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君と、100回死ぬまでに (未完)
11回目 夢に居るあの少女 恋心に犯されて
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夢を見た。
笑顔で飛び降りていく僕の夢。妙にリアルで、正夢のような夢。
自殺なんてしなさそうな幸せいっぱいの顔。窓から顔を出す少女にほほえみながら落下していく自分の姿。少女の表情がうまく読み取れない。ただ何故か少女の表情が酷く歪んでいるように見えた。まるで僕の死を喜ぶかのように。なぜだろう。そもそも彼女は誰だろう。気持ちの悪い浮遊感を感じながら考える。
しかし、それは唐突に終わりを告げる。人生の終わりとともに。考え事で忘れていたが、俺は今飛び降り自殺をしている。こんなにも考える時間があったのは走馬灯であろう。
生々しい、命が消えていく感触。頭が潰れ視界が赤く染まる感覚。真っ赤な視界の中で、これが夢であることを願う。もう俺にできることはそれしか無い。
吐き気を催し目が覚める。
夢と現実との区別がつかなくなるくらいのリアリティに、心臓が激しく動いていることがわかる。
目を開けると視界が赤くない。ちゃんと夢だったんだ、よかった。
口の中が妙に酸っぱい。あぁ、恐怖で胃液が逆流したんだな。背中にはびっしょりと冷や汗が出ていた。冷や汗を含み、肌に吸い付く不快な肌着。
風呂でも入って、頭も体もリセットしようと体を起こす。そこには、夢に出てきた少女が居た。夢の中では歪んだ死神のように見えた少女がそこに居た。僕は彼女に一目惚れをした。
胸の高鳴りを感じる。死を体験するかのような不快な夢の感覚が塗り替えられていく。恋の高鳴りへと。
しばらく、彼女を見つめてぼーっとしている。
口内から鈍い痛みを感じて現実に思考が引き戻された。たぶん死の恐怖で、寝ているうちに無意識に、歯を食いしばってしまったんだろう。
彼女があの死神なわけがないと思い確信を得るために、夢の中の彼女を思い出そうにも記憶に靄がかかったかのように思い出せない。だけれど、思い出そうとするほどに目の前の彼女が、夢の中の少女だと、彼女は危険だと、脳が訴えかけてくる。
もう彼女が何者ではいいのではないか、という悟りの境地のような気持ちになってくる。僕は彼女が誰であれ、ただ、お話がしたいだけなのだ。だから思い切って声をかけてみた。
「こんにちは。君は誰?」
「私?」
少女は、自らを指さし、小首をかしげながら言った。
思わずキュンとしてしまった。心臓が止まるかと言うほどの可愛さだ。
煩悩を振り払う意味も含めて、大げさに首を振った。ヘッドバンキングくらい。
「私は、藤野咲」
クールに答える、その姿が、さっきの小首をかしげた事とのギャップがあり、またキュン死しそうになった。
今まで、こんなに誰かにときめいたこと無いのに、なんでだろう?この胸の高鳴りは。
「ねえ、なんで藤野さんはここにいるの?ここ僕の部屋だよね?」
もっと君と話がしたい。
もっと君の美しい声が聞きたい。
そんな気持ちで、更に藤野さんに声をかける。
「咲でいい。ここにいるのは君にお願いがあったから」
君からのお願いなら何でも聞いちゃう。
「お願い?何?何?気になるなぁ。その前にちょっと朝の身支度したいから、ちょっとそのドアの前からどいてくれるかな?」
でもその前に、身支度しなきゃ。
君に、こんな汗だくで口の中が酸っぱい僕の姿をあまり見せたくない。
僕のいいところを見てほしいから。
だからそこを退いてくれないかな?
「いやそのままの格好で構わない」
咲ちゃんは、ドアの前からどくことをとても嫌がってるみたいだった。
「咲ちゃんが良くても僕は良くないから通してくれないかな?」
かっこいい僕を見てもらうためとはいえ、ちょっと強く言っちゃったかな?
かっこいいところを見せようと思って行動して、それで嫌われちゃったら本末転倒だよ。
「いやそんな手間を取らなくていい。要件は、今、言う」
咲ちゃんの周りの温度が何度か下がったように感じた。
「死んで」
「喜んで!!」
自分の口から発せられた言葉に驚く。
なんでそんなこと言ってんの?馬鹿じゃないの?命ってそんな軽いものじゃないでしょ。
頭が一気に冷静になっていく。
さっきまでの、恋にうつつを抜かしていた自分が嘘かのように頭が冴える。
さっきまでの短略的な思考は何だったんだろう?まるで誰かに洗脳されていたかのように、思考が縛られていた。
いつもの僕ならあんなことしないのに。なんでその不自然さに気づかなかったんだろう?なぜ自然に彼女を受け入れていたのだろう。
自分の不甲斐なさに落胆する。
でもなんで今解けたんだろう?
多分きっかけは、僕が言った『喜んで!!』の言葉。
彼女がなにか仕掛けていたとするのならば、何故解けたんだろう?
その、何か分からない、彼女が行ったであろう超常的な現象にバグでもおきたのかな?
するとさっきまでのクールキャラとは全く違った口調で、藤野咲が話しかけてきた。
「契約は成立したわ。お疲れ様。今回もあなたも負け。どう?11連敗の気持ちは」
高笑いをしながら、煽るような口調で言う藤野。
何を言っているのだろう?
契約?11連敗?
藤野の意味の分からない発言について考えていると、不思議なことが起こった。
体が勝手に動き出していた。
元々僕が寝ていたベッドと藤野の間ぐらいにある窓に向かって歩いている。僕の意志を全く無視して体が動く。止まろうとしてもうまく体が動かない。まるで乗っ取られたかのように体の自由が効かない。
窓の前まで着くと、おもむろに窓枠に足をかけた。
頭は全力で焦っているのに体は冷静そのものだ。僕に体の指揮権がないことを改めて突きつけられた。
窓から一歩踏み出し、大空に飛び出した。
夢で見た景色そのものだった。
夢で味わった浮遊感。あの女の高笑いする歪んだ笑顔。僕の顔は張り付いたような笑顔になっている。
ただ一つ違うとするならば、僕が今回落ちたのは、11階からだった。
頭に響く今まで感じたことのない衝撃。
視界が赤く染まっていく。
なぜかこれを言わなければならないという、責任感が死の瀬戸際で、芽生えた。
「次の夢には『落ちる恐怖』を…」
自分でも何を言っているのか分からなかった。
僕の意識はそこで途切れた。
笑顔で飛び降りていく僕の夢。妙にリアルで、正夢のような夢。
自殺なんてしなさそうな幸せいっぱいの顔。窓から顔を出す少女にほほえみながら落下していく自分の姿。少女の表情がうまく読み取れない。ただ何故か少女の表情が酷く歪んでいるように見えた。まるで僕の死を喜ぶかのように。なぜだろう。そもそも彼女は誰だろう。気持ちの悪い浮遊感を感じながら考える。
しかし、それは唐突に終わりを告げる。人生の終わりとともに。考え事で忘れていたが、俺は今飛び降り自殺をしている。こんなにも考える時間があったのは走馬灯であろう。
生々しい、命が消えていく感触。頭が潰れ視界が赤く染まる感覚。真っ赤な視界の中で、これが夢であることを願う。もう俺にできることはそれしか無い。
吐き気を催し目が覚める。
夢と現実との区別がつかなくなるくらいのリアリティに、心臓が激しく動いていることがわかる。
目を開けると視界が赤くない。ちゃんと夢だったんだ、よかった。
口の中が妙に酸っぱい。あぁ、恐怖で胃液が逆流したんだな。背中にはびっしょりと冷や汗が出ていた。冷や汗を含み、肌に吸い付く不快な肌着。
風呂でも入って、頭も体もリセットしようと体を起こす。そこには、夢に出てきた少女が居た。夢の中では歪んだ死神のように見えた少女がそこに居た。僕は彼女に一目惚れをした。
胸の高鳴りを感じる。死を体験するかのような不快な夢の感覚が塗り替えられていく。恋の高鳴りへと。
しばらく、彼女を見つめてぼーっとしている。
口内から鈍い痛みを感じて現実に思考が引き戻された。たぶん死の恐怖で、寝ているうちに無意識に、歯を食いしばってしまったんだろう。
彼女があの死神なわけがないと思い確信を得るために、夢の中の彼女を思い出そうにも記憶に靄がかかったかのように思い出せない。だけれど、思い出そうとするほどに目の前の彼女が、夢の中の少女だと、彼女は危険だと、脳が訴えかけてくる。
もう彼女が何者ではいいのではないか、という悟りの境地のような気持ちになってくる。僕は彼女が誰であれ、ただ、お話がしたいだけなのだ。だから思い切って声をかけてみた。
「こんにちは。君は誰?」
「私?」
少女は、自らを指さし、小首をかしげながら言った。
思わずキュンとしてしまった。心臓が止まるかと言うほどの可愛さだ。
煩悩を振り払う意味も含めて、大げさに首を振った。ヘッドバンキングくらい。
「私は、藤野咲」
クールに答える、その姿が、さっきの小首をかしげた事とのギャップがあり、またキュン死しそうになった。
今まで、こんなに誰かにときめいたこと無いのに、なんでだろう?この胸の高鳴りは。
「ねえ、なんで藤野さんはここにいるの?ここ僕の部屋だよね?」
もっと君と話がしたい。
もっと君の美しい声が聞きたい。
そんな気持ちで、更に藤野さんに声をかける。
「咲でいい。ここにいるのは君にお願いがあったから」
君からのお願いなら何でも聞いちゃう。
「お願い?何?何?気になるなぁ。その前にちょっと朝の身支度したいから、ちょっとそのドアの前からどいてくれるかな?」
でもその前に、身支度しなきゃ。
君に、こんな汗だくで口の中が酸っぱい僕の姿をあまり見せたくない。
僕のいいところを見てほしいから。
だからそこを退いてくれないかな?
「いやそのままの格好で構わない」
咲ちゃんは、ドアの前からどくことをとても嫌がってるみたいだった。
「咲ちゃんが良くても僕は良くないから通してくれないかな?」
かっこいい僕を見てもらうためとはいえ、ちょっと強く言っちゃったかな?
かっこいいところを見せようと思って行動して、それで嫌われちゃったら本末転倒だよ。
「いやそんな手間を取らなくていい。要件は、今、言う」
咲ちゃんの周りの温度が何度か下がったように感じた。
「死んで」
「喜んで!!」
自分の口から発せられた言葉に驚く。
なんでそんなこと言ってんの?馬鹿じゃないの?命ってそんな軽いものじゃないでしょ。
頭が一気に冷静になっていく。
さっきまでの、恋にうつつを抜かしていた自分が嘘かのように頭が冴える。
さっきまでの短略的な思考は何だったんだろう?まるで誰かに洗脳されていたかのように、思考が縛られていた。
いつもの僕ならあんなことしないのに。なんでその不自然さに気づかなかったんだろう?なぜ自然に彼女を受け入れていたのだろう。
自分の不甲斐なさに落胆する。
でもなんで今解けたんだろう?
多分きっかけは、僕が言った『喜んで!!』の言葉。
彼女がなにか仕掛けていたとするのならば、何故解けたんだろう?
その、何か分からない、彼女が行ったであろう超常的な現象にバグでもおきたのかな?
するとさっきまでのクールキャラとは全く違った口調で、藤野咲が話しかけてきた。
「契約は成立したわ。お疲れ様。今回もあなたも負け。どう?11連敗の気持ちは」
高笑いをしながら、煽るような口調で言う藤野。
何を言っているのだろう?
契約?11連敗?
藤野の意味の分からない発言について考えていると、不思議なことが起こった。
体が勝手に動き出していた。
元々僕が寝ていたベッドと藤野の間ぐらいにある窓に向かって歩いている。僕の意志を全く無視して体が動く。止まろうとしてもうまく体が動かない。まるで乗っ取られたかのように体の自由が効かない。
窓の前まで着くと、おもむろに窓枠に足をかけた。
頭は全力で焦っているのに体は冷静そのものだ。僕に体の指揮権がないことを改めて突きつけられた。
窓から一歩踏み出し、大空に飛び出した。
夢で見た景色そのものだった。
夢で味わった浮遊感。あの女の高笑いする歪んだ笑顔。僕の顔は張り付いたような笑顔になっている。
ただ一つ違うとするならば、僕が今回落ちたのは、11階からだった。
頭に響く今まで感じたことのない衝撃。
視界が赤く染まっていく。
なぜかこれを言わなければならないという、責任感が死の瀬戸際で、芽生えた。
「次の夢には『落ちる恐怖』を…」
自分でも何を言っているのか分からなかった。
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