最初のものがたり

ナッツん

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デート

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文化祭まであと3日だ。

変な緊張感が日々増してくる。

大怪我をしたり、失敗する夢を毎日見てる。

精神的に追い込まれてた。

楽しみなのに、ダメだ、私。

昔からプレッシャーに弱い。

逃げたくなる。

でも、今の私には勇磨がいる!

勇磨の笑顔で力と勇気が湧いてくる。

不思議だ。

なんでもできる気がする。

「ナナ、今日もトモの所に行くの?」

帰りに勇磨に呼び止められた。



うん。

そうだけど。

「ふーん。そうなんだ」

なんかちょっとスネてる。

「何?なんか、ある?」

そう聞く私の手を握る。

ドキッとした。

こういうの、いつか慣れるのかな。

「俺、今日、部活がオフになったんだ。
ナナとデートしたい。
した事ないよね?俺達。」

え、してるよね?

公園で会ってるし、
映画も観覧車も行ってる。

首を振って反論する勇磨。

「いや、アレは違う。
ナナの誕生日に観覧車に乗ったのは、
俺的にはデートだけど、
ナナはそう思ってなかっただろ。
公園なんて、あんなの、デートじゃない。」

なんだ、ソレ。

私にとっては公園だって、
デートだったんですけど!

というか、デートってなんだ?
定義が分かんない。

でも私‥

練習しない訳にはいかない。

今日、踊らないのは怖い。

怖くて怖くて眠れない。

困る私に表情が曇る勇磨。

どうしよう、私もデートしたいよ。

勇磨といたい。

「すればいーじゃん、デート。して来いよ」

その声に振り返るとトモが立っていた。

驚いて叫んだ。

「トモ!いいの?」

やった!嬉しい!

「なんでお前が決めんだよ」

ちょっと納得がいかない様子の勇磨。

でもやっぱり、今日踊らないのは怖いな。

不安になる私に、トモは優しく笑った。

「チビはもう完成してる。
後は心を落ち着かせて、自信を持つ事だよ。
それには練習よりも勇磨だろ」

え?

勇磨がニヤける。

「じゃあ楽しんで来てね。
だけどストレッチだけはちゃんとしろよ」

そう言って私の頭をポンと触った。

途端に勇磨が怒る。

「お前、ナナに触んな!」

ハイハイ、分かりましたよ。
そう言ってトモが練習に向かった。

トモの言う通りかもしれない。

今の私は、練習を重ねても不安は消えない。

でも、勇磨といると不安は消えて、
自信と期待が溢れる。

うん、そうだね。
私には練習より勇磨だ!

やった!

勇磨と帰るの久しぶりだ。

嬉しい。

「勇磨、デートってどこ行くの?」

声が弾む。

黙って私を見つめる勇磨。

え?何?

そのまま、なかなか口を開かない。

何?

どこ?

「俺さ、行きたいとこあるの。」

うん、いいよ。

勇磨が行きたいところ、すごく行きたい!

「ナナの部屋」

そう言って目線を外す。

え!

うち?

うちに行きたいの?

何で?

それってデート?

何?

どういうこと?

「俺、どうしても納得いかないの。
ツバサがナナの部屋に、
何回も出入りしてる事。
俺は1回もないのに」

思わず吹き出した。

バカ!

なんだ、それ。

真っ赤になって言わないでよ!

結局、超かわいい!

ずるいなぁ、勇磨は。

でもまぁ。

「分かった。いいよ。
今日はママもいると思うけどいい?」

勇磨がニヤニヤする。

「逆にお母さんいないと、
ナナちゃん危険だよ。」

バカ!そういう事言うなら呼ばない。

ケラケラ笑う勇磨は、
私の手をぎゅっと握って歩き出した。

「さ、帰ろうぜ!」

楽しい!

そのまま桜並木を歩き、
たわいもない話をしながら歩いた。

玄関で迎えてくれたママは大絶叫した。

「きゃあ!
ナナが熱出した時に来てくれた子だよね?
やったね、ナナ!
ママは断然、工藤くん推しだったの」

勇磨が嬉しそうに挨拶をする。

すっかり勇磨の魅力にやられたママが、
勇磨をなかなか離さないから、
強引に話を切り上げて、
私の部屋に連れて来た。

「女が部屋に男を連れ込むな」

そう冗談だか本気だか、
分からない口調で勇磨が言ったけど、

無視!

「へぇ、キレイにしてるんだな。
うんうん、女の子の部屋って感じ」

キョロキョロ見渡す勇磨。

恥ずかしい。

「あ、これ」

そう言って棚の上の小瓶を手に取った。

持ち上げて日に透かして見る。

中でピンクの貝が揺れた。

キラキラと光る貝を、
目を細めて見る勇磨の横顔は、
イケメンすぎ!

「ナナが欲しいって泣いたやつ」

バカ!余計だ。

小瓶を棚に戻してから、
横にあった中学の卒業アルバムを見つけた。

うわっ、それ。

ダメなヤツだ!

慌てて取り返そうとしたけど、
私の様子で不審がり目で威嚇する。

ページをゆっくりとめくる。

「あ、これナナだ。
すぐ分かった。かわいい」

かわいいって。

もう、照れる。

でも問題はその先だ。

ツバサくんが写ってる写真のほとんどに、
私が写ってる。

しかもストーカー級にツバサくんを見てる。

2人で仲良くくっついてる写真もあって、
それはアルバム委員がふざけて、
ハートで囲んでる。

問題のページを進みながら口数が減る勇磨。

「ナナは、本当にツバサが好きだったんだな」

そう言ってアルバムを閉じた。

怒った?

怒ったよね?

「でもいーや。
ナナがツバサを好きじゃなかったら、
俺はナナを、
すぐには見つけられなかったかもしれない。
ツバサに夢中で俺を芋扱いして、
泣いたり笑ったり怒ったりするナナに、
俺は惹かれたんだ。」

勇磨!
ヤバイ!

「好き!勇磨。」

もうそれしか言葉がない。

勇磨が私の肩に手を置いて、
そのままキスをして抱きしめてくれた。

「俺も好き」

勇磨をぎゅっと抱きしめた。

本当に大好きだ。

耳元で勇磨が囁く。

「ナナ、俺、ヤバイかも。
これ以上、ここにいたら危険。」

慌てて私も離れる。

照れ隠しなのか、自分の髪を
くしゃくしゃにする勇磨。

「しかし、ツバサ、よく我慢できたな。
というか、本当に何もないよね?」

何、それ、冗談?
本気?

「ツバサくんは、そんな不純な動機で
ここには来てないからね。
勇磨とは違います」

途端にすっごく悪い顔をする。

「悪かったな、不純で。
もう、なんもしねー。」

え、何も?
何もって、何も?

私の動揺と不満が顔に出たのか、
勇磨は爆笑する。

「かーわい」

笑いながら勇磨が私の手を取り

「じゃあ観覧車行くか。
ナナがして欲しいって言うから、
チュー付きで。」

うー、もう。

また負けだ。

でも、観覧車!

また夕陽を2人で見れるんだ!

私にとっては大事な場所。

勇磨にとってもそうだといいな。

私を見る勇磨の瞳で、
同じ想いだと確信した。

早々に帰る勇磨に寂しがるママを置いて、
コスモタウンに向かう。

「またナナんちに行ってもいい?俺、
ナナのお母さんに気に入られちゃったし。」

調子に乗ってるな!

「言っただろ、
女の子はみんな俺が好きなの。
ナナだけだよ、俺を振り回すのは。
だから好きなんだ」

うー。

もう、勇磨め!

「でも安心した。
ナナ、ここのところ様子が変だったから。
不安定というか、
ナーバスな感じだったからさ。
俺がぎゅっとしてパワーあげる」

勇磨、気がついてたんだ。

私がプレッシャーで不安定だったの。

だからデートしてくれたんだな。

部活が休みっていうのも、
私の為のウソかもしれない。

観覧車の中で勇磨がぎゅっと抱きしめてくれた。

今日も夕陽がキレイでなんか涙が出た。

1番安心する。

勇磨に抱きしめられると安心する。

プレッシャーも不安も全て吹っ飛んだ!

パワーをたくさんもらってシークレットステージに挑もう。

ありがとう、勇磨!

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