高校デビューできずに異世界デビュー

バイブルさん

文字の大きさ
86 / 124
5章 竜が見る夢

80話 あったな……そんな事

しおりを挟む
 ミランダからの報せを受けて、スキップ気分で紹介された貴族でありながら歴史学者をする変わり者の人に会いに行くつもりだった俺だったが、出先でライラ姉妹と遭遇した。

「んとね、オッパイが大きなエルフのお姉さんがなるべく早くに顔を出して欲しいって言ってた」
「具体的にどれくらいだ? いや、あくまで誰かを特定する為でイヤラシイ理由はないからな?」

 俺の背後にいるルナと美紅のいてつく波動に恐怖した訳ではなく、名前が分からないのだからどうしようもない。


 じゃ、名前を聞け?

 嫌だよ、そんなの?


 俺に問われたライラが、ウーンと悩む素振りをする横で妹の眠そうな顔をしたマイラが代わりに答える。

「ウチの姉さんより大きい」
「そうそう、それ! 冒険者ギルドの人」
「――ッ! シーナさんだな!?」

 キュピーンという擬音が聞こえそうな速度で顎に手を添えて男前な顔をする俺のスーパーコンピュータが最適解を弾きだす。

 『ウチの姉さんより大きい』だけで答えを弾きだした。それは、かるたの上の句だけで反応する達人な俺だからできるワザである。
 当然ながら『冒険者ギルドの人』というマイラの言葉など認識していない。


 しかし、どうしたものか……初代勇者の話を聞く為にだいぶ待って興味があるけど、普段お世話になっているシーナさんが呼んでいるのを後廻しにするのも気が引ける……

 必死に悩む俺は問題なるものを天秤に載せるようにして、無駄なものを省いていき、最後に残ったものを、どちらが重いか計る。



 おっぱい  >  帰る手段



「良し、まずは冒険者ギルドに行こう。いいよな、ルナ、美紅?」

 迷う余地なく、天秤が破壊させた俺は後ろを振り向いて告げる。

 ルナと美紅は何か納得いかないという顔をお互いに見合わせた後、俺を見てくる。

「確かに、シーナさんを放置するのは良い気分ではないですし、初代勇者の件は急ぎでもありませんが……」
「……徹、鼻の下が伸びてるの」

 ルナに言われた瞬間、右手をビクッとさせるが踏み止まるとズボンを握り締める。


 おっと、危ない。ルナのカマかけに引っかかる所だったよ!

 鼻の下を隠すのを状況証拠にするという古典的手法にな!

 トオルさんはそんなお馬鹿な手に引っかからないよぉ!?

「しょんなこと、にゃいおぉ?」
「それで誤魔化せたつもりですか、トオル君?」

 あひる口をする俺を半眼で見つめる美紅のプレッシャーに汗が背中を滲ませる。


 駄目だったみたい、てへぺろ♪





「ああ、待ってま……えっと、また何かされたのですか?」
「何かしたというか、計画した事を見透かされただけなんですけどね?」

 頬をアンパ○マンのようにする俺を呆れた目で見つめるシーナさんに俺はチワワのように潤んだ瞳で見つめるが肩を竦められる。

 俺の必殺技が不発した事に戦慄を感じる。


 な、なんだと!?

 全国の女子高生が卒倒する破壊力のある俺のウルウル視線ビーム(願望)が不発だと!?


 受け入れられない事実に身を震わせる俺を無視して話は続く。

「未然に破廉恥を阻止しました」
「本当に危なかったの!」

 自分達が言う言葉に微塵も間違いなどないと自信を感じさせるルナと美紅を見つめたシーナさんが頬に手を添えて微妙そうな顔をする。

「多分、間違っては無いのでしょうけど、さすがに決め付けは……」
「そうなんや! ルナと美紅はその辺りが分かってない!」

 僅かなりに温情を見せるシーナさんの言葉に俺は目を輝かせ、飛び上がるとカウンターの向こうにいる驚いた顔をするシーナさんのオーパーツを目掛けて滑降する。

 あっ! と声を上げるルナと美紅だが、俺はほくそ笑む。


 ふっ、もう間に合わんよ!


 俺は両手を広げて二枚目スマイルを浮かべる。


 ああ、あそこが俺が還るべき場所。

 そこは母なる海、とても大きいんだ……

 柔らかい感触が俺の頬を包む……


「ただいま……」

 俺は今まで生きてきて良かったと心の底から思った。





「すいません、中途半端な同情は良い事はありませんね?」
「そうなの!」
「次からはそれを教訓にして頂ければ……」

 怒れる3人の少女の間にあるカウンターの上で正座させられている俺は唯一無事であった中央の鼻から血を流し、看板を持たされていた。


『また、やりました。反省中』


 と書かれた看板を持っていると少し離れた所で身を震わせてしゃがみ込む冒険者達が目に入る。


 あれれ? 何か面白いモノでもあるのかな?


 どこどこ? と辺りを見渡そうとするが視界が滲んで良く見えない。

「あれ? 目から水が溢れて止まらないよ?」

 初めて感情に目覚めた人形が困惑する様子を力演するが3人にはスル―される。

「それで、私達を呼んでらっしゃったようですが、何かありましたか?」
「そうなの、冒険者ギルドから貴方達3人に受けて頂きたい案件が2件あります」

 何やら書類を取り出しながら「受けて下さるなら、こちらが出来る限りの優遇をお約束します」と言ってくる。

「じゃ、話を聞くから降りて良い?」

 ドサクサに紛れて笑いモノ、見せ物になっている今を打開する為に言ってみる。

 返事を聞く前に降りようとすると3人に黙ってニッコリと笑われて、考える前に元の体勢に戻り、姿勢を正す。


 うん、無理って分かってた。


 悲しみに暮れる俺を無視して話は続く。

「クラウド所属のBランクが5人の欠員を出ました」

 シーナさんの言葉に俺達はフムフムと頷きながら聞くが実の所、3人共「だから何?」と思っていた。

 後から知った事だが、ランク毎に最低人数の目安があるらしい。

 まるで通知簿みたいな話である。

 要領を得てないのをシーナさんが気付き、苦笑いを浮かべる。

「トールさんがやりあった『至る頂点』のパーティがあの戦いで不正を働いていた事が分かり、追放処分されてBランクが少なくなりまして……」
「えっ!? 何をしたんだ?」

 俺が問い返すと説明をしてくれた。

 『至る頂点』との戦いで放たれた火球がどうやって方向転換したか、というカラクリが分かったそうだ。

 聞くと納得する簡単な理由であった。

 当たらなかった火球を見物していた者が魔法を放ち、進行方向を変えてたからだ。

 そんな事ができるのかと思われたそうだが、魔法の制御を捨てて放てば制御を奪う事ができるらしく、それを利用した手だったらしい。


 道理でアイツから魔力の流れが感じられなかったと思った。


 やれやれ、首を振る俺からルナと美紅に視線を向けるシーナさんが続ける。

「高ランクの人員が減るのはギルド上の面子に関わり、依頼の発注などにも影響します」

 そういうシーナさんの言葉を聞いてた俺は有りうる事だな、と頷く。

 3人の視線が集めるシーナさんは咳払いをして書類を目の前に差し出す。

「特例で貴方達に2ランクアップのBランク冒険者の昇格要請を快く受諾して頂ける事をクラウド冒険者ギルドは期待しております」

 差し出された書類には『Bランク昇格要請』と書かれて、俺達3人の名前が書かれていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

五人姉妹の上から四番目でいつも空気だった私は少々出遅れていましたが……? ~ハッピーエンドへ走りたい~

四季
恋愛
五人姉妹の上から四番目でいつも空気だった私は少々出遅れていましたが……?

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...