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毎日記念日小説(完)
恋人が欲しい先輩 6月12日は恋人の日
しおりを挟む「恋人ほしい」
先輩がいつも通り、急に変なことを言い出した。
「またですか」
俺は呆れながら、先輩との会話をスタートした。
「だって寂しいじゃん」
先輩は腕をぶんぶんと振りながら俺に訴えかけてきた。
まるで駄々をこねる幼稚園児みたいで、とても幼稚に見えた。
「今俺が目の前にいるのに、寂しいってひどくないですか。俺と一緒にいるのはそんなに嫌ですか?」
俺は、演劇みたいに大げさに悲しさを全身であらわした。
先輩は、俺の演技に乗ってくれるみたいで、大げさに身振り手振りを真添えながら言った。
「違うんだ後輩。君のことが嫌いなんじゃなくて、ふと、あぁ、私って友人はいても一人なんだなって思ってしまうんだ。その穴は後輩や友人では決して塞ぐことができないものなんだ。だから分かってくれよ後輩。君では役不足なのではなく、君とは違うベクトルの話しなんだ」
先輩の演技は、さっきまでの幼稚さを全く感じさせない、うざさマックスな過剰王子様という感じだった。
「そうだったのですね先輩。私が不必要だというわけじゃないんですね。安心しましたわ。どこまでもついていきますわ先輩に」
俺の演技も、先輩の演技に引っ張られてしまって、どこぞの令嬢みたいになってしまった。
それを見て先輩は噴き出した。何が面白かったのだろうか?
ここ俺の部屋なんだけど。
ちゃんと掃除してくれるかな?
まぁ、多分しないだろうな。
先輩が帰るまでに床とか壁にしみこまなきゃいいけど。
「後輩が『だわ』ってwww。『だわ』って。『だわ』って。はいはい、もう終了。こんな笑っちゃったらこんな適当な即興劇なんて続けられないって」
先輩は腹を抱えながら笑い転げていた。
そこって、さっき先輩が噴き出したところじゃん。
掃除してくれてるのかな?
先輩に限ってそんなわけないか。
偶々だな。偶々。
それにしても、先輩の噴き出したものをまとって先輩ってめちゃくちゃきたねぇじゃないか。
「何がそんなに面白いんですか?それにしてもまた恋人が欲しくなったんですか?」
「あぁ、なんかもうこんな楽しく話ができる後輩がいたら恋人が欲しいって気持ちも吹っ飛んじゃった」
先輩は、笑いすぎて目尻にたまった涙をぬぐいながら言った。
「そうですか、それは良かった」
「後輩は恋人欲しいとか思わないの」
先輩は急にスンとなり、普通のテンションに戻って話しかけてきた。
「今は特にないですね」
「『今は』ってことは、私みたいに定期的に恋人欲しいってなるってこと?それなら私たち同類だね」
先輩がにやにやしながらこっちを見てくる。
「嫌そういうわけじゃなくて」
「じゃあ、どういうこと」
「最近恋人ができたので」
俺がそう言うと先輩は固まってしまった。
それから数秒、先輩は完全に止まってしまった。
「え?」
言葉にならないかすれた声が聞こえた気がした。
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