孕めよ狼ちゃん!

山野まりも

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魔法使いとその弟子

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「だよな?先生」

 無精髭男は長髪の男に尋ねるように視線を向けた。それに男はニッコリ笑い「正解です」と控えめに拍手する。

「エド、手伝って頂けますか?」
「わかった」

 無精髭の男エドは、私や御者に全員馬車に乗って離れたところで待機するように言うと橋のあった場所に戻っていった。

(引き返さないのか?)

 私は男たちが気になり、素早く御者の隣に座って様子を伺うことにした。

「さあ、出ておいで。私の可愛い精霊達」

 長髪の男が、澄んだ声でそう言葉を発したと同時に、身体の周りに小さな光の玉がいくつも現れた。

「え……」

 あっという間だった。
 男の手から光が放たれたと思った次の瞬間には地面から木が生えてきて、どんどん橋の形を成していく。

「こらたまげたな」

 あまりのことに御者もポカンと口を開け驚いている。
 いつのまにか、地と地を結ぶ巨大な橋が出来上がっていた。

「エドあとは……頼みましたよ」
「ああ」

 長髪の男の足元がぐらついた。
 と思うとそのまま力が抜けたように倒れ、すんでのところでエドに抱きとめられていた。

「だ、大丈夫なんか?」
「マナを使い切っただけだ。それより早く出発を、この橋は多分5分ももたない」
「そら大変だ!」

 その後、私達は悪魔の爪痕を渡ることが出来た。

 ゴウン!
 遠くで何かが崩れる音が聞こえる。
 多分、あの橋が崩れた音だろう。

(コイツら、実は凄い奴らなんだろうか)

 つい気になって男たちに目を向ける。

「う~~、ぎもぢわるい~~」
「ほら水飲んで、ああもう零してる。ちゃんと口付けて飲めって」

 さっきまでの事が嘘のように、長髪の男はエドに献身的な介護を受けていた。

(そうでもないのか?)

 こうして私は、強靭な力を持つのに病弱過ぎる魔法使いと、それを先生と呼び世話する男エドと出合ったのだった。
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