孕めよ狼ちゃん!

山野まりも

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水場でドッキリ

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 それからは順調だった。
 森を抜け、大きな河を2回、小川を4回渡り、山岳部にほど近い街までやってきたところで、竜人族のキャラバンとは別れる事になった。

「別のキャラバンはない……か」
「困ったな」
「え?」

 さっさと遠くに逃げたいと思っていたが、どうやらあの男達も旅路を急いでいるようだ。
 今日中に山を越えれないか話している。

(ま、関係ないか)

 いくら今昼といっても、あの山を半日で越えるには無理がある。大の大人でも行けて山頂までが関の山。標高が高い分、きっと凍死間違いなしだろう。

 だからと言って街でのんびりしていたら、またオーク供が現れるかもしれない。

(買い物と腹ごしらえを済ませて、明るい内に雨風凌げそうな大木か洞窟でも探そう)

 とりあえず私は、今いる場所から見えるバザール通りに行き、昼食がてら屋台で串焼きを買って食べた。

(保存食…少し買っといた方がいいかな?)

 家を出る際、ある程度は持って出てきたが、ことごとくオークに先回りされていたのでかなり量が減ってしまった。

 それに加えこの時期は獲物が少なく、現地調達が難しい。今後の事を考えてもやはり食料や生活必需品を買い足しておくべきだろう。

(干し肉とチーズ…薬草と毒消し…このくらいか)

 買い込み過ぎると動きが鈍くなる。
 私は持てるだけの量を買い込み、今夜の寝床を探しに山の麓に向かった。




「ここでいっか」

 1時間ほど彷徨い歩いて、やっと良さげな洞窟をみつけることが出来た。

(ついでにキノコもいっぱい取れたし、今夜はキノコ汁にしよう)

 洞窟内で手早く火を起こし、風の抜ける方向を確認してから今日の寝床を作る。
 今の時期は枯れ枝や枯葉に困らないから楽でいい。

「……ちょっと臭うな」

 もう何日身体を拭いていないだろう。
 いくら旅慣れていても、やはりそういうのは気になる年頃だ。
 焚き火に水を張った小さな鉄鍋をくべ、少し待つ。

「うー、でもなあ」

 まだ外は明るく、気温もそこまで下がってない。
 洞窟内は順調に温まってきているし、近場にちょうど良さそうな水場もある。

「…チャンスは今かな」

 私は意を決して、近場の水場で水浴びを決行させることにした。
 のだけども……

「へ?」

 水場に行くと、うつ伏せになった裸の男2人がぷかぷか浮かんでいた。
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