮していた。
だが、必死に自分でシャンプーハットを着けるレイアであるが、上手く着けてなくて、あのまま洗えば、シャンプーハットを着けている意味がなく目に泡が入ってしまう。
「レイア、さすがにそのままだと意味ないからシャンプーハットを着けてやるから、こっちにこい」
レイアもさすがに駄目だと気付いているようで渋々やってくると雄一の前にある風呂椅子に座る。
そして、雄一に装着して貰ったシャンプーハットの具合を確認したレイアは頷くとシャンプーを頭に着けようとするが手が届かなくてシャンプーが載った手がシャンプーハットにペタと手を当てて無駄に流れていく。
痛い沈黙が流れるなか、雄一の背中を擦る2人の布の音だけが響き渡る。
「レイア? 俺に頭を洗わせてくれないか?」
「……しょうがないから、洗わせてやるよ」
そして、雄一は3人の頭を洗い終わると、手早く自分の頭を洗い、4人で湯船に浸かり、仲良く100数えて風呂から出た。
簡単にお昼を用意して、4人で食べると3人は食べたら、すぐにウトウトし出したので、雄一は3人をベッドに連れていき、寝かしつける。
3人の天使のような寝顔に頬を緩めていると、外が騒がしいな、と思っていると家の中で雄一を呼ぶテツの声が響き渡る。
そのまま放置していたら3人がテツの声で目を覚ますと思った雄一は、神速を発揮してテツに駆け寄ると問答無用に殴りつけて地面に叩きつけて沈黙させる。
「五月蠅い、今、3人が寝たところだ!」
「ユウイチさん、それどころじゃないんですぅ!」
テツは、ガバッと立ち上がると何もなかったかのように雄一に詰め寄ってくる。
そんなテツを見て、どんどん、無駄に丈夫になっていくな、と呆れるように見つめる。
「聞いてやるから、声のトーンを落とせ」
「あっ、すいません。突然、西から巨大なドラゴンが飛来してきました。飛んでる向きからするとダンガにやってきます。今、ダンガはハチの巣を突いた状態になってパニックになってるんです」
顎に手をやり、考える雄一に、「どうしましょう?」とテツが聞いてくる。
「どれくらいでダンガにやってきそうなんだ?」
「えっと、巨体のせいか、空を飛んでますが物凄く遅いらしいです。馬車より遅いぐらいかと」
「なら、見て、判断してからでも答えを出すのは遅くないな」
そう言うとテツに案内するように言い、雄一とテツは家を後にした。
雄一はテツに連れられて、城壁の上にやってくる。
そこには意識の高い冒険者達が決死の表情でこちらに近寄ってくるドラゴンを直視していたが、最近、冒険者ギルドで色々と有名になり、ダンガ最強の冒険者という認識が広がる雄一の姿を見て、少し、明るい表情をする者が増える。
「やっときた。こんなに騒がしいのに何をしてたさ」
「ん? 3人が眠そうにしてたから寝かしつけてた。そして、3人の天使の寝顔を見つめる楽しみを堪能してた」
呑気な事を言う雄一の言葉に緊張し過ぎてた冒険者から失笑する声と、「ガキの寝顔なんてどうでもいいだろうがぁ!」と叫ぶ者がいた。
勿論、叫んだ奴らにはきっちりと威圧を叩きつけて、「顔を覚えておくからな?」と脅すのも忘れない。
「でも、ユウが呑気なのは間違いないさ」
とホーラに駄目だしされ、グゥの音も出ない雄一。
「そうは言うが、そんなに厄介なドラゴンなのか?」
「それは私がご説明しましょう」
明らかに冒険者ではないというより、戦うどころか走り出したら50mで倒れそうなガリガリでヨレヨレの服を着る男が近寄ってくる。
「アンタは誰だ?」
「私はダンガの歴史を紐解く研究をしている者です。早速ですが、あのドラゴンは史実にも残ってる封印されたドラゴンかと思われます」
かけてる眼鏡を押し上げながら、嬉しそうに説明し始める。
「土を食し、排泄したモノが金属になるという不思議なドラゴンで、そのせいか、鱗の硬さは数いるドラゴンでもトップクラス、重量も凄まじいと伝えられてますが、過去にダンガの西で眠りに就いた時に封印されて、眠りと半覚醒を繰り返していると文献に残ってます」
かなり攻撃的なドラゴンで封印されていた事を怒り、近くにあるダンガにやってこようとしてると学者風の男は語った。
雄一は、遠目に見る分には、そこまでたいしたドラゴンには見えないな、と悩むようにするが、だいぶ近づいてきて、ドラゴンの顔が識別できるようになる。
その凶悪な顔を見て、寝起きの3人が見て怯える姿を想像した瞬間、可愛い3人のトラウマになってしまうと雄一の怒りに火がつく。
「アリアとレイアとミュウが、怖がったら……どう、落とし前付けるんだぁ!!!」
雄一は手を一閃すると巨大なウォータカッターを発動させると一直線にドラゴン目掛けて放つ。
「なんだ、あのクソデカイ魔法はっ!」
「あ、あれ、初級魔法だ……」
「ウソだろっ!」
冒険者達がハチの巣を突いたかのように騒ぎ出すが、雄一は反応を示さず、前を見つめ続ける。
飛んで行ったウォータカッターは狙い違わず、ドラゴンの首に直撃する。すると抵抗もなかったかのように通過し、首と胴がお別れするのを冒険者達は口を開けて見つめる。
「で、伝説のドラゴンが……」
腰を抜かして、震えて雄一を見つめる学者風の男がいたが無視する。
「ホーラ、テツ。少し気になる事があるから見てくる。3人が目を覚まして心細くしてるかもしれないから、家に帰ってくれ」
雄一の言葉に頷くと2人は家に向かって走っていく。
雄一は何も気にしてない顔をして出て行こうとするので、慌てた冒険者達の代表ぽい者が雄一に声をかける。
「おい、アンタ、ドラゴンはどうするんだ?」
「ああ、そうだな。もし暇なら解体してくれないか? 多少のネコババなら目を瞑るぞ?」
「アンタ相手にそんな怖い事できるかよ。ちゃんと冒険者ギルドで適正の報酬を算定して貰った金額でいいよ」
別の冒険者が呆れるように言ってくるので、「じゃ、それで頼む」と言うと今度は本当に雄一は西へ向かって出かけた。
雄一は、朝方、みんなで遊んでいた場所にくると精神を集中して、覚えのある魔力の流れを捜す。
隠す気がある2人じゃないので、すぐに見つけるとそちらのほうに歩いていく。
魔力を辿るようにしていくと、祭壇のような場所の上で何やら振り付けをしながら、童謡のような歌を歌うアホ馬鹿コンビがそこにいた。
「お前ら、何をしてる?」
「あっ、ユウイチなのですぅ」
「主様、わざわざ迎えに来てくれたのですか?」
呼ばれた2人は嬉しそうに駆け寄ってくる。
「あのお立ち台のような場所を見てたら、作曲魂に火がついたのですぅ」
「前からちょっとづつ、シホーヌと考えてた私達の歌を歌ってました」
ふむ、頷く雄一は2人に問いかける。
「ここに結界みたいなのが張られてなかったか?」
「あったのですぅ。さっき壊れたみたいなのですぅ?」
「そうですね、歌い出して少ししたら壊れました。その後、でっかいトカゲが飛び出していきましたね」
だんだんカラクリが分かってきた雄一は眉間を揉みながら2人に聞く。
「その結界だが、お前らが歌を歌って撒き散らした魔力で壊れたんじゃないのか? ちなみにでっかいトカゲじゃなくてドラゴンな? ダンガでは大騒ぎになってたぞ」
雄一が言う言葉に反論する言葉がないようで固まる2人。お互いの顔を見つめて頷きあう。
「アクアが、歌が下手だから結界が壊れたのですぅ!」
「あっ! 裏切るのですか? 違うのですよ、シホーヌがへんてこな踊りをするから呪いが発動して壊れました」
醜い裏切り合いをする2人はお互いの頬を抓り、涙目になる。
溜息を吐いた雄一は、二人の小さな顔をでっかい手で鷲掴みにすると持ち上げる。
「イタタッ、私は悪くないのですぅ。全部、アクアが悪いのですぅ!」
「主様、女の子の顔は攻撃しないでくださいっ! それと悪いのはシホーヌですから間違えないでぇ!」
「お前ら2人とも同罪だぁ!」
2人の頭を叩きつけると、手を離すが正座をさせる。
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