琉球お爺いの綺談

日ノ本史伝

史伝10 兵の登場は、大規模治水事業の成果

　日本で兵つわものの登場は、四道将軍以降に、国府設置が進み、日本と言う国家を形成する過程で国軍が確立します。崇神陛下以降、大規模土木治水工事が進み、地方では 6～12[m]、都の周囲では24～42[m]の大道建設が進められた。万単位の大規模土木治水事業と共に、大道建設が進められ、全国へ兵つわものが動員される体制が整えられた。

　日本征覇の戦略は単純である、大規模土木治水事業を遂行することで、救荒作物としての水稲による稲作を普及し、万単位の動員を可能として戦わずして勝つ体制を確立する。動員兵に対して、武器の供与は難しいことから、兵の統率には、豪族や武を司る兵つわものを配置する。結果として、倭国大乱を纏め上げる形として、日本統一が達成され、神功陛下の御代に三韓征伐の流れを築き上げ、日ノ本制覇達成となった。

　神功陛下以降、乱れた倭国は、手白香陛下の御代に纏め上げられ、畿内ヤマトによる倭国が築かれた。

　大量の徴兵体制の確立と兵の動員、軍を率いる兵つわものによる体制確立は、同規模で動員可能な体制を築き、鉄製兵器の量産を確立することで、軍事国家を築いた大陸国家との対外戦争に敗北した、「白村江の敗北」によって限界が確定することになる。

　万単位で動員することで、戦わずして勝利することを可能とする国軍は、倭国ヤマトを最強に引き上げる原動力であった。動員した労働力で、大規模治水土木工事を繰り返しながら、墾田と共に道を拓き、支配地域の拡大と共に、日ノ本全域に大道を拓く。

　三韓征伐で頂点を迎えた国軍は、白村江の敗戦で衰退し、防人といった国防体制のコスト増から、大量の素人を徴兵する制度を維持できなくなり、国府の拠点防衛と健児こうでい兵という兵つわものによる職業軍人体制に移行する。健児こうでい兵は、国軍の量から質への転換であり、量を必要とする国防拠点である九州と蝦夷は、国軍が存続していた。兵つわものは、人数規模は数十人から百人程度であったが、専業軍人で在り、武装を確保し練度を向上させ、緊急時には徴兵された国軍を率いることが期待されていた。

　万単位の徴兵による国軍が維持困難になるのは、白村江の敗戦結果であるが、新規墾田開発の限界による班田収授体制の崩壊が最大の要因であったとされる。大規模治水事業で動員した労働力に、新規に開拓した墾田を支給し、水稲による稲作で食料を増産し、労働力の大規模動員を拡大する。これが、班田収授に基づく「公地公民」制度の根幹であり、日本征覇を達成した原動力であった。

　このシステムは、新規墾田開発が困難になれば、増加する「公民」へ班田を供与できなくなり、班田収授体制は崩壊する。律令体制の確立と、行基の行動による私的新田開発が同時期となるのは、法律として「公地公民」が定められた時には、班田収授が限界に達していたという事実を物語っている。

　班田の租税に耐えられなくなり、逃亡するようになれば、水稲は休耕地となり荒地が拡大することになる。初期の荘園は、私的な新田開発による、地域豪族による私的な班田収授体制の確立であった。国家が追認するように、「三世一身の法」や「墾田永年私財法」が規定され、新規開拓された田圃は、個人資産へと継承されることになる。新規に耕作が始められた田圃は、新規開拓だけでなく荒地となった元班田も含まれていた。

　私財法は、「公地公民」を確定した上で、公地である土地に権利を有することであり、国家に認められた私有財産の確立であった。

　勢力範囲が拡大する中で、大規模治水工事を拡大し、救荒作物として水稲による墾田を増やし、増加する人口から労働力を徴兵し、新たな「公地公民」となる国土建設を進める。古墳期における筑紫ヤマトと畿内ヤマトによる勢力範囲の拡大は、そのまま大規模治水事業の拡大で在り国力の増加であったが、雄略陛下の頃に土木治水と抗争による戦略拡大体制が限界に達したと推定される。

　大規模治水事業による水稲を用いた墾田開発、土木治水事業としての大道建設、大量に動員される労働力を軍事に転用した日本制覇事業。しかしながら、国土範囲が拡大しても、墾田が増加しなければ、徴収した労働力は行き場を失う。大規模土木治水事業には限界があり、徐々に土木治水事業による墾田増加より、徴収される労働力の方が増加することとなる。徴兵される余剰労働力は、そのまま率いる将軍達の武力となり、当時の連合王国としての大王おおきみへの対抗勢力となり、倭国に大乱を招く要因となった。