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桜のように散った私たち【読み切り版】【俺Ver.】(未完)
幸せのエピローグ
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俺は今日、改めて結婚の挨拶をしに癒月の実家へと向かった。
中学生の終わりの頃から、癒月の両親とは面識があった。だからあまり緊張せずに挨拶の望むことができた。
あの優しくておおらかな親御さんなら、怒鳴り散らされることはないだろう。そんな自信があったからだ。
今日のために新調したスーツに身を包み、癒月の実家へと訪れた。
インターフォンを押す俺の手が震えていた。
隣に立つ癒月がくすりと笑った。
「薫は、緊張しているの?先月一緒にキャンプいったじゃない。絶対に大丈夫よ。お父さんはあなたのことをえらく気に入っているのだから」
俺の緊張をほぐそうと、声をかけてくれた。
いくら先月一緒にキャンプに行ったからといって、結婚の挨拶をするということは多少緊張するらしい。精神的には穏やかでも、体が少し震えてしまう。
俺の手に癒月の手が添えられて一緒にインターフォンを押した。
ピンポーン…
インターフォンの音が完全に消えた頃、玄関のドアが開かれた。
「いらっしゃい、二人とも。中でお父さんが待っているわよ。さあさあ、上がって上がって」
ドアをあけたのは癒月のお母さんだった。
「お久しぶりです」
いつ見ても、癒月のお姉さんかと思うほど若々しい、癒月のお母さん。
癒月のお母さんに急かされながら、癒月の家に入った。
「お邪魔します」
靴を揃えておき、失礼のないように気を使いながら奥へと入っていく。
「薫、まだ緊張してるの?声と表情が硬いけど」
癒月が耳打ちをしてきた。
癒月の耳元で、小さな声でその問いに答えた。
「違う。緊張じゃなくて、真剣な表情をしているだけだ。一生に一度のことだから、真剣にやらなきゃだからな」
すると、癒月は納得したような顔をしていた。
そんなことをしていると、リビングに着いてしまった。
俺達の前を歩いていた癒月のお母さんは振り返り、言う。
「じゃあここに座ってね。癒月は薫くんの隣ね」
癒月のお母さんが指さした席は、やはり癒月のお父さんの席の前だった。
座る前にお父さんに挨拶をする。
「お久しぶりです、お義父さん」
あ、うっかりお義父さんって呼んじゃった。
どうしよう?この後、定番の「君にお義父さんと呼ばれる筋合いはない」って言われるのかな?
あぁ、初手でミスっちまった。
先が思いやられるな。
お義父さんはたっぷり間をおいて応えた。
「久しぶりだな、薫くん。お父さんと呼んだということはとうとう腹決めたのだね。さぁ、ここに座りたまえ」
まるで、ラスボスのような雰囲気をまとうお義父さん。
動きに非礼がないように座る。
いつもなら趣味などの話で盛り上がるのだが、今日に限っては、重苦しい空気が漂っていた。
そんななか、俺には言わなければいけないセリフがあったので口を開ける。
「娘さんと結婚させていただけないでしょうか」
その一言で更に空気が張り詰める。
お義父さんの視線が一瞬険しくなる。
肉食動物のような眼力。正直冷や汗が止まらない。
親父さんは一度目を閉じた後、再び目を開けて言った。
「あぁ、よいぞ。こちらこそ娘をよろしくな」
その一言の後は、空気が和み、和気あいあいとした夕食となった。
いつもどおり他愛もない話をしていると、すっかり夜になってしまった。
11時を回ったところで、俺たちは帰ることにした。
「そろそろ終電の時間なので、お暇しようと思います。今日は本当にありがとうございました」
俺が頭を下げると、お義父さんが、
「あぁ、こちらこそ。これからも娘をよろしくな。夜道は暗いし危険だから気をつけるのだよ」
お義父さんの言葉を聞いて頭を上げる。
それから二人して癒月の実家を出た。
俺の予想は裏切られることなく、和やかに結婚の挨拶をすることができた。
元々、何故か癒月のお父さんには気に入られていたことが、スムーズに行った要因なんじゃないだろうか。
それから俺たちは、懐かしい道を通って、駅へと向かった。
高校生の頃デートで行った様々なところを一つ一つ思い出した。
三年間を一緒に過ごした高校の校舎、放課後によっていたカフェ、よく暇なときに二人で行ったカラオケ。
流石に、商店街デートの思い出を癒月の実家の商店街で思い出して、懐かしさに浸ることはしなかった。
ただ、思い出を思い出すたびに、それより前のあいつとの記憶まで思い出される。
もう会うことはないだろうかつての親友のことを。
喧嘩別れしたあの公園も、散々遊んだあのゲームセンターも、癒月との思い出の下にあいつとの記憶が溢れるほど隠れている。
アイツのことを思い出してしまうから、あまり地元には戻りたくなかった。
後悔も、罪悪感も、悲しさも、あの時、俺には全く塞ぐことのできないほど大きな穴があいてしまった。それは癒月ですら埋めることはできなかった。
そんな事を考えていると、癒月に話しかけられた。
「どうしたの?そんなにボーっとして。もしかして思い出に浸っているの?あまり過去のことばかり見ていちゃダメだよ。なんていったって、わたしたち来年には結婚するんだから」
そうだ、俺はこれから結婚するんだ。
前を向かなきゃいけないんだ。
だから、こんなところで過去の傷に浸ってられない。
そう思い、この気持ちに再び重い蓋をした。
年が明け俺たちは結婚した。
俺たちは、人生最高の日を迎えた。
兵法の両親からも心から祝福されながら結婚した。
美しい花嫁をもらい、そのことを沢山の友人に祝福された。
俺は、幸せの絶頂を感じた。
いつまでも、こんなに幸せでいられますように。
後から知ったことなのだが、実は、癒月があいつに招待状を送っていたらしい。
やはりというか、あいつは俺たちの結婚式に来なかった。
あの時にできた俺とあいつとの溝は、俺の結婚式一つで改善されるほど浅くないのだ。むしろ深まったのではないだろうか。
中学生の終わりの頃から、癒月の両親とは面識があった。だからあまり緊張せずに挨拶の望むことができた。
あの優しくておおらかな親御さんなら、怒鳴り散らされることはないだろう。そんな自信があったからだ。
今日のために新調したスーツに身を包み、癒月の実家へと訪れた。
インターフォンを押す俺の手が震えていた。
隣に立つ癒月がくすりと笑った。
「薫は、緊張しているの?先月一緒にキャンプいったじゃない。絶対に大丈夫よ。お父さんはあなたのことをえらく気に入っているのだから」
俺の緊張をほぐそうと、声をかけてくれた。
いくら先月一緒にキャンプに行ったからといって、結婚の挨拶をするということは多少緊張するらしい。精神的には穏やかでも、体が少し震えてしまう。
俺の手に癒月の手が添えられて一緒にインターフォンを押した。
ピンポーン…
インターフォンの音が完全に消えた頃、玄関のドアが開かれた。
「いらっしゃい、二人とも。中でお父さんが待っているわよ。さあさあ、上がって上がって」
ドアをあけたのは癒月のお母さんだった。
「お久しぶりです」
いつ見ても、癒月のお姉さんかと思うほど若々しい、癒月のお母さん。
癒月のお母さんに急かされながら、癒月の家に入った。
「お邪魔します」
靴を揃えておき、失礼のないように気を使いながら奥へと入っていく。
「薫、まだ緊張してるの?声と表情が硬いけど」
癒月が耳打ちをしてきた。
癒月の耳元で、小さな声でその問いに答えた。
「違う。緊張じゃなくて、真剣な表情をしているだけだ。一生に一度のことだから、真剣にやらなきゃだからな」
すると、癒月は納得したような顔をしていた。
そんなことをしていると、リビングに着いてしまった。
俺達の前を歩いていた癒月のお母さんは振り返り、言う。
「じゃあここに座ってね。癒月は薫くんの隣ね」
癒月のお母さんが指さした席は、やはり癒月のお父さんの席の前だった。
座る前にお父さんに挨拶をする。
「お久しぶりです、お義父さん」
あ、うっかりお義父さんって呼んじゃった。
どうしよう?この後、定番の「君にお義父さんと呼ばれる筋合いはない」って言われるのかな?
あぁ、初手でミスっちまった。
先が思いやられるな。
お義父さんはたっぷり間をおいて応えた。
「久しぶりだな、薫くん。お父さんと呼んだということはとうとう腹決めたのだね。さぁ、ここに座りたまえ」
まるで、ラスボスのような雰囲気をまとうお義父さん。
動きに非礼がないように座る。
いつもなら趣味などの話で盛り上がるのだが、今日に限っては、重苦しい空気が漂っていた。
そんななか、俺には言わなければいけないセリフがあったので口を開ける。
「娘さんと結婚させていただけないでしょうか」
その一言で更に空気が張り詰める。
お義父さんの視線が一瞬険しくなる。
肉食動物のような眼力。正直冷や汗が止まらない。
親父さんは一度目を閉じた後、再び目を開けて言った。
「あぁ、よいぞ。こちらこそ娘をよろしくな」
その一言の後は、空気が和み、和気あいあいとした夕食となった。
いつもどおり他愛もない話をしていると、すっかり夜になってしまった。
11時を回ったところで、俺たちは帰ることにした。
「そろそろ終電の時間なので、お暇しようと思います。今日は本当にありがとうございました」
俺が頭を下げると、お義父さんが、
「あぁ、こちらこそ。これからも娘をよろしくな。夜道は暗いし危険だから気をつけるのだよ」
お義父さんの言葉を聞いて頭を上げる。
それから二人して癒月の実家を出た。
俺の予想は裏切られることなく、和やかに結婚の挨拶をすることができた。
元々、何故か癒月のお父さんには気に入られていたことが、スムーズに行った要因なんじゃないだろうか。
それから俺たちは、懐かしい道を通って、駅へと向かった。
高校生の頃デートで行った様々なところを一つ一つ思い出した。
三年間を一緒に過ごした高校の校舎、放課後によっていたカフェ、よく暇なときに二人で行ったカラオケ。
流石に、商店街デートの思い出を癒月の実家の商店街で思い出して、懐かしさに浸ることはしなかった。
ただ、思い出を思い出すたびに、それより前のあいつとの記憶まで思い出される。
もう会うことはないだろうかつての親友のことを。
喧嘩別れしたあの公園も、散々遊んだあのゲームセンターも、癒月との思い出の下にあいつとの記憶が溢れるほど隠れている。
アイツのことを思い出してしまうから、あまり地元には戻りたくなかった。
後悔も、罪悪感も、悲しさも、あの時、俺には全く塞ぐことのできないほど大きな穴があいてしまった。それは癒月ですら埋めることはできなかった。
そんな事を考えていると、癒月に話しかけられた。
「どうしたの?そんなにボーっとして。もしかして思い出に浸っているの?あまり過去のことばかり見ていちゃダメだよ。なんていったって、わたしたち来年には結婚するんだから」
そうだ、俺はこれから結婚するんだ。
前を向かなきゃいけないんだ。
だから、こんなところで過去の傷に浸ってられない。
そう思い、この気持ちに再び重い蓋をした。
年が明け俺たちは結婚した。
俺たちは、人生最高の日を迎えた。
兵法の両親からも心から祝福されながら結婚した。
美しい花嫁をもらい、そのことを沢山の友人に祝福された。
俺は、幸せの絶頂を感じた。
いつまでも、こんなに幸せでいられますように。
後から知ったことなのだが、実は、癒月があいつに招待状を送っていたらしい。
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