カゴの中のツバサ

九十九光

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#5-4

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なれなかった。オーロラのような夜空が背景になっているスマートフォンのトップ画面をつけたり消したりを繰り返しながらビルの入り口横でもたれ掛かり、ほかの子供たちが家族の迎えに喜ぶ姿を傍観していた。
 今日は結局、LINEも来なかった。向こうも気まずさを感じているのだろうか。いつも通り接してきてくれれば、もしかしたら気持ちを切り替えることができたかもしれない。
 ツバサは深くため息をついた。
 その次の瞬間だった。
「あ……。」
 左側の耳に、聞き慣れた女の人の声が入り込んできた。
 ツバサが声のする方向を振り返ると、そこにはカナコがいた。右手で空色の傘を持っており、足のローファーと左の肩にかけたカバンが雨で濡れている。
「昨日は……。その……。ゴメンね。」
 カーディガンを脱いでいる彼女は、湿っぽい感じのする声をしていた。
「……。一緒に、ご飯食べよ。」
 ツバサは、塾帰りの雑踏に消えてしまいそうなほどか細い声でカナコに言った。
 カナコはそれを快諾した。
 二人は最初に出会った日に一緒に入ったファミリーレストランに入り、最初の日と同じ席に腰かけた。
 時刻は店内のアナログ時計で午後六時五十一分。店の外ではすっかり日が落ち込み、雨の音は気にならない程度にまでボリュームを下げている。店内は家族連れが3組にスーツ姿のお一人様が5人。二人を含めた横進ゼミナールからの塾生と思わしき中高生が大勢来店しており、占めて座席の7割ほどが埋まっていた。
 空調の問題か、ツバサ自身の問題か、彼の額はじんわりと汗をかいていた。いい気分ではなかった。
「初めてだね。ツバサ君からこういうのに誘ってくること。」
「でもカナコお姉ちゃんがお金払うんだよね……。なんかゴメン。」
「いいよ。小学生がそんな気遣いしないで。」
 メインのハンバーグセットより先に来たフライドポテトにフォークを突き刺しながら、カナコはクスリと笑った。そして彼女は、すぐにその笑みを消して浮かない表情に戻った。
「昨日は……、ホントにゴメンね。」
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