世界大戦は終わらない

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世界大戦は終わらない

序章02 日本の特務機関は優秀です?

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 日露戦争は、海の圧勝、陸の辛勝に終わった。ポーツマス条約によって、日本は半島の利権を確保し、遼東半島の租借権を得た。満洲の開発は、ロシア帝国が権益を確保し、清帝国は根拠地を失ったのである。

 陸軍は、奉天会戦に敗北し、撤退する途中で、第三軍による側面攻撃によって辛うじて戦線を維持することができた。結果として、奉天で睨み合ったまま、日露戦争は終結を迎えることとなった。

 ポーツマス条約の結果、奉天はロシア帝国の租借地となり、遼陽が大日本帝国の租借地となった。ロシア帝国は、満洲里から哈爾濱を経由してウラジオストクに繋がる第二シベリア鉄道、哈爾濱から奉天に繋がる満洲鉄道の敷設を開始した。

 日露戦争後、ロシア帝国陸軍が奉天に駐屯し、大日本帝国陸軍は、遼陽に駐屯した。

 日本は、遼東半島の租借権を確保し、旅順港および旅順要塞を改修を始めた。大連から旅順港までは、狭軌の鉄道路線を敷設して、大連から遼陽を5フィート広軌路線の敷設を開始した。初めての広軌鉄道開発は、ロシアからの技術者を招き、大連工廠を立ち上げることから始まった。

 大連から遼陽に向けた、5フィート広軌本線の工事と共に、営口から遼陽に向けた狭軌の鉄道路線敷設も進められた。5フィート広軌本線工事は、遼陽側と大連側から進められ、大正五年1916年に開通した。世界大戦が始まり、ロシアが連合国側で参戦したこともあって、遼陽から奉天間を日露共同開発として進められた。これは、シベリア鉄道を経由して、支援をおこなうためであった。

 世界大戦の中で、シベリア鉄道経由の物資搬送は、アメリカやイギリスの支援もあって拡大していった。ウラジオストクには、イギリスやアメリカの領事館が建てられ、アメリカにとって大陸進出の拠点となっていた。ニコラエフスクには、イギリスの領事館があり、シベリアにおける河川航行利権を狙っていた。

 ロシア革命の結果、大正7年1918年3月ボリシェビキ政権が成立し、ドイツ帝国とのブレスト=リトフスク休戦条約を締結した。

 同年6月には、ロマノフ一家逃亡計画が、日英同盟の下で立案され、実行に移された。しかしながら、この逃亡計画は、双方が双方を囮としたモノであった。逃亡計画は、事前漏洩によって、英国の逃亡計画は失敗し、日本はロシア帝国内の工作員大半を失いながらも、皇太子殿下以下の皇族を逃亡させることに成功した。

 シナ派遣軍は、ロシア帝国軍と奉天で合流し、満洲里を確保してツァーリ救出作戦として、実行した。

 逃亡には、大連工廠で試作された、5フィート軌間組立式搬送車が使用され、夜間シベリア鉄道を移動し、昼間は解体して沿線部に潜んだ。バイカル湖からは、安土航空の四発大艇を使って満洲里南方で着水し、侵攻したシナ派遣軍ロシア帝国軍と合流して、哈爾濱から大連に移動し、日本に一時亡命した。ロシア帝国満洲派遣軍は、満洲里から北上してチタを制圧し、極東ロシア公国を建国した。

 ロシア帝国満洲派遣軍は、世界大戦開始によって、滞りがちであった本国からの食料等の支援を、日本から受けていた。シベリア鉄道経由で、ウラジオストクに陸揚げされた、イギリス、アメリカからの支援が、西へと送られていて、ロシア帝国の極東方面は、米英日の支援に置かれていた。特に戦争が長期化すると、ロシア帝国の統治体制が急速に悪化し、武装叛乱が方々で発生していたのである。

 大日本帝国陸軍にとって、好機となった世界大戦は、ロシア帝国の満洲派遣軍に対する調略活動として始まったのである。日露戦争当時、ボリシェビキ支援をしていた日本の特務機関は、世界大戦ではロシア帝国支援に廻っていた。世界大戦の長期化で、崩壊が必至と結論され、ロシア帝国支援から、ロシア帝室支援に移行した。ロシア帝国崩壊をはやめるため、エストニア、ラトビア、リトアニアの駐日大使館は、ドイツ帝国によるボリシェビキ工作を把握しながら見逃したのである。

 一見して連携された行動をとっているように見える日本の特務機関活動は、本質としては閉鎖的活動であり、上位者の個人判断による行動の結果であった。つまり、政府として指導体制が明確に規定されて行動しているのではなく、派遣された個々の組織やグループが、それぞれの立場で国益を優先させた結果なのである。バルト三国の大使館は、日露戦争以来のロシア帝国嫌いで在り、日露戦争後も反ロシア帝国活動を支援していたのである。

 日本の特務機関は、個々の組織やグループが優秀で在り、様々な成果をあげて、国益に貢献していたのである。しかしながら、各組織の連携は無いに等しく、個人的な繋がりだけで、連携活動をおこなっていたのである。

 特に日露戦争以降は、政府からの指示については、朝令暮改で届き、矛盾した命令が錯綜する状況にあった。結果として、外部に設置された特務機関は、連携した行動を取れず、各組織独自に活動を開始していたのである。

 ロシア帝室の逃亡作戦は、日本政府ではなく、原敬の個人的な行動であり、イギリスとの連携で進められたモノであった。イギリスは、日本側の皇太子殿下や皇女殿下達を囮として、ロシア政府側に流すことで、皇帝夫妻の救出にあたっていた。イギリスからの支援要請を受けた、ラトビアの日本大使館は、要請内容をそのままボリシェビキ政府に通知したのは、日本側も囮としたのではなく、ロシア帝国の復活する可能性を嫌った、現場の判断であった。結果的に皇帝夫妻は殺害され、皇太子殿下および皇女殿下達の救出作戦が上手くいったのである。

 世界大戦以降、日本の特務機関は、イギリスから「ヒュドラ」と符号が付けられた。「ヒュドラ」は、頭の多いバケモノであり、イギリス人らしい皮肉であった。
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