32 / 38
最終決戦
32.黒幕との決戦(1)
しおりを挟む
塔を揺るがした仮面の首領との死闘は、氷と星光の共鳴魔法によって幕を閉じた。
彼は血を吐きながらも、なお不気味な笑みを浮かべて言い残す。
「……我らが主の御心が下る時、この世は覆る……お前たちの愛など、嘲笑と共に消え去るのだ」
その体は灰となり、風に溶けるように消滅した。
だが残された言葉は、剣よりも鋭く、アリシアとレオンの胸を刺した。
二人の背後では、王都を襲った刺客たちとの戦闘の痕跡が残り、瓦礫と炎が街を照らしていた。
犠牲者の声が夜に響き渡り、戦場の静寂にすら痛みを刻む。
アリシアは唇を噛みしめ、握る手に力を込めた。
「……必ず、黒幕を……。終わらせなければ」
レオンは彼女の手を包み込む。
「行こう、アリシア。今度こそ、終わりにする」
◇ ◇ ◇
刺客の首領が最後に残した断末魔と共に、光の道が現れた。
それはまるで古代の魔力そのものが導くかのように、王都の外れから天を衝く山脈の方角へと伸びている。
大陸最古の遺跡――伝承にしか存在しないはずの「崩れゆく古代神殿」。
かつて神々と人とが交わったと語られるその場所が、今まさに蘇るように姿を現していた。
アリシアは胸の奥がざわつくのを感じた。
それは古代魔法の継承者としての血の記憶か、それとも避けがたい運命の呼び声か。
レオンは彼女の横顔を見つめ、静かに言う。
「怖いか?」
「はい……でも、逃げません。私たちで終わらせましょう」
◇ ◇ ◇
山脈を越えた先、闇夜に浮かび上がる巨大な神殿は、すでに半ば崩壊していた。
天井は砕け落ち、夜空から差し込む星光が柱の間を照らす。
その光は荘厳であると同時に、不安定な亀裂の数々が刻まれていた。
石畳を踏みしめる二人の前に、圧倒的な存在感が現れる。
古代の衣を纏い、瞳に虚無を宿した男――黒幕の古代魔導士アストレイア。
彼の姿は肉体のものではなく、魂そのものが凝縮されたような歪な存在だった。
声を発するたびに、空気が震え、神殿の残骸が軋む。
「……来たか。古代魔法の継承者よ。そして、その伴侶よ」
アリシアの心臓が強く脈打つ。彼こそが、すべての戦乱の根源。
アストレイアの目が細められ、嘲りの笑みが浮かんだ。
「人の心など儚い幻。愛も友情も、必ず裏切りに変わる。
幾千の歴史がそれを証明している。人は愛の名を掲げて争い、殺し合ってきたではないか」
その声は神殿全体に響き渡り、石柱が共鳴して震える。
空気は重く圧し掛かり、王国の騎士団や随行していた高位魔導師たちは立つことすら困難になった。
彼らは一歩も踏み出せず、ただ見守るしかなかった。
アリシアの胸が締め付けられる。
だが彼女は震える足を前に出し、アストレイアを真正面から見据えた。
その瞬間、レオンが一歩前に出て、アリシアを庇うように立ちはだかった。
「……黙れ。俺は彼女に救われた。氷に閉ざされた俺の心を、光で満たしてくれたんだ」
アストレイアは鼻で笑い、冷たい視線を向ける。
「愚か者め。その光も、いずれ闇に呑まれる」
アリシアが前へ進み、レオンの隣に立つ。
「愛は脆くなんてありません。あなたの言葉は虚ろな響きに過ぎない。
私たちの力で、証明してみせます」
アストレイアの瞳に狂気の輝きが宿った。
「ならば――証明するがいい。この世を覆う絶望の奔流に抗えるのならば!」
その言葉と共に、闇の魔力が神殿を呑み込み、激しい奔流が二人に襲いかかった。
彼は血を吐きながらも、なお不気味な笑みを浮かべて言い残す。
「……我らが主の御心が下る時、この世は覆る……お前たちの愛など、嘲笑と共に消え去るのだ」
その体は灰となり、風に溶けるように消滅した。
だが残された言葉は、剣よりも鋭く、アリシアとレオンの胸を刺した。
二人の背後では、王都を襲った刺客たちとの戦闘の痕跡が残り、瓦礫と炎が街を照らしていた。
犠牲者の声が夜に響き渡り、戦場の静寂にすら痛みを刻む。
アリシアは唇を噛みしめ、握る手に力を込めた。
「……必ず、黒幕を……。終わらせなければ」
レオンは彼女の手を包み込む。
「行こう、アリシア。今度こそ、終わりにする」
◇ ◇ ◇
刺客の首領が最後に残した断末魔と共に、光の道が現れた。
それはまるで古代の魔力そのものが導くかのように、王都の外れから天を衝く山脈の方角へと伸びている。
大陸最古の遺跡――伝承にしか存在しないはずの「崩れゆく古代神殿」。
かつて神々と人とが交わったと語られるその場所が、今まさに蘇るように姿を現していた。
アリシアは胸の奥がざわつくのを感じた。
それは古代魔法の継承者としての血の記憶か、それとも避けがたい運命の呼び声か。
レオンは彼女の横顔を見つめ、静かに言う。
「怖いか?」
「はい……でも、逃げません。私たちで終わらせましょう」
◇ ◇ ◇
山脈を越えた先、闇夜に浮かび上がる巨大な神殿は、すでに半ば崩壊していた。
天井は砕け落ち、夜空から差し込む星光が柱の間を照らす。
その光は荘厳であると同時に、不安定な亀裂の数々が刻まれていた。
石畳を踏みしめる二人の前に、圧倒的な存在感が現れる。
古代の衣を纏い、瞳に虚無を宿した男――黒幕の古代魔導士アストレイア。
彼の姿は肉体のものではなく、魂そのものが凝縮されたような歪な存在だった。
声を発するたびに、空気が震え、神殿の残骸が軋む。
「……来たか。古代魔法の継承者よ。そして、その伴侶よ」
アリシアの心臓が強く脈打つ。彼こそが、すべての戦乱の根源。
アストレイアの目が細められ、嘲りの笑みが浮かんだ。
「人の心など儚い幻。愛も友情も、必ず裏切りに変わる。
幾千の歴史がそれを証明している。人は愛の名を掲げて争い、殺し合ってきたではないか」
その声は神殿全体に響き渡り、石柱が共鳴して震える。
空気は重く圧し掛かり、王国の騎士団や随行していた高位魔導師たちは立つことすら困難になった。
彼らは一歩も踏み出せず、ただ見守るしかなかった。
アリシアの胸が締め付けられる。
だが彼女は震える足を前に出し、アストレイアを真正面から見据えた。
その瞬間、レオンが一歩前に出て、アリシアを庇うように立ちはだかった。
「……黙れ。俺は彼女に救われた。氷に閉ざされた俺の心を、光で満たしてくれたんだ」
アストレイアは鼻で笑い、冷たい視線を向ける。
「愚か者め。その光も、いずれ闇に呑まれる」
アリシアが前へ進み、レオンの隣に立つ。
「愛は脆くなんてありません。あなたの言葉は虚ろな響きに過ぎない。
私たちの力で、証明してみせます」
アストレイアの瞳に狂気の輝きが宿った。
「ならば――証明するがいい。この世を覆う絶望の奔流に抗えるのならば!」
その言葉と共に、闇の魔力が神殿を呑み込み、激しい奔流が二人に襲いかかった。
11
あなたにおすすめの小説
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~
しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。
豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。
――食事が、冷めているのだ。
どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。
「温かいごはんが食べたい」
そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。
地下厨房からの高速搬送。
専用レーンを爆走するカートメイド。
扉の開閉に命をかけるオープナー。
ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!?
温かさは、ホッとさせてくれる。
それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。
冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、
食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ!
-
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
2/26 番外編を投稿しました。
読んでいただけると嬉しいです。
思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。
とてもとてもありがとうございます!!
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
婚約破棄された幼い公爵令嬢、目覚めたら絶世の美女でした
鍛高譚
恋愛
『幼すぎる』と婚約破棄された公爵令嬢ですが、意識不明から目覚めたら絶世の美女になっていました
幼すぎる、頼りない――そんな理由で婚約者に見限られた公爵令嬢シルフィーネ。
心ない言葉に傷ついた彼女は、事故に遭い意識不明となってしまう。
しかし一年後、彼女は奇跡的に目を覚ます。
そして目覚めた彼女は――かつての面影を残しつつも、見る者すべてを惹きつける絶世の美女へと変貌を遂げていた!
周囲の反応は一変。婚約破棄を後悔する元婚約者、熱視線を送る他家の令息たち、さらには王太子からの突然の縁談まで舞い込み――?
「もう、誰にも傷つけられたくない。私は私の幸せを手に入れるの」
これは、冷たく突き放された少女が美しく咲き誇り、誇りと自由を手に入れる、ざまぁ&逆転恋愛劇。
地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです
有賀冬馬
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」
そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。
社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。
そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。
過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。
そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。
「君が隣にいない宮廷は退屈だ」
これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。
冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?
由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。
皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。
ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。
「誰が、お前を愛していないと言った」
守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。
これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる