駄女神の玩具箱ーどうして、お前はそんなに駄目なんだ?-

バイブルさん

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ここからが玩具箱の本番

2人のとある日常

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 とある森の奥にある泉、アクアの神像の傍に2人の少女がいた。

 一人は金髪に胸元の水晶のペンダントと同じ色の空色の瞳を楽しげに輝かし、頭頂部から飛び出る一房の髪がチャームポイント(本人談)の14~15歳の少女が、隣に居る少女に手を差し出す。

 差し出された手に手を合わせる青髪の少女、ボブカット風のヘアスタイルをし、雄一と同じぐらいの年頃の綺麗な顔立ちしている少女は何故か可愛いと思わせる。
 きっと、浮かべる笑みが幼さを感じさせるのと生来のこの娘の性格が滲み出ている。

 見つめ合う2人を見ると顔立ちも背も全然違うのに双子のように見えるのは笑顔から発する雰囲気が酷似しているからかもしれない。

 笑みを浮かべていた2人が突然、真顔に戻ると2人は地面に寝っ転がり、ノートに書き殴るようになにやら書き始める。

「まだまだ甘いさがあるのですぅ! またアクアは歩幅を間違ってたのですぅ!」
「仕方がないのです。シホーヌの歩幅が短いので調整するのが大変で……」

 駄目だしするシホーヌに申し訳なさそうに見えるように努力をしたらしいアクアが詫びを入れれ、首を横に振り、耳元の三日月のイヤリングが連動するように揺らす。

 アクアの言葉に飛び起きるシホーヌ。

 その動きに追従するアクアも飛び起きるとシホーヌに胸倉を掴まれる。

「私の足は短いのではないのですぅ! 小柄なだけなのですぅ! ユウイチも可愛いと言ってたのですぅ!」
「それはあの時の事を言ってるので? 主様がアリア達の服の繕いをしてる最中に何度も言えと駄々を捏ねて言わせた事ですか?」

 ヤレヤレと肩を露骨に竦めるのに怒り心頭だと言わんばかりに「で、ですぅぅ!!」と叫ぶと頭頂部のアホ毛がグリングリンと旋回し出す。

 旋回したアホ毛が顔にペチペチ当てられるアクアが「お止めになって、チクチクして痛いです!」と半泣きになる。

 どちらかとなく、お互いの頬を引っ張り合いだす。

「我が身命にかけて、アクアの頬を千切ってやるのですぅぅ!!」
「それは私のセリフです! 主様の頬伸ばし記録を更新させますっ!!」

 号泣しながら頬を引っ張り合う2人は奇声を上げながら口をへの字にする。

 泣くぐらいなら止せばいいのに、と冷静な人物がいない2人の戦いは白熱させていった。



 1分後



 女の子座りをする2人は自分の頬を摩りながら涙目で睨みあう。

「きょ、今日の所はこれぐらいで勘弁してやるのですぅ! ケッ、なのですぅ」
「あ、主様の記録を更新するのは悪いと思ったから止めただけですからねっ!?」

 悪態を吐き合う2人であるが、引っ張り合い30秒後にはお互い目を交わし合い、「もういいよね、頑張ったよね? 痛いから止めよう?」と視線で会話をして、形だけ30秒継続させる仲良しである。

 ほんの少し赤くなった頬を冷やす為と涙と鼻水で汚れる顔を洗う為に泉に近寄る
2人。

 顔を洗い終えたシホーヌが辺りを見渡してポツリと声を洩らす。

「アクアはどうして、ここで1人でずっといたのですぅ?」
「……さあ? どうしてだったでしょうか、昔の事で忘れてしまいました」

 泉にいる川魚のトムに手を振りながら答えるアクアは儚い笑みを浮かべる。

 そんなアクアをジッと見つめるシホーヌが優しく語りかけた。

「アクアは私のお友達なのですぅ。アクアは言ったのですぅ。『お友達のお悩みは解決できなくとも一緒に支えて上げられる』と言ってくれたのですぅ」
「シホーヌ……」

 アクアはシホーヌとシンパシーしていたせいか、呑気に笑う隙間から洩れるシホーヌの苦悩を感じ取った。

 アリアとレイアに課せられた運命を正しく導く使命と雄一が雄一であるがゆえに話せないジレンマと罪悪感に押し潰されそうになっていたシホーヌにアクアはそう言って手を差し出した。

 その言葉に泣きそうな顔で笑うアクアはポツリポツリ話し始めた。

 アクアがアクアであるようになった時に元々あった神殿は精霊王によって撤去させられ、アクアは神像だけ抱えて、ここに移り住んだ。

 元来、呑気な性格だったアクアはそれに対して、特に怒りを覚えたりはしなかったが、場所柄、誰もこない場所だった為、寂しくなると街や村に遊びに行くようになったらしい。

 しばらくするとアクアが立ち寄った場所に自然災害が頻発するようになった。

 水の精霊であるアクアはそれが精霊獣によるものだと当然気付き、レンに問い質した。

「精霊王の指示なのよ。調和の乱れを正す為、という事らしいけど、少しおかしいのよね……」

 そう答えたレンは他の精霊獣と相談して、調和の乱れなどを調べ、不審を抱いた精霊王の行動、言動を見つめるようになってアクアの周りは落ち着いたらしい。

 その結果から自分は精霊王に良く思われてない事にようやく気付き、自分が街などに降りたら迷惑をかけると、ここ、泉に引き籠るようになった。

「プンプン! 精霊王は酷いヤツなのですぅ! ヨルズが女神に見えるのですぅ!」
「それから、お会いしたのは数度ではありますが、あの方もそうしないとご自身を保てないように感じられましたので、あまり、お責めにする気にはなれませんね……」

 追い詰められたような目をする精霊王を思い出すアクアは小さな肩を落として苦笑してみせた。

 ちなみに、ヨルズというのはシホーヌの神界の主神の妻で、当然、れっきとした女神である。

 そのヨルズとよく喧嘩していたノルンという女神に師事していた為、なんとなく敵対心というか偏見を持っているだけであった。

 それからというもの、アクアはこの泉で魚や木々に語りかける事で寂しさを紛らわせる日々が続いたらしい。

 聞かされたシホーヌが唇を尖らせて言う。

「やっぱりアクアが可哀想過ぎるのですぅ。精霊お……」
「ですが、シホーヌ?」

 シホーヌが誰かの悪口を言うのを聞きたくなかったアクアは強めの言葉で遮ると自分の神像の下へと歩き始める。

 近寄り、以前は苔塗れだったが、今は定期的に雄一が磨きに来てくれており、綺麗な自分の神像を嬉しげに撫でる。

「そのおかげで、私は主様に会う最初の精霊であれました。そう考えたら良かったと思っています」

 アクアはここに初めてやってきた時の雄一を思い出していた。

 長い年月の間に気紛れか冒険心に駆られた者がここに訪れた者がいなかった訳ではないがアクアは決して姿を現さなかった。

 その少ない人数の者の中で神像に気付いた者もいたが触れようとした者もいなかった中、雄一は苔塗れになった神像が可哀想だとばかりに磨き始めた。

 出てくる気はなかったのに、その何気ない優しさに嬉しくなったアクアは姿を現し、どうしても礼が言いたかったので声をかけた。

 泉の上に立つ、アクアを見つめる真っ黒な瞳に見つめられた時、アクアは恋に落ちた。

 すぐに雄一が女神の正しい加護を受ける者と気付き、諦めようかとも考えた。

 神の力と精霊の力は同居出来ないからである。

 そんな事を考えながら話している時に雄一に言われた言葉で考えを変えた。

 雄一なら、自分を守ってくれる、心を包んでくれるのでは? と期待した。

 そう感じさせた言葉が


「そんな寂しそうな色を称えた子の瞳を俺は信じたかったから……だ」


 そうありたい、と言葉にし、初めて会うアクアに手を差し出すように言う雄一をアクアも信じたくなった。

 勿論、この時の雄一は自分が思った事をそのまま口にしただけである事はアクアも気付いていた。

 だが、愛を囁かれたように感じた自分の気持ちを真実にして、そんな雄一なら、と信じて自分の半身を捧げた。

 結果、雄一はなんなくアクアを受け止め、普通であれば1つですら人の手に余る力を2つも受け止めた。

 それもまだ許容できる容量がある事をアクアに感じさせた。

 雄一に付いて行き、平穏で優しい時間を手に入れた。


 嬉しげに思い出し笑いをするアクアにまだ納得がいかない顔をする友人のシホーヌに笑いかけ、手を差し出す。

「そして、何より私は最高の友人を得る事ができましたよ?」
「えっ!? ……えへへ」

 不意を突かれたシホーヌは、にへら、と緩い笑みを浮かべ、アクアの手を掴む。

 アクアはシホーヌの手を握り締めると照れからか空を見上げる。

「だいぶ陽が傾いてきましたね?」
「言われてみれば、お腹が減ってきたのですぅ!」

 その言葉と共に2人のお腹が可愛らしい苦情を上げる。

 2人は照れ笑いを浮かべると手を繋いだまま、優しい大男が作る夕飯を頭に描きながらスキップするようにして家路についた。



 家のドアを元気良く開くとその玄関に仁王立ちする雄一の姿があった。

「ただいま帰ったのですぅ!」
「主様、お腹が減りました!」

 雄一がそこに居る事をまったく疑問に感じない2人に雄一は桶とブラシと雑巾を差し出す。

 それに可愛らしく首を傾げる2人に雄一が半眼で告げる。

「お前等、トイレ掃除から逃げただろ?」

 その言葉でハッ、と我に返った2人は真顔になって顔を見合わせる。

「そういえば、ダンスの練習が中途半端でしたっ!」
「全力で逃げるのですぅ!!」

 脱兎の如く踵を返して逃げようと2人がするが、あっさりと雄一に襟首を掴まれて捕えられる。

 そして、掃除道具を持たされた2人の襟首を掴む雄一が引きずるようにしてトイレの方へと歩き始める。

「トイレ掃除が終わるまで夕飯をお預けだからな?」
「ひぃーん! それはあんまりなのですぅ!!」
「主様、ご慈悲をっ!!」

 今日一番の大泣きを見せる2人に雄一は「聞く耳持たん!」と告げ、トイレ掃除させる為に奥へと引きずっていった。
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