高校デビューできずに異世界デビュー

バイブルさん

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4章 500年待ち続けた約束

64話 最強パーティ?

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 いつもの早朝訓練が終了した俺は、裏庭にある井戸で汗を流しながら拭っていた。

 クリーナーを使えば、綺麗になるのは分かっているが汗を拭う時は水やお湯で拭った方が気持ちが良い。


 まあ、アレだな。

 シャワーでも事足りるが風呂に浸かりたいというアレに似てる気がする。


 パンイチで朝日を見つめて、水拭きした気持ちよさと肌にあたる優しい太陽光に浸っていると勝手口の方から人がやってくる気配に気づく。

「トオル君、ご飯ができましたから……ッ!! キャァァァ!!!」

 来たのは美紅だったようだが俺を一瞥した瞬間、顔を真っ赤にして叫んでドアを乱暴に閉じると姿が見えなくなる。


 ああ、パンイチ姿に照れたらしいな。美紅は俺が着替える素振りを見せるとマッハで視野外に消えるしな。

 ルナとは大違いだ。アイツなら……


 美紅と入れ違いのようにして扉が開き、ルナが出てくる。

 欠伸を噛み殺した眠そうな顔をしながら俺に近寄ってくると俺とドアの方を交互に見る。

「なんか、美紅が叫んでたの。徹が何かしたんじゃないの?」
「いや、ここで汗を拭ってる所に美紅がやってきた途端、叫んで逃げた」

 俺の言葉をどうでも良さそうに、ふーん、と適当に頷きながらウサギの彫り込みの入った歯ブラシに塩を付けて歯を磨き始める。

 ルナは何かを思い出したかのように俺の持つ手拭に目を向ける。

「その手拭、綺麗に洗ってそこに置いておいて欲しいの。私が使うから」

 井戸の淵に指を指すルナに頷くと手拭を濯いでいる俺に「ギュッとしっかり絞っておくの!」と言うのに、はいはい、と返事しながら要望通りに済ませる。

 脱いでたシャツなどを着込んで勝手口のドアを開き、閉じる時に振り返ってルナを見る。


 アイツの場合、そういう所はオバさんなのか、ガキなのか、悩む所だよな?


 そう思いつつ、高確率で後者だと俺のカンが言っていたが、どっちでもいいかと肩を竦めて朝食にあり着く為に食堂へと足を向けた。







 いつものミランダの挨拶のハグでギャーさせられた俺は食事が済むと冒険者ギルドへと出ようとした時、ミランダに声をかけられる。

「トールに頼まれてた初代勇者に詳しい人と連絡が取れたわよ?」
「おお、マジか? すぐに会える?」

 薄く笑うミランダに食い気味にカウンターに身を乗り出す。

 ライラ、マイラの双子の依頼後に、情報通のミランダに初代勇者に関する情報を聞くとそれに詳しい人物がいると言われてコンタクトを取れるように頼んでいた。

「すぐには無理みたい。今、クラウドにいないらしいから帰ったら連絡をくれると言ってたからきたら伝えるわね」
「そっか、すぐはさすがに調子が良過ぎるよな。分かった、連絡があったら頼むな?」

 そう頼むと快諾じてくれたミランダに「いってきます」と伝えると俺達は冒険者ギルドへと出社? した。



 冒険者ギルドに着くと俺達は依頼書と睨めっこしていた。

「いつも通りでビックスパイダー辺りでいいんでない?」
「そろそろ、虫は嫌なの……」

 気持ち悪そうに身を縮めるルナと目を逸らす美紅。

 それを見た後、ロキと視線を交わすとロキは肩を竦める。

「虫がどうとかはともかく、そろそろ違う獲物に替えないとマンネリから事故が起きるかもしれねぇーな?」

 確かに、慣れはいいがそれが過ぎると慢心になる恐れは付き纏う。


 そうだな、違う獲物にするか。


 と考えていると受付のシーナさんがカウンターの外である掲示板の傍にやってきていた。

「丁度いいタイミングですね。そんなトールさんにお頼みしたい事が」
「触っていいという事ですね!?」

 歩けば3歩の距離なのに俺は天井ギリギリの高さに飛び上がると鳳凰の構えで滑空する。

 視線の先のシーナさんは胸を抱いて隠すようにして顔を赤くする。

「どこをどう変換したらそんなセリフが出てくるんですか!!」

 最近、暖かくなってきたせいか、胸元が緩めだったシーナさんの服から窮屈だと言わんばかりに飛び出そうとする素敵なモノを見つめる。


 俺は……揉むっ!!!!!


 最終決戦に挑む漢のようなキレた男前の顔をして両手を大きく開く俺に立ち塞がる青髪が現れる。

「また悪いのが発病したのっ!」

 右ストレートを放ってくるルナに目を細めた俺の口の端が上がる。

「甘いっ!!」
「――ッ!! ウソ!?」

 放たれた右ストレートを左手で軽々と受け止めた俺は空中で足場に作った生活魔法の風の上でドヤ顔する。

「いつまでもヤラれてやれんなっ!!」

 ルナに俺は連打を浴びせかける。

 それを慌てて防御するルナは戦慄から汗を流す。

「ロキとの訓練で地力が付いてきたのは知ってたの。ここまで腕を上げてたの?」

 余りの速さに俺の腕が残像を生み、ルナを襲うがルナも負けじとばかりに応戦してくる。

「地力が付いてきたの分かるけど、おかしいの。手加減してない私と互角!?」
「あーはっはは! 今日、俺はお前を超えるぅ!! ほーら、無駄無駄無駄無駄ぁ!!」

 勢いに乗ってる俺は徐々にルナを気迫で押していくのを観戦モードのロキが感心したように言う。

「すげーな、トオルのヤツ、オルデールを相手にした時よりキレてるぜぇ?」
「トオル君……トオル君がどんどん駄目な人に……」
「これから頼もうとしてた事に自信は持てましたが、身の危険も持てたのは嬉しくないですね……」

 傍でそんな事言われてるとも知らない俺は、ルナの右手を外側に弾き飛ばすと笑みを大きくして叫ぶ。

「とった!!!」

 しまった、と顔を顰めるルナに勝利を確信した俺が迫る。


「とらせませんよ?」

 俺の耳元で美紅の声がする。


 な、なんだと!?


 そう思った瞬間、脇腹を抉るようなボディーブローを美紅が放つ。

 俺は脇腹を抑えて蹲りながら声がした方向を見つめると呆れた顔をした美紅が見下ろしていた。

「凄い火事場の馬鹿力でしたけど、私もいるのを忘れないでくださいね?」

 不意を突かれた事もあり、痛みから意識が薄れるなか、震える指を美紅に突き付ける。

「き、今日は引き下がるが、いつまでも2人にやられぱなしで終わると……思うな」

 負け惜しみで笑みを浮かべたまま俺は意識を手放した。


 そんな徹を見つめる3人の少女は、こいつならやりかねない、と戦慄を感じて身を縮めるが、同じ男のロキは楽しげに笑い飛ばしていた。



 背中をエイッとされて激痛で起こされた俺はカウンターに戻ったシーナさんと差し迎えでいつもの構図で話しかけられる。

「先程言いかけた事なのですが、トールさん達にお願いしたい事があります」
「何か言いかけてましたね?」

 そう言う俺を女性陣がお前がそれを言うか? と言いたげな視線を向けてくるが毅然と目を逸らして話を促す。

 溜息を吐いたシーナさんが話し始める。

「クラウドから馬車で半日程の距離に湖にある依頼を受けて欲しいのです。依頼内容なのですが……その前に依頼人が来られたので先にご紹介しますね」
「このボンクラそうな少年がいるようなパーティがクラウドで1番のパーティなのですか?」

 振り返るとワンピース姿の同じ年頃の可愛らしい少女がいた。白髪なのか銀髪なのか判断に苦しむが光にあたる髪に艶があるのを見るところ銀髪のようだ。

 俺をキッというキツメの視線を向けてくる少女であるが、垂れ目なせいで迫力に乏しい。

「おい、ロキ、ボンクラ呼ばわりされてるぞ?」
「どう考えてもオメェの事だろうがぁ? メッチャ睨まれてるぜぇ?」


 うん、分かってた。めっちゃ蔑むような目で見られてるからぁ!


 可愛く年相応に胸が育つ少女にそんな目で見つめられて心で号泣する俺を余所にシーナさんが説明を始める。

「見た目はともかく、間違いなく現クラウドの冒険者ギルドの最強パーティなのは彼等です」


 見た目はともかくとか言われた……


 俺は心だけでなく、眼からも激しい濁流のような涙が流れる。


 とはいえ、俺達が最強パーティ? 俺はまだDランクだぞ?


 何てことを考えていると銀髪の少女がシーナさんに綺麗な眉を寄せて言ってくる。

「この冒険者ギルドにはAランクが在籍してると伺いましたが、こんな若いとは聞いてませんが?」

 俺が慌てて、待ってくれ、と言おうとするとシーナさんが俺を遮るように手を伸ばして黙るように示唆してくる。

「確かに彼等は違いますが、ランクが能力とイコールでは……」
「そうだぜぇ? ウチにいるAランクはロートルで棺桶に片足を突っ込んでるヤツだからな!?」

 クラウドのAランクはダンさんを含むパーティメンバーだけである。

 ダンさんを馬鹿にされた事に頭がきた俺が振り返ると場数はそれなりに踏んでそうな雰囲気を漂わせる20代後半の男達が5人いた。

 同じように振り返った銀髪の少女が話しかける。

「そうなのですか?」
「そうだ、だから、現クラウド最強パーティは俺達『至る頂点』だ」
「ざけんな! 誰が棺桶に片足突っ込んでるってぇ!!」

 銀髪の少女が何か言おうとする前に激昂する俺は途中で話しかけてきた熟練冒険者に吼える。

 吼える俺を驚いた顔をして見つめる銀髪の少女。

「はぁ? ダン達の事に決まってるだろう? さっさと引退すればいいのになぁ?」
「やっと引退する気になったんじゃなかったっけ?」

 そう言うとゲラゲラと笑い出す冒険者達に俺の血管が切れて飛びかかろうとした俺をロキが後ろから片手で抱き抱えるようにして止める。

 銀髪の少女を見下ろしながら口の端を上げるロキは話しかける。

「おい、お嬢ちゃん」
「お、お嬢ちゃん!? 私はミントと言います!」

 そう食ってかかるが聞いてるのか聞いてないのか分からないロキは勝手に話を進める。

「オメェさんがどんな依頼を持って来てるか知らないしよ、俺達が受けるかわからねぇーが、俺達にしろ、アイツ等にしろ、どの程度できるか興味あるよな?」
「失礼な人ですね、そうですね、確かにそれは重要です」

 言質は取ったとばかりに笑みを浮かべるロキが『至る頂点』の面子を見つめる。

「ということらしい。口だけでない実力が見たいとご依頼人様は仰ってる。腕比べといこうぜぇ? テメエ等は5人か?」
「そうだぜぇ? お前達は4人だからこちらも4人いや、3人にしてやろうか?」

 リーダー格がそう答えると爆笑する冒険者達を見て、俺の血の気が引く。

 ロキ相手にそんな馬鹿な事を言えるヤツがBランクに良く成れたな、とビックリしてると意外にもロキは好意的な笑みを浮かべていた。

「いやいや、5人でいい。手加減もいらねぇーし、殺す気でこい。死んでも文句は言わないしな」

 ロキは逆に相手の神経を逆撫でするセリフを平然と言い放つ。


 死んだら文句言えないのは普通じゃねぇ?


 と俺は思うが突っ込まないのが礼儀な気もするが言える空気もないと判断する。

 予想通りに険悪な顔をする冒険者達にロキは俺の背を押して前に出す。

「こっちはコイツ、トオルを出す。せいぜい気張ってくれ」
「はあぁぁぁぁ!?」

 驚く俺の声と共にびっくりした銀髪の少女、ミントとシーナさんが絶句したように俺を見つめる。

「舐めやがって……本気で殺すぞ!?」

 俺に殺気が集中するのを感じて背筋に冷たいモノが流れる。


 おいおい、言ったのは俺じゃないぞ!?


 と思いつつも、言っても聞いて貰えない予感がヒシヒシして俺は心で静かに涙を流した。
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