高校デビューできずに異世界デビュー

バイブルさん

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3章 頑張る冒険者家業

53話 なかった事にしたい

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 クラウドを出発してから半日程、歩いた森の中でロキが空にある太陽の位置を見ながらボヤく。

「俺がぁ、前に調べた場所が正しいならよぉ? もう見えてもおかしくねぇーんだがなぁ?」
「行った事ないのに、なんで分かるんだ?」
「おそらく、ロキさんが先程から太陽の位置を気にされてるので、太陽の位置から分かる現在地と過ぎた時間からの予測ではないでしょうか?」

 金属鎧などの重さが半端ない武具を装備してる美紅が、それをまったく苦にしてる様子を見せずに、頬に指を当てながら可愛らしく首を傾げてみせる。


 早朝に出発してそろそろ昼になろうとする時間で、獣道を歩いてきたからシンドイはずなのに……

 美紅の体力は異次元か!?

 勿論、言ったら最近の美紅は怖いから言いませんけどね?


「何か失礼な事を考えてませんか、トオル君?」


 ねっ? 俺が思う美紅への悪口センサーがバリ3よ?


 俺は余裕の笑みで「まさか?」とかわしてみせるが、膝が笑ってたかもしれない。

 美紅の疑わしそうな視線に耐えているとネコ化したルナが両手を突き上げて叫ぶ。

「お腹減ったのぉ!!」
「そうですね、そろそろ良い時間ですし、お昼にしましょうか?」

 そう言うと美紅が食事を取り易い場所を捜すように辺りを見渡し始めるとロキが丘だった場所を指差す。

「あの辺りがいいんじゃねぇーか? ついでに周りの地理の状況を確認するついでにいいしな?」

 大きな木が一本だけあるそこは、周りを見渡すには確かに適しており、モンスターなどが近寄っても遮るモノがないので奇襲の心配も少なそうであった。

 異論がなかったのでロキの意見は取り入れられ、お腹が減ったルナが我慢ならないらしく、その丘の上にある木を目指して飛び出した。

 木の根元に到着すると俺達に早く来いと叫ぶのを見た俺達は苦笑いを洩らしながら歩いて向かう。

 すると、視線を俺達から外したルナが何かに気付いたらしく騒ぎだす。

「徹、みんな、早く来るの! 見つけたの!」

 俺達は顔を見合わせると小走りにルナの下に向かい、ルナが見つめる先を見ると探してたと思われる神殿跡を発見する。

 それを見つめるロキが口の端を上げる。

「そろそろだと思ってたがよ、あんな所にあったのかよ? あのまま進んだら見逃したかもしれねぇーな?」
「それもありますが、あの崖、ここで気付かなかったら戻って周り道をしなくてはならないところでした」

 美紅が言うように神殿跡は俺達が進んでた先の崖下にあり、あの高さをショートカットできなくはないが、その危険の代償を払ってまで短縮する価値は見出せない。
 その結果、遠回りする事になったが、この丘に来た事で周り道せずにこちらから崖下へと向かうルートが発見できた。

 美紅の言葉に肩を竦めるロキは木の根元で、ドカッと腰を降ろすと地面を叩いて催促する。

「目的地ははっきりしたし、落ち着いて飯が食えるのは、事が終わるまでねぇだろうから、しっかり食っとこうぜぇ?」
「そうだな? 美紅、ご飯にしようぜ?」

 俺の言葉に頷いた美紅が背負ってたパンパンになってたリュックを降ろすと食糧を取り出し始める。

 出される食事を瞳をキラキラさせて耐えるルナに呆れながらも、出てくる食糧の量に戦慄を感じつつ、美紅のリュックを見つめるとだいぶ萎んで半分ぐらいになってるのを茫然と見つめる。

「美紅、リュックの中身の半分は食糧だったのか?」
「えっ? 出した食糧は半分ですよ?」


 おふぅ、あのリュックの大半は食糧ですかっ!?


 何もおかしいと感じてないようで美紅が首を傾げている。


 美紅さん、マジ半端ねぇーす!


 小芝居する俺を余所にロキが了解も取らずに手近なサンドイッチに手を付ける。

「あぁ――!! それ、私が目を付けてたのぉ!!」
「知るか、早い者勝ちに決まってるだろうがぁ?」

 ルナの抗議など知らんとばかりにパクパクと食べ始めるロキのボサボサの長髪を後ろに廻ったルナが泣きながら引っ張るが、ロキの食事をする手を止めるには至らない。

 そんな不毛の争いを見つめる俺を苦笑する美紅が言ってくる。

「私達も食べましょうか? このまま見てたらロキさんに全部食べられかねませんし?」
「……だな? 食うか」

 そう俺が言うと美紅も目の前にあった茹で卵の殻を剥いで食べ始める。

 俺も泣いてるルナに「遊んでないで食わないと無くなるぞ?」と警告すると食べ始めた。

「そのサンドイッチは私のなのぉ~!」

 ルナの慟哭が爽やかな風が吹く丘の上で響き渡った。





 食事を終えて、発見したルートを通り、神殿跡にやってきた。

 神殿跡入口にやってくると俺以外、ルナ、美紅、ロキの足が止まる。

 俺は怪訝な表情を浮かべて振り返ると質問した。

「どうした?」
「何か懐かしい感じがしたの……ううん、違う。何かを思い出しそうというのが正しいかもしれないの」
「何か大きな力が……多分、2つ? 1つは酷く気持ち悪い、もう1つは、まったくの別物のようですけど、何かさっぱり分かりません」
「おそらく、美紅が言う気持ち悪いのは呪いの元凶だろうなぁ? ここが目的地で間違いなさそうだぜぇ?」

 それぞれ3人とも何かしら感じるモノがあるらしいが、俺はさっぱり何も感じない。


 うーん、入口から見える奥が薄暗くてお化けが出そうぐらいしか思わないぞ?

 あれ? 幽霊って斬れるのか? 出てきたらどうしよう!

 聞いてみたいけど、シリアスな空気のせいで聞き辛い!


 3人が真剣に悩んでいる最中、若干、緊張感を台無しにしそうな事を考えている俺を放置してロキが頭を掻きながら言ってくる。

「こんなとこにいても話は進まねぇーよ、いくぞ?」

 ルナと美紅が頷くので流れに乗って俺も頷く。


 大丈夫だよね? 幽霊にも物理攻撃通じるよね? 誰も心配してないという事は斬れるという事だよね?


 真剣な表情をしながら俺はくだらないように見えて、かなり切実な事に悩み続けていた。



 薄暗い神殿内に入ると想像した以上に狭い事に面喰っていた。

 中は一戸建ての家ぐらいの大きさで奥の壁を背にして女神像があるだけで殺風景な礼拝堂であった。

 何百年前にはここで祈りを捧げられていたのだろうという名残が感じられるのは信者が座ってたと思われる朽ち果ててる長椅子ぐらいであった。

 辺りを見渡す俺が眉を寄せながらぼやく。

「この場所であってるのか? さすがに小さ過ぎると思うんだが?」
「いやぁ、さっき美紅が感じたヤツは、あの女に纏わり付いてた気持ち悪いモノと同種の匂いがしたからなぁ? ここで間違いねぇーな」

 ロキが自信ありげに言ってくる。


 だとすると、定番は……


「となると隠し通路や転送装置とか?」
「さすがに見渡したら端から端まで見える場所に転送装置はないと思うの?」
「でも、隠し扉の向こうに転送装置という可能性なら有り得ますよ?」

 俺を馬鹿のように見たルナであったが、美紅の指摘で気付いたようで俺に申し訳なさそうにするルナに俺は笑みを浮かべて「気にするな」と手を振ってみせる。

 だって……


 俺もそこまで考えて言ってないからぁ!!


「グダグダ言ってねぇーで、さっさと調べてみようや?」

 そう言ってくるロキの言葉に頷いた俺達は、早速とばかりに調査を開始した。


 それから、しばらく調べ続けて、床を叩いたり、壁を調べて廻ったがそれらしい場所も仕掛けも発見できなかった。
 俺は勿論、ルナ達ですら間違ってないだろうかと思い始めた頃、ルナが女神像を見上げてるのに気付いた俺が声をかける。

「何見てるんだ? 何かあったか?」
「ううん、ゴメンなの。見てたら何かを思い出せそうな気がしたから見てたの……でも何も思い出せなかったの」

 弱った笑みを見せるルナになんて言ったらいいか分からない俺に代わり、美紅が言ってくる。

「その像見た時から思ってたのですが、どことなくルナさんに似てますよね?」

 美紅が顔立ちがどうとか言い出すが俺は被り振る。

 被り振った俺に美紅が「私は似てると思いますが?」と言ってくるが俺は声を大にして言いたい。

 あれはルナと決定的な違いがあり、ルナと似てるとは俺は決して認めない。

 女神像に飛び付いてよじ登りながら、抱きつくような体勢で美紅に振り返ってみせる。

「まったく似てないぞ!? よく見ろ」

 そう言う俺は迷いも見せずに鷲掴みにする。胸を。

「ルナはこんな人並みの胸はないっ!」
「何するの!」

 女神像の胸を鷲掴みする俺を赤面したルナが自分の胸を隠すようにして怒鳴ってくる。


 まるで自分を模した人形に悪戯された人みたいな反応をするんじゃない、ルナ!

 これはお前と似てないからな? 特に胸が!


 美紅も俺に何か言おうとしたようだが、俺は条件反射のように押すように揉むとカチリ、という音が俺の耳に届く。

 どうやら聞こえたのは俺だけでなく、3人にも届いたようで辺りを見渡していた。

 女神像に抱き付いたままの俺も何か変化がないかと見渡していると、ゴゴゴッ、という音と共に自分の体が揺れてスライドするのに気付く。

 慌てて下を見つめると女神像の下の床が動き、そこから地下に向かう階段が現れた。

「どうやらよぉ、女神像の胸が仕掛けを動かすスイッチだったようだなぁ?」

 そうロキは言うがルナと美紅は俺に冷たい視線を向けてくる。

「徹の馬鹿」
「トオル君、最低です」


 あれぇ? 功労者のはずなのに蔑まれてる!?

 うん、分かってる。そういう事じゃない事は分かってる!


 一向に弱まる気配のない冷たい視線に耐えながら俺は心の底から全力で言う。

「マジですんません、調子に乗り過ぎましたっ!!」

 女神像から飛び降りつつ、土下座しながら綺麗に着地を決めた俺の土下座技術、採点は10点だが、俺の2人の評価は怖くて聞けない俺であった。
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