毎日記念日小説

百々 五十六

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7月5日 穴子の日

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”これより雑談を始めます。雑談の所要時間は30分、役職等はございません。
それでは始めさせていただきます。

今日の雑談の話題は『穴子』です。


アナウンスの終了と同時か若干食い込んで、桂が叫んだ。
「あ!!んなぁあ!!!んっご!!!!!!!でしょ?!!」
「どうした急に?」
ツッコみとか、臭すようなことより心配が勝ってしまって、俺がガチトーンで声をかけた。
「ちょっとテンション上がっちゃって?!!」
「言っちゃ悪いけど、そんなテンション上がる事か?穴子って」
「だってあれでしょ!?!!重箱にかば焼きでドンっと乗ってる高級なあれでしょ?!!!!!」
「いや違うと思うぞ。それ、多分ウナギだろ」
「う、な、ぎ?!!」
「お前、ウナギを知らないのか?」
「ウナギって何?!!」
「え、マジで知らないんだ。うな重知ってるのに」
「それよりさ、穴子ってあれ?名古屋とかにあるひつまぶしって名前のやつでしょ????!!」
「それもウナギだ」
「えー…じゃあ、あれかな?静岡の方でパイになってるやつでしょ???!!」
「それもウナギだ。あれに関しては、穴子パイって言われておんなじ物が出てきても見分けられないだろうけど」
「えーっと、えーっと…じゃあ、あれでしょ??!電気が出るやつでしょ??!!!」
「それもウナギだ」
「えーっと…えーっと…えーっと…あれ?もう出てこないよ」
「さてわ、わかっててやってるだろ。さすがにそんなにジャストでウナギと穴子を間違えないだろ」
「本当に分からないんだよ…」
俺はスマホを取り出して、ウナギと穴子の画像を桂に見せた。
「これがウナギで、これが穴子だ。分かったか?」
「えっ?!!何が違うの…?同じでしょ??!!」
「画像だけだと、俺にも分からない」
「なら、うちが分かるわけないでしょ??!!」
「確かにそうだな」
「納得されるのはなんか釈然としないでしょ?!それで、ウナギと穴子って何が違うの?同じでしょ??!!」
「しいて言うなら、知名度と…味…?」
「味に違いなんてあるの?どっちもタレの味でしょ?!」
「桂にしては鋭いな。確かに食べ比べたことないから、明確な味の差が分からない。記憶の中では同じような味だった気がする」
俺と桂で掛け合いのように、テンポよくパパパパっと会話をしていると急にアナウンスが入った。




”アナウンス申し上げます。スタートより5分間、桂様と田中様しか発言が感知されませんでした。会話の門戸を広く開いていただけるとありがたいです。なるべく四人での会話を楽しんでいただけるよう、よろしくお願いします。引き続き楽しい雑談の時間をお過ごしください”



こんなアナウンスは、初めて聞いた。
確かに俺たちだけで話しすぎだったな。
対面に座った桂も少しシュンとしている。
多分反省中なんだろう。
両端の早川も林も委縮してしまっていた。
「申し訳ない。ちょっと熱くなりすぎたな。林は穴子とウナギの違いは分かるか?」
とりあえずまだ話してない二人のうち林に話題を振った。
「僕はね」






それから、四人全員でアナウンス前までの迫力にもっていくことができた。
まさか早川が、めちゃくちゃ穴子好きで、俺たちの会話に入りたくてうずうずしてたとは思わなかった。
アナウンスさんに注意されたけれど、結果良い雑談ができた。
次からは注意を受けないよう注意してかなきゃな。
ちなみに今回の場所は、河原のバーベキュー会場だった。
全体のテンションが疲れからか下火になってきたようなタイミングで最後のアナウンスが鳴った。
いつも空気が読めないようなタイミングで来るのに、今回は気を使ったようなタイミングできたな。
もしかして俺のタイムキープが無意識のうちにうまくなっていたのだろうか。






”30分が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。


それでは良い学校生活を”


教室に戻ってきた俺は、バーベキュー後の楽しかったけどどっと疲れが来る感じが押し寄せてきた。
教室の堅い椅子じゃなくて、家に帰ってソファーで寝転びたい。
どうしよう、これからの授業やる気出ねぇや。




それから学校から帰るまでの記憶は、半分もなかった。




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