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eスポーツ部誕生

46 4人目の部員2

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 速人が殴られてから3日後の放課後。
 速人、真紀、翔の3人はPC実習室にいた。
 速人は腕を組んで何かを考えており、真紀は頬杖をつきボーっとしていた。
 重苦しい雰囲気の中、「ふぁーあ」とあくびをしながら翔が言った。

「今日も誰も来んがね。部活募集締め切りまで、あと1週間しかないけど、どうするんや?」

「今日こそは坂野君が来てくれるはず」

 翔を見ながら、腕を組んだまま速人が言った。

「あいつ、そんなに信用してええんか? あの場は、勢いだけで言ったんじゃないの?」

「坂野君はそんな人じゃないよ。スポーツマンで、とっても誠実な人だよ」

「真紀ちゃん、えらくあいつの肩を持つね。あっ! まさか、あいつの事を……」

「えっ! 違う違うよ。坂野君は私じゃなくって友達が……。あっ、また余計な事言っちゃった」

 真紀は真っ赤になりうつむいてしまった。

「そういえば、この前もあいつの事を友達が好きだと言ってたがね。いったい友達って誰なん?」

「ダメダメ。それは絶対に言えない。ナイショ」

「いいじゃん。真紀ちゃん教えてよ」

「ひみつ、この事は忘れて、お願い」



「あらあら、にぎやかなことで」

 真理亜が3人の前に迷惑そうな顔をして立っていた。

「あっ、真理亜さん。うるさくしてごめんなさい」

 真紀が真理亜に向かって頭を下げた。
 そのとき翔が真理亜に話しかけた。

「真理亜ちゃん、同じ中学出身の坂野ってやつを……」

「あーあーあー、何でもない何でもない」

「えっ? 何?」

「真理亜さんごめん。何でもないの。ちょっと、翔君余計な事を言わないでよ」

「分かった。分かった。もう何にも言わんて」


 そのとき、PC実習室の入口の方から大きな声が聞こえたので、一斉にみんなが振り向いた。

「よおっ」

 軽く手を挙げ3人に向かって坂野が言った。

「通院とかいろいろあってさ、なかなか来れなくて悪かった」

 そう言った後、松葉杖をつきながら4人のそばへと歩いてきた。

「おっ! 安部、久しぶりだな。お前もeスポーツ部に入ったのか?」

「まさか。私がやるわけないでしょ……。ちょっと待って、お前もって。ひょっとして、あなたeスポーツ部に入るの?」

「ああ、そうだよ」

「えー、信じられない。サッカーバカのあなたが?!」

「サッカーバカはねえだろ。さっき、サッカー部辞めてきた」

「本当に辞めちゃったの?」

 速人は驚いて確認した。

「正確には休部願いだけど。ま、この足だしな。eスポーツはド素人で何も知らないけど、入部してもいいよな?」

「もちろん歓迎するよ。翔君、何か言う事は?」

 速人は少し意地悪く翔に話をふった。

「あ、あのう、俺はおみゃーさんが来てくれることは、はなっから信じとったがね。これからよろしく」

 翔は少しだけばつが悪そうに言った。

「あれぇ、何か言っていることが違うような」

 すかさず真紀が突っ込みをいれると、速人と真紀は笑った。
 何はともあれ、坂野が来た事により、重苦しい雰囲気は一気に変わった。
 サッカー部を辞めてまで参加してくれた坂野のためにも、あと一人。あと一人何とか集めなければと、速人は決意を固めた。

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