Night Sky

九十九光

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ひゅ~どろろ ひゅ~どろろー1

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 誕生日の夜、遊大はひとつの夢を見た。

 自分の周りに体格や性別の違う12人の男女らしき人物が立っている光景。その場をぐるりと一周することはできるが、彼彼女らに近づくことはできない。遊大は立っている人物たちを、どこかで見た覚えがある程度でしか認識できなかった。

「時は来た。夜空遊大、貴様に覚醒の時が来た」

 一人が遊大に話しかける。

「これからあなたに、11歳の精神で耐えられるかどうか分からないほど、辛い試練が待ち受けています」

「でも安心して。それをすべて乗り越えたら、君は本当の意味ですべての人を笑顔にできる人間になれる」

 本当の意味ですべての人を笑顔にできる?

 遊大はその言葉の意味を聞こうとしたが、声が出なかった。

「今のお前のユニゾン、ザ・ワールド・ハズント・イーブン・スターティッド・イェットでは、すべての人を笑顔にすることはできない」

「だが常人なら耐えられないほどの試練を乗り越えたら、ご褒美として新しい力が手に入るって話だ。ギブアンドテイクってやつだ」

 常人なら耐えられないほどの試練? この人たちは一体何を言っているんだ?

「詳しいことは言えねえ。それで未来が変わって、お前が覚醒しないって未来になりかねないからな」

「で、でも安心して。君は決して一人にはならない」

「むしろたくさんの人に囲まれて、君もみんなも幸せになれる未来が待ってるんだ」

 言っていることの意味がまるで分からない。この人たちは神か何かなのか?

「俺たちから一つ言えることがあるとすれば、君が受ける試練はとにかく辛いものだ。そしてそれに対して、君はすべてを受け止め、耐えるしかない」

「それで大切なものをたくさん失うことになる。けど心配すんな。何度も言うが、その先にはお前の望むものがある」

「そして失ったものは、永遠にお前のものにもなる」

 失ったものが永遠に自分のものになる? 矛盾してないか?

「安心して。私たちはずっと、遊大君を見守ってるから」

 そこで遊大は目が覚めた。時刻は午前5時を回ろうというところ。ドアの向こうから信也が呼ぶ声がする。

 遊大は昨日もらった金メッキのネックレスをかけてドアを開けた。


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