適性職『』の冒険者は神様を殴るために【世界の果て】を目指す。

秋乃ヒダマリ

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1話 『無垢』

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 暗い影、何処か暖かくて懐かしい場所に居るみたいだ。
 誰かが僕の手を握っている。その手が、とても心地よく感じる。

――この子はきっと、アナタみたいに強くなれるわ

 誰かが言った、僕を見ている気がする。

 ぼんやりとした影が揺らぐ。

――行きま…し……う。レ……

 待って!行かないで!!

 何故だか無性に寂しく感じる。今、この手を離したら後悔する気がした。グッと力を籠める。
だが、握られた手はいとも容易く離れてしまう。

 待って!お願い…行かないで……

涙が込み上げてくる。身体の自由が利かない。動くことが出来ない。

 僕は何もできない無力なままなんだ……

――ず……アナタ……見てる……から…

 誰かは最後に言った。

――強く……な……い……ノ…――


_________________________ 



「――アくん!」

 待って、行かないで――

「行かないで!!」

ガバッ

「あー!ノアくんやっと起きた!!」

 ……ん?

 勢いよく起き上がった先に居たのは、ノアと同い年で幼馴染のエムザラだった。

「エムザラ?」
「うん!エムザラだよ!! それより大丈夫?ノアくんすっごくうなされてたよ?」
「え、あぁ…変な夢を見てたみたい」

 ほんとに『変な夢』だった――


※※※※※※※※※※※※※※


彼の名前はノア=キヴォトス。十五歳
灰色の髪にくすんだ黒目が特徴のどこか冴えない印象を与える。
 彼は物心付く前に両親を亡くし、冒険者の『ウトゥ』に育てられた。
両親の事は、『冒険者』だったという事以外は何も知らない。ある日『外の世界』で捨てられていた彼を偶然発見した冒険者の『ウトゥ』が連れて帰って今まで育ててくれた。
 キヴォトスは両親の性だそうだ。
三年前に彼の育ての親『ウトゥ』は寿命で亡くなった。それからは『ウトゥ』の残してくれた遺産で生活をしていた。
 そして、十五歳になり今日から『ウトゥ』と同じ、冒険者として生きていく。

※※※※※※※※※※※※※※※

「お母さんがノアくんを呼んでたよ?急がないと遅刻するって!」
「え、もうそんな時間なの?!」

 今日は僕の十五の誕生日だ。十五になると神殿で洗礼を受けて冒険者としての資質を得る事が出来る。

  幼い頃、あの大きな手で僕を優しく包み込んでくれたウトゥさんはもういない。『ノアをこんな目に合わせおって!!儂が世界の果てにいる神とやらをブッ飛ばしてやるわい!』そう言って僕を撫でてくれたウトゥさんは僕の憧れだった。




――やっと……やっとウトゥさんみたいなカッコいい冒険者になれるんだ!




※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 それは、幾千年も昔の話。


――かつて、この世界は海に囲まれていた。

 『創世記』

 人間はこの海を“不可侵の海”と呼び、近づくことを禁止した。彼らは海に近づくと正気を失い廃人となってしまう。
 やがて、海は広がり始めた。弱者を呑み込むかのように、徐々に侵略を始めていた。

  栄暦200年
 人々は、広大な世界の一部を開拓し、其処に新たな世界を作り上げた。
 その一部だけでも広大な土地であった。
 その地の名『アララト』

  栄暦400年
 人々の遺伝子に変化が起き、新たな人類が誕生した。
 彼等は生まれながらに“不可侵の海”への耐性を有していた。

 栄暦540年
 新たな人類は“冒険者”と呼ばれるようになり、資格を持つものは皆“不可侵の海”へと旅立った。

 それから月日は流れ――

 栄暦3999年
 彼の地にて、大災害“神怒こうど”が起こった。
 彼等は神を怒らせてしまった。神は人々から海を取り上げた。
 彼の地から“水”は涸れはて、海が枯れた後には、広大な荒野と悪魔のような生き物“モンスター”が生まれた。

 こうして、人々は失うことで “不可侵の海”の重要性に気が付いた。人々は“命水”を失った。
 彼等は悔いた。自分達の愚かな行いを。
 神は人々に機会を与える事にした。


 栄暦4000年
 信託が下る。

――地ノ果テ到達者、希望与

 人々は地の果“神域”を求め旅立った。
 神は慈悲を与えた、魔の物から手に入る“魔石”を水源とし、糧を与えた。





 此処に、冒険時代の幕開けを告げたのだった――

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