最愛Lovers

らいねこ

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始まりの音 3

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変な咳払いをしてから俺は言った。


とにかく、生徒としての性分を忘れるなよ?学業がまず一番に考える事」


先生ヅラしながら、まともな事を言ってはいるが実際は違う。


『一番に颯人の好きな奴の事を考えるな!』と言いたかっただけ。


自分の身体を傷つけても良いと思っている颯人に、俺がいるって知って欲しい。


教師になったのが、こんなに後悔するとは思わなかった。


「わかった、成績を落とさないようにするから」


(クソッ!)


つい、心の中で悪態をついてしまう。


自分の初恋がこんなにも無惨な感じになるなら、8年前のあの時に海外に行く事、そして告白しとけば良かったと今、思ってももう遅かった。


(再会して、すぐ失恋とはね…俺は本当に馬鹿だ!!)


難しい顔をしていたのか、颯人が心配そうに聞いてきた。


「要先生?」


「いや、悪い。少し考え事していた 。まず、時間とか場所とか色々…」    


邪な気持ちを悟られない様に、誤魔化した。


「あ…」


颯人もそこまで考えてないのか、驚きの声が聞こえた。


「今の時間が一番いいのかも。颯人は部活は何をしているんだ?」


今さりげなく名前呼びした俺に、颯人は気にしていなかった。


「俺は免除というか、自分の作る服の作業時間が今だから…」


「服?」


「デザインから寸法、裁断、縫い付けまでの一通り自分自身でやってて。入学したのも、在学中にこの学校の姫の服とかで実戦出来ないかと思って」


「すごいじゃないか!!そういえば、編み物をしていたよな~。もし、やるなら生徒会顧問として俺が推薦してあげるよ」                                                           


「本当に?」


顔が明るくなった。


よほど、服を作る事が好きなんだとわかる。


「じゃあ、毎日は無理だな…俺も仕事あるし。んー、週一とか?」


「週二とか、週三とかは駄目ですか?」


(そこまで、切羽詰まってるのか…)


「そうだな、でもまず一番は俺と出来るかどうかだから…これから俺の部屋に行くか?」


いくら口で言っても、時間を置いた時にいざ!となったら『無理、出来ない』と言われかねない。


善は急げ?


颯人の気持ちが変わる前に早急にしなければ。


俺は颯人なら、すぐにでもセックス出来るが颯人が拒否すればアウトだ。


「行きます」


躊躇いもなく、そう言われて非常に嬉しくなったが、それと同時に不安にもなった。


どこまですればいいのか、拒否られないだろうか。


颯人が、俺の事を好きになってくれないだろうかとか。


教師達と同じく自分の部屋は、ここから東側の寮の棟に一緒になっている。


「じゃあ、移動するか」


廊下を歩きながら、緊張をしていて変な錯覚に襲われた。


道のりがすごく遠いような近いような、心の迷いみたいにいつもの部屋に帰る道じゃない様に思えた。


                       




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