暁ファンタジー 井伊直虎

Ittoh

文字の大きさ
6 / 9
暁夫婦ファンタジー

手当は、治癒の技

しおりを挟む
 荷物の確認とかして、着物を畳み終えると、裕の傍に座った。
 血は止まったけど、ズキズキした痛みがして、



 テンプレみたく、
 「ヒール」とか
 唱えてみたけど、治らない。
 まぁ、チートは無いか。



「篭なら、治癒は、使えなく無いと思うぞ」

 裕。起きてたの。

「眠ったわけじゃない。少し意識が飛んだだけだ。久しぶりに、篭に抱かれたって感じが良い。でも、すまないな、加減ができなくて」

 僕の傷口を撫でる、裕。
 何か所か、裕は、自分が噛んだ跡を、撫でるように唇で触れると、暖かい何かが流れ込んでくる。すると、痛みが引いて、痒みが増える感じになる。

「ヒールとかは、無いよ、篭。あるのは、手当だ」

 手当って、患部に手を当てて、治療するって奴。

「そうだ。身体に触れて、
 熱があれば、熱を自分に移動させるとか、
 息吹を送り込むように、気を流すと、回復が速くなるみたいだ。
 できるのは、そのくらいだな」

 手当か、僕にもできるかな。

 裕は、僕を抱き上げるようにして膝に乗せる。

「篭は、昔、よくやってくれたじゃない」

 え。あぁ、でもそれは裕が、風邪ひいた時とか、傍に居て手を握っただけだよ。

「それでも、一晩中そなたの手の中で、治って行く感じがした。篭なら、手当が使えると思うぞ」

 そうかな。

 裕が噛みついた場所に、手を当てる。裕が息吹を流すように、体へ巡らせる流れを思い出しながら、流れる気が巡るように、手から溢れ出る流れを紡ぎ築いていく。

 ぼぉっと、ほのかに煌めくように、流れが生まれていく。湯気のように揺らめく、流れが傷へ流れていく。

 血がにじむ傷は、血が赤茶けた瘡蓋かさぶたのように固まって、さらに気を流すのを続けると、瘡蓋かさぶたが剥がれるように外れていった。後は、赤みを帯びた肌が残る。

「さすが、篭だ。やはりできたな」

 こ、これは、

あやかしひとならざるものの血は、様々な気を力とする。鬼は体を巡る気を、紅蓮の炎に変える力とできる。あたしは、鬼の血を引いているそうだ。篭も、何かの血を引いてると思うぞ」

 そっかぁ、これだと、ちょっとしたチート能力って奴になるのかなぁ。

「治癒の技は、井伊谷でも三人しか使えない。あとは、龍潭寺の大婆様だけだ」

 井伊谷って、もしかして、裕が直虎なの。

「あぁ、井伊谷で、井伊直盛の嫡女として生まれた。幼名が裕だ」

 そうなんだ。でも、裕の方が、ゲームより綺麗だよな。

「そう言ってくれるのは、篭だけじゃないかな」

 そんなこと無いって。

  しっかしなぁ、確かに僕は、両親の血を引いていない、施設で育った。特別養子縁組で、両親に引き取られ育てられた。そういった意味では、あやかしひとならざるものの血を引いていてもおかしくはない。

 しかも、「蹴飛ばしちゃったぁ~」とかだよな。


「篭。あまり気にするな。お前は、あたしの夫だろ」

 う、うん。

「それだけでは、ダメか」

 そんなことない。

 けどさ、裕は、僕だけじゃないよね。
 ちょっと、意地悪な確認をした。

「nっ」

 言葉に詰まる、裕。

 やっぱり。
 好きな相手が、いるんだ。

「、、、篭。あたしは、五歳の時、井伊の人質として、駿河に送られた。
 そこで、氏真にあったんだ。
 十三の時に、裳着の後で、氏真の側室になった」



 戦国転生とは、なかなかに厳しい世界だ。寝取られるまで、以前と一緒だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...