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転生者はこうすれば死にます

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「それじゃ第一回作戦会議をはじめるぞー」

「ヒュー! 待ってましたぁ! 作戦会議最高ォ!!」

「なんだリュー、テンション高いじゃないか」

「無理矢理にでもテンションあげとかないと心がくじけそうなんですよ!――あ、店員さーん! こっちビールもう一杯下さい! 飲まなきゃやってられませんよちきしょう!!」
 ハイ・オークの娘カ・リューはやけくそ気味にビールを飲み下す。

 今日でルナの居城を旅立ち一週間目。
 俺とリューはヒューマンの街『クーラ』に到着していた。 

 この島に現れた地球からの転生者は、大抵『クーラ』を拠点とする。
 俺たちが狙っている転生者くんも、やはりこの街の宿のどれかを拠点としているようだ。

 いまは遠征に出ているようだが、後で必ず戻ってくるだろう。
 人は一度居場所と決めたところから、そう簡単には離れられない。

 そしてターゲットとの接敵を間近にひかえた俺たちは、酒場で作戦会議という名の飲み会をしていた。

「やつらがこの街に戻ってきたらいよいよ暗殺作戦開始ってわけですね。そしてわたしたちの命運もここまでということですね。うぅ……どうせ死ぬならルナ女王が隠し持ってるお酒全部盗み飲んでおけばよかったです……」
 先日ターゲットの強さを目の当たりにしたリューは、完全に心が折れていた。
 あんなの勝てっこねえ、と。

 ぷるぷる震えて俺の腕に胸を押し付けてくるリュー。
 服ごしでも、胸の先端部のぽっちの感触がはっきり伝わってくる。
 
 大変いい気分だったが、今は興奮せず、冷静に話を続けなくてはならない。

「なあリュー、ちょっと落ち着いて考えてみて欲しいんだが、どうして転生してきたやつらはあんなに強いんだと思う?」

「んあ……? んなもんバックに女神がついてるからでしょ? あなた言ってたじゃないですか」

「そう、その通り」

 地球で若くして死んだ者はしばし、女神からスカウトを受ける。
『君、ほかの世界に転生しない? 今ならもれなくチートスキルもつけちゃうよ!』と。
 俺にはその記憶はないが、他の転生者はみな転生する前に直接女神と話したという。

「だけどさ、リュー。どうして女神はそんなことをすると思う? 俺たちみたいな若造に力与えてこの世界に送り込んで、女神になんのとくがあると思う?」

「んー……そうですね、たぶんこの世界オークとかゴブリンをぶっとばして欲しいんですよ、きっと」

「それもあるだろうが、だとしたら俺たちみたいな若造ばかりをこの世界に送り込む理由が説明できない。地球で死んだ軍人とかを送った方がよっぽど効率的にデミ・ヒューマンを駆逐してくれるはずだ」

「もう! まわりくどいですよー! 結論! 結論プリーズ!」

「わかった、わかったから騒ぐな……俺はな、こう考えている。――女神は、俺たちの姿を見て楽しんでるんだ」

 人生経験の少ない若者に、ぽんと力をわたして別の世界に送り込む。

 そして観察するのだ。

『いきなり力を持ったこいつはこれからいったいどうするだろう? 調子にのって無双するだろうか? それともハーレムをつくるだろうか? ――ああ、楽しみだ』

「つまり、俺たち転生者は神々の娯楽のためにここに存在しているわけだ。仮定だが、外してないと思う」

「安全圏から人があがくさまを見てお楽しみって、すごいですね、やばいですね、女神さま半端ねえっすね」
 リューは嫌悪感を露わにする。

「|《愉悦》ってやつだな。自分に娯楽を提供してくれるからこそ、女神さまは俺たち転生者に力を貸してくれるわけだ。パトロンなんだよ、女神さまは。――だからそこに、つけこむ隙がある」
 俺はにやりと笑う。
「パトロンってのはな、けっこう残酷なもんなんだ。自分の支援に見合わない活躍しかできないやつは、冷酷に切り捨てる」

 俺たちの今回のターゲットの名は『ユータロウ』くんというらしい。
 彼は、あらゆるエレメンタルをあやつるチートスキルを持っている。

 さて、女神はユータロウ君に、何を期待してそんなスキルをあげたのだろう?

 おそらくは、無双して、ハーレムをつくって、調子に乗ってほしいのだ。
 その様を、見せて欲しいのだ。

 だったら――。

「ユータロウくんを直接打倒する必要はない。彼の無双を、ハーレム形成を、徹底的に邪魔してやれば――彼の物語を破壊してやれば、女神は彼を見切るはず」

 強い強い彼の無双を阻害するのは難しい。 
 だったら俺たちがやるべきことは――。

「彼のハーレム形成を徹底的に邪魔する。女を寝取る!」

 そうずれば、女神はがっかりするだろう。
『おいおいこのユータロウってガキはハーレムすらつくれないのかい? とんだ見込み違いだね』と。

 そして力を失ったユータロウを、俺が殺る。

「どうよ、この天才的な作戦は? ……って」

 リューはいつの間にやら酔って寝てしまっていた。

 腹が立ったので、無防備な胸元を覗き込み、下着に隠されていない双丘を鑑賞してやった。

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