虐げられてきた令嬢は、冷徹魔導師に抱きしめられ世界一幸せにされています

あんちょび

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最終決戦

32.黒幕との決戦(1)

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 塔を揺るがした仮面の首領との死闘は、氷と星光の共鳴魔法によって幕を閉じた。
 彼は血を吐きながらも、なお不気味な笑みを浮かべて言い残す。

「……我らが主の御心が下る時、この世は覆る……お前たちの愛など、嘲笑と共に消え去るのだ」

 その体は灰となり、風に溶けるように消滅した。
 だが残された言葉は、剣よりも鋭く、アリシアとレオンの胸を刺した。

 二人の背後では、王都を襲った刺客たちとの戦闘の痕跡が残り、瓦礫と炎が街を照らしていた。
 犠牲者の声が夜に響き渡り、戦場の静寂にすら痛みを刻む。

 アリシアは唇を噛みしめ、握る手に力を込めた。
「……必ず、黒幕を……。終わらせなければ」

 レオンは彼女の手を包み込む。
「行こう、アリシア。今度こそ、終わりにする」

◇ ◇ ◇

 刺客の首領が最後に残した断末魔と共に、光の道が現れた。
 それはまるで古代の魔力そのものが導くかのように、王都の外れから天を衝く山脈の方角へと伸びている。

 大陸最古の遺跡――伝承にしか存在しないはずの「崩れゆく古代神殿」。
 かつて神々と人とが交わったと語られるその場所が、今まさに蘇るように姿を現していた。

 アリシアは胸の奥がざわつくのを感じた。
 それは古代魔法の継承者としての血の記憶か、それとも避けがたい運命の呼び声か。

 レオンは彼女の横顔を見つめ、静かに言う。
「怖いか?」
「はい……でも、逃げません。私たちで終わらせましょう」

◇ ◇ ◇

 山脈を越えた先、闇夜に浮かび上がる巨大な神殿は、すでに半ば崩壊していた。
 天井は砕け落ち、夜空から差し込む星光が柱の間を照らす。
 その光は荘厳であると同時に、不安定な亀裂の数々が刻まれていた。

 石畳を踏みしめる二人の前に、圧倒的な存在感が現れる。
 古代の衣を纏い、瞳に虚無を宿した男――黒幕の古代魔導士アストレイア。

 彼の姿は肉体のものではなく、魂そのものが凝縮されたような歪な存在だった。
 声を発するたびに、空気が震え、神殿の残骸が軋む。

「……来たか。古代魔法の継承者よ。そして、その伴侶よ」

 アリシアの心臓が強く脈打つ。彼こそが、すべての戦乱の根源。

 アストレイアの目が細められ、嘲りの笑みが浮かんだ。

「人の心など儚い幻。愛も友情も、必ず裏切りに変わる。
 幾千の歴史がそれを証明している。人は愛の名を掲げて争い、殺し合ってきたではないか」

 その声は神殿全体に響き渡り、石柱が共鳴して震える。
 空気は重く圧し掛かり、王国の騎士団や随行していた高位魔導師たちは立つことすら困難になった。
 彼らは一歩も踏み出せず、ただ見守るしかなかった。

 アリシアの胸が締め付けられる。
 だが彼女は震える足を前に出し、アストレイアを真正面から見据えた。

 その瞬間、レオンが一歩前に出て、アリシアを庇うように立ちはだかった。
「……黙れ。俺は彼女に救われた。氷に閉ざされた俺の心を、光で満たしてくれたんだ」

 アストレイアは鼻で笑い、冷たい視線を向ける。
「愚か者め。その光も、いずれ闇に呑まれる」

 アリシアが前へ進み、レオンの隣に立つ。
「愛は脆くなんてありません。あなたの言葉は虚ろな響きに過ぎない。
 私たちの力で、証明してみせます」

 アストレイアの瞳に狂気の輝きが宿った。
「ならば――証明するがいい。この世を覆う絶望の奔流に抗えるのならば!」

 その言葉と共に、闇の魔力が神殿を呑み込み、激しい奔流が二人に襲いかかった。
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