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転生者はやはりもてるようです
しおりを挟む――あいつになりたい
姿を借りたい相手のことを思いながらそう強く念じると、俺は一瞬でそいつになれる。
俺にユニークスキル『ミラー』の力だ。
今回はヒューマンの街『クーラ』で長年靴職人をやってる男の姿を借りることにした。
俺はその姿のまま、街の酒場へと入る。
「お、靴屋の! 珍しいじゃねえか。酒はやらないんじゃなかったのか」
靴屋の知りあいらしき男が、ジョッキを片手に話しかけてくる。
バレた様子はない。俺の姿は完全に靴屋の男に変わっているらしい。
「たまには私だって飲みますよ。妻には黙ってきているので、くれぐれも内緒にしてください。今日私はここにいなかった、いいですね?」
「はっは、恐妻を持つと大変だな」
「それはお互いさまでしょう」
などと言って、俺たちは笑いあう。
十分うちとけあったタイミングで、俺は本題を切り出す。
「ところで、最近また地球からの転生者が来たそうですね。たしかユータロウとか言いましたか?」
「ああ、あいつはすげえぞ! 魔導書一読しただけでどんな魔法でも瞬時に覚えやがる。適性も系統もおかまいなし!」
なるほど、やはり思った通りのチートを持っていやがる。
俺はさらに情報収集を続ける。
「ところでそのユータロウくん、かわいい子連れて歩いているそうじゃないですか」
「ユータロウの連れてる女っつたら、ルギンか? あの女騎士はたしかにべっぴんさんだな。でもよ、俺はごめんだね。ありゃ相当怖い女だぜ。前からかったら、剣突きつけてきやがった」
ルギン――その女がユータロウの物語のメインヒロインだろう。
おそらく転生してきたユータロウはその女ルギンに出会い、惚れたのだ。
そしてユータロウは惚れた女ルギンがなにかしらのめんどくさい問題を抱えていることを知った。
ユータロウはその問題を解決してやるために、戦うことを決意した――こんなところか。
転生者の人生なんてワンパターンである。
「ところでユータロウ君は、そのルギンさんの他にも仲のいい女の子がたくさんいるらしいではないですか」
「ああ、あいつの回りなんざかわいい子だらけだぜ。まず魔導書屋のルビィだろ、あと神官のミリアさんだろ、それから――」
**
こうして俺は、ものの半刻ほどでユータロウの基本情報を得た。
ユータロウの回りにいる女を知れたのがでかい。
俺は忘れないうちに、メモをとっておくことにした。
ルギン……メインヒロイン・女騎士・気が強い
ルビィ……ハーレム要員・魔導書屋の店員・内気
ミリア……ハーレム要員・神官・淑やか
キリシャ……ハーレム要員・貴族の娘・おてんば
「なるほどな」
俺はユータロウの転生者としての物語を阻害し、つまらないものにするため、まずはこのハーレムを削っていく。
最初のターゲットは、魔導書屋の店員ルビィだ。
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