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#5-8
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てくれる人だった。
中村公園駅で電車を降りて地上へ上がると、雨は完全に上がっていた。地面は濡れておりアスファルトのくぼみに雨水が溜まっているが、ほぼ二十四時間ツバサの頭上に存在し続けた厚い雲は消えてなくなっている。都心の空に星が輝くようなことはないが、きれいな満月は浮かんでいた。
その空を数秒、地上へ上がってすぐのところで立ち止まり、ツバサは何も考えずに見上げていた。心がとても軽く感じられ、目に飛び込んでくるものがいつも以上にクリアに見えてくる。今までの自分なら見向きもしなかった頭の上の光景に時間を使ってみようという余裕があった。
ツバサが何の気なしにスマートフォンを開いてみると、カナコからのLINEが届いていた。
『今度の土曜日に一緒にお出かけしよ☆ 行きたい場所とかあったら教えてよ♡』
頭の固い純文学作家が拒否反応を起こしそうな、鮮やかな色合いをした絵文字とともに送られていた。
いつものカナコお姉ちゃんだ。
ツバサの顔には、自然な笑みがこぼれていた。
『カナコお姉ちゃんが行きたいところならどこでもいいよ』
ツバサはすぐに返事を返した。
中村公園駅で電車を降りて地上へ上がると、雨は完全に上がっていた。地面は濡れておりアスファルトのくぼみに雨水が溜まっているが、ほぼ二十四時間ツバサの頭上に存在し続けた厚い雲は消えてなくなっている。都心の空に星が輝くようなことはないが、きれいな満月は浮かんでいた。
その空を数秒、地上へ上がってすぐのところで立ち止まり、ツバサは何も考えずに見上げていた。心がとても軽く感じられ、目に飛び込んでくるものがいつも以上にクリアに見えてくる。今までの自分なら見向きもしなかった頭の上の光景に時間を使ってみようという余裕があった。
ツバサが何の気なしにスマートフォンを開いてみると、カナコからのLINEが届いていた。
『今度の土曜日に一緒にお出かけしよ☆ 行きたい場所とかあったら教えてよ♡』
頭の固い純文学作家が拒否反応を起こしそうな、鮮やかな色合いをした絵文字とともに送られていた。
いつものカナコお姉ちゃんだ。
ツバサの顔には、自然な笑みがこぼれていた。
『カナコお姉ちゃんが行きたいところならどこでもいいよ』
ツバサはすぐに返事を返した。
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