あやまちてはあらたまるにはばかることなかれ

六月 鵺

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廃墟に化物は憑物だ

ご!

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「な…なん、だ…あれ……?」

祐司の震える声が、暗い静寂の中に虚しく吸い込まれる。
血に塗れた身体。機能をほとんど失った服。血より濃い赤で血走った目。喰い千切られたのかのような断面を覗かせて、失くなっている両足。そして、長い牙。

【なんでや……速すぎる…!なんで食人鬼がここにおるんや……!?これを阻止する為に俺がおるのに…!そこで阻止出来るならやってみろって嘲笑っとんのか、このけたくそ悪い引き籠りめ…!】

雨が意味の分からない事を苦しそうな顔をして呟く。

【ウヴヴゥゥゥ……アアアアアアアァァァ!!】

唸り声を上げたかと思ったら、奇声を上げて襲いかかって来た。両足が無い事など気にも止めず、そもそも痛みがないのか、そんな事どうでもいいくらいの跳躍力で飛びかかって来る。

「う、うわああああああ!」

叫びながら咄嗟にポケットに入れておいた護符を、化物に投げつける。

「け、結っ!!」

【があァァァァァァッッ!?】

視えない壁、結界に弾かれた化物が後方に吹っ飛ばされる。自作の護符で効くか不安だったけど、効いて良かった。

「に、逃げるぞっ!!」

「お、おお!」

いくらなんでも化物が出て来りゃ、そりゃ思考停止にもなるわな。

「零、自分そんな事出来たんかいな!?」

「悪ぃけど、ちょっと足止めするくらいしか持たないぞ!あの化物知能はないけど単純な力は強いだろうから、すぐ破られる!全力で死ぬ気で走れ!」

後ろでバリンッて結界が破られた音が響いた。ちっとも足止めになってねぇ!反射的に振り返りそうになる彩奈に、

「振り返るな!走れ!」

不気味な奇声を上げながら、一気に距離を詰められる。このままじゃ全員殺られる…!

「おいっ!化物!!こっちだ!俺を喰ってみろ!」

「零!?」

三人の驚いた声が上がる。皆とは反対側に曲がって、大声で化物の気を俺に向ける。人数の多い皆の方に行こうとしたけど、俺が声を上げた事で化物の視界が俺を捉えた。奴に少しでも知能があるなら、集団からはぐれた俺を追うはず。追ってくれ。

【零!?何しとんねや!?】

「俺が囮になるから、雨は皆が外に行けるまで守ってくれ!」

【せ、せやけど…!】

「俺は大丈夫だから。他に化物がいないとは限らないし、行ってくれ!」

【アホ抜かせ…!くっそ、必ず俺が行くまで無事でいるんやぞ!】

「分かってるつーの!」

ひらりと俺の肩から身を翻す。雨がいればあいつ等は大丈夫だ。問題は俺だな…。逃げ切れる自信がねぇ。足が速い訳でもねぇし。体力と持久力に自信ないし。
それでも、こいつを引きつける為に走るしかねぇだろ。俺が殺られたら、次はあいつ等だ。

「はっ、はぁはぁはぁ、はぁっ…!!なんで俺、こんな目に遭ってんだよ…!俺は怖いのが大っ嫌いなんだよ!俺を食べたらお前絶対呪い殺してやる!」

化物に言ったって仕方ないけど。
針山を探したいけど、今は自分の事だけで手一杯だから、許してくれ針山。もしかしたら裕司達と合流して外に出てるかも。それか、一人で外に出てくれてたらいいな。
そんな悠長に考えてたら、悠長な願望を打ち砕く惨状が、目の前に広がった。

「針山…………?」
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