32 / 124
2章 2度目の再会はアローラで
31話 その道の超越者達
しおりを挟む
次の日、俺とルナは朝一番におっちゃんの店、グルガンデ武具店に舞い戻った。
昨日の言っていた装備を買う為で1日、日を置いた訳であったが、店の近くにくると喧騒が聞こえてくる。
どうやら、おっちゃんの店からのようだ。
「売ってくれ、金に糸目はつけないと言ってるだろう!」
「じゃから、金の問題じゃないと言っておろうが!」
中を覗くと見知った顔があった。
店の主のおっちゃんと身なりが元通りのスワンさんとメイドのメルさんであった。
うわ、まだ5日ぐらいしか経ってないのに、もう返り咲いたのか……早過ぎるだろ
「おはよう、おっちゃんにスワンさんにメルさん」
「おはよう、貧乏人君。今は忙しいから出直してくれるかな?」
「出ていくのはお前の方じゃ、このトールがワシが呼んだ客じゃ」
いつもの妙に決まってる髪を掻き上げる仕草をしながら意外に律儀に挨拶を返すスワンさんとペコリと頭を下げるメルさん。
おっちゃんはカウンターをドンと叩いて、スワンさんを追い出そうとする。
「しかし、まだあの斧を売って貰ってない!」
「だから売りもんじゃないと言っておるだろ!」
スワンさんがカウンターの上に飾られた両手斧を指差す。
とてもじゃないがスワンさんが扱えるようなものじゃないように見えるし、スワンさんが戦うイメージが沸かない。
なんでだろ? と口に出して首を傾げているとメルさんが話しかけてくる。
「旦那様は、鍛冶業界で1,2を争う有名なグルガンデ武具店の一品を事務所に飾る事で箔を付けようとされてます」
「えっ? おっちゃんってそんなに有名なの?」
俺が驚いてみせると、逆にメルさんにも驚かれてる。
「ダンガで知らない人がいるとは思いませんでした。まして、冒険者なのに……ペーペー以下ですね。これからはペーペー様とお呼び致します」
「いや、止めてね? 俺の名はトールでお願い!」
「分かりました。ペーペートール様」
手強いメルさんに俺は泣かされる。
この子イヤ! 手強すぎる!
そんな俺をよそにおっちゃんとスワンさんの話は佳境に迫っていた。
「だから、売らんといっとるだろうが! そんなに売って欲しければヒヒイロカネでも持ってこい!」
「ヒヒイロカネだな? 必ず持ってくるからちゃんと売るんだぞ!」
スワンさんは「帰るぞ!」と身を翻すとメルさんを連れて店を出る。
店の外を見るとルナが何時の間に現れたか分からなかったカトリーヌの腹に埋もれていた。
舌打ちしたスワンさんに引き剥がされたルナを見てカトリーヌは悲しそうに見つめた後、短い羽根で手を振るようにする。
ルナも涙を流しながら手を大きく振って、「バイバイなの!」と叫んでいた。
なんかルナがデブ鳥と友情を築いている件について……
ルナが遠い人になった気がした俺はなかった事にしておっちゃんに顔を向ける。
「いいのか? 売る気もないのにあんな口約束して?」
「ふん、ヒヒイロカネは伝説級の鉱石、見つかる訳はないわい」
鼻息荒く言うおっちゃんを見つつ、スワンさんなら庭を掘ったら出てきました、というオチがあっても不思議じゃないよな、と思うが黙っておくとする。
本当になりそうだから。
「それはそうと昨日言ってたのできてる?」
「おう、できとるぞ。持ってくるから待ってろ」
そういうとおっさんは奥に引っ込む。
奥でゴソゴソと音をさせていると両手に色々抱えて帰ってきた。
黒いブーツを出してくる。
それをルナに手渡す。
「履いてみてくれるか? 微調整をする」
言われたルナは素直に履き直すと、ピッタリ、と騒ぐがおっちゃんは屈むとブーツの踵などを調べて軽く槌で叩く。
「どうじゃ?」
「あれ? さっきピッタリと思ってたのに、今はブーツを履いてる感じがしないの!?」
これがピッタリと言うんじゃと胸を張るおっちゃんが黒いシャツをルナに手渡す。
「着るのは後でいいから体に充ててみてくれるか?」
充ててみせるルナを見て、おっちゃんは満足そうに頷く。
「それは繊維に鋼糸が混ぜてある。気持ちだが耐刃性があるから持って行け」
「ありがとうなの!」
「嬢ちゃんは男より簡単な体型で楽だったわい」
そう言って笑うおっちゃんを見るルナの目が険しくなるのに気付いて、心でおっちゃん逃げてぇ! と叫んだ。
かろうじて耐えたルナにおっちゃんは店に置いてる両手斧を立てかけるとルナに言う。
「嬢ちゃん、この斧を叩き折るつもりで蹴ってみろ」
「いいの? 本当に壊してしまうの」
構わんと言うおっちゃんのお言葉に甘えて先程耐えた気持ちを爆発させて蹴り抜く。
すると、本当に蹴り抜いてしまい、しかも本人もびっくりするほどアッサリだった為、勢いを殺せずに転がって店の外まで行ってしまう。
「にゃぁぁあ!!」
ネコ化したルナが転がって行くのを見送る。
転がったルナが飛び起きるとおっちゃんの下に戻る。
「びっくりしたの! 偽物なら偽物って言って欲しいの!」
「いや、本物じゃ。れっきとした鋼で作った両手斧じゃ。そのブーツはシーサーペントの皮で作った一品。満足じゃろ?」
口をパクパクさせるルナを放置したおっちゃんが俺に茶色の皮でできた肩なしの皮鎧を渡してくる。
さっきのルナの流れを見る限り、牛とかじゃないよな……
着ろと言われて素直に着ると問題なしと頷かれる。
「おっちゃん、これは何?」
「それはレッサードラゴンの皮じゃ。丈夫で軽くて良い品じゃぞ?」
言われた瞬間、ブッと噴き出して鼻が出るかと思わされる。
ドラゴンだとぉ!
「おっさん、マジもんのドラゴンか?」
「ドラゴンじゃが、所詮はレッサーじゃ本物には遠く及ばんがな」
いるのか! ドラゴン!
胸ワクさせる俺におっちゃんはショートソードを手渡してくる。
「抜いて振って見せろ」
言われるがまま、抜いて振ってみせるとフムと頷くと返せと言われて渡す。
柄の布を外しして何かを巻き付けて布を再び巻く。
再び手渡されて、同じように振れと言われて柄を握ると感触の違いに声が出る。
「うわ、メッチャ握り易い。少し重くなった気がするけど、肉体強化で気にならないだろうな」
そう言って見つめているとおっちゃんが俺の腰にあるショートソードを取ると木の穴に柄を差して見上げる。
ま、まさか……
「斬ってみろ」
やっぱりか!
構える俺をルナが期待に満ちた目で見ている。
きっと俺も転がると信じているのが分かるところからオチは見えている。
なので、加減して斬りかかると良く聞くバターを切るようなという感覚に襲われて振り抜くとたたら踏む。
自分の手にあるショートソードを見つめて無事を確認して今までの相棒を見つめると綺麗な切り口で真っ二つになっていた。
「ずっこいの! 徹だけ無事なんて!」
そう怒ってくるルナの気持ちも分かるが俺は今、大変であった。
正直、俺は斬り損ねるつもりで加減をした。だが、実際はあっさり切れて、たたら踏む俺がいた。
やべぇ、このショートソードやばすぎる!
「おっさん、これキレ過ぎるだろ?」
「心配するな、トールならすぐに慣れるわい」
評価してくれるのは嬉しいが、大丈夫だろうかと考えているとおっさんは欠伸をする。
「今日は徹夜なんでな、仮眠を取るわい。じゃから、もう帰れ」
「待て待て、まだ代金払ってないぞ?」
俺に言われたおっちゃんは、本気で忘れてた顔をする。
「じゃ、銀貨10枚でええわい」
「いくらなんでも安過ぎるだろ!!」
これだけの出来では一品でも銀貨10枚は余裕だろう。
そう突っ込む俺を煩わしそうに見つめるおっちゃん。
「五月蠅い、値段はワシが決める。銀貨10枚と言ったら10枚じゃ!」
怒鳴るおっちゃんに申し訳なささと感謝の気持ちで一杯になりながら、銀貨10枚渡すと笑いながらこう言ってくる。
「また、来い」
そう言うとおっちゃんは店の奥へと消えていった。
おっちゃんの満足いく武具を売られた俺達は、この破格の武器などを使いこなせるかと不安になり、空を見つめる。
空を見つめながら、俺はルナに話しかける。
「まだ昼にもなってないみたいだから、少し遅い時間だけど、いつものとこで加減を覚えに行こう」
「賛成なの。これは初めてのモンスターと戦うと危なすぎるの」
ルナの賛同を受けて、俺達は冒険者ギルドで依頼を受けるといつもの場所に狩りに行った。
結果、いつもの半分の時間でいつもの倍の収穫を持って帰る事になって、ペイさん達に驚かれた。
冒険者ギルドからの帰り道。
「ルナ、試しに行って良かったな」
「うん、加減難しかったの……」
俺は突撃ウサキの首筋だけを斬るつもりが気付けば首を真っ二つにしてた。
だが、俺はまだマシであった。
ルナなど、ゴブリンの腹を蹴るついでに木まで蹴り抜いて折ってしまっていた。
さすがにその時は俺もルナも目が点になったものだ。
それでも苦労の甲斐あって、やっと感覚を掴んだ俺達は明日こそは出発する事を決めて『マッチョの集い亭』へと帰って行った。
▼
徹がいつものところで狩りをしてた頃、グルガンデの武具店の主人は目を覚ましていた。
目を覚ましても客などいるかどうかも見ない主人であるが、外が騒がしい事に気付き、カウンターに行くと朝のうっとおしい客がきていた。
「おお、やっと出てきたか。これを見よ!」
突き出された物を嫌々受け取ると寝ぼけてた目が一気に見開かれる。
「こ、これはヒヒイロカネ、どこで手に入れた!」
「ふっふん、帰る途中で躓いて転んだ石がそれだったのだよ。変わった石だな、と思って調べたら……やはり私はツイている!」
ぐぬぬ、と悔しげに唸る主人はカウンターの後ろに飾られている両手斧を取るとスワンに放り投げる。
受け取ったスワンが潰されたカエルのような声を上げて倒れる。
「ワシの負けじゃ、持ってけ!」
「お、重たい、代金はいかほど?」
「ワシの負けと言ったはずじゃ、金などいらん!」
それから、払う、受け取らないと喧嘩になり、主人に殴られたスワンは外に両手斧と共に放り出される。
「さっさと帰れ、二度と来るな!」
追い出すと肩を落とす主人は嘆く。
「ミスリルだけを使った両手斧なんぞ、もう二度と作れんじゃろうな……じゃが、このヒヒイロカネが手に入ったから、何に使うか考えるだけでも楽しいから、まあいいわい」
嬉しそうにする主人は奥に行くと木箱に無造作に放り投げて、ミランダに依頼されてる新しい包丁の製作に掛かり始めた。
昨日の言っていた装備を買う為で1日、日を置いた訳であったが、店の近くにくると喧騒が聞こえてくる。
どうやら、おっちゃんの店からのようだ。
「売ってくれ、金に糸目はつけないと言ってるだろう!」
「じゃから、金の問題じゃないと言っておろうが!」
中を覗くと見知った顔があった。
店の主のおっちゃんと身なりが元通りのスワンさんとメイドのメルさんであった。
うわ、まだ5日ぐらいしか経ってないのに、もう返り咲いたのか……早過ぎるだろ
「おはよう、おっちゃんにスワンさんにメルさん」
「おはよう、貧乏人君。今は忙しいから出直してくれるかな?」
「出ていくのはお前の方じゃ、このトールがワシが呼んだ客じゃ」
いつもの妙に決まってる髪を掻き上げる仕草をしながら意外に律儀に挨拶を返すスワンさんとペコリと頭を下げるメルさん。
おっちゃんはカウンターをドンと叩いて、スワンさんを追い出そうとする。
「しかし、まだあの斧を売って貰ってない!」
「だから売りもんじゃないと言っておるだろ!」
スワンさんがカウンターの上に飾られた両手斧を指差す。
とてもじゃないがスワンさんが扱えるようなものじゃないように見えるし、スワンさんが戦うイメージが沸かない。
なんでだろ? と口に出して首を傾げているとメルさんが話しかけてくる。
「旦那様は、鍛冶業界で1,2を争う有名なグルガンデ武具店の一品を事務所に飾る事で箔を付けようとされてます」
「えっ? おっちゃんってそんなに有名なの?」
俺が驚いてみせると、逆にメルさんにも驚かれてる。
「ダンガで知らない人がいるとは思いませんでした。まして、冒険者なのに……ペーペー以下ですね。これからはペーペー様とお呼び致します」
「いや、止めてね? 俺の名はトールでお願い!」
「分かりました。ペーペートール様」
手強いメルさんに俺は泣かされる。
この子イヤ! 手強すぎる!
そんな俺をよそにおっちゃんとスワンさんの話は佳境に迫っていた。
「だから、売らんといっとるだろうが! そんなに売って欲しければヒヒイロカネでも持ってこい!」
「ヒヒイロカネだな? 必ず持ってくるからちゃんと売るんだぞ!」
スワンさんは「帰るぞ!」と身を翻すとメルさんを連れて店を出る。
店の外を見るとルナが何時の間に現れたか分からなかったカトリーヌの腹に埋もれていた。
舌打ちしたスワンさんに引き剥がされたルナを見てカトリーヌは悲しそうに見つめた後、短い羽根で手を振るようにする。
ルナも涙を流しながら手を大きく振って、「バイバイなの!」と叫んでいた。
なんかルナがデブ鳥と友情を築いている件について……
ルナが遠い人になった気がした俺はなかった事にしておっちゃんに顔を向ける。
「いいのか? 売る気もないのにあんな口約束して?」
「ふん、ヒヒイロカネは伝説級の鉱石、見つかる訳はないわい」
鼻息荒く言うおっちゃんを見つつ、スワンさんなら庭を掘ったら出てきました、というオチがあっても不思議じゃないよな、と思うが黙っておくとする。
本当になりそうだから。
「それはそうと昨日言ってたのできてる?」
「おう、できとるぞ。持ってくるから待ってろ」
そういうとおっさんは奥に引っ込む。
奥でゴソゴソと音をさせていると両手に色々抱えて帰ってきた。
黒いブーツを出してくる。
それをルナに手渡す。
「履いてみてくれるか? 微調整をする」
言われたルナは素直に履き直すと、ピッタリ、と騒ぐがおっちゃんは屈むとブーツの踵などを調べて軽く槌で叩く。
「どうじゃ?」
「あれ? さっきピッタリと思ってたのに、今はブーツを履いてる感じがしないの!?」
これがピッタリと言うんじゃと胸を張るおっちゃんが黒いシャツをルナに手渡す。
「着るのは後でいいから体に充ててみてくれるか?」
充ててみせるルナを見て、おっちゃんは満足そうに頷く。
「それは繊維に鋼糸が混ぜてある。気持ちだが耐刃性があるから持って行け」
「ありがとうなの!」
「嬢ちゃんは男より簡単な体型で楽だったわい」
そう言って笑うおっちゃんを見るルナの目が険しくなるのに気付いて、心でおっちゃん逃げてぇ! と叫んだ。
かろうじて耐えたルナにおっちゃんは店に置いてる両手斧を立てかけるとルナに言う。
「嬢ちゃん、この斧を叩き折るつもりで蹴ってみろ」
「いいの? 本当に壊してしまうの」
構わんと言うおっちゃんのお言葉に甘えて先程耐えた気持ちを爆発させて蹴り抜く。
すると、本当に蹴り抜いてしまい、しかも本人もびっくりするほどアッサリだった為、勢いを殺せずに転がって店の外まで行ってしまう。
「にゃぁぁあ!!」
ネコ化したルナが転がって行くのを見送る。
転がったルナが飛び起きるとおっちゃんの下に戻る。
「びっくりしたの! 偽物なら偽物って言って欲しいの!」
「いや、本物じゃ。れっきとした鋼で作った両手斧じゃ。そのブーツはシーサーペントの皮で作った一品。満足じゃろ?」
口をパクパクさせるルナを放置したおっちゃんが俺に茶色の皮でできた肩なしの皮鎧を渡してくる。
さっきのルナの流れを見る限り、牛とかじゃないよな……
着ろと言われて素直に着ると問題なしと頷かれる。
「おっちゃん、これは何?」
「それはレッサードラゴンの皮じゃ。丈夫で軽くて良い品じゃぞ?」
言われた瞬間、ブッと噴き出して鼻が出るかと思わされる。
ドラゴンだとぉ!
「おっさん、マジもんのドラゴンか?」
「ドラゴンじゃが、所詮はレッサーじゃ本物には遠く及ばんがな」
いるのか! ドラゴン!
胸ワクさせる俺におっちゃんはショートソードを手渡してくる。
「抜いて振って見せろ」
言われるがまま、抜いて振ってみせるとフムと頷くと返せと言われて渡す。
柄の布を外しして何かを巻き付けて布を再び巻く。
再び手渡されて、同じように振れと言われて柄を握ると感触の違いに声が出る。
「うわ、メッチャ握り易い。少し重くなった気がするけど、肉体強化で気にならないだろうな」
そう言って見つめているとおっちゃんが俺の腰にあるショートソードを取ると木の穴に柄を差して見上げる。
ま、まさか……
「斬ってみろ」
やっぱりか!
構える俺をルナが期待に満ちた目で見ている。
きっと俺も転がると信じているのが分かるところからオチは見えている。
なので、加減して斬りかかると良く聞くバターを切るようなという感覚に襲われて振り抜くとたたら踏む。
自分の手にあるショートソードを見つめて無事を確認して今までの相棒を見つめると綺麗な切り口で真っ二つになっていた。
「ずっこいの! 徹だけ無事なんて!」
そう怒ってくるルナの気持ちも分かるが俺は今、大変であった。
正直、俺は斬り損ねるつもりで加減をした。だが、実際はあっさり切れて、たたら踏む俺がいた。
やべぇ、このショートソードやばすぎる!
「おっさん、これキレ過ぎるだろ?」
「心配するな、トールならすぐに慣れるわい」
評価してくれるのは嬉しいが、大丈夫だろうかと考えているとおっさんは欠伸をする。
「今日は徹夜なんでな、仮眠を取るわい。じゃから、もう帰れ」
「待て待て、まだ代金払ってないぞ?」
俺に言われたおっちゃんは、本気で忘れてた顔をする。
「じゃ、銀貨10枚でええわい」
「いくらなんでも安過ぎるだろ!!」
これだけの出来では一品でも銀貨10枚は余裕だろう。
そう突っ込む俺を煩わしそうに見つめるおっちゃん。
「五月蠅い、値段はワシが決める。銀貨10枚と言ったら10枚じゃ!」
怒鳴るおっちゃんに申し訳なささと感謝の気持ちで一杯になりながら、銀貨10枚渡すと笑いながらこう言ってくる。
「また、来い」
そう言うとおっちゃんは店の奥へと消えていった。
おっちゃんの満足いく武具を売られた俺達は、この破格の武器などを使いこなせるかと不安になり、空を見つめる。
空を見つめながら、俺はルナに話しかける。
「まだ昼にもなってないみたいだから、少し遅い時間だけど、いつものとこで加減を覚えに行こう」
「賛成なの。これは初めてのモンスターと戦うと危なすぎるの」
ルナの賛同を受けて、俺達は冒険者ギルドで依頼を受けるといつもの場所に狩りに行った。
結果、いつもの半分の時間でいつもの倍の収穫を持って帰る事になって、ペイさん達に驚かれた。
冒険者ギルドからの帰り道。
「ルナ、試しに行って良かったな」
「うん、加減難しかったの……」
俺は突撃ウサキの首筋だけを斬るつもりが気付けば首を真っ二つにしてた。
だが、俺はまだマシであった。
ルナなど、ゴブリンの腹を蹴るついでに木まで蹴り抜いて折ってしまっていた。
さすがにその時は俺もルナも目が点になったものだ。
それでも苦労の甲斐あって、やっと感覚を掴んだ俺達は明日こそは出発する事を決めて『マッチョの集い亭』へと帰って行った。
▼
徹がいつものところで狩りをしてた頃、グルガンデの武具店の主人は目を覚ましていた。
目を覚ましても客などいるかどうかも見ない主人であるが、外が騒がしい事に気付き、カウンターに行くと朝のうっとおしい客がきていた。
「おお、やっと出てきたか。これを見よ!」
突き出された物を嫌々受け取ると寝ぼけてた目が一気に見開かれる。
「こ、これはヒヒイロカネ、どこで手に入れた!」
「ふっふん、帰る途中で躓いて転んだ石がそれだったのだよ。変わった石だな、と思って調べたら……やはり私はツイている!」
ぐぬぬ、と悔しげに唸る主人はカウンターの後ろに飾られている両手斧を取るとスワンに放り投げる。
受け取ったスワンが潰されたカエルのような声を上げて倒れる。
「ワシの負けじゃ、持ってけ!」
「お、重たい、代金はいかほど?」
「ワシの負けと言ったはずじゃ、金などいらん!」
それから、払う、受け取らないと喧嘩になり、主人に殴られたスワンは外に両手斧と共に放り出される。
「さっさと帰れ、二度と来るな!」
追い出すと肩を落とす主人は嘆く。
「ミスリルだけを使った両手斧なんぞ、もう二度と作れんじゃろうな……じゃが、このヒヒイロカネが手に入ったから、何に使うか考えるだけでも楽しいから、まあいいわい」
嬉しそうにする主人は奥に行くと木箱に無造作に放り投げて、ミランダに依頼されてる新しい包丁の製作に掛かり始めた。
0
あなたにおすすめの小説
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる