34 / 81
#6-6
しおりを挟む
させた少し古い木の明るさを融合させた、日本らしくない内装だった。
その中でカナコが立ち止まり、棚とコルクボードを有効活用して生み出されたコーナーに視線を向けた。ツバサもそちらに目を向けると、大量の金属製のネックレスが飾られていた。そのどれもが、首にかけるために動物の皮を使った紐を持っており、それを使って金属でできた飾りの部分を吊り下げている。その飾りも、牛や三日月を模したものや、円や四角形をいくつか組み合わせて作られた幾何学模様など、バラエティに富んだデザインを用意していた。
「これならお母さんにバレないでしょ?」
その光景に見とれていたツバサに、カナコが自慢気に笑いかけた。
ツバサの瞳が、ここに来てから一番の輝きを見せた。
「好きなの一つ選んでいいよ。」
「……。カナコお姉ちゃんが選んでよ。」
「え? あたしが選ぶの? じゃあ……。」
不意を突かれながらも、商品のほうに向き直ったカナコは、ツバサに似合いそうなネックレスを探し始めた。責任重大な仕事をいきなり任されたカナコは、時間をかけてネックレス一つ一つを吟味する。そんなカナコの少し困った顔を、ツバサは彼女の右側から見上げていた。リップクリームか何かで艶を出したように見える口元がかすかに笑っており、この状況に悩まされながらも楽しんでいる様子を伝えてきていた。
そして五分ほど経ったところで、カナコは一つのネックレスを選び抜いた。
「これはどう? ちょっとかけてみてよ。」
そう言ってカナコは、一つのネックレスをツバサに差し出した。
鈍い銀色の、鉄本来の色をそのまま使った、鳥の羽を模した量産品のネックレスだった。それ以外には特に説明するような目立った特徴はなく、シンプルイズベストを体現したデザインをしている。着飾るという経験のないツバサには、これくらい地味な装飾品から始めるのは悪くはなかった。
試しにツバサがネックレスをかけ、試着用の小さな鏡で自分の様子を確認した。上半身の胸までの高さしか映っておらず、客観的に見た服装はおしゃれに気を使っていないことが、ツバサには改めて理解できた。そこに紐の長さを調節し、ネックレスの飾りが鏡の中に映るように調節してみる。来るべき高さまで吊り上がったネックレスは、それだけでツバサを作り変えた。飾りは店内の照明を反射させて鈍く光り、ツバサのために生まれたアクセントと
その中でカナコが立ち止まり、棚とコルクボードを有効活用して生み出されたコーナーに視線を向けた。ツバサもそちらに目を向けると、大量の金属製のネックレスが飾られていた。そのどれもが、首にかけるために動物の皮を使った紐を持っており、それを使って金属でできた飾りの部分を吊り下げている。その飾りも、牛や三日月を模したものや、円や四角形をいくつか組み合わせて作られた幾何学模様など、バラエティに富んだデザインを用意していた。
「これならお母さんにバレないでしょ?」
その光景に見とれていたツバサに、カナコが自慢気に笑いかけた。
ツバサの瞳が、ここに来てから一番の輝きを見せた。
「好きなの一つ選んでいいよ。」
「……。カナコお姉ちゃんが選んでよ。」
「え? あたしが選ぶの? じゃあ……。」
不意を突かれながらも、商品のほうに向き直ったカナコは、ツバサに似合いそうなネックレスを探し始めた。責任重大な仕事をいきなり任されたカナコは、時間をかけてネックレス一つ一つを吟味する。そんなカナコの少し困った顔を、ツバサは彼女の右側から見上げていた。リップクリームか何かで艶を出したように見える口元がかすかに笑っており、この状況に悩まされながらも楽しんでいる様子を伝えてきていた。
そして五分ほど経ったところで、カナコは一つのネックレスを選び抜いた。
「これはどう? ちょっとかけてみてよ。」
そう言ってカナコは、一つのネックレスをツバサに差し出した。
鈍い銀色の、鉄本来の色をそのまま使った、鳥の羽を模した量産品のネックレスだった。それ以外には特に説明するような目立った特徴はなく、シンプルイズベストを体現したデザインをしている。着飾るという経験のないツバサには、これくらい地味な装飾品から始めるのは悪くはなかった。
試しにツバサがネックレスをかけ、試着用の小さな鏡で自分の様子を確認した。上半身の胸までの高さしか映っておらず、客観的に見た服装はおしゃれに気を使っていないことが、ツバサには改めて理解できた。そこに紐の長さを調節し、ネックレスの飾りが鏡の中に映るように調節してみる。来るべき高さまで吊り上がったネックレスは、それだけでツバサを作り変えた。飾りは店内の照明を反射させて鈍く光り、ツバサのために生まれたアクセントと
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
清掃員と僕の密やかな情状
MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。
青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。
肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。
44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる