恋にあやとり

宮瀬

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要するに、亜弥は久しぶりに家に帰ってきたタイミングで僕に交渉を持ちかけたということだった。僕自身が寮生活で実家にあまり帰っていなかったため、帰省したときに出迎えた亜弥の様子から通学しているものだと勘違いしていたのだ。僕のあまりの間抜け具合に辟易とする。
しかし、これからどうしよう。目の前の彼の様子からして、僕達は同じ寮の同室ということらしかった。てっきり通学だと思って入れ替わりを承諾してしまったが、寮生活で四六時中亜弥の真似をして生活しなければならないなんて到底できそうにない。しかも同室と思われる彼には既にかなり嫌われているようである。

「ええと、分かってるよ。後で何とかする」

部屋の状況が分からないため、当たり障りなく返事をするが、返ってきたのは心底嫌そうなため息だった。あまり亜弥らしくない返答だったかもしれないが、普段彼と亜弥の間に交流はほとんど無いのだろう。彼はまたあの凍りつくような視線を僕に向けた後、そのまま踵を返して隣のクラスに入っていった。

「あー、あの人は亜弥の同室の東堂蓮だよ。」

未だ状況を飲み込めずに突っ立っていると、背後からまた話しかけられる。振り向いた僕に、彼は自分が谷口であると名乗り、此方をまじまじと見た。

「しっかし、本当に亜弥とそっくりなんだなあ。マジで全然分からないわ。」
「あの、そんなに見ないでくれる…?」
「ああ。喋ると全然違うのな。」

聞いていた通りだと頷いている谷口君は何だか思っていたよりも苦労症ではなさそうだ。むしろ飄々とした雰囲気で、今回の亜弥の件も、振り回されているというより、面白そうだから話に乗ったというところだろうか。見た目で判断してはいけないと思っていても、着崩した制服と明るい髪色に軽い印象を受ける。

「えと、谷口君は何で今回のこと引き受けたの?」
「うーん、特に理由はないけど。強いて言うなら面白そうだから?」

予想は的中した。やはり彼は快楽主義な一面があるようだ。谷口君は呼び捨てにしてと付け足した後、僕を亜弥の席へと案内した。

「あの、谷口君。東堂君ってどんな人なの・・・?」

緊張感から解放されて、隣に立つ谷口君を見上げ確認する。

「呼び捨てでいいよ、亜弥もそう呼んでたし。そうだなあ、品行方正、文武両道って言葉が似合う人だよ。綺麗な顔してるし人気も高いけど、ちょっと近寄り難いのが玉に瑕だよなあ。まあ、そこがいいって奴も大勢いるけど。」

あのインテリ眼鏡と同じ部屋なんて俺には無理と失礼なことを言う彼につい胡乱な視線を向けてしまう。たしかに少し、いやかなり怖かったけれども。少しでも相手のことを知って不安を解消しようとしたのだが、まるで逆効果だった。とりあえず、寮に戻ったら相当汚れているであろう部屋の掃除から取り掛かろう。僕は実家の亜弥の部屋の様子を思い浮かべげんなりとした。

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