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お爺ぃの今昔
日本の法制史 神話伝承から律令へ
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[newpage]#01 歴史以前の法制史
記憶文明は、属人性が極めて強い組織形態であり、無能な人物をリーダーにできない。しかしながら、組織が大規模化するにつれて、小規模管理と大規模管理では、必要となるスキルが異なっていて、すべてにおいて有能な人材が希少となる。規模と管理スキルが異なれば、組織に歪みが生じて、不平不満が生じやすくなり、維持することが難しくなる。記憶文明の管理は、氏神と氏子を基本としていて、合議制をとっていたのは、組織の不平不満を解消する手段でもあった。
縄文時代のように、記憶文明期の法制度は、前例踏襲が基本であり、習慣法が基盤となっていた。
(神話伝承は、前例の記憶を習慣法として活用するために使われていた)
素戔嗚尊の罪は、
(1)「田圃の畔を壊して、水路を埋めた」
(2)「御殿で、排泄を行った」
(3)「機屋の屋根を壊した」
(4)「機屋に血抜きもしていない馬の死骸を放り込んだ」
(5)「(4)の結果として、機織り娘が、死んだ」
となっている。
さて、これが、日本の始まり、「天つ罪」である。
(1)田圃の畔と水路は、公共物であり、稲作では重要なモノであるが、縄文時代の思考として、罪なのだろうかと考えると疑問となる。山や川で、綺麗な石をみつけて、拾ってきても、罪に問われない。力任せに、岩を崩し、川の流れを変えて敵の生活が困窮しても、自分たちの生活に影響しなかったとしたら、罪ではなく功績となる。
田圃の畦と水路が、人工物であり、無くては困るから、壊したことが罪となる。
現代では、公共物の破壊となるが、これが罪となるのが、素戔嗚尊からということになる。
(2)これは、現代でも、ショッピングセンター等で、子供がやったりするのを止めない。つまりは、罪であるという認識が、彼らには無いということになる。公共の場所で、守るべきマナーを守らなかったのが、素戔嗚尊の罪とされた。
「公共の場に対して、穢さぬように心がけるのは、すべての人が守るべきことである」
これが、決められたのも、素戔嗚尊からということになる。
(3)機屋の屋根を壊したのは、公共物ではなく、天照大御神という、素戔嗚尊の親族が保有する建物である。つまりは、公共物ではなく、姉の家なのだ。姉の家という、私的な所有物に対しても、姉の所有物であり、壊したことが罪となる。所有権の範囲が、身に着けた装身具だけでなく、家屋等に対して適応されることが決められたという話である。
これが、罪と定められたのも、素戔嗚尊からということになる。
(4)「血抜きがされていない馬の肉を放り込んだ」は、死の穢れを、他人の家に持ち込んだ。もしかすると、素戔嗚尊は、美味そうな馬を見つけて、狩ってきて、天照大御神に対して、贄として捧げようとしたのかもしれない。しかしながら、機屋というのは、仕事場であり、仕事をする者にとって、神聖な場所である。機屋は織物をする場所なので、血が付いてしまったら、製作した織物を穢すことになる。
穢れを持ち込むことが、許される場所と、許されない場所がある。これが、決まったのも、素戔嗚からである。
食卓や炊事場であれば、肉を持ち込んで、調理することや、捌くこともできるが、機屋ではできない。場所によって、持ち込むことができるものと、持ち込みできないものを、区別するようになったのが、素戔嗚からということになる。
(5)素戔嗚尊の最大の罪は、犯した罪の結果として、人が死んでしまったことにある。つまりは、事故を起こした結果、死人が出てしまった。現代で言えば、屋根からモノを落としたら、下に居た機を織っていた女官を殺してしまった、過失致死という罪である。
過失によって、死に至ってしまったことで、素戔嗚は高天ヶ原追放という結果になった。どのような過失であろうと、人の死に至る結果になったら、追放という当時では最も重い刑罰となることが、素戔嗚の時代に決定された。
八十神の合議で、素戔嗚尊の追放が、決定されて、天照大御神が承認した。
記憶文明の裁判は、記憶を共有するために、合意形成が必要であり、合意形成に至る過程を含めて、記憶を共有することが必要であった。
記憶の時代から記録の時代になった時、非常に厄介なのは、合意形成されるまでの過程が、記録されなくなったことにある。「十七条の憲法で、和を以て貴しと為す」が、第一条に刻まれたのは、合意形成の過程を、記憶として共有しなければならないという、記憶文明の継承でもある。
[newpage]#02 日本の法制史、記録文明の浸透結果
記録文明によって、法が「漢字」によって、明記されるようになったのが、日本の法制度の始まりとなる。
・17条の憲法推古天皇12年
・天智天皇の命令により藤原鎌足が天智天皇7年に近江令を編纂した。近江令は、覚書に近い形で、記憶文明の習慣法等を、明記していったものと推定される。
・天武天皇10年に、飛鳥浄御原令の編纂が開始された。
・大宝元年に、大宝律令が編纂された。
・天平宝字元年に、養老律令が制定され実施された。
・「弘仁格式」701年~819年までの格と式
・「貞観格式」820年~868年までの格と式
・「延喜格式」869年~907年までの格と式
律は、禁止事項の記録で、戦国期に生まれて、秦や漢の時代に確立する、法家思想の根幹である。
令は、祀り事のやるべきこと、実行すべき内容等を記述した、「祀り事」の根幹となる。
格は、律令の改訂や修正を、記録したもの。公式の勅。
式は、律令の実施や格による改定や修正後、実施する場合の注意等を記述した細則。
平安期に確立した類聚三代格は、律令の記載内容を、神事や祭事といった分類方法を変えて、記録継承したもの。律、令、格、式、類聚三代格は、日本の慣習法としては、根幹となる概念として扱われている。
記憶文明は、属人性が極めて強い組織形態であり、無能な人物をリーダーにできない。しかしながら、組織が大規模化するにつれて、小規模管理と大規模管理では、必要となるスキルが異なっていて、すべてにおいて有能な人材が希少となる。規模と管理スキルが異なれば、組織に歪みが生じて、不平不満が生じやすくなり、維持することが難しくなる。記憶文明の管理は、氏神と氏子を基本としていて、合議制をとっていたのは、組織の不平不満を解消する手段でもあった。
縄文時代のように、記憶文明期の法制度は、前例踏襲が基本であり、習慣法が基盤となっていた。
(神話伝承は、前例の記憶を習慣法として活用するために使われていた)
素戔嗚尊の罪は、
(1)「田圃の畔を壊して、水路を埋めた」
(2)「御殿で、排泄を行った」
(3)「機屋の屋根を壊した」
(4)「機屋に血抜きもしていない馬の死骸を放り込んだ」
(5)「(4)の結果として、機織り娘が、死んだ」
となっている。
さて、これが、日本の始まり、「天つ罪」である。
(1)田圃の畔と水路は、公共物であり、稲作では重要なモノであるが、縄文時代の思考として、罪なのだろうかと考えると疑問となる。山や川で、綺麗な石をみつけて、拾ってきても、罪に問われない。力任せに、岩を崩し、川の流れを変えて敵の生活が困窮しても、自分たちの生活に影響しなかったとしたら、罪ではなく功績となる。
田圃の畦と水路が、人工物であり、無くては困るから、壊したことが罪となる。
現代では、公共物の破壊となるが、これが罪となるのが、素戔嗚尊からということになる。
(2)これは、現代でも、ショッピングセンター等で、子供がやったりするのを止めない。つまりは、罪であるという認識が、彼らには無いということになる。公共の場所で、守るべきマナーを守らなかったのが、素戔嗚尊の罪とされた。
「公共の場に対して、穢さぬように心がけるのは、すべての人が守るべきことである」
これが、決められたのも、素戔嗚尊からということになる。
(3)機屋の屋根を壊したのは、公共物ではなく、天照大御神という、素戔嗚尊の親族が保有する建物である。つまりは、公共物ではなく、姉の家なのだ。姉の家という、私的な所有物に対しても、姉の所有物であり、壊したことが罪となる。所有権の範囲が、身に着けた装身具だけでなく、家屋等に対して適応されることが決められたという話である。
これが、罪と定められたのも、素戔嗚尊からということになる。
(4)「血抜きがされていない馬の肉を放り込んだ」は、死の穢れを、他人の家に持ち込んだ。もしかすると、素戔嗚尊は、美味そうな馬を見つけて、狩ってきて、天照大御神に対して、贄として捧げようとしたのかもしれない。しかしながら、機屋というのは、仕事場であり、仕事をする者にとって、神聖な場所である。機屋は織物をする場所なので、血が付いてしまったら、製作した織物を穢すことになる。
穢れを持ち込むことが、許される場所と、許されない場所がある。これが、決まったのも、素戔嗚からである。
食卓や炊事場であれば、肉を持ち込んで、調理することや、捌くこともできるが、機屋ではできない。場所によって、持ち込むことができるものと、持ち込みできないものを、区別するようになったのが、素戔嗚からということになる。
(5)素戔嗚尊の最大の罪は、犯した罪の結果として、人が死んでしまったことにある。つまりは、事故を起こした結果、死人が出てしまった。現代で言えば、屋根からモノを落としたら、下に居た機を織っていた女官を殺してしまった、過失致死という罪である。
過失によって、死に至ってしまったことで、素戔嗚は高天ヶ原追放という結果になった。どのような過失であろうと、人の死に至る結果になったら、追放という当時では最も重い刑罰となることが、素戔嗚の時代に決定された。
八十神の合議で、素戔嗚尊の追放が、決定されて、天照大御神が承認した。
記憶文明の裁判は、記憶を共有するために、合意形成が必要であり、合意形成に至る過程を含めて、記憶を共有することが必要であった。
記憶の時代から記録の時代になった時、非常に厄介なのは、合意形成されるまでの過程が、記録されなくなったことにある。「十七条の憲法で、和を以て貴しと為す」が、第一条に刻まれたのは、合意形成の過程を、記憶として共有しなければならないという、記憶文明の継承でもある。
[newpage]#02 日本の法制史、記録文明の浸透結果
記録文明によって、法が「漢字」によって、明記されるようになったのが、日本の法制度の始まりとなる。
・17条の憲法推古天皇12年
・天智天皇の命令により藤原鎌足が天智天皇7年に近江令を編纂した。近江令は、覚書に近い形で、記憶文明の習慣法等を、明記していったものと推定される。
・天武天皇10年に、飛鳥浄御原令の編纂が開始された。
・大宝元年に、大宝律令が編纂された。
・天平宝字元年に、養老律令が制定され実施された。
・「弘仁格式」701年~819年までの格と式
・「貞観格式」820年~868年までの格と式
・「延喜格式」869年~907年までの格と式
律は、禁止事項の記録で、戦国期に生まれて、秦や漢の時代に確立する、法家思想の根幹である。
令は、祀り事のやるべきこと、実行すべき内容等を記述した、「祀り事」の根幹となる。
格は、律令の改訂や修正を、記録したもの。公式の勅。
式は、律令の実施や格による改定や修正後、実施する場合の注意等を記述した細則。
平安期に確立した類聚三代格は、律令の記載内容を、神事や祭事といった分類方法を変えて、記録継承したもの。律、令、格、式、類聚三代格は、日本の慣習法としては、根幹となる概念として扱われている。
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