高校デビューできずに異世界デビュー

バイブルさん

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2章 2度目の再会はアローラで

31話 その道の超越者達

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 次の日、俺とルナは朝一番におっちゃんの店、グルガンデ武具店に舞い戻った。

 昨日の言っていた装備を買う為で1日、日を置いた訳であったが、店の近くにくると喧騒が聞こえてくる。
 どうやら、おっちゃんの店からのようだ。

「売ってくれ、金に糸目はつけないと言ってるだろう!」
「じゃから、金の問題じゃないと言っておろうが!」

 中を覗くと見知った顔があった。

 店の主のおっちゃんと身なりが元通りのスワンさんとメイドのメルさんであった。


 うわ、まだ5日ぐらいしか経ってないのに、もう返り咲いたのか……早過ぎるだろ


「おはよう、おっちゃんにスワンさんにメルさん」
「おはよう、貧乏人君。今は忙しいから出直してくれるかな?」
「出ていくのはお前の方じゃ、このトールがワシが呼んだ客じゃ」

 いつもの妙に決まってる髪を掻き上げる仕草をしながら意外に律儀に挨拶を返すスワンさんとペコリと頭を下げるメルさん。

 おっちゃんはカウンターをドンと叩いて、スワンさんを追い出そうとする。

「しかし、まだあの斧を売って貰ってない!」
「だから売りもんじゃないと言っておるだろ!」

 スワンさんがカウンターの上に飾られた両手斧を指差す。

 とてもじゃないがスワンさんが扱えるようなものじゃないように見えるし、スワンさんが戦うイメージが沸かない。

 なんでだろ? と口に出して首を傾げているとメルさんが話しかけてくる。

「旦那様は、鍛冶業界で1,2を争う有名なグルガンデ武具店の一品を事務所に飾る事で箔を付けようとされてます」
「えっ? おっちゃんってそんなに有名なの?」

 俺が驚いてみせると、逆にメルさんにも驚かれてる。

「ダンガで知らない人がいるとは思いませんでした。まして、冒険者なのに……ペーペー以下ですね。これからはペーペー様とお呼び致します」
「いや、止めてね? 俺の名はトールでお願い!」
「分かりました。ペーペートール様」

 手強いメルさんに俺は泣かされる。


 この子イヤ! 手強すぎる!


 そんな俺をよそにおっちゃんとスワンさんの話は佳境に迫っていた。

「だから、売らんといっとるだろうが! そんなに売って欲しければヒヒイロカネでも持ってこい!」
「ヒヒイロカネだな? 必ず持ってくるからちゃんと売るんだぞ!」

 スワンさんは「帰るぞ!」と身を翻すとメルさんを連れて店を出る。

 店の外を見るとルナが何時の間に現れたか分からなかったカトリーヌの腹に埋もれていた。

 舌打ちしたスワンさんに引き剥がされたルナを見てカトリーヌは悲しそうに見つめた後、短い羽根で手を振るようにする。

 ルナも涙を流しながら手を大きく振って、「バイバイなの!」と叫んでいた。


 なんかルナがデブ鳥と友情を築いている件について……


 ルナが遠い人になった気がした俺はなかった事にしておっちゃんに顔を向ける。

「いいのか? 売る気もないのにあんな口約束して?」
「ふん、ヒヒイロカネは伝説級の鉱石、見つかる訳はないわい」

 鼻息荒く言うおっちゃんを見つつ、スワンさんなら庭を掘ったら出てきました、というオチがあっても不思議じゃないよな、と思うが黙っておくとする。

 本当になりそうだから。

「それはそうと昨日言ってたのできてる?」
「おう、できとるぞ。持ってくるから待ってろ」

 そういうとおっさんは奥に引っ込む。

 奥でゴソゴソと音をさせていると両手に色々抱えて帰ってきた。

 黒いブーツを出してくる。

 それをルナに手渡す。

「履いてみてくれるか? 微調整をする」

 言われたルナは素直に履き直すと、ピッタリ、と騒ぐがおっちゃんは屈むとブーツの踵などを調べて軽く槌で叩く。

「どうじゃ?」
「あれ? さっきピッタリと思ってたのに、今はブーツを履いてる感じがしないの!?」

 これがピッタリと言うんじゃと胸を張るおっちゃんが黒いシャツをルナに手渡す。

「着るのは後でいいから体に充ててみてくれるか?」

 充ててみせるルナを見て、おっちゃんは満足そうに頷く。

「それは繊維に鋼糸が混ぜてある。気持ちだが耐刃性があるから持って行け」
「ありがとうなの!」
「嬢ちゃんは男より簡単な体型で楽だったわい」

 そう言って笑うおっちゃんを見るルナの目が険しくなるのに気付いて、心でおっちゃん逃げてぇ! と叫んだ。

 かろうじて耐えたルナにおっちゃんは店に置いてる両手斧を立てかけるとルナに言う。

「嬢ちゃん、この斧を叩き折るつもりで蹴ってみろ」
「いいの? 本当に壊してしまうの」

 構わんと言うおっちゃんのお言葉に甘えて先程耐えた気持ちを爆発させて蹴り抜く。

 すると、本当に蹴り抜いてしまい、しかも本人もびっくりするほどアッサリだった為、勢いを殺せずに転がって店の外まで行ってしまう。

「にゃぁぁあ!!」

 ネコ化したルナが転がって行くのを見送る。

 転がったルナが飛び起きるとおっちゃんの下に戻る。

「びっくりしたの! 偽物なら偽物って言って欲しいの!」
「いや、本物じゃ。れっきとした鋼で作った両手斧じゃ。そのブーツはシーサーペントの皮で作った一品。満足じゃろ?」

 口をパクパクさせるルナを放置したおっちゃんが俺に茶色の皮でできた肩なしの皮鎧を渡してくる。


 さっきのルナの流れを見る限り、牛とかじゃないよな……


 着ろと言われて素直に着ると問題なしと頷かれる。

「おっちゃん、これは何?」
「それはレッサードラゴンの皮じゃ。丈夫で軽くて良い品じゃぞ?」

 言われた瞬間、ブッと噴き出して鼻が出るかと思わされる。


 ドラゴンだとぉ!


「おっさん、マジもんのドラゴンか?」
「ドラゴンじゃが、所詮はレッサーじゃ本物には遠く及ばんがな」


 いるのか! ドラゴン!


 胸ワクさせる俺におっちゃんはショートソードを手渡してくる。

「抜いて振って見せろ」

 言われるがまま、抜いて振ってみせるとフムと頷くと返せと言われて渡す。

 柄の布を外しして何かを巻き付けて布を再び巻く。

 再び手渡されて、同じように振れと言われて柄を握ると感触の違いに声が出る。

「うわ、メッチャ握り易い。少し重くなった気がするけど、肉体強化で気にならないだろうな」

 そう言って見つめているとおっちゃんが俺の腰にあるショートソードを取ると木の穴に柄を差して見上げる。


 ま、まさか……


「斬ってみろ」

 やっぱりか!

 構える俺をルナが期待に満ちた目で見ている。

 きっと俺も転がると信じているのが分かるところからオチは見えている。

 なので、加減して斬りかかると良く聞くバターを切るようなという感覚に襲われて振り抜くとたたら踏む。

 自分の手にあるショートソードを見つめて無事を確認して今までの相棒を見つめると綺麗な切り口で真っ二つになっていた。

「ずっこいの! 徹だけ無事なんて!」

 そう怒ってくるルナの気持ちも分かるが俺は今、大変であった。

 正直、俺は斬り損ねるつもりで加減をした。だが、実際はあっさり切れて、たたら踏む俺がいた。


 やべぇ、このショートソードやばすぎる!


「おっさん、これキレ過ぎるだろ?」
「心配するな、トールならすぐに慣れるわい」

 評価してくれるのは嬉しいが、大丈夫だろうかと考えているとおっさんは欠伸をする。

「今日は徹夜なんでな、仮眠を取るわい。じゃから、もう帰れ」
「待て待て、まだ代金払ってないぞ?」

 俺に言われたおっちゃんは、本気で忘れてた顔をする。

「じゃ、銀貨10枚でええわい」
「いくらなんでも安過ぎるだろ!!」

 これだけの出来では一品でも銀貨10枚は余裕だろう。

 そう突っ込む俺を煩わしそうに見つめるおっちゃん。

「五月蠅い、値段はワシが決める。銀貨10枚と言ったら10枚じゃ!」

 怒鳴るおっちゃんに申し訳なささと感謝の気持ちで一杯になりながら、銀貨10枚渡すと笑いながらこう言ってくる。

「また、来い」

 そう言うとおっちゃんは店の奥へと消えていった。



 おっちゃんの満足いく武具を売られた俺達は、この破格の武器などを使いこなせるかと不安になり、空を見つめる。

 空を見つめながら、俺はルナに話しかける。

「まだ昼にもなってないみたいだから、少し遅い時間だけど、いつものとこで加減を覚えに行こう」
「賛成なの。これは初めてのモンスターと戦うと危なすぎるの」

 ルナの賛同を受けて、俺達は冒険者ギルドで依頼を受けるといつもの場所に狩りに行った。

 結果、いつもの半分の時間でいつもの倍の収穫を持って帰る事になって、ペイさん達に驚かれた。

 冒険者ギルドからの帰り道。

「ルナ、試しに行って良かったな」
「うん、加減難しかったの……」

 俺は突撃ウサキの首筋だけを斬るつもりが気付けば首を真っ二つにしてた。

 だが、俺はまだマシであった。

 ルナなど、ゴブリンの腹を蹴るついでに木まで蹴り抜いて折ってしまっていた。

 さすがにその時は俺もルナも目が点になったものだ。

 それでも苦労の甲斐あって、やっと感覚を掴んだ俺達は明日こそは出発する事を決めて『マッチョの集い亭』へと帰って行った。







 徹がいつものところで狩りをしてた頃、グルガンデの武具店の主人は目を覚ましていた。

 目を覚ましても客などいるかどうかも見ない主人であるが、外が騒がしい事に気付き、カウンターに行くと朝のうっとおしい客がきていた。

「おお、やっと出てきたか。これを見よ!」

 突き出された物を嫌々受け取ると寝ぼけてた目が一気に見開かれる。

「こ、これはヒヒイロカネ、どこで手に入れた!」
「ふっふん、帰る途中で躓いて転んだ石がそれだったのだよ。変わった石だな、と思って調べたら……やはり私はツイている!」

 ぐぬぬ、と悔しげに唸る主人はカウンターの後ろに飾られている両手斧を取るとスワンに放り投げる。

 受け取ったスワンが潰されたカエルのような声を上げて倒れる。

「ワシの負けじゃ、持ってけ!」
「お、重たい、代金はいかほど?」
「ワシの負けと言ったはずじゃ、金などいらん!」

 それから、払う、受け取らないと喧嘩になり、主人に殴られたスワンは外に両手斧と共に放り出される。

「さっさと帰れ、二度と来るな!」

 追い出すと肩を落とす主人は嘆く。

「ミスリルだけを使った両手斧なんぞ、もう二度と作れんじゃろうな……じゃが、このヒヒイロカネが手に入ったから、何に使うか考えるだけでも楽しいから、まあいいわい」

 嬉しそうにする主人は奥に行くと木箱に無造作に放り投げて、ミランダに依頼されてる新しい包丁の製作に掛かり始めた。
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