カゴの中のツバサ

九十九光

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#3-3

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ちは、一様にスマートフォンに目を落としているか、横か正面にいるほかの学生と話し込んでおり、自分の降りる駅に着くまで立ち上がる様子はなかった。
 そんな時だった。
「おばあさん、どうぞ。」
 ツバサはスッと席から立ち上がり、老婦人に声をかけた。
「あら? いいのかい、坊や。」
「はい。どうぞ座ってください。」
 あまりされたことのない経験に驚く老婦人に、ツバサは軽く笑って応えた。
 今まで非常に暗い性格で、誰かと話すくらいなら悪者扱いされてでもコミュニケーションを避けてきたツバサは、自分から人に声をかけるようになっていた。
 それも今回のようなケースにとどまらない。学校や塾で分からないことがあると、業後にそれぞれの場所の教師に尋ねることまでするようになり、ゴールデンウィーク明けから一週間もするころには、担任教師も驚くほどよくしゃべる子供になっていた。それと同時進行で塾の小テストの成績も跳ね上がり、正答率の平均が九割に達することは当たり前になっていた。
 ただしこのツバサの変化をプラスに受け止めない人物も多かった。
 たまにしかツバサと顔を合わせない彼の母親は、依然として冷たい性格を変えなかった。この中肉中背の女は、ツバサの日ごろの勉強の成果を見せられても、面と向かって彼を誉めるような真似はしなかった。満点の小テストを四枚一気に見せられたこともあったが、一言も声をかけることなくツバサに返還した。自分の息子がこのくらいの成績を収めることは当然のことだと言っていると思われても仕方がない態度だった。
 より質が悪かったのは、ツバサの学校の同級生たちだった。彼らは手のひらを返したように先生に声をかけ始めたツバサを、急にいい子ぶり始めて気に入らないといった様子で見ていた。大人の社会でも、別に有能でもない上司にへつらって胡麻をする同期に好印象を持たないという人は、少なからず存在するだろう。傍から見たツバサは、その胡麻をする同期のように見えたわけである。もともとあったツバサへのいじめはさらにエスカレートし、学校の外でも人目をはばかることなく起きるようになった。
 ある日、地下鉄東山線上社駅の、建設時の費用節約で地上に出ている駅のホーム。学校帰りのツバサが転落防止のホームドアの前で電車を待っている時の話。
 何をするでもなくただ立っているツバサの後ろから突然四人の同級生がやってきて、ツ
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